94年の北朝鮮「核疑惑」の時に、米軍が北朝鮮に対する全面攻撃を計画し
ていて、日本に対しても「支援」を要求し、日本政府(羽田内閣)も超憲法的
な措置を覚悟したというのはご存じの通りです。
その際に防衛庁が対米協力リストを作成していたこともすでに報道されてい
ますし、「提供」港湾・空港のリストも明らかになっています。本日の朝日新
聞は、この際の協力項目リストを明らかにして、港湾・空港の提供の「根拠」
として防衛庁は地位協定の「2条4項b」を使うつもりであったと報道してい
ます。
「2条4項b」というのは、参考までに末尾に掲げましたが、これを初めて
読んで意味の分かる人は1億人に一人もいないという難物です。もともとは米
軍がいったん返還した土地を戦時にまた使えるようにしたいという狙いをもっ
て挿入されたものですが、現在では自衛隊基地を日米「共同使用」する根拠と
して使われています。
国有地ならまだしも、自治体などが管理する港湾を国の一存で「提供」する
というのはいくら「2条4項b」を使っても無理なはず。神戸港も「提供」リ
ストにありますが、「神戸方式」なんて無視するしかない。無理を承知でやる
からこれは実質的なクーデターなのです。私は最初から「新ガイドライン」は
「