このほどイタリアと米国の間で、低空飛行訓練(米軍の行うもの)について、
結果的に米軍の訓練をかなり制約する内容の合意が成立する模様です(勧告な
ので形式的には政府の了承が必要)。米国が言わば譲歩したのは、言うまでも
なくイタリアの基地をユーゴ空爆に安定的に使うために、ゴンドラケーブル切
断事件の被告無罪の判決に対するイタリア人の怒りを鎮めるためです。
この合意内容は
http://www.defenselink.mil/news/Apr1999/b04161999_bt175-99.html
に概要が載っています。以下の紹介もこのリリースによっています。この勧告
文の全文はちょっと探したのですが見つかりません。
しかし以下の概要を見ていただくだけでも、米軍低空飛行のパラダイス日本
に住む我々には、羨ましいというか、日本だって本気でアメリカと交渉すれば
これくらいと思うと残念であり、恐ろしくもあります。そう思ってこの報告を
編集している時に、普天間基地の米軍ヘリ墜落事故のニュースを聞きました。
まず以下の7項目の勧告を見てください。政治的な配慮からこれはこのまま
実施されるものと思います。
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低空飛行に関する米伊7項目の合意(正式には委員会の勧告)概要は以下の
とおり。これらは3月9日に任命された米伊の軍人からなる委員会によってま
とめられ、4月13日に両国政府に提出された。
(1)米軍の司令官(DUSA)がイタリアの空軍基地に任命され、米軍の飛行はこ
の司令官に許可を得て初めて実施される。DUSAは毎日イタリアの基地の
司令官にフライトプランを提出し、それがイタリアの安全基準に合致し
ているか承認を受ける。
(2)イタリアに駐留ないしは空母艦載機の米軍機のイタリア上空飛行は、
DUSAとイタリア基地司令の承認を得た場合にのみ可能。飛行回数はこれ
まで認められてきた25%を上限にする。
(3)米伊の軍事連絡調整官がイタリアの航空情報の流通を容易にするために
任命される。
(4)米軍の飛行安全担当官は、イタリアの飛行安全当局からブリーフィング
を受け、また定期的にイタリアの飛行安全中央局と会合を持つものとす
る。
(5)米軍機のイタリアでの飛行状況がリアルタイムで得られるように、イン
ターネットで情報を提供する。
(6)飛行の安全性に関して新たな問題が生じたときは、すべての手続きは再
検討に付される。
(7)この新たな合意は、現在進行中の95年の協定見直しの作業に取り入れ
られる。
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この報告書の基本的な前提(の一つ)は、「イタリア共和国が、領空、領土、
領海に主権を行使する」ということだそうです。当たり前のようですが日本人
にとっては驚きです。例えば空に関しては日本はいまだに主権を回復していま
せん。米軍のパイロットがその飛び方によって罰せられたことは一度もないし、
日本の航空法などの免除(特例)を受けているからです。
その主権の確認ということがはっきりしているのは、(1)や(2)でイタ
リアの承認を得ないと米軍は飛行できないわけで、日本などどこをいつ飛ぶの
か当局も全く知らない放任ぶりと比べてください。
(5)のサービスなどは航空マニアや反基地活動家には垂涎の措置ですが、
たぶん一般ではアクセスできないのでしょう。
最近ガイドラインの衆院特別委員会で、NATOの地位協定と日本のそれとを比
べると日本のは不平等ではないかという指摘がありました。4月13日、質問
者の伊藤議員は社民党。
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○伊藤(茂)委員 まず、日米地位協定のことで質問をさせていただきたいと
思います。
私は、日米地位協定の現状、それと新ガイドライン、重ねてみますと、非常
に懸念を感ずるわけであります。
まず第一に伺いたいんですが、よく言われますが、日米地位協定とNATO軍地
位協定、ボン補足協定との比較論というのがよくあるわけであります。比較を
いたしますと、非常に大きな格差があります。なぜ日本の場合とそれからドイ
ツの場合と違うのだろうかという疑問があるわけですが、その点をどう認識し
ておりますか。
○高村国務大臣 日米地位協定は、日米安保条約の目的達成のため我が国に駐
留する米軍の円滑な活動を確保するため、米軍の駐留に関するさまざまな側面
について詳細に規定したものでございます。
受け入れ国の同意により駐留する外国軍隊の構成員に対し一定の特別な法的
地位を認めることは、一般国際上の確立した原則となっておりまして、このよ
うな地位協定を締結した例は、米国とNATO諸国、韓国、豪州等の間にも見られ
ますが、その規定ぶりは、一般的に言って、日米地位協定と相当程度共通した
ものとなっております。日米地位協定とNATO地位協定やボン協定との比較につ
いては、おのおのの協定の実際の運用のあり方等も検討する必要があるので一
概に論ずることは困難でありますが、日米地位協定がこれらに比べて日本側に
