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Date: Tue, 30 Mar 1999 05:38:07 +0900
To: keystone@jca.ax.apc.org
From: "M.Shimakawa" <mshmkw@tama.or.jp>
Subject: [keystone 1249] from DAISAN > 立法院議事堂保存運動 1994 (2)
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*#588 国際パソ通ネットワーク
★タイトル (QXH11714)  94/ 8/22  13:34  (185)
GB1612-2/3)立法院保存再生・住民訴訟 まきし
★内容
二  「中性化」について

1  中性化深さの測定値の誤り
    高次の診断では、最初に、「中性化」の調査がなされている。「中性
    化」とは、次のようなことをいう。  新しいコンクリートは強アルカリ性
   で、中に入れた鉄筋が錆びるのを防ぐ性質を有しているが、鉄筋コンクリ
   ート構造が大気中におかれていると、大気中の二酸化炭素が少しずつコン
   クリート中に浸透し、コンクリートの表面から徐々に炭酸化されてアルカ
   リ性が低下していき、この現象を「中性化」と呼んでいる(しかし、鉄が
   錆びるという化学反応を起こすためには、水分と酸素が存在することが前
   提条件である。鉄筋の位置までコンクリートの中性化が進行したとしても、
   コンクリート表面に水分と空気とを遮断する皮膜を作ることで、錆の進行
   は止められる。)。
    本件調査報告書の作成にあたっては、柱、梁、スラブについて各二か所、
   合計六か所についてコアを採取して中性化深さを測定し、さらに柱、梁の
   損傷部位一〇か所について部分的にコンクリートをはつって中性化深さを
   測定している。
     そして、コアを採取して測定した中性化の深さについて、本件調査報告
   書九頁の表ー8では、1(柱)の中性化深さは一四・九四mm、2(
   柱)の中性化深さは一五・五三mmとなっているが、表ー9では、右数値に
   それぞれモルタル厚を加え、1(柱)の中性化深さは三一mm、2(
   柱)の中性化深さは三三mmとされている。しかし、「中性化深さ」とは、
   「コンクリートの表面部分から未中性化域までの距離」をいうものである
   から、モルタル厚を加えて中性化深さの測定値としているのは、明白な誤
   りであり、1(柱)の中性化深さの測定値は一四・九四mm、2(柱)
   の中性化深さは一五・五三mmである。
     そして、中性化深さの測定値を誤った結果、「測定値による区分」及び
   「劣化度による区分」について誤った結果がもたらされている。すなわち、
   本件調査報告書では、1(柱)及び2(柱)のいずれも、「測定値に
   よる区分」はA2、「劣化度による区分」は~(中度)となっているが、
   正しい中性化深さの測定値によれば、1(柱)及び2(柱)のいずれ
   も、「測定値による区分」はA1、「劣化度による区分」は}(軽度)と
   なる。
    以上のとおり、モルタル厚を加えた中性化深さの測定値を出すという初
   歩的な誤りをおかしたことによって、中性化の劣化度の判断を全く誤って
   いるのである。

2 主要部位に対する中性化調査についての評価の欠落
    立法院議事堂の主要部位(柱、梁、スラブ)から採取したコアの中性化
   深さについて、本件調査報告書の九頁の表ー9に示されているが、そこに
   示された数値の評価が全く欠落している。
    右数値に対する評価は以下のとおりである。本件調査報告書の九頁の表
   ー9によれば、コンクリートの中性化が鉄筋表面まで達している部位は認
   められない。すなわち、中性化寿命説による寿命には達していない。

3  調査点数の不足。
    なお、本件中性化の調査は、調査点数の不足により、そもそも客観的判
   断をなしうる前提を欠いているものである。
    中性化の進行は、コンクリートの品質、環境条件によって異なるもので
   あるから、中性化の調査にあたっては、相当数の調査点数が必要であり、
   部材や仕上げの条件の組み合わせ、例えば、柱ではタイルなどの仕上げの
   ある場所とない場所のそれぞれ条件別に調査されなければならず、また、
   建物劣化診断の標準的テキストによれば、調査点数は、条件別に3点以上
   が望ましいとされている(建物の劣化診断と補修・改修工法・建設省建築
   研究所監修・建築技術一九九一年四月増刊号・四八頁)。しかるに、本件
   では、コアを採取しての調査は柱、梁、スラブにつき各二点づつ、合計六
   点の調査点数しかなく、客観的判断を可能にするだけの調査点数が確保さ
   れていない。

