Date: Mon, 17 May 1999 16:29:02 +0900
From: 加賀谷いそみ  <QZF01055@nifty.ne.jp>
Subject: [keystone 1458] 地方分権推一括法案質疑13日
To: aml@jca.apc.org, keystone@jca.ax.apc.org
MIME-Version: 1.0
Sender: owner-keystone@jca.ax.apc.org
X-Sequence: keystone 1458
Precedence: bulk
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

5月12、14日各紙報道に若干補足

 地方分権推一括法案が13日、衆院本会議で趣旨説明と質疑が行わた。政府は、国と
地方の関係を「対等・協力」に変えるための法案であると強調したが、野党は「法定受
託事務(約250件)は国の関与を正当化し強化するもの」と批判。同法案は、18日
に趣旨説明が予定される中央省庁改革基本法案とともに行政改革特別委員会に付託され
る。

 同法案は「機関委任事務」の廃止(地方の事務を「自治事務」と「法定受託事務」に
区分し、国と地方公共団体の役割を明確化。国の強調する関与の削減の根拠。政府は省
庁再編のスリム化にもつなげたい考えも示す。しかし財源の確保、国の関与のしかたな
ど不明瞭でその保障は希薄と批判がある。また、自治事務に関して条例制定権はあるも
のの「法令に反しない限り可」)を中心にした地方自治法改正案をはじめ、計475本
の改正案からなるもの。1700ともいわれる国内法の3〜4分の1。

 昨年5月に閣議決定した第一次地方分権推進計画を法制化するもので、地方分権推進
委員会(95年5月地方分権推進法の成立に基づき同年7月発足)の1〜4次の勧告を
うけたもの。宮内庁と科技庁を除くほとんどの省庁が関係する。

 法案は「広辞苑二冊分に相当する」膨大な量。(この中に「米軍用地特措法」再改悪
案をもぐりこませて、3月29日に国会上程。概要によれば駐留軍用地特措法における
土地調書等への署名押印の代行等の事務、駐留軍等労務者の労務管理実施事務等は国の
直接執行事務。地方分権の趣旨に逆行する措置のひとつ)

 審議入りについては、11日の議運理事会で、自民は中央省庁改革関連法案と地方分
権一括法案の審議入りをめぐり、13日の衆院本会議で両法案の趣旨説明を行い、衆院
行政改革特別委員会に付託することを要請。これに対して民主、社民、共産が反対して
12日の理事会で、13日に地方分権一括法案、18日に中央省庁改革基本法案の説明
をおこなうことにした。また、自民、自由、公明は両法案を特別委員会での一括審議を
主張したのに対し、民主、社民、共産が「地方分権法案については新たに特別委員会を
設置して審議すべき」として調整がつかず、中川秀直衆院議運委員長が採決を下し、両
法案の委員会付託が決まった。民主がこれに対し「両法案を分けて趣旨説明をすること
は、委員会でも別々に審議すると言うことだ」(赤松広隆議運委理事)とするなど、今
後審議が難航することも予想される。

 自民、自由、公明3党は、13日国会内で開かれた幹事長会談で今国会中に成立させ
ることで合意。来年4月からの施行をめざす。
          
 

13日の、衆院本会議での社民党の畠山健次郎氏の質疑応答の概要
       (未定稿資料より。文責<加賀谷いそみ>)
畠山氏は「逃げの一手の答弁で中身は何もなかった。今後の委員会審議の場で議論を深
め、法案の修正を求めていく」(『秋田さきがけ』4月14日)

 ○総理は、本法案をもってして地方分権は終わりと考えているのか、それとも始まり
の始まりと考えているのか。

総理:地方分権は今や実行の段階。まずは本法案を今国会でぜひ成立させたい。

 ○今回の法律制定が地方分権の一里塚であるとするならば、今法律の意義と今後の改
革課題を改正地方自治法に前文としてうたい、それを担保する立場から同法附則に改革
期間を明示する必要があるのではないか。

野田毅氏:今や広く共通の認識が得られている。

 ○これに関連して、来年をもって制度的に任務が終わる地方分権推進委員会の今後の
扱いについて。今回の改正に伴う地方分権の進行状況の監視はもとより、法定受託事務
の一層の自治事務化、手つかずの権限移譲と、それを保障する税財源の移譲、そして住
民自治の豊富化について、順次、指針、勧告を求めることが必要と考えがどうか。

