外国軍の平時駐留という制度は長い人類の歴史の中でもここ半世紀ほどの
(ごく一部の国で行われている)特異な現象です。だから駐留軍は気を付けな
いと、「ちょっとした」きっかけで現地のナショナリズムに火をつけて大変な
ことになる。
そのことを痛感するのが、プエルトリコで最近相次いで起こった米軍事故を
きっかけとして起こった反米の動き。ご存じのように米国はプエルトリコ人に
は選挙権を与えないが、Commonwealth(「自治領」という訳語でいいのでしょ
うか)という名目で「併合」して米軍基地を置いています。今年の4月に米軍
がViequesという小島にある米軍射爆場でプエルトリコ人の基地警備員を誤爆
で死亡させるという事件が起きました。
驚いたことに、彼がここ半世紀でプエルトリコでの米軍事故での初めての死
者(日本と比べると米軍は慎重なんですね)ということで、大問題に。その時
同じ射爆場で、ちょうど沖縄鳥島と同じように、劣化ウラン弾を誤射してしま
っていたということが明らかになったから、もうみんな怒り心頭。米軍は出て
いけという大デモ隊が7月4日に米海軍基地に押し掛けています。
現在のプエルトリコの知事は、すごく親米派で、1年前の選挙で当選したし
た時には「プエルトリコをアメリカの51番目の州にする」と星条旗を振って
はしゃいでいたそうですが、今はデモ隊が星を骸骨に変えた「星条旗」を振っ
ています。今では知事も米軍基地撤去を要求せざるをえなくなっているようで
す。独立のための国民投票を国連に要求という動きになっているようですが、
米国は基地を失うことを恐れて何とか事態の沈静化を図っていますが、今のと
ころ逆効果のようです。
この辺のナショナリズムの表れを要領良くまとめた記事が
http://www.nytimes.com/aponline/i/AP-Free-Puerto-Rico.html
にありますので、興味のある方は読んでください。
先週末に首都サンファンを訪れた米艦ヨークタウンが激しい抗議デモの洗礼
を受けた様子が、
http://search.washingtonpost.com/wp-srv/WAPO/19990718/V000909-071899-idx.html
に。
また、半世紀前に軍人としてプエルトリコに務めた人が、この演習場を再訪
し米国の「帝国」主義を反省して書いている文章が、
http://www.washingtonpost.com/wp-srv/WPlate/1999-07/16/014l-071699-idx.html
に。彼も海兵隊の一兵卒のころには、米軍の「帝国」主義性を全く意識しなかったと
回想しています。
こういう報道を聞いて思うのは、似た立場にあるわが祖国の対応です。特に
沖縄は米軍に接収されて基地を置かれ、しかも劣化ウラン「誤射」というほぼ
同時に同じ事件が起こったのですから、比較するなという方が不自然です。
ご参考までに、以下に外電などを基に、日プの対米関係の比較を作ってみま
した。
「石原裕次郎兄」知事でないのでナショナリズムを煽る意図はないのですが、
わが同胞に公憤やプライドはあるのかと、聞いてみたくもなりました。
プエルトリコ 日本
米国との Commonwealth 形式は独立国
関係 「自治領」 軍事的には米植民地
米大統領・ なし なし
議員の選挙権
重要な米軍 あり たくさんあり
基地
現在の元首 史上最も親米知事 卑屈なまでに親米首相
劣化ウラン誤射 知事が基地撤去を要求 外相は米軍をかばう発言
への対応 民衆は怒りの大集会 民衆はのほほん
現在の米軍 基地撤去を要求 米軍と一蓮托生
への態度 米国からの独立の声
米軍には 兵役に取られうる 民間人も協力させられうる
それで、例の沖縄鳥島ですが、どうなっているのかご存じの方はあるでしょ
うか?沖縄の新聞を見ても、もう縄文時代のことのように忘れられているよう
な気がします。プエルトリコの劣化ウラン事件で、外電ではこの鳥島事件がよ
く引き合いに出されているようなのですが、日本の報道はさっぱりです。
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Masahiko Aoki
青木雅彦
btree@pop06.odn.ne.jp
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