島川です。
自衛隊は「国又は地方公共団体」の、「国」の機関ですから、「平時」に
自衛隊基地を作るために「手続き」を踏んで時間をかければ土地収用がで
きる、また「戦時」には、即時に(時間のかかる収用手続き等抜きに)土
地の「使用」ができる、ということでしょう。
後者は、「有事立法」必要論の場合に、敵が攻めてきても現行法では土地
所有者の許可がなければ塹壕も掘れないではないか法的に不備である、と
いうような言い方でよく持ち出される論点ですが、現行自衛隊法でも民有
地で塹壕を掘ったり戦争をしたりすることを想定しているわけですね。
関東一坪と丸山さんのメールを読んで思うのは、法律制定時の「立法趣旨」
なるものがいかに意味がないかということですね。そもそも、現在の日本
の基本法である憲法の9条自体がそうのわけです。
「憲法制定国会」で、当時の吉田首相や担当の金森国務大臣は、憲法9条
は「自衛権」をも否定・放棄したものである、と明確に述べています。
吉田首相の野坂議員への答弁:
>戦争放棄に関する憲法草案の条項に於きまして、国家正当防衛権に依る
>戦争は正当なりとせらるようであるが、私は斯くの如きことを認むるこ
>とが有害であると思うのであります。近年の戦争は多くは国家正当防衛
>権の名に於いて行われたることは顕著なる事実であります。故に正当防
>衛権を認むることが偶々戦争を誘発する所以であると思うのであります。
しかし、朝鮮戦争が始まり、再軍備の「逆コース」が開始されると、当の
吉田茂その人が全く反対のこと、憲法9条は自衛権を禁止したものではな
いと言い出して、ここから「解釈改憲」の歴史が始まるわけです。
国家の基本法がこの通りですから、日本の法治国家としての態勢、政治文
化はその立ちあがりのところからすでに危機にあるわけです。憲法が前文
で言う通り「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうに
する」努力がなければ、この憲法の趣旨は蹂躙されるばかりでしょう。
戦後50年、「解釈改憲・既成事実改憲」の波は、読売新聞*などによって
成文法そのものの改定が主張され、国会でも改定を目指す勢力が行動する
ところにまで来ています。憲法9条が厳存している今でさえ「ガイドライ
ン安保」の現状ですから、これが撤廃されれば小沢一郎流の「普通の国」
へ一直線でしょう。
*読売改憲案については、当時<市民の意見30の会・東京>の機関誌に短い
文章を書いたことがあり、たまたま<電子化>してあったので、市民の意見
30の会・東京のWebに収録されています。
<http://www.jca.ax.apc.org/iken30/News2/Yomiuri.html>
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島川雅史 mshmkw@tama.or.jp
mshmkw@jca.apc.org
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