[TO: aml, keystone]
一九九九年一月、ジョンソン海軍参謀総長*が上院軍事委員会で証言を行なっ
ています。総長は証言当日現在で、空母カール・ヴィンソン部隊、同エンター
プライズ部隊、強襲揚陸艦ベロー・ウッド部隊、同ナッソー部隊などがアラビ
ア湾岸や地中海に出動中であると紹介した後に、次のように述べています。
「加えて、日本の横須賀を母港とするキティ・ホークは、西太平洋において
継続的前進プレゼンスを維持している。前進プレゼンスは、あり得る侵略者に、
暴力行為を始めることの結果について考え直すことを強く迫るものであるから、
紛争を防止する最も効果的な手段である。目に見える形での海軍力と、いかな
る事件にも海から----ホスト国の同意を得るよう要求されることなく----迅速
に対応する明白な能力は、海軍をして二一世紀の不確実性と挑戦の背景に対抗
せしめる。」
カール・ヴィンソンその他の部隊については「母港」の言及はなく、単に部
隊名を並べているだけですが、空母キティ・ホークについては海外基地を母港
としている米海軍唯一の大型攻撃空母であること、しかし完全に行動の自由を
持っていることを強調しているわけです。ベローウッドも佐世保を母港とする
大型艦ですが、外国を定係港として「ホスト国」を持つのはこの二つの部隊で
あるので、「ホスト国の同意を得るよう要求されることなく」は、当然日本を
指していることになります。
日米安保体制における「事前協議」制度が有名無実なものであることは周知
の事実であるとしても、この米海軍参謀総長のアメリカ議会での公式発言は安
保体制史の年表に一行を加えるものでありましょう。
以前に触れた通り、四月には、ユーゴスラビア情勢の変化にともなって、ペ
ルシャ湾に前進派遣されていたエンタープライズ部隊と交替する予定の空母シ
オドア・ローズベルト部隊が地中海へ向かったため、エンタープライズ隊の交
替部隊として、キティ・ホーク部隊が演習に出ていたグアムから「西太平洋の
プレゼンス」を離れて湾岸ローテーションに「出撃」しました。イラクにおい
ては米軍の設定した飛行禁止空域をめぐる空対空の攻撃や、レーダー・サイト
などの地上空爆が断続的に行なわれており、キティ・ホーク部隊の出撃は単な
るパトロールなどというものではない、戦闘作戦行動です。
* 「海軍作戦部長」と訳されることが多いのですが、陸・空軍参謀総長と
同じ役目ですから表記の訳語にしてあります(梅林さんは海軍作戦総長
としています)。
原文のタイトルと所在は
Chief of Naval Operations Testimony to the Senate Armed Services
Committee,
Admiral Jay L. Johnson, Chief of Naval Operations, U.S Navy,
Washington,
D.C., January 5, 1999.
<http://www.defenselink.mil/speeches/1999/t19990105-johnson.html>
『軍事研究』六月号に、森豹太「ユーゴ空爆、在日米戦力にも影響--横須賀
の空母キティ湾岸へ」という記事があります。
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島川雅史 mshmkw@tama.or.jp
mshmkw@jca.apc.org
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