国旗・国歌の法制化は、この国に住むすべての人に、日本国家への忠誠を強要し、服
従させ、差別を合法化するもの。
日の丸・君が代は、たしかに存在は認められている。それは識別旗・識別歌であって
記号みたいなもの。
その位置付けも意義付けも個々人の自由で、必要性の認否も使い方も個人の自由。
与党であれ、野党であれ、私たちの思想信条の自由を奪う権利はない。「日の丸・君
が代は国旗・国歌として定着している」と盛んにいうが、この国には強制的に定着させ
た歴史がある。明治政府は、官公署や軍隊、学校などに掲揚・斉唱させて普及させたと
いう。「法制化」は歴史も改ざんする。「日の丸・君が代」に政府が一定の意味付けす
ることは、学問の自由を侵害する。「日章旗」「古歌」はその歴史も、解釈にもいろん
な説があり、研究がある。
小渕首相はケルンへ向かう政府専用機内の記者会見で
「日の丸・君が代は国旗、国歌として国民各層に定着している。新しい世紀を迎えるに
当たって法制化することで、日本の新しいスタ−トを整理しておく必要がある。各党と
も慎重に審議、検討が必要だと主張していた。国会の会期延長幅もかなり認めていただ
いたので、十分な審議がいただける。提出した以上は、各党各会派の理解を得て成立さ
せなければならない。」(6月19日「毎日」首相記者会見の要旨)と決意表明。
何たる傲慢。これが、すべての人の人権を尊重しなければならない立場の「首相」と
しての「決意」なのだ。
「国旗・国歌法案」は国会ではまだ与党が24日の衆院での審議入りをめざして「奔
走」しているのは知っているが、審議するかどうかもまだ私たちには知らされていない
予測の段階。
陣内孝雄法相は、19日の地元佐賀市での記者会見で、延長国会で成立を望む「優先
順位」にこの法案を入れていない様子。少年法の一部改正に執念をのぞかせている。
「(それぞれ大事な法案だが)順番としては、組織(的)犯罪対策関連法案が一番。
同時に、成年後見制度に関する法案も介護保険導入に際し重要だ。もう一つは景気回復
に向け、持ち株会社を可能にする株式交換制度。その他では少年法の一部改正」(20
日「朝日」)
自民、自由両党は17日、国旗・国歌法案について、24日の衆院本会議で趣旨説明と
質疑を行い、審議入りする方針を固めた。自民党・古賀誠国会対策委員長は17日、公
明党・改革クラブの草川昭二国対委員長に方針を伝え、草川氏は特に異論を唱えず。
自民党は「国会の意見が二分するのではなく、圧倒的な多数で成立させることが大事」
(国対幹部)の立場から「慎重に」審議入りのタイミングを計ってきたが@公明党が1
5日の全員国会対策委員会で同法案に賛成する方向で意見集約を開始したA今国会の会
期が57日間延長されることが決まり十分な審議期間が確保できる−事情から、今国会
での成立が見通せる状況になったため、審議入りを決断。(18日「読売」)
「趣旨説明が必要かどうかも含めて議院運営委員会で協議してほしい」(古賀氏・1
8日記者団に審議入りの意向を表明)(19日「毎日」)
公明党が求めている沖縄や広島などでの公聴会開催や参考人招致についても容認する
構え。(16日「読売」)
公明党は15日に全員国会対策委員会で、国旗・国歌法案に関する党内議論を正式に開
始。24人が発言。
冬柴鉄三幹事長「日章旗は国旗、君が代は国歌として定着している」「世論調査で、法
制化に3人に1人が反対しているのは重要だ」「政府が法案を提出する以上、われわれ
に選択の余地はない。審議に応じ、機が熟せば採択に応じなければならない」
反対論が約9人。
「『法制化は強制につながり、教育現場に一層の混乱を起こす』といわれる。多くの方
から『反対しなければ、公明党を支持できなくなる』と叫ばれている」「心の問題だか
ら、君が代を歌いたい人は歌い、歌いたくない人は歌わないことでいいのでは」「君が
代を聞くと、国家主義、第二次世界大戦の思いがよみがえる」「法制化の裏には皇国史
