北海道・矢臼別演習場などでの北方機動特別演習(6月23日〜7月19日)のため
に、陸自では、迷彩服を着た陸上自衛隊の隊員約300人が、日本航空と日本エアシス
テム(JAS)の定期便に搭乗して移動する予定であることが、23日明らかになった
。多数の迷彩服姿の自衛官が一般客にまじって民間定期便で移動するのは異例。
陸自側は「部隊移動も訓練の一環」として、実際の演習と同じ迷彩服を着用させると
説明。
「日本航空機長組合」(岡崎憲雄委員長)は「一般客に不安を与える」「兵員輸送を含
む軍需輸送については反対だ。今回の自衛官輸送は、民間航空機を軍事用に使用する日
米防衛協力のための指針(新ガイドライン)法の実施の先取りになりかねない」などと
して、23日、「国際民間航空条約にのっとり、武器弾薬兵員などの軍事輸送に反対す
る」との抗議声明を出し、会社側に迷彩服での搭乗を拒否するよう申し入れた。
声明によると、自衛官が搭乗するのは仙台発札幌行き847便(仙台発PM4:4
5
、札幌着PM5:55)。JAL(日本航空)によると、25日に42人、27日に2
10人分予約。従来、同便はボーイング737(167人乗り)を運行しているが、2
7日には210人の予約に対応するためDC10(266人乗り)に変更。
JAL広報部「通常の営業活動の中で、一般団体客として利用していただく」
北方機動演習には山形県に司令部を置く第六師団を中心に約4100人が参加。民間
定期便を使うのはその一部。JALの他、26日の山形発札幌行きJAS(日本エアシ
ステム)046便(山形発PM1:15、札幌着PM2:20)に50人も迷彩服で搭
乗予定。過去にも隊員が迷彩服で民間機に乗ったことがある。陸自幕僚監部広報による
と、93年、97年は第10師団(司令部・名古屋市)中心、95年は第13師団(現
旅団、広島県海田町)中心の北方機動演習。JAS機使用。
日航に自衛隊側から予約申し込みがあった際、日航担当者が「一般客もいるので、迷
彩服の着用は考えてもらえないか」という趣旨の申し入れをしたが、自衛隊側は、迷彩
服での搭乗を強く要望(広報部)。またJAS乗員組合によると、会社側が迷彩服やそ
の他の装備を無料ではこぶことを条件に、制服の着用を要請したが、自衛隊は演習の一
環だとして拒否。
陸自「空港事務所にも了解はとっており、問題はないと思う」
防衛庁広報課「迷彩服を着て民間の輸送力を使い機動(部隊移動)することも北方機動
演習の一環と理解している。実際の機動では、自前の部隊だけでなく民間にも協力いた
だくことになる。」
(「朝日」6月24日、「毎日」「赤旗」25日)
北方機動演習は毎年実施されますが、今回、周辺事態法成立後の初めての大規模演習
となります。
第六師団は、東根市(山形県)、郡山市(福島県)、福島市、多賀城市(宮城県)、
秋田市にある6連隊と師団司令部(東根市)から構成されている東北方面隊の一つです
。今回の訓練自体には秋田市の第21普通科連隊は参加しないようです。
25日以降には、1,200両の車両(人員・物資)の移動、JRによる大砲、特殊車
両
の輸送も予想されます。しかし、特殊車両の移動については、あらかじめ県などに通知
があるはずですが、北方機動演習に関連した特殊車両の運行申請や移動通知の有無は現
在のところ不明です。しかし、数百台と思われる自衛隊の山形県東根市神町からの秋田
県を通る国道を使っての移動は、25日に行われることは明らかになっています。26
、27日には仙台港を使用して、戦車、人員輸送をするのではないかと思われます。
「部隊移動も訓練の一環」であるなら、自衛隊独自で移動すべきです。設備はあるの
ですからわざわざ民間を利用する必要はありません。「前例」もあると強調しています
が、これからの自衛隊は、地域を限定せずに「活躍」できる武力行使集団なのですから
、「前例」の行動とはまったくその「訓練」の意味は違います。周辺事態法下では、自
衛隊の訓練は、災害救助訓練も含めてすべて戦時を想定した軍事行動です。自衛隊の移
動を訓練の一環と明言したことが、軍隊の性質を表しています。
その上で民間の中に入り込むのは、労働力を強制的に動員する目的もあるから。
迷彩服で乗り込むというのは、今後市民に軍隊が身近にある風景に慣れさせ、軍事行
動への「民間協力」の違和感を麻痺させようとしていることは明白です。この国は、学
校や会社での制服姿や、公務員や会社員のス−ツ姿での集団行動を見慣れていますから
、この種の光景もまもなく抵抗なく受け入れられるでしょう。以前から自衛隊は、イベ
ントなどで、迷彩グッズの販売にも精力的です。それらは若者を中心にファッションの
一つとしてすでに定着しています。その中身には天と地程の違いがありますが、今後迷
彩服でうろついたとしても、さほど抵抗は受けないと自衛隊は自負していることでしょ
う。
秋田県男鹿市では、かつて自衛隊が「訓練」のために、急斜面の山肌をむりやり削り
、道路を造りました。出来上がった道路は県道となり、県では毎年の崖崩れで維持費を
消費しています。これからは自衛隊が造った道路は自衛隊のものにできます。また、林
道も営林局から譲り受けたため、自由に使えるようになりました。道路を封鎖すること
も勝手にできるようになります。今は自然保護のためと称して県や環境庁と名を列ねて
「車両禁止」などと若干体裁を整えていますが、もうすぐその「配慮」もいらなくなり
ます。必要と思えばどこでも自衛隊の陣地にできるようになります。その実効性を確保
するための地方分権推進一括法案が立法化される見通しになったからです。この法案は
土地も施設も「合法的に」国が調達できる仕組みになっています。
秋田県の陸自では、射撃訓練場の新設を計画しています。自衛隊が米軍並みの力量を
つけるためにも、その訓練場の規模拡大もしていくでしょう。どんなへんぴなところで
も、遠くても、道路をつければいいし、街のどこに造ろうが、何をしようが、なんら不
都合もありません。国が「国際社会における国家としての存立にかかわる」と判断すれ
ば、用地を確保するにも、道路を造るにも、施設の使用も、あらゆる手続きが同法案に
よって優先されます。固定資産税を払い、地方税を納めてももう市民にとっては自由に
判断できなくなるのです。この法案は「棄民法案」の性格も持っています。
取り上げた土地は企業と仲良く分けるかもしれません。企業はこれから軍需産業とその
廃棄物処理でも儲けられます。