[転載無用]
(from 『オルタナティブ運動情報メーリングリスト』 改行位置等若干変更)
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Date: Wed, 21 Apr 1999 12:37:33 +0900
From: 山崎 久隆 <SDI00872@nifty.ne.jp>
Subject: [aml 11905] ユーゴ空爆で NATO軍ウラン弾使用
記事情報を転載できる形にリライトしました。こちらは転載可です。
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毎日新聞が報じるところでは、ユーゴスラビア空爆で米軍のA10サンダーボ
ルト攻撃機とF15戦闘機が劣化ウラン弾を使用しているとのことです。イタリ
ア空軍准将のNATOのジュゼペ・マラニ軍事報道官が毎日新聞の取材に応えて
認めたとのこと。
ついに恐れていたことが現実のものとなったようです。NATO軍、直接には
アメリカ軍のA10サンダーボルト攻撃機により劣化ウラン弾が使われました。
以後ユーゴ空爆は「核による攻撃」ユーゴの地もまた「核の戦場」になったわけ
です。しかも今度はリアルタイムで核が使われる戦争を私たちは目前にするとい
う事態になりました。
毎日新聞がおそらく注目し、警戒していたからつかんだ情報だと思われます。
他紙、他のメディアからはまだ何の報道もありません。毎日新聞記事を以下に引
用します。メディアとしての毎日の報道姿勢も論点としたいので全文を引用しま
す。
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| 2 04/21 02:00 毎: <特報・コソボ紛争>米軍機が劣化ウラン弾使用 NATO
認
|
|毎日新聞ニュース速報
|
| 【ブリュッセル20日森忠彦】北大西洋条約機構(NATO)のジュゼペ・
|マラニ軍事報道官(イタリア空軍准将)は20日、毎日新聞に対し、NATO
|の米軍機がユーゴスラビア連邦への空爆で「劣化ウラン弾」を使用しているこ
|とを認めた。実戦における劣化ウラン弾使用が公式に確認されたのは、湾岸戦
|争(1991年)以来初めて。報道官は「すべてのNATO軍機が使っている
|わけではなく、環境や人体への影響もない」としているが、湾岸戦争症候群と
|の関連が指摘されるなど、劣化ウラン弾の毒性が健康や環境に及ぼす影響が問
|題となっているだけに、論議を巻き起こすのは必至だ。
|
| マラニ報道官は取材に対し、劣化ウラン弾を使用しているのは米軍機だけで、
|他国の戦闘機は装備していないことを明らかにしたうえで、「対戦車攻撃は劣
|化ウラン弾がもっとも効果的」と語った。コソボ自治州に展開するユーゴ連邦
|軍の戦車部隊攻撃用に、米軍が投入したA10爆撃機やF15戦闘機から発射
|する30ミリ銃やガトリング砲などの砲弾に使っているという。
|
| 報道官はまた95年のボスニア内戦でも「戦車攻撃に大きな成果を挙げた」
|と証言、NATO軍が劣化ウラン弾をボスニアのセルビア人勢力攻撃に使用し
|たことも初めて認めた。
|
| 劣化ウラン弾は貫通力に優れた特性を生かし、戦車や装甲車の鋼板貫通用に
|開発された。NATOは現在、コソボ自治州内で連日数台のユーゴ軍の戦車を
|破壊したと発表しており、この攻撃で威力を発揮しているとみられる。
|
| 一方で劣化ウラン弾は貫通の際に瞬時に燃焼し、ミクロン単位のちりとなっ
|て空中に拡散。吸入した人体内や地上に堆積(たいせき)し、化学的毒性や放
|射性が人体や環境に悪影響を及ぼすことが、指摘されている。安全確認が十分
|でない兵器の大量使用は、国際的論議を呼びそうだ。
|
| ▽ユーゴ情報相も使用確認と指摘
|
| 【ベオグラード20日高橋龍介】ユーゴスラビア連邦のコムネニッチ情報相
|は毎日新聞に対し、NATOがユーゴ連邦に対し使用したミサイルなど爆発物
|の総量は広島に投下された原爆4発分に相当し、中には劣化ウラン弾、化学兵
|器も含まれていると断言した。
|
| 情報相は、劣化ウラン弾はボスニア・ヘルツェゴビナ内戦でもNATO軍に
|よって使用され、その後、機能障害を持った子供が増加するなど深刻な影響を
|残していると指摘。劣化ウラン弾が今月13日、ベオグラードの南約13キロ
|のラコビツァに対する空爆で使用されたことを確認したと語った。
