Mime-Version: 1.0
Date: Thu, 20 May 1999 02:00:11 +0900
To: aml@jca.apc.org
From: "MARUYAMA K." <kaymaru@jca.apc.org>
Subject: [keystone 1474] 思いやり予算・東京 準備書面
Cc: keystone@jca.apc.org, pmn@jca.apc.org
Sender: owner-keystone@jca.ax.apc.org
X-Sequence: keystone 1474
Precedence: bulk
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

 5月18日の「思いやり予算」違憲訴訟・東京 第6回口頭弁論の準備書面です。
甲第128号証として提出した詳細な資料をまとめたものです。

 なお、訴訟資料をできるだけはやくホームページに掲載するため、これまでのホー
ムページに加えて、証拠などを掲載するホームページを作りました。合わせてご利用
いただけましたら幸いです。

 なお、次回第7回口頭弁論は、7月23日(金)、午後1時20分から、東京地裁
第713号法廷にて。

 本家:
http://www.jca.apc.org/peace-st/no-omoi-t/

 別棟:
http://www.jca.apc.org/~kaymaru/Omoiyari/Omoiyari.html
 

 すでにお知らせしましたが、甲第128号証のは以下に掲載してあります。
http://www.jca.apc.org/~kaymaru/Omoiyari/990518/990518.html
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   平成10年(ワ)第5388号 損害賠償請求事件

              原告116名

              被告 国

       平成10年(ワ)第1091号 損害賠償請求事件

              原告8名

              被告 国

                              準備書面

 1999年5月17日

        右原告ら訴訟代理人

              弁護士 内田 雅敏

              同   根本 孔衛

              同   床井  茂

              同   中野比登志

              同   矢花 公平

 東京地方裁判所 民事第38部 御中

                                   記

 1. 冷戦後における米軍の戦略

 1997年に発表された「(4年ごとの)国防評価報告』(Report of the
Quadrennial Defense Review、以下QDR)には米軍の状況について次のようにまと
められている。少々データは古いが参考になる。

        1985年以来、米国は地球規模での状況の変化に対応して、国
       防予算を約38%、兵力を33%、調達費を63%、それぞれ減少さ
       せた。現在、国防予算は2500億ドル、国家予算の15%、国民総
       生産の約3.2%を占めている。現役兵力は145万人、20万人は海
       外に駐留している。予備役が90万人、さらに、80万人の文官が
       国防総省に属している。

 この事実は米軍の戦略が軍事力中心から平和的方法へと転換したことを意味
するのであろうか?残念ながら答えは「否」である。QDRには以下のように書
かれている。

        短・長期の米国防戦略は、国益を増強させる方向に戦略的環
       境を構築し、あらゆる脅威に対応する能力を維持し、将来の脅
       威や危険に対しそれぞれの時点で準備を整えることを今後も続
       けることである。この戦略の根本にあるのは、地球規模で守る
       べき権益を抱える超大国として、外交的、経済的、軍事的に世
       界中との関わりを米国は持ち続けなければならないという逃れ
       られない現実である。

 同時に発表された『Joint Vision 2010』には、「21世紀における我々の軍隊が
めざすべき目標は“すべてにおいて優位であること”が基本的特徴となる」と
し、「平時においては交渉を基本とするが、戦時においては断固たる処置を執
り、どのような紛争形態においても優位性を保つ、という総合的な力を持つ国
家を形成するという共通の目標に向かって進む」と述べられている。

 つまり、冷戦後の米国は唯一の超大国として、地球規模に広がった米国の権
益を守るために、圧倒的に優位な軍事力を効率的(できるだけ金をかけず)に
整備しようとしているわけである。外交努力よりも軍事力を背景に事を進めよ
うとしている米国の姿勢は、イラクやコソボへの爆撃に如実に示されている。
今後の米軍の計画を見てみると「基地の統廃合」「生活の質的向上」「同盟国
に対する負担増の要求」を計画の柱としていることが分かる。

 2. 基地の統廃合 

 基地の統廃合」(Base Realignment and Closure、以下BRAC)とは冷戦終了の
直前から始まった基地の再配置や閉鎖の計画で、1988、91、93、95年の4つの
ラウンドで行われた。終了は2001年の予定。98年4月に出された国防総省の報
告書によると、2001年までに総額140億ドルが節約でき、さらに2002年以降毎
年56億ドルの節約になると見積もられている。しかし、4ラウンドのBRACが
完了したあとも過剰な基地の割合は23%にのぼると試算され、新たな2ラウン
ドのBRACが国防総省から提案された。これによって毎年30億ドルが節約でき
ると見込まれている。このように、基地の統廃合は米軍の近代化にとって不可
欠の過程だと国防総省はとらえている。

