7月23日の「思いやり予算」違憲訴訟・東京 第7回口頭弁論で原告側が提出し
た資料です(甲129号証)。
次回は、10月19日(火)、1時20分から、東京地裁713号法廷で。いよい
よ被告・国側の反論が出てくる予定。どんな論理で反論するか楽しみ。
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資料の説明:
島川さんのお書きになった『アメリカ東アジア軍事戦略と日米安保体制』(社会評
論社)の「はじめに」と「あとがき」から、インターネットを利用した米側資料の利
用についての補足として一部引用させていただきました。本書には、私たち原告側の
資料も引用されています。
http://www.jca.apc.org/~kaymaru/Books/1999/990731.html
文中の『航空機騒音による健康への影響に関する調査報告書』は沖縄県が委託した
学術調査の最終報告書です。稲嶺県政は、この調査結果を積極的に利用する姿勢では
ないようですが、サミットを控え基地の県内移設が画策されている今日、非常に重要
な資料です。この報告書も証拠として提出する予定。
琉球新報の記事:
http://www.ryukyushimpo.co.jp/news01/1999/9903/990330c.html
沖縄県のホームページには残念ながら掲載されないようですが、調査委員の方によ
ってpdfファイルの形でダウンロード可能になっています。調査委員会の多大なご苦
労に答える意味でも、できるだけ多くの方にご覧いただき、利用したい資料です。
http://www.asahikawa-med.ac.jp/igakubu/hygiene/okinawa/report.html
提出資料では、子供たちへの影響を中心に引用。私たちの税金で米軍の優雅な生活
を支える反面、次代を担う子供たちに大きな負荷をかけている状況をどう正当化する
のかを問いかけました。
さらに、次の世代に継承する責任のある自然環境を、私たちの税金を使って米軍が
破壊するのを座視するのかと、「やんばる」に計画されているヘリパッド建設を例に
、問うています。
文中でふれている『ベスト&ブライテスト』には、正義とか論理とかとは全くかけ
離れたところで政治が行われ、結果としてベトナム戦争の泥沼にアメリカがはまり込
んでいった過程が描かれています。こんなことで、何十年も戦いが続き、何百万の人
々が傷ついたとは……。まあ、日本も、論理もへったくれもなく宗教政党の延命のた
めに、戦争ができる国となるための法案が易々と成立している政治状況ですが。
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日本国の米軍に対する異常な「思いやり」を検証する(まとめ) 1999.7.23
原告・丸山和夫
我が国の米軍に対する異常な「思いやり」の実態を過去3回にわたり検証してき
た。今回はそのまとめである。インターネットなどの公開資料、特に米国側の資料
を中心に解析してきたが、その理由は前回に詳しく述べた。最近出版された『アメ
リカ東アジア軍事戦略と日米安保体制』(島川雅史著、社会評論社)は、日米安保
体制の戦後史を総括した研究書であるが、同様な手法で資料の収集・解析を行って
いる。同書において島川は、公表資料に対する日米政府の差異について以下のよう
に述べている。
日本政府の『防衛白書』や『外交青書』の記述を読んでも日本の
軍事政策の本質や意図が理解できるものではないが、これに比し
て、軍事同盟の相手国であるアメリカ政府の場合には、各種の報告
書・刊行物や議会での説明には、政府・軍部の意図が端的に表明さ
れており、アメリカ国民は基礎的な資料を前提として自らの判断を
形成することが可能である。日本国民も、自らの政府が選択してい
る軍事同盟の本質を知るためには、アメリカ政府の説明を繙いたほ
うが理解が早いというのが現実である。
さらに、インターネットの利用についても、次のように書いている。
本書の記述で依拠した英文の資料は、ほとんどがインターネット
によって入手したものである。第2部でも少し述べたが、この元と
なる原稿を執筆した1997年当時よりも社会的インフラとしての
インターネットの普及が進んでおり、今後はさまざまな意味でイン
ターネットというメディアが重要な役割を果たしていくであろう。
(中略)あらゆる分野で主権者国民の意思表示が必要な時代を迎え
ているが、またそのためにも、主権者の当然の権利として、政府を
はじめ統治三権への情報公開を求めていかなければならないであろ
う。その場合、外務省のような政治宣伝パンフレットのホームペー
ジ掲載ではなく、行政・立法・司法の基礎情報の公開が必要とされ
るところである。
公僕たる被告・国側の真摯な対応が求められている。
インターネットを利用することで、米軍基地内における厚生施設の実態がかなり
明らかになった。広大な敷地に豪華な施設が「思いやり予算」によって建設されて
いる。光熱水費や基地従業員の給与の全額負担によって、豪華な施設が格安にしか
も長時間利用可能になっている。提供施設整備費の日本側負担が始まった79年以
降、兵力は減少しても、家族数は増加しているという事実は、いかに在日米軍基地
の居心地がよいかを示している。基地内外の土地利用形態の差は大きく、特に本島
の20%を米軍基地に占拠されている沖縄県においてその差は顕著である。
本年3月末、『航空機騒音による健康への影響に関する調査報告書』が沖縄県か