三  「鉄筋腐食」について

    本件調査報告書には、鉄筋腐食グレードの誤認がある。
   本件調査報告書では、ほとんどをグレード(中度)とし(本件調査報告
   書一二頁)、「断面欠損は目視観察では認められないが、鉄筋の全周また
   は全長にわたって浮き錆が生じている。」(本件調査報告書一六頁)として
   いる。
   しかし、原告らの調査によれば、立法院議事堂の鉄筋腐食グレードは、梁
   の曲げひび割れ箇所を含め、鉄筋の錆は、黒皮の状態グレードI(健全)か、
   ~(軽度)「部分的に浮き錆があるが、小面積の斑点状である。」であった。

四 「ひびわれ」について

    この項目では、コンクリートのひびわれが取り上げられている。コンクリ
   ートは乾燥等によって収縮する時にひびわれが生じ、また、外気温の変化に
   伴う伸び縮みによってひびわれが生じる。また、コンクリートは引張力を受
   けてもひびわれる。これらひびわれは、当然に予測されるところであり、設
   計の際にも考慮すみのことであるので、構造物の安全性に影響はない。しか
   し、鉄筋の腐食によるひび割れ等、予測されないひび割れは、コンクリート
   構造物に有害なものとして、対処の必要が生じる。従って、コンクリートの
   ひびわれの原因を正確に把握することは、コンクリートの耐久性を考える上
   で重要である。
     調査報告書では、梁のひびわれについて「鉛直方向のひびわれはスター
   ラップに沿って発生している。その幅は〇・二mmから〇・四mmである。」と
   ひびわれの状況について記述され、右ひびわれの原因については、何らの根
   拠も示さないまま、鉄筋の腐食によるものであると断定している(本件調査
   報告書一二頁)。しかし、このひびわれの原因の把握は、極めて初歩的かつ
   重大な誤りである。
    鉄筋の腐食によるひびわれの場合は、腐食で鉄筋が膨張して生じるので、
   ひび割れの形状は鉄筋の外側のコンクリートを剥がす形になる。又、鉄筋の
   腐食によるひびわれは、錆びた鉄筋のまわりに発生するのであり、梁の中央
   部のスターラップに沿って発生するという規則性はなく、外見からは不規則
   に見えるものである。しかるに、本件調査報告書の資料の図ー9ないし図ー
   13によれば、立法院議事堂の梁のひびわれは、いずれも中央部のみに、ス
   ターラップに沿って発生するという規則性を示しており、鉄筋の腐食による
   ものではないことは明らかである。
    立法院議事堂の梁に生じたひびわれは「曲げひび割れ」である。コンクリ
   ートは圧縮には強いが、引張に抵抗する強さは圧縮の一割程度である。従っ
   て、橋桁や梁などのように重さによって曲げる力が働くと、引っ張られる下
   側にひび割れが発生するものであり(それらのひび割れを、無害な範囲にと
   どめ、引張に抵抗させるために鉄筋をいれる。それが鉄筋コンクリート構造
   物である。)、このような普通に発生する梁の中央部付近のひびわれを「曲
   げひび割れ」という。「曲げひび割れ」は梁の中央部付近の下から上に向か
   い、梁に等間隔に入れたスターラップ(肋筋)に沿って発生する。これも、
   鉄筋コンクリート構造の教科書(建築材料用教材・日本建築学会、等)に記
   されている基礎的な現象である。新築直後の建物でも、注意深く観察すれば、
   柱間隔一〇m程の梁には「曲げひび割れ」が観察されるものであり、ひびわ
   れ幅が大きくなければ有害というものではない。「曲げひび割れ」は、設計
   の際に考慮ずみの事象であり、特に問題となるものではない。
    以上のとおり、梁部分に認められたひびわれは、耐久性に悪影響のない
   「曲げひび割れ」であるのに、本件調査報告書では、コンクリートの劣化を
   加速する鉄筋の腐食によるひびわれと誤認するという初歩的かつ重大な誤り
   をおかしている。

