Date: Tue, 27 Apr 1999 21:43:18 +0900
From: 加賀谷いそみ  <QZF01055@nifty.ne.jp>
Subject: [keystone 1384] 国家の暴力
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 「新ガイドライン法案」からいつのまにか「新」が消え、26日をさかいに「周辺事
態法案」は「周辺事態安全確保法案」と報道が変わりました。
 「新しい日米防衛協力のための指針」関連法案の「修正協議」のパフォ−マンスも選
挙が終わるまでとは知りつつも、あまりのぶざまななりゆきに、しばし失語状態でした
。国会へかけつけるなど連日廃案を訴えているみなさまに恥ずかしいです。

 そんな私に衝撃をあたえたのが、25日、娯楽番組の間に流れた「船舶検査」削除で
最終合意、法案採決というラジオニュ−スでした。これには身が凍りました。政令で自
衛隊を軍隊に簡単につくりかえることもできることだからです。
 このままではこれから私たちの人権と主権はすさまじい勢いで失われていくであろう
ことを痛感させられた日でした。

 ちなみに、東北でも今年度、即応予備自衛官の募集があり、秋田県では116人が採
用されました。訓練は宮城県多賀城駐屯地で行い、宮城県第6師団では、即応予備自衛
官の中の60人を戦車部隊に配置し訓練を行います。
 現在2000人ほどの即応予備自衛官を将来は1万5千人体制にするとのこと。彼ら
は使い捨て部隊として最前線に配属されます。

 4月6日、私の手元に小さな新聞記事が届きました。
 それは同日「朝日」のもので、「新しい日米防衛協力のための指針」関連法案に反対
する日本山妙法寺の僧侶らが、国会の議員面会所での集会に参加しようとしたところ、
信徒があいさつ代わりの使う「南無妙法蓮華経」を三回唱えたら示威行為(デモ)にあ
たるから排除すると、警視らから告げられた(脅された)というものでした。
 僧侶らは行き過ぎであるとして是正を求めましたが、警視側は規制の法的根拠も示さ
ないまま「排除する」を繰り返し、衆議院警務部の仁田山良雄警務部長は「議員面会所
では放歌高吟や他人の迷惑になること、示威行為は規則で禁じられている。今後ともそ
ういうことはやらないでほしいということだ」と話したとのことでした。

 最初は国会の場で何が起こったかよくわかりませんでした。警視が無茶なことを言う
とは思いましたが、なぜこれがデモなのか、どうしてデモがだめなのかも。 
 その後すぐ抗議をしようというよびかけがきてやっと事態が飲み込めました。そして
、僧侶が「お題目」を唱えるのは宗教者として当然のことであり、憲法20条が保障す
る「信教の自由」に基づいている、それを「国権の最高機関」である国会の警視の長が
憲法の規定を理解していないのは許されないから即刻辞任せよとう抗議電報を連名で打
ちました。

 僧侶のみなさんは、その後も議員面会所で「お題目」を唱えているということですが
、この思想信条の自由と信教の自由の弾圧は、同法案の性質をよく表しています。そし
て今後、私たちの身やまわりに起こるであろう人権侵害を予測させる「事件」でした。
 
 田舎にいると、国会で起こっている市民と政府の間の緊張感があまり伝わってきませ
んが、主権者たる全国民を代表する選挙された議員で構成されている組織であるはずの
国会がその主権者たちを強権で締め出そうとやっきになっている様子が垣間見えました
。 
 

 25日と26日の深夜にまたがってしまいましたが下記を議員に送信
−−−−−−−−−−−−−−−−
 国会議員のみなさま
 政府は4月はじめ、小渕首相が訪米する前に「新しい日米防衛協力のための指針(ガ
イドライン)」関連法案を衆院で可決し、5月には参院で審議するとアメリカと約束し
たと言われ、そのシナリオを元に強引に周辺事態法案を成立させようとしています。
 国会では、衆院ガイドライン特別委員会で、未だ同法案の修正協議さえも見通しがな
いうちに、26日に「採決」すると公言しました。

 これは、国会の基盤である議会制民主主義を崩壊させると政府が表明したことを意味
します。
 過去に議会制民主主義の死滅が、何をもたらしたかは、日本の侵略戦争で記憶に新し
いところです。日本人をふくむ多くのアジアの人々や参戦国の人々を虐待と飢餓に追込
み、犬死にさせました。そしてその人権の回復すら未だにできません。政府は再びこの
道をすすもうというのでしょうか。

 政府が自治体や民間が危惧している「周辺事態の民間協力例」11項目の要旨を衆院
ガイドライン特別委員会の理事会に提出したのは、23日の午前です。その内容はなお
あいまいなまま、これについてなんら確かめ審議する時間もなく、同日には法案を可決
する意思を示した姿勢ひとつとっても、同法案の成立ありきで、国会軽視をありありと
示しています。

 また、ガイドライン関連法案が、朝鮮半島の停戦を再び戦時に持ち込み、アジア市民
を戦禍に巻き込もうとする魂胆を含んでいることも最近明白になりました。
 3月24日のいわゆる「不審船」事件で自衛隊が武力行使し、「不審船を航空識別圏
外に逃走」させたことで、野呂田防衛庁長官は、「北朝鮮側からミグ戦闘機が飛来して
くるのが認められた。そのまま続けていれば戦いになる恐れもあった」と述べました。

 政府は、戦争になる恐れのある「威嚇射撃」を自衛隊員に強いたのです。日本政府が
今までは「不審船」に海上保安庁の「海上警備行動」で対応していたのを、自衛隊によ
る戦闘行動に変えたのは、同法案を制定されるものとみなしての違法行為であり、同法
案で日本が戦争ができる国になってしまうと、世界市民を驚愕させるに十分な事変でし
た。

このように同法案の修正協議がどのようになされ合意されようと、法案そのものが平和
憲法に違反している「戦争法案」であることはすでに国民や自治体の間でも明らかにな
り、憲法学者や有識者の多くが指摘し、市民が法案に反対しその破棄を連日訴えていま
す。

 安保条約自体が平和憲法と相容れない性格のものです。その関連法案は「日本国の平
和と安全」は守るとしていますが、日本をふくむアジアの人々の生命と財産をまもるも
のではありません。むしろアジア各国の軍拡を助長して平和の礎を砕き、軍事的国際協
調の名で事変を繰り返し、戦争へと巻き込まれていった歴史をくりかえす下地をつくり
ます。
 世界の市民が望んでいる平和は、軍事大国の抑圧による「平和」維持ではなく、非武
装の平和外交と対話による地球に生きるすべての平和的生存です。
  世界の紛争が武力介入では解決せず、むしろ市民を恐怖させ環境を破壊しているこ
とを、先の大戦後の多くの地域紛争への大国の軍事介入から学んだからです。

 今武力によらない平和への貢献を世界の市民が日本に期待しています。
 それは世界で日本が唯一、憲法で「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を
誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を
解決する手段としては、永久にこれを放棄」しているからです。

 「平和を維持し、専制と隷属、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる
国際社会において、名誉ある地位を占め」るためにも、国会での審議は、アメリカとの
約束でしかない日米安保条約に基づくのではなく、世界のすべての国々との約束である
日本国憲法に基づいたものであってほしいと願い要請します。

 私たちは、「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する
権利」を有し、その基本的人権は、「侵すことのできない永久の権利」です。
 憲法でも保障されている基本的人権と主権において、今国会で、私たちの平和で安心
して暮らす権利を奪うガイドライン関連法案の破棄を改めてつよく求めます。
 
 1999年4月25日

                  秋田県男鹿市
                    加賀谷 いそみ



 
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