ら刊行された。これは、沖縄県が沖縄県公衆衛生協会に委託し県内外の専門家で組
織した「航空機騒音健康影響調査研究委員会」による調査報告書であり、嘉手納飛
行場及び普天間飛行場の航空機騒音が周辺住民に与える精神的・身体的影響を明ら
かにしたものである。データの詳細については原典をご覧いただくとして、ここで
は、子供への影響についての記述を結論部のみ抜粋して引用する。
幼児問題行動:
(中略)端的に言えば、航空機騒音に暴露されている幼児達は、
風邪をひきやすくて、食欲が乏しく、友達づくりに手間取る傾向が
ある、と解される。総括すると、航空機騒音は身体的にも精神的に
も幼児達の問題行動を増加させる要因になっていると言うことがで
きるであろう。
学童の記憶力:
(中略)航空機騒音暴露量と短期記憶のオッズ比との間には統計
的に有意な関連が認められなかったが、記銘したある物事を長期間
保持し続ける長期記憶のオッズ比と航空機騒音暴露量との間には有
意な関連が認められた。
低出生体重児出生率:
(中略)騒音暴露量と低出生体重児(2500g未満)との間に有意な
量反応関係が検出された。(中略)また、2000g未満の低体重児につ
いても同様な結果が得られた。さらに、早産児の出生率についても
同様な分析を行った結果、早産児出生率と騒音暴露量との間にも有
意な量反応関係が得られた。
「思いやり予算」によって優雅な生活が保証されている米軍が存在する一方、税
金を「思いやり予算」として使われている国民の次代を担う子供たちが精神的・身
体的にも負の影響を受けているというこの現実に対し、被告・国側はどのような論
理でこの支出を正当化するのであろうか。
冷戦後の約10年間で、米国は、軍事費を4割、兵力を3割、それぞれ減少させ
た。しかし、米国の戦略は一貫して軍事力中心である。米国内の基地を積極的に削
減する一方、同盟国に対して負担増を求めることによって、世界中に広がる自国の
権益を安上がりに守ろうという姿勢を押し進めている。その戦略に最も忠実に従っ
ているのが、我が日本国である。国防総省から議会に毎年提出されている『共同防
衛のための同盟国の寄与』を検討することで、日本の受け入れ国支援の異常さ明ら
かになった。
日本の米軍駐留経費負担の特徴は、1)負担率が高い(96年度:78.3%、97年
度:75.6%)、2)負担額が多い(97年度:37億ドル)、3)直接負担(=「思い
やり予算」)が多い(97年度:79%)ことであり、同盟国の中でこれらの値は飛び
抜けている。我が国の負担率は、米議会の要求(2000年9月までに負担率75%)を
も上回っており、負担額は、同盟国22カ国全体の50%を越えているという異常さで
ある。さらに、地位協定に定められていない直接経費(光熱水費、人件費、施設整
備費など=「思いやり予算」)を日本国のように支出している国は存在しない。
米国の行う戦争は正義のためであろうか?答えは否である。米国自身、米軍の戦
略は「国益を守る」ことであると公言してはばからないし、歴史もそれを証明して
いる。前回提出した資料の中にある「第二次大戦後、米国によって爆撃を受けた
国々」のリストを見ればそれは明らかである。最近、訳書が出版されたデイヴィッ
ド・ハルバースタムの『ベスト&ブライテスト(上・中・下)』(浅野輔訳 朝日
文庫)には「最良にして最も聡明な」人材だと絶賛されたエリート達によって、な
ぜ米国がベトナム戦争という泥沼に引きずり込まれたかが、あからさまに描かれて
いる。国益どころか、政治的力学に政策が翻弄された結果があの悲惨な戦争であっ
た。多国籍企業を抱えた現在の日本が、米国と多くの面で利害が一致することはあ
り得るとしても、軍事力によって権益を擁護する米国と憲法九条を持つ我が国の行
動様式は当然異なるべきである。
前回提出した資料にもふれたが、「思いやり予算」は米軍による環境破壊をも大
規模に引き起こしている。岩国基地の拡張による藻場・干潟の破壊、沖縄での演習
や基地建設による赤土汚染、さらに、沖縄北部のいわゆる「やんばる」でのヘリパ
ッド移設計画は、貴重な動植物の生育環境を破壊するとして、以下の団体が問題提
起をしている。
日本野鳥の会やんばる支部、移設候補地の見直しについての要望書
(99年3月24日)
日本生態学会、予定地見直しを求める要望書(99年3月29日)
日本応用動物昆虫学会、建設予定地の見直しに関する要望(99年4月5日)
琉大・広島大調査チーム、「候補地白紙に」と要望書(99年4月12日)
立法府がこの違憲状態を是正できな現在、国民が司法に訴えるのは当然の権利で
あり、義務である。とりわけ、この「思いやり予算」によって支えられている基地
の被害によって精神的・身体的に負荷を負わされている子供たちの存在を考えるな
らば、一刻も早くこの異常状態に終止符を打たねばなるまい。三権の一つとしての
司法の責任は大きい。
参考文献:
1.『アメリカ東アジア軍事戦略と日米安保体制』(島川雅史、社会評論社)
1999.7.31
2.『航空機騒音による健康への影響に関する調査報告書』(沖縄県)
1999.3.31
3.『ベスト&ブライテスト(上・中・下)』(浅野輔訳 朝日文庫)1999.7.1
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MARUYAMA K. kaymaru@jca.apc.org
2GO GREEN (JCA-NET)
http://www.jca.apc.org/~kaymaru/2GG_JCANET.html