|
| ▽劣化ウラン弾 核兵器に使用するため、天然ウランを濃縮処理する過程で
|派生する核廃棄物が劣化ウラン。米軍は湾岸戦争(1991年)で劣化ウラン
|を弾頭に使用し、貫通力を高めた特殊弾を、イラクの戦車部隊に大量使用、大
|きな成果を挙げた。しかし従軍兵士が帰国後、健康障害に陥り、劣化ウラン弾
|との関連が問題化した。日本でも在日米軍が95年12月から96年1月に沖
|縄・鳥島の演習で劣化ウラン弾1520発を誤射したことが判明。米国は通告
|遅れを謝罪し、在日米軍のすべての劣化ウラン弾を日本国外に撤去した。
|
|[1999-04-21-02:00]
|
|
| 4 04/21 02:00 毎: <特報・コソボ紛争>劣化ウラン弾使用 破壊力優先「軍の
倫
|
|毎日新聞ニュース速報
|
| 【ワシントン20日布施広】NATO軍が、ユーゴスラビア攻撃に劣化ウラ
|ン弾を使用しているとの証言は、空爆下で暮らす市民の健康と攻撃終結後の環
|境問題に大きな不安を投げ掛けた。米国内で劣化ウランの影響調査が続く中で
|の大量使用だとすれば、破壊力を優先する「軍の論理」が厳しく問われること
|になりそうだ。
|
| 劣化ウランはタングステンの1・6倍の比重を持ち、貫通能力が高いため、
|1991年の湾岸戦争で大量使用された。兵器としての性能に優れる半面、化
|学的毒性や放射性物質を含むため、人体への悪影響を指摘する声が強い。湾岸
|戦争後、元従軍兵士らが原因不明の身体不調を訴える「湾岸戦争症候群」が多
|発、米議会や国防総省が劣化ウランの影響調査を行ってきた。
|
| 国防総省は、劣化ウランの粒子を吸引するなどした元兵士の尿、肝機能検査
|などを基に、劣化ウランと健康障害の因果関係は立証できないとしているが、
|劣化ウランの破片が体内に入った患者の追跡調査を続けている。
|
| 米国のシンクタンク「軍事的毒物研究所」のレマール所長はユーゴ攻撃に関
|して発表した文書の中で、「NATOは集中的に劣化ウラン弾を使用している
|のではないか。イラクでは白血病などの多発が報告されている。我々は劣化ウ
|ラン弾と湾岸戦争症候群は関係があると信じる」と、一般住民の健康への悪影
|響や環境汚染を懸念している。
|
| 国防総省は劣化ウラン弾の安全確認が十分でないことを認めており、NAT
|Oの軍事報道官の発言は、安全性よりも破壊力を優先する軍の論理を改めて浮
|き彫りにした形だ。市民への誤爆続発でNATO軍の主力、米国への信頼が大
|きく揺らいでいる時期だけに、劣化ウラン弾使用は米国への反発を増幅させる
|ことになりかねない。
|
|
| ▽風当たり必至
|
| 【ウィーン20日町田幸彦】NATO軍が20日、ボスニア・ヘルツェゴビ
|ナ内戦における劣化ウラン弾の使用を認めたことで、劣化ウラン弾問題を無視
|する姿勢を貫いてきたNATO主体の平和安定化部隊(SFOR、ボスニア駐
|留)は、情報開示を求める動きに直面しそうだ。
|
| ユーゴ当局がまとめた報告書などによると、NATO軍は95年8月末から
|9月上旬までの間、ボスニアの「セルビア人共和国」領に空爆を実施した際、
|30ミリ口径劣化ウラン弾を使用。発射したのは米軍A10戦闘機と特定した。
|ユーゴの調査団はサラエボ近郊やボスニア北部数カ所で劣化ウラン弾が爆撃に
|使われたのを確認したが、具体的な規模、数量などは不明だ。
|
| 一方、SFOR報道官は97年12月、ボスニアでの劣化ウラン弾使用問題
|に言及し、「NATOはボスニア空爆で一度も劣化ウラン弾を使ったことがな
|い」と断言。「SFOR部隊は劣化ウランを考慮した健康上の予防措置を義務
|づけられていない」と強調した。
|
| ところが、米国の復員軍人局は96年4月、ボスニアからの帰還兵に対し、
|劣化ウランの影響を検査する「劣化ウラン・プロジェクト」を受けられると表
|明。ボスニアでの劣化ウラン弾使用を前提にした対応とみられ、SFORと著
|しい食い違いを見せていた。
|
| ボスニアでの劣化ウラン弾使用問題はSFOR、ボスニア政府双方から具体
|的な情報提供がない状況が続いており、ボスニアでも真相解明の動きが浮上す
|ることになろう。
|
|[1999-04-21-02:00]
劣化ウランについては、もうちょっと説明が必要でしょう。天然に存在する
ウランは約99.3%がウラン238、残りの0.7%がウラン235です。