五  「塩分分析」について

    この項目では、塩分含有量が取り上げられている。コンクリートそのもの
   にとっては、塩分の存在はほとんど問題とならないが、塩分がコンクリート
   中の鉄筋の腐食の促進させる作用を持つため、鉄筋コンクリート構造物にと
   って塩分は有害である。そして、塩分による腐食が認められれば、これに対
   する対処が必要となる。
    本件調査報告書では、(財)沖縄県建設技術センターの調査結果(本件調
   査報告書の資料の二二から二九頁)をもとにして、「コンクリートの塩化物
   含有量(コンクリート一立メートル当り・以下同じ)は、〇.一六〜一.八
   八キログラムでその中には現行の総量規制値〇.三キログラムをはるかに超
   えた値が見られた。最も多い塩化物量はスラブに認められ、その平均値は一.
   二六キログラムを現し、コンクリート中の鉄筋の塩化物腐食が懸念される。」
   (本件調査報告書一五頁)と評価を記述しているが、右評価は、塩分含
   有量について、一部数値のみをことさらに強調し、分析的な評価を意図的に
   怠ることによって、立法院議事堂の耐久性について誤った評価をしているも
   のである。
   (財)沖縄県建設技術センターの調査結果(本件調査報告書の資料の二二
   から二九頁)に基づいて正確な評価をすれば、以下のとおりとなる。先ず、
   建物の主要部位についてみると、コンクリートの塩分含有量(コンクリート
   一立方メートル当り・以下同じ)は、柱が〇.二から〇.三八キログラム、
   梁は〇.一六から〇.二四キログラムであって、塩分含有量は少なく、主要
   部材である柱、梁には鉄筋の塩化物腐食の懸念はないと推定される。次に、
   スラブについていうと、(財)沖縄県建設技術センターの調査結果(本件調
   査報告書の資料の二二から二九頁)によれば、現在防水されている屋根スラ
   ブでは、塩分含有量は、一ヶ所は〇.二三から〇.六キログラムで、他の点
   は、〇.二四から一.一四キログラムとなっている。このように、柱、梁と
   比して、スラブの塩分含有量が多くなっている理由について、本件調査報告
   書では「スラブ打設時に除塩が不十分のままの細骨材を使用したため、初期
   に多量の塩分が混入されている。」(本件調査報告書一三頁)と断定してい
   るが、このように断定する根拠はない。コンクリート打設は、通常は梁とス
   ラブを同時に行うので、梁とスラブは同じ材料が用いられるのである。従っ
   て、梁とスラブの塩分含有量に差異が生じたのは、材料に起因するものでは
   なく、台風等による飛来塩分が屋根スラブに浸透した結果だと推定される。
   なお、コンクリート構造物中に塩分が含まれていても,表面塗装などの補修
   を施すことにより、塩分による鉄筋の劣化に対処しうるのであるから、塩分
   が含有されているからといって、直ちにコンクリート構造物の強度が低下し
   ていることにはならないのである。
    防水されていない換気用屋根の庇の塩分含有量は一.二から一.八八キロ
   グラムに達しており、確かに塩分含有量は多量であるが、わずかな面積であ
   り、建物全体の耐久性上、特に問題になるものではなく、局部的に対策を施
   せば足りるものである。

六 「圧縮強度」について

    (財)沖縄県建設技術センターの調査結果(本件調査報告書の資料の二二
   から二九頁)によれば、コンクリートの圧縮強度について、(一平方センチ
   メートルあたり)一六四から三〇一キログラムとなっているが、本件調査報
   告書は右数値を示し、「品質に顕著なばらつきが現れている。」(本件調査
   報告書一五頁)と記載するのみで、右数値に対する評価を全く怠っている。
   右数値に対する評価は、以下のとおりである。コンクリートの強度は、い
   かに管理をしても必ずあるばらつきを示すのであって、強度にばらつきが生
   じること自体は当然の事象であり、建物の構造計算は、コンクリート強度に
   ばらつきが生じることを前提としてなされるものである。立法院議事堂が竣
   工した一九五四年頃は、コンクリートの設計圧縮強度として、(一平方セン
   チメートルあたり)一三五ないし一八〇キログラムと指定することが多かっ
   たことを考慮すると、立法院議事堂のコンクリート強度は、竣工当時の一般
   的建築水準を上回るものであるといえる。

*#589 国際パソ通ネットワーク
★タイトル (QXH11714)  94/ 8/22  13:36  (153)
GB1612-3/3)立法院保存再生・住民訴訟 まきし
★内容
七 「総合評価」について