とり不利であるとは考えておりません。
これらの事情を勘案すれば、現時点で日米地位協定の改定が必要であるとは
考えていないところでございます。○伊藤(茂)委員 外務大臣、それは違う
と思います。
時間がございませんから、二、三の例だけ申し上げますが、例えばボン補足
協定の関連で見ますと、例えば、軍事演習に関する規定がございます。地位協
定には具体的な明文規定がございません。ボン協定四十五条、地上演習、四十
六条、航空演習など、訓練につきましても詳細に規定をいたしております。低
空飛行問題でさまざま問題が起きておりますが、低空飛行に関する協定締結が
十六条の三にボン協定はございます。あるいは、被害を受けた土地の三カ月間
の不使用という項目もございます。(中略)
○竹内政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたのは、NATO地位協定、
ボン協定で改正されたりいたしておりますけれども、両者を比較いたしまして
一概にどちらが有利かということを論ずることにはなかなか困難な点があるだ
ろう、適当ではない点があろうということでございます。(中略)
それから、もう一つ例を申し上げますと、例えば、今先生挙げられました低
空飛行訓練に関する規制でございますけれども、確かに、日米地位協定には低
空飛行に関する規制そのものは、規定はございません。確かに、法令尊重義務
ということで日米地位協定では扱っているわけでございますがこれも御案内の
とおり、最近、低空飛行につきまして、日米の合同委員会で公表文書を取りま
とめました。
その中におきまして、日米間の申し合わせといたしまして、米軍が低空飛行
訓練を行います場合にも、国際民間航空や日本の航空法により規定された最低
高度基準、これは、人口密集地では三百メートル、その他の地域では百五十メ
ートルでございますけれども、こういった基準を用いているということで、米
軍としてもこれを適用しているということになっているわけでございます。
それに比しまして、ドイツにおきましては、五百フィート、すなわち百五十
メートル以上の飛行訓練は原則としてドイツの全土で訓練が可能であり、また、
特定の空域においては七十五メートル以上の訓練が可能であるというようなこ
ともあると承知しております。
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ここで防衛施設庁の役人が「飛行訓練に関する規制でございますけれども、
確かに、日米地位協定には低空飛行に関する規制そのものは、規定はございま
せん。」と認めているとおりです。法律を作るどころか、「日米間の申し合わ
せ」だけで米軍を縛る協定さえないという甘さ。
何しろ「参勤交代」の手土産に国民を米軍に売り渡す「周辺事態法」成立を
持参するという卑屈な国ですから、そもそも米軍に譲歩を要求することは無理
なのかもしれませんが、イタリアで可能なことは実は日本でも可能なのです。
考えてみれば現在の世界で外国の軍艦を母港にするということを認めている
「異常な」国はイタリアと日本だけ。そのイタリアでもやったことなのですか
ら。
これと関連する話しで、朝日新聞13日の記事に日米世論調査の結果が公表
されていました。一部引用すると。
>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
>在日米軍の役割は「日本の軍事大国化阻止」
> 朝日新聞社は21世紀の日米関係を考える連載「アメリカづきあい」に先
立ち、
>米国ハリス社と共同で、両国民の意識を探る世論調査を実施した。
>米軍の日本駐留の目的として、日本では「米国の世界戦略」をあげた人が38%
>と1番多かったのに対し、米国では「日本の軍事大国化を防ぐ」が49%とほぼ
>半数を占め、両国民の認識に大きなずれがあることを示した。
> 在日米軍の目的を「日本の軍事大国化阻止」と答えた人は、日本人の中にも19
>%いた。
何とアメリカ人の半数が、 在日米軍の目的は自衛隊を押さえる「瓶の蓋」
という認識。つまり在日米軍は「平和維持軍」というかNATOの地上軍みたいな
もの。自衛隊は残虐行為を働くミロシェビッチの軍隊と同列に見られていると
いうこと。怒れ自衛隊!報復の空爆でニューヨークをベオグラードと化せ!
と「裕次郎兄」知事なら言うかもしれませんが、よく読むと日本人も、5人に
一人は同意見。
つまり日本人は、自衛隊という軍隊に世界2位の出費を惜しまず、なおかつ
それを「押さえる」ために在日米軍(これは日本の悪事を監視する「傭兵」で
す)に圧倒的に世界最大のカンパをしている。なんという「自虐的」な国民か。
なぜ産経新聞は「思いやり予算」という自虐的支出を止めようというキャンペ
ーンをやらんのか?
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Masahiko Aoki
青木雅彦
btree@pop11.odn.ne.jp
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