観があるように思えてならない」
「法案自体には賛成だが『自自公』の踏絵にならないか」「幅広い意見の集約が必要」
「(日の丸と比べて)君が代を国歌とすることに抵抗感がある」
質問主意書の政府答弁での君が代の「君」を象徴天皇と位置付けた政府見解の修正を求
める意見や「個人的な好き嫌いの問題であり、党議拘束を外すべき」という意見も
「君が代を歌いたくない人は卒業式などの会場を出てもいいという『良心の自由』を保
障すべき」
「大半の国で法制化されている」「法制化せずに教育現場の混乱を招いたのは政治の責
任だ」「『君』は象徴天皇だとする君が代は、憲法と両立する」「反対すると、小選挙
区選挙では大変厳しい状況になる」など賛成意見が約10人で半数をわずかに上回った
。
「予想以上に反対意見が少なかった」(幹部)が積極的賛成論も比較的少なく、
「国民の良心の自由が確保されることが必要だ」などの条件付賛成が目立った。
「自自公路線に踏み出した中で反対に回る訳にもいかない。やむをえず賛成、という空
気が強い」(党幹部)
創価学会は、君が代の法制化には慎重姿勢。しかし「党内では日の丸・君が代を認めて
いる議員が大半。党として法案に反対することは難しい」(幹部)
「日の丸・君が代は国民に定着しているという認識は党内で共通しており、六割が法制
化に賛成だ。反対も予想の範囲内」(執行部の一人)
(16日「朝日」「読売」「産経」)
民主党は、国旗国歌問題プロジェクトチ−ム(座長・広中和歌子副代表)で意見聴取。
「(法制化を急ぐ政府の姿勢は)軽々しく唐突で、拙速だ」(広中座長)
「法案の採決となれば(日の丸、君が代の定着という)現状を認めている以上、反対は
難しい」(保守系幹部)
15日の同チ−ム拡大会議には、約20人の議員が出席。「なぜこの時期に法制化が必
要なのか」という疑問も出たものの、今国会の法制化には賛成の意見が多数を占めたと
いうこと。
16日総務会での意見交換では、約10人の発言者のうち法制化に明確に賛成の意を示
したのは2人。「日の丸・君が代は国旗・国歌として定着しているものの、法制化には
慎重に対応すべき」との意見が目立った(横路孝弘総務会長)
17日現在では、常任幹事会や総務会レベルの手続きには入っていない。
鳩山由紀夫幹事長代理・19日大阪市のホテルでの講演のなかで
「今、なぜ法律化なのか分からない。法律を作っただけでは絵にかいたもち。(政府原
案には、義務規定も尊重規程もない)かえって現場の校長先生の悩みは倍増するのでは
ないか。(日の丸・君が代)は慣習法の性格が強い」「(対応については)早晩に結論
を出す」(16、17日「朝日」、20日「読売」「毎日)
鷲尾悦也連合会長(静岡県での連合の政策・制度中央討論集会で)
政府・与党は、雇用対策や景気対策という美名のもとに国会会期を延長し、通信傍受法
案や、日の丸・君が代法案の成立をめざしている。これらの法案は、国民の間で賛否が
大きく分かれている問題だ。仮に百歩譲って審議を認めるにしても、審議会や公聴会な
どで国民各層の意見を十分聞きながらやるべきであり、簡単に延長国会で決定すべき法
案ではない。今国会で採決することは断固、反対していきたい。
(18日「朝日」)
−−−−−−−−−−−−
「法制化どう思う?」「別に、おれ左翼でないし」「何が?」「だって、天皇・・」「
じゃ、あんた右翼?」「とんでもない」「国旗・国歌を法制化するのに賛成かどうかき
いてんの」「別に、法律までいらないんじゃないか。なんとなくきゅうくつだ」「じゃ
、反対?」「反対すると理由を聞かれるから困る」「きゅうくつだって、ちゃんとした
理由があるでないの」「そういうもんかな」「そういうもんよ、難しいことじゃない」
わが子どもも、これからどこの国の人になるかも未定。どんな境遇にいても、窮屈な思
いも、差別をしたり受けたりするようなことはさせたくない。