核兵器にウランを使おうとするならば、実用的にはウラン235を93%以上
に濃縮しなければ核爆発を引き起こすことは困難です。濃縮すると、ウラン2
35の濃度が0.3%程度にまで減った「劣化ウラン」と93%にまで高まっ
た「濃縮ウラン」に分かれますが、圧倒的に多いのはこの劣化ウランのほうで
す。
核兵器開発過程で発生する劣化ウランだけでなく、原発で使う燃料もウラン
濃縮を行いますので、そちらからも大量の劣化ウランが発生します。原発の燃
料はウラン235の濃度が3〜4%程度のものを使いますが、それでも30ト
ンの濃縮ウランを作る過程で160トンもの劣化ウランが出てきます。
これらは全て使い道のない「核のゴミ」。強いて使えるとすれば高速増殖炉
のブランケット燃料体と呼ばれるプルトニウム増殖のために使われる燃料体で
すが、既に世界中の高速炉からブランケット燃料は全て外されています。なぜ
ならプルトニウム自体がもはや増殖どころか使い道のない核のゴミであるだけ
でなく、核兵器材料としても使えるという極めて厄介な代物となり、米露英仏
中いずれの国でも持て余しているのです。このあたりの詳論は脱原発会議室向
けなのでこのくらいにしておきますが。
さて、 核のゴミである劣化ウランにも「使い道」が見つかります。 それが
「軍事利用」ただし核物質であることがこの場合は利点ではなく欠点になりま
すが。
劣化ウランといえどもウランですので、物理的性質は天然ウランも劣化ウラ
ンも変わりはありません。比重の大きいウランは、銃砲弾に使えば強い貫通力
を持ち、装甲板に使えば防護力を有します。この場合着目しているのは金属ウ
ランとしての特性であって、放射性物質としての特性は単に無用な被曝を引き
起こすだけなのでじゃまなのですが、金属ウランの安さと加工のしやすさと高
い能力により、各国軍隊が使っています。
そのきっかけとなったのが湾岸戦争での米英軍の使用実績なのです。
本当に劣化ウランをユーゴ、コソボ空爆に使ったのか。もし本当に使ったの
であれば、NATOの大義名分(などはとっくに崩壊はしていますけれど)を
自らさらに粉砕する行為と言えるでしょう。
もともと軍事行動に歯止めをかけること自体、易しいことではありません。
軍は普通持てる力の全てを投入して敵を粉砕するために、戦略、戦術を練りま
す。それに歯止めをかけるのが文民の役目ということになるのですが、現実に
は往々にして文民のほうが軍に対して過剰な攻撃を要求することさえあります。
さらに、軍事的な知識や経験を文民の側が持っていなければ、軍をコントロ
ールすることなどできはしません。一般にリベラルと見られているアメリカ民
主党政権の時のほうが軍事冒険主義的政策を取りやすい傾向にあるのは偶然で
はありません。ケネディ・ジョンソン時代のベトナム戦争の泥沼化、カーター
政権下でのイラン大使館事件軍事介入の失敗、そしてクリントン政権下での湾
岸戦争後のイラク空爆の多発などなど。
現在のNATO主要国のほとんどが保守党政権ではなく労働党、社民党、緑
の党や共産党も入った政権であることと、今回の軍事行動のエスカレーション
は偶然ではないでしょう。保守党政権であれば、そのへんは各国民族主義や保
守主義層の根強い「縄張り意識」や「不干渉主義」などから、足並み揃えた軍
事行動は難しかったろうと思われます。特にフランスとイタリアが拒否すれば、
兵たんも補給も困難ですから、こんな空爆作戦を強行はできなかったはずです。
簡単いえば、軍事介入をシビリアンがコントロールをするということは、軍
に対して「座して死を待て」と命ずることもあることを覚悟させるということ
です。介入水準をいったん文民が決めて、それを超える事態が起きてしまった
とき、文民は不拡大方針を貫くためには自国の軍隊が増援も得られず撤退も困
難なまま十字砲火を浴びて壊滅することも受け入れろということです。その覚
悟がないのであれば文民統制で軍事介入などと言うべきではない。
劣化ウランを使う道筋ははじめからついていました。この兵器は現状では国
際法上禁止されているわけではありません。核兵器も禁止されているというわ
けではありませんが、国際司法裁判所により「限りなく違法に近い状態」とさ
れましたので、自衛目的以外では使うには国際的非難と訴追を覚悟せねばなら
ないわけです。
しかし劣化ウラン弾については、国連小委員会で非難決議があるとはいえ、
法的には制約を受けていません。そこで軍の論理としては「最強の武器を使っ