 3. 生活の質的向上

 米軍は兵士の志気を高めるためにさまざまな施策を行っている。1999年度の
『国防年報』でも「生活の質」(Quality of Life、以下QoL)について第9章をあ
てており、QoLの6つの柱のうち一つは「軍人やその家族のために安全で近代
的な基地内施設や住宅を供給する」ことと記されている。また、「士気向上、
福祉、余暇」(Morale, Welfare, and Recreation:MWR)プロジェクトとして、基
地内のフィットネスセンター・体育館・図書館・青少年施設などの整備を専門
の部署を設けて進めている。

        別枠の施設整備計画として、住宅や基地内のサポート・リク
       リエーション施設の建設、電気・上下水道施設の改善など、生
       活の質的向上プロジェクトのために、日本は自主的に多額の予
       算を支出している。さらに、最近では、施設整備計画をこれま
       で以上に柔軟に運用して、滑走路や防爆シェルターなどの直接
       的軍事施設の建設も日本側が行うようになってきた。1997年に
       日本が米軍施設建設・再生・維持のために支出した金額は約9億
       ドルである。

 ここにいう別枠とは「労務費」「光熱水費」などの負担を決めた特別協定の
枠外という意味である。地位協定24条1項・2項の経費分担原則から日本側が施
設整備費を分担する義務はない。しかも、特別協定でも施設整備費は盛られて
いないから、これはあくまでも日本が「自主的」に出していると米国は考え
るわけだ。金丸信言うところのまさに「思いやり」である。

4. 同盟国に対する負担増の要求

 米軍は自国内で基地の統廃合を積極的に進め、節約した金で軍の近代化を図
る一方、「同盟国」に対しては負担の増大を要求している。毎年発表されてい
る「共同防衛のための同盟国の寄与」は、米国を含む23の「同盟国」が軍事的
に米国の戦略にどの程度貢献しているかを詳細に分析したものである。

 米国が「同盟国」の寄与を測る尺度として用いているのは、1.軍事費、2.多
国籍軍への貢献、3.米軍駐留経費の負担、4.海外援助、の4項目である。具体的
には、軍事費や海外援助額を前年に対し10%以上増やすこと、米軍駐留費の
75%以上の負担すること、などを求めている。日本の軍事費は絶対額において
2位の仏とほぼ等しく、23カ国全体の7%以上となっている。海軍のトン数でも
日本は2位の英国に次ぐ第3位を占めている。90年から98年にかけて日本の軍事
費は12.8%増加した。その間、韓国(36%)・ギリシャ(21%)・トルコ
(31%)などでも軍事費の増加が見られるが、絶対額は日本に比べるとはるか
に少ない。一方、カナダ(33%減)、独(31%減)、英(28%減)などNATO
の主要国は軍事費を大幅に減らしている。もちろん米国も例外ではない。8年
間でなんと29%、約3割減らしている。

 米軍駐留費の負担についてみてみると、96年に比べ97年ではわずかに割合は
減ったものの、日本の負担率は75.6%と米軍駐留経費の3/4以上にのぼる。これ
は米議会の要求(2000年9月までに75%)すら上回っている。負担率が日本よ
り高いのは、サウジアラビア(87.7%)であるが、絶対額は約1.1億ドルで、日
本の負担額37億ドルに比べるとほとんど意味のない数字であろう。イタリアは
65.4%とNATO諸国の中では負担率は高いが、絶対額は10億ドルと日本のほぼ
1/4である。独の負担率は約26%、絶対額は約12億ドルで日本のほぼ1/3。前々
回にも指摘したが、米軍駐留費に対する日本側負担は、その“割合”と“絶対
額”が他の「同盟国」に較べて飛び抜けて大きいことに加えて“直接負担額”
が異様に高いことを特徴としている。ところで「共同防衛のための同盟国の寄
与」の中で、米軍のアジア地域への駐留の目的については次のように述べられ
ている。「(日米、韓米の)二つの同盟関係で最も重要なのことは、少なから
ぬ人数の米軍兵力が日本と韓国に引き続き駐留することである。日本には
47000人、韓国には36000の米兵が駐留している。これらの兵力はこの地域の平
和と安全に重要な役割を果たしており、また、アジア地域に対する米国の並々
ならぬ関心を如実に示すものであり、さらに、同盟国と共同してこれらの権益
を擁護しようとする米国の意志と能力をしめすものである」と。また、1999年
度版「国防年報」でも、「米国にとって日本との安全保障同盟関係は、米国の
アジアにおける安全保障政策の要であり、米国の世界戦略の目的を達するため
の鍵である」と述べられている。つまり、「駐留米軍の目的は米国の権益を擁
護するため」と正直にのべている。

 このような目的を持つ米軍の駐留のために日本は、毎年その駐留費の75%以
上にあたる57億ドルをも負担している。

 これが戦力の不保持、交戦力の否認を宣言した憲法第9条に反することは明
らかである。

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「思いやり予算」違憲訴訟・東京 事務局
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