    本件調査報告書は、右五項目について杜撰な誤りをくり返した上、その総
   合評価において、立法院議事堂の局部的劣化部分のみをことさらに取り上げ
   て、誤った結論を出している。
   まず、「コンクリートの品質不良のために中性化速度が速く、鉄筋周辺部
   まで中性化している。また、スラブ中には現行基準の約四倍に達する塩化物
   量が存在している。」という一部の調査結果のみを取上げ、「これらの要因
   によって鉄筋には腐食が生じ、将来とも腐食の進行が懸念される。」という
   評価を導いている(本件調査報告書一五頁)。しかし、建物の損傷箇所につ
   いての中性化の進行及び換気用屋根の庇に現行基準の約四倍に達する塩化物
   量が存在するという点は、局部的な事象であり、局部的に補修すればよいこ
   とである(なお、コンクリート構造物は、メンテナンスフリーの性質を持つ
   ものではなく、メンテナンスをしながら長期間に渡って供用されていくもの
   であるから、補修を要する箇所があること自体は当然のことである。)。
   かえって、この評価に当たってことさらに無視されている調査結果、、即ち、
   主要部位のコアについての中性化調査では中性化が鉄筋表面に達している部
   位は認められなかったこと、柱、梁という主要部位について塩分含有量が少
   ないこと等の事実も考慮に入れて評価をすれば、立法院議事堂という建物全
   体についていうと、中性化の進行が進んだ損傷場所及び塩分含有量が多い場
   所については補修の必要があるものの、全体として良好な状態にあるものと
   評価できるのである。
    また、構造耐力の寿命に達する残余年数について、「スラブ中の高濃度の
   含有塩分量、鉄筋周辺部のコンクリートの中性化及び密実性に欠けるコンク
   リート品質等」という要因から「残余年数は短いものと推測される。」とい
   う結論を導いている(本件調査報告書一五頁)。しかし、「スラブ中の高濃
   度の含有塩分量、鉄筋周辺部のコンクリートの中性化」については、すでに
   述べたとおり、局部的な現象にすぎない。そして、「密実性に欠けるコンク
   リート品質」という点については、建物残余年数を判断する主要要因として
   掲げながら、それが何を意味するのかについて、全く説明が欠落している。
   おそらく、ジャンカのことを指すものと思われるが、程度問題はともあれ、
   コンクリート建築にジャンカが生じること自体は避けられないものであり、
   また、その対策は、ジャンカを塗り固めてしまえばすむことである。以上の
   とおり、本件調査報告書の構造耐力の寿命に達する残余年数についての評価
   は、極めて杜撰になされたものである。そして、構造耐力の寿命に達する残
   余年数についての評価をする際に全く考慮の対象外とされている調査結果、
   即ち、主要部位のコアについての中性化調査では、中性化が鉄筋表面に達し
   ている部位は認められなかったこと、柱、梁という主要部位について塩分含
   有量が極めて少ないこと、コンクリートの圧縮強度が高い水準にあること等
   からすれば、立法院議事堂は充分使用に耐えうるものと評価されるのである。

八  結論

    以上述べたとおり、本件調査報告書は、各調査項目について初歩的な誤り
   をおかした上、立法院議事堂の耐久性の高さを示す要因をことさらに無視し
   て誤った総合評価をして作成されたものであり、立法院議事堂の耐久性を判
   断する資料足りえない無価値物にすぎないのである。

第五  沖縄県の被告組合に対する請求権

一   本件委託契約は、一種の請負契約であるが、請負契約において、一応目的
   物の引渡しがなされても、目的物の瑕疵が重大であって本来の効用を有せず、
   注文者が目的物を受領してもなんらの利益を得ない場合には、仕事の完成が
   ない場合と実質的に差異はなく、報酬請求権は発生しないものである。
   そして、本件調査報告書は、前述のとおり極めて杜撰であって、立法院議
   事堂の耐久性判断の資料となりえない無価値物であり、これを受領した沖縄
   県の利益にならないものであるから、本件委託契約において、被告組合の県
   に対する報酬請求権は発生していなかったものである。
   したがって、被告組合は、沖縄県の損失により法律上の原因なくして四三
   二万六〇〇〇円の利得を得たものというべきである。
二   また、仮に、請負契約において、一応目的物の引渡しにより報酬請求権が
   発生すると解するとしても、本件調査報告書は極めて杜撰なものであり、本
   件調査報告書の瑕疵を修補するには、コンクリート建造物の耐久性調査につ
   いて正確な知識を有する者に再調査を依頼して本件調査報告書の内容を書き
   換えるほかないのであるから、民法六三四条によって、右調査に要する費用
   相当額を、瑕疵修補に替わる損害賠償として請求しうるものであり、右修補
   には、本件委託契約の報酬額と同額である四三二万六〇〇〇円を要する。
   なお、被告組合は、沖縄県職員の訴外山川栄(以下、「訴外山川」という。)
   と協議の上、本件調査報告書を作成したものであり、訴外山川の指示によ
   って、立法院議事堂の耐久性について誤った内容の報告書を作成したという
   面があるが、そうであるからといって、被告組合が損害賠償責任を免れるこ
   とはできない。民法六三六条では、請負人が注文主の指図の不適切なことを
   知りながらこれを告げなかった場合は、担保責任を負うものとしており、被
   告組合は、建築の基本的知識を有するものとして、指図の不当であることを
   知りながら、これを告げずに本件調査報告書を作成したものであるから、損
   害賠償責任を免れないものである。
三    以上より、沖縄県は被告組合に対し、不当利得返還請求権若しくは損害賠
   償請求権に基いて金四三二万六〇〇〇円を請求しうるにも関わらず、その行
   使を違法に怠っているものである。