て何が悪い」となります。そしてこれについては統制もされていないのが現実
ですから、ユーゴ空爆で使われるおそれはずっとありました。そしてそれがと
うとう現実になってしまったと言うわけです。
今回の場合、 毎日はおそらくユーゴスラビア連邦のコムネニッチ情報相の
「劣化ウラン使用」情報を先に入手したのだろうと想像されます。それで、N
ATOに裏取りをしたところ、イタリアの准将である報道官がそれを認めたわ
けです。もし米軍に紹介していたとしたら、確認できないといわれたか、ある
いは確認を拒否されただろうと思われます。
イタリアは劣化ウラン弾については大問題になっていることをよくわかって
いなかったか、あるいは問題は無いという米軍の主張をそのまま受け入れただ
けだったのでしょう。そこで問い合わせがあったのでそのまま認めたのではな
いかと思います。
ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦の際に展開した平和安定化部隊の報道官は劣
化ウランの使用を否定しています。
ユーゴの情報だけだと、またユーゴのプロパガンダと思われるおそれがある
ので、NATOに確認を求めたところがあっさりと認めたというわけでしょう。
これまでの報道を見ていても、ユーゴ側の主張が正しかったことがいくつも
出てきています。最初の爆撃の際にF117ステルスを含めてNATO軍機を
撃墜したというユーゴの発表に、NATO側は全機帰還した。ユーゴの発表は
嘘と言いました。しかし現実にはステルス機が墜とされていた。それも最初N
ATOは撃墜ではないと言い張りますが、ユーゴは地対空ミサイルで撃墜した
と主張します。ユーゴの公表した撃墜機の映像には、明確に対空ミサイルか対
空砲によるとみられる弾痕が認められました。
立て続けに起きた誤爆事件についても、最初はユーゴが非難し、NATOが
否定し、結果的には誤爆だったと認めざるを得ない結果となっています。
現地に外国報道機関がいないため、メディアも現地の様子をNATOの報道
発表とユーゴの発表の間で真偽をつかみかねているようです。ただ、だんだん
ユーゴ側の主張をそのまま流す傾向が強まっているように感じます。ようやく
メディアもNATO側の発表を鵜呑みにできないと気付いてきたようです。
HISATAKA YAMASAKI
[SDI00872@nifty.ne.jp]
99 04 21
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Date: Wed, 21 Apr 1999 12:36:36 +0900
From: 山崎 久隆 <SDI00872@nifty.ne.jp>
Subject: [aml 11904] RE:ユーゴ空爆でNATO軍ウラン弾使用
共同通信も追いかけて記事を出しました。こちらは淡々としたものですが。
記事情報につき転載禁止
| 10 04/21 09:05 共: 対ユーゴ空爆で劣化ウラン弾使用 NATO当局者
|
|共同通信ニュース速報
|
| 【ブリュッセル21日共同】北大西洋条約機構(NATO)当局
|者は二十日、ユーゴスラビア空爆作戦で、ウランの廃棄物を弾芯(
|しん)に用いた劣化ウラン弾が使用されていると述べた。
| 劣化ウラン弾は貫通力と破壊力が高く、戦車などの装甲を破壊す
|るため砲弾の弾しんに用いられる。一九九一年の湾岸戦争で大量に
|使用されたほか、当局者によると、最近では、九四年のボスニア・
|ヘルツェゴビナ紛争での空爆の際に使われた。
| 同当局者は「劣化ウラン弾は土や岩など、自然界と同じ程度の最
|低含有量のウランしか含んでおらず、人体に害はない」と説明した
|。使用しているのは米軍機とみられる。
| しかし、ごくわずかながら核分裂物質を含むほか、重金属として
|の毒性も指摘されている。九一年の湾岸戦争後には、劣化ウランが
|原因とみられる兵士の健康被害が表面化した。
| また九七年には、在日米軍機が九五―九六年にかけ、沖縄県・鳥
|島の射爆撃場での訓練中、劣化ウラン弾を「誤射」したことが明ら
|かになり、政治問題化した。
|[1999-04-21-09:05]
HISATAKA YAMASAKI
[SDI00872@nifty.ne.jp]
99 04 21
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