総理:地方分権推進法の期限切れの時点での状況を踏まえ判断。
   
 ○改正地方自治法の一条において、中央政府と自治体の政府間関係における役割分担
を明示しているが、基本的事項と自治体の組織及び運営に関する事項を地方自治法のみ
で規定するのは適切ではない。地方自治基本法を制定することが、今後の地方分権に不
可欠。野田氏:地方自治法の内容を充実することが、地方公共団体における民主的にし
て能率的な行政の確保、地方自治体の健全な発達を真に保障する。

<法律案の基本的問題>

 ○国地方係争処理委員会を総務省に設置するのは、同委員会の独立性並びに審査、勧
告に対する自治体の信頼性がきわめて希薄。少なくとも内閣府におくべき。国家行政組
織法上も三条委員会とすべき。

野田氏:委員の任命は、両議院の同意を必要とするなどの規定を設けているので、中立
性、公平性、独立性は十分保障される。

太田誠一氏:今回の審議会の整理合理化方針に添い、最もふさわしい省府におくことと
して、地方自治制度を担う総務省に置いた。独立性については懸念にあたらない。地方
分権推進委員の提言を踏まえて、中立、公平の確保を前提に審議会、いわゆる八条機関
(国家行政組織法第八条に基づく機関)とした。
 
(地方事務官問題)
 ○これまで機関委任事務としてきた社会保険並びに職業安定事務について、何ゆえに
中央政府の直接執行事務とするのか。結果としてこれらの業務の円滑な実施を阻害しか
ねない。
総理:地方事務官は現在でも国家公務員で員数は増加しない。

宮下創平氏:社会保険事業は、社会保険の根幹である国民皆保険、国民皆年金を確保す
るため、国の責任で実施しているもの。これに従事する地方事務官は現行制度でも国家
公務員であり、給与・経費は国が全額負担、事務所も国有財産。国が保険者として経営
責任を負い、財政収支の均衡確保のために不断の経営努力が不可欠であり、全国規模の
事業体として効率的な事業運営を確保するために一体的な事務処理による運営が要請さ
れていることを踏まえ、地方事務官が従事する社会保険関係事務は国の直接執行事務と
し、地方事務官は厚生事務官とされている。

 (自治事務と法定受託事務)
 ○法定受託事務に「国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」との
文言が加えられ、自治体の処理する事務の性格は極めて希薄になった。中央政府の広範
な関与を確保する必要があったためではないか。

総理:地方公共団体の自治事務に対する関与は必要最小限度で、地方分権の趣旨を実現
するもの。

野田氏:法定受託事務が、その適正な処理を確保することに国として相対的に高い責任
と関心を有する事務であることをより明確にしたもの。実質的な内容の変更は伴わない
ので、国の関与のあり方が変わるものではない。

 (自治事務と法定受託事務の区分の関係)
 ○自治事務に対し、中央政府は是正の要求及び是正の指示ができることとされており
、さらに代執行も可能となるような規定さえ設けられている。是正の要求と是正の指示
とは、その効力において違いがあるのか。自治事務と法定受託事務との違いはどこにあ
るか疑わしい。自治事務にこのような関与が許されるなら、中央政府の自治体に関する
法的拘束力は強いものとなる。これは、事実上の有事立法の先取りにも等しく、地方分
権とは似ても非なるもの。

総理:周辺事態安全確保法案に基づく地方公共団体の協力との関係は、仮に、自治事務
について地方団体の長の対応がその権限について定めた個別の法令に違反するような場
合、地方自治法に基づく措置をとることも法律論としては考えられるが、地方団体の長
は協力の求めに応じて権限を適切に行使していただけるものと考える。

野田氏:ともに関与を受けた地方自治体が是正、改善すべき法的義務負う点では共通。
是正の指示は具体的な措置の内容まで及び、それに従う義務が発生するのに対し、要求
は地方公共団体の裁量にゆだねられる。法定受託事務は、許認可や指示などが相対的に
広く認められ、最終的には代執行を行うことができるとされているなど、関与のあり方
について、自治事務と大きく異なる。
 

 ○議員定数の上限を設けたことは、地方分権に対するあしき挑戦。定数は本来住民が
決めること。

総理:議員定数に関する歴史的経緯や地方行政を取り巻く状況を勘案して設けることと
した。

野田氏:地方公共団体の自己決定権を拡大する観点から条例をもって定数を定めること
にしたもの。



 
  • 1998年     3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 1999年     1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

  • キーストーンメーリングリスト 目次