第六 沖縄県の被告山城に対する損害賠償請求権

一   第五項で述べたとおり、金四三二万六〇〇〇円の本件支出は支払義務がな
   いのに支払った違法があり、これにより沖縄県は同額の損害を被ったという
   べきである。
    そして、本件支出は、対外的には沖縄県知事名でなされているが、内部的
   には、事務規定によって、総務部長である被告山城に実質的決定権限が与え
   られており、被告山城の専決により支出がなされたものであるから、本件支
   出という右違法な財務会計行為について、被告山城は責任を有しているもの
   である。
二   被告山城は、本件支出が違法であることが明らかであるにも関わらず、故
   意又は重大な過失により、本件支出をさせたものであるから、地方自治法二
   四三条の二に基づく損害賠償責任を免れないものである。
三   以上より、沖縄県は被告山城に対し、地方自治法二四三条の二に基づく損
   害賠償請求として金四三二万六〇〇〇円を請求しうるにも関わらず、その行
   使を違法に怠っているものである。

第七  沖縄県の被告金城に対する損害賠償請求権

一   被告金城は、一九九四年三月頃、庁舎建設室参事の地位にあるものとして、
   本件調査報告書を検収(以下、「本件検収」という。)した者である。本件
   委託契約においては、調査報告書の検収後に、被告組合が沖縄県に対して報
   酬請求できるものとされており、本件検収が無ければ、本件支出はあり得な
   かった。しかるに、被告金城は、本件調査報告書が極めて杜撰なものであっ
   て立法院議事堂の耐久性判断の資料足りえないものであることを知りながら
   これを検収し、県に金四三二万六〇〇〇円の支出をさせて同額の損害を被ら
   せるという不法行為をしたものであるから、民法七〇九条に基づく沖縄県に
   対する損害賠償責任を免れない。
二   以上より、沖縄県は被告金城に対し、不法行為による損害賠償請求として
   金四三二万六〇〇〇円を請求しうるにもかかわらず、その行使を違法に怠っ
   ているものである。
三   なお、本件検収は、財務会計行為そのものではないが、本件支出に事実上
   重大な影響を及ぼすものであり、沖縄県は被告金城に対して不法行為損害賠
   償請求権という財産を有するにも関わらず、その債権の管理を違法に怠って
   いるものであるから、被告金城は地方自治法二四二条の二の一項四号の「怠
   る事実に係る相手方」に該当し、住民訴訟の対象となるものである。

第八  監査請求

    原告らは、右理由から、一九九四年(平成六年)五月一三日、沖縄県監査
   委員会に対し、報告書を改めさせない場合には、被告組合に契約金の一部を
   返還させること、被告組合に対する返還請求がなされなかった場合には沖縄
   県知事ら関係職員は沖縄県に対し違法、不当な支出金を補填賠償すること等
   の沖縄県知事ら関係職員に対する措置を求めた。
    これに対して、沖縄県監査委員会は、同年七月七日付で、監査結果として
   「調査に係る委託料の支出は違法又は不当な公金の支出に当たらず、本請求
   は理由がない。」と通知した。
   しかし、右結果は全く不当なものであって、到底承服できるものではない。

第九  結語
    よって、原告らは、地方自治法二四二条の二に基づき、沖縄県に代位して、
   請求の趣旨記載の判決を求めて住民訴訟を提起する次第である。

              証  拠  方  法

 訴訟提起時に甲第一号証として調査報告書を提出するほか、口頭弁論の際
に随時提出する。

             添  付  書  類
一 甲第一号証写し      四通
二 資格証明書        一通
三  訴訟委任状                  通
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                             ===まきし===



 
  • 1998年     3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 1999年     1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

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