以下は社民党衆議院議員の濱田健一氏提出の、米軍の低空飛行に関する質問
書です。
これは、今年の1月14日に外務省が公表した米軍の低空飛行訓練に関する
合意書([aml 10747] ,[keystone 986] に全文があります)の背景と事実関係を
問うものです。どうもこの中味がこれまで外務省が言っていたことと矛盾する
のです。また、ご存じのようにこの合意の直後、米軍機の墜落事故が相次いだ
ため、ほんとに米軍が安全に留意しているか疑わしいということもこの質問の
背景にあるようです。
私が個人的に一番知りたいのは、この質問状の6番、米軍は日本の航空法を
守る、つまりこれまでの「常識」である航空法の米軍への適用除外は誤りであ
るのかどうかということです。そういう解釈なら地位協定の根幹に触れる画期
的な決定ですが。政府の回答を待ちたいと思います。
質問書への回答は、8月13日までに出されるとのことです。
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在日米軍による低空飛行訓練に関する質問主意書
右の質問主意書を提出する。
平成11年7月15日
提出者 濱田健一
衆議院議長 伊藤宗一郎殿
在日米軍による低空飛行訓練に関する質問主意書
在日米軍による低空飛行訓練は、全国各地において継続され、地域住民が轟
音被害や墜落の恐怖を日々体験している現状にあり、国民の安全と生活を守る
ためにも、その対策は、緊急を要すると考える。
従って、次の事項について質問する。
一
一九九九年一月十四日付けで外務省が公表した「在日米軍による低空飛行訓練
につ
いて」と題した日米合同委員会合意に関連して
1 なぜ、この時期にこのような合意に達したのか
米軍機による低空飛行訓練について、日米両政府が合意した文書を公表
したのは、初めてのことと認識するが、そのように捉えていいか。従来、外務
省は、低空飛行訓練については、「通常の訓練をするのは当たり前」「地位協
定五条に定められた基地間の移動にあたる」などと明確にその存在を位置づけ
ることを避け続けてきたはずだが、ここに来て、低空飛行訓練の存在を認め、
かつそれが「米軍の不可欠の訓練所要を構成する」ことを容認したことはなぜ
なのか。
2 低空飛行訓練の定義はどういうことか
どのような訓練のことを低空飛行訓練というのか、その定義を明確にせ
よ。
例えば、中国山地沿いの地域では、ダムや山の周辺で、旋回したり、谷間をぬ
って飛んだり、ダムの堰堤をめがけて急降下したりという飛行が確認されてい
る。また、町役場や学校などのある谷間を、かなり低空で飛びさっていくとい
うことが、多
くの町で確認されている。これらの両方とも低空飛行訓練なのか。
3 訓練ルート図や開設の時期などの公表
早明浦ダム事故報告書からは日本列島に八本の低空飛行訓練ルートがあ
るとみられるが、そのルート図、及び開設の時期などについて、日米合同委員
会として確認しているのか。海上などに設定されている訓練空域と同じように、
低空飛行訓練空域も、正式に位置づけて、地図上に明記したということか。
低空飛行訓練ルートは、日米地位協定に基づいて設置されたものでなく、
米軍が自らの意志で地図上に線を引いたものと認識しているが、もし、確認し
ているのであれば、地位協定に明確に位置づけたということか。いずれにしろ
ルート図や訓練所要を公表すべきではないのか。
4 一月十四日付けの合意事項は、これまでも米国軍によってこのように
行われてきたものなのか
今後この合意に基づいて実施していくというものなのかどうかを、各項
目ごとに明確にせよ。
5 合意項目1は、これまでは考慮されていなかったということか
合意項目1は、これまでは考慮していなかったが、今後は考慮するとい
うことか。例えば、これまで島根県石見空港の上空を岩国所属機が何回も旋回
したりすることが目撃されている。また、町の上空を通過する際は、役場、学
校、保育所の上空を飛んだり、そこで急に旋回し、逆に向いて飛んだなどの話
がたくさんある。これらは、過去のことで、今後は、同様のことは行われない
ということなのか、それとも、過去においても注意していたが、実際には、約
束は無視されていたのか。
6 従前から日本の航空法の基準が守られていたというのは事実か
合意項目2は、「国際民間航空機関(ICAO)や日本の航空法の基準
を用いている」とのことだが、いつ地位協定が変更になったのか。日米地位協
定に基づく航空特例法は、国内法である航空法に定められた最低安全高度(八
十一条)、粗暴な操縦の禁止(八十五条)などの義務を除外している。従って
日本においては、米軍機には、日本の航空法は適用除外であるため、ごく低高
度の飛行が行われているのではないかと捉えていたが、その認識は誤りか。
また、従前から航空法の基準が用いられていたとすれば、事実は全く異
なっていることをどうするのかという問題が残る。パイロットの顔が見えたと
いった体験を話す住民は後を絶たないし、谷間を飛んだり、峠を越えるときな
どは、ほとんど陸地すれすれに飛行することが目撃されており、現実は異なっ
ていることを示しているのではないか。
7 合意発表の直後に、岩国機が土佐沖で、三沢機が釜石で相次いで墜落
したことからも、合意の実効性は疑わしいが、この点にどのような方法を講
じるのか
合意項目4では、飛行経路の研究や、整備要員との点検などを十分行う
とあるが、合意が出されて一週間も経たないときに、日本列島の南と北で米軍
機が相次いで墜落事故を起こしている。二十日には、岩国基地所属のホーネッ
トが土佐湾で、二十一日には、三沢所属のF−16が釜石市の山林で、相次い
で落ちている。たまたま住民が巻き込まれていないだけで、国民は不安を抱か
ざるをえない。これらが、必ずしも低空飛行訓練であったとは限らないが、通
常訓練でも、これだけ事故が起きているのだから、低空飛行ではもっと危ない
はずではないか。さらに、部品の落下事故などを含めれば、ひっきりなしに事
故が起きているといっても過言ではない。合意がどこまで実行されるのかとい
うことに疑念を抱かざるをえない所以である。政府として、この合意を実行す
るために、どのような方法を講じようとしているか。
8 一月十四日の合意は、どのような位置づけの下に行われたものなのか
つまり、合意の冒頭で触れているように、何があっても、安保条約の目
的を遂行するために、低空飛行訓練は必要不可欠のものであるとの宣言は、変
更しないという意思表示なのか。世界的には、ドイツやイタリアのように、米
軍機による低空飛行訓練の空域はどんどん減っていっているのが趨勢である。
関連して、世界的な米軍機による低空飛行訓練の実態を政府としてどのよ
うに把握しているか。現在、ほとんど唯一残っているのが、日本列島なのでは
ないか。そのような文脈を考慮するとき、最終的には日本における低空飛行は
なくなる方向性を持ちつつ、暫定的に、その安全性への配慮を求めるというも
のでなければならないと考える。政府が、本合意を公表した意図は、それとは
全く逆に向いているものと解釈していいのか。つまり、安全性への配慮を強化
することを条件として、低空飛行訓練自体は、正式に容認したものとして、本
合意があるのか。
すべての質問に速やかに答えられることを切望する。
右質問する。
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Masahiko Aoki
青木雅彦
btree@pop06.odn.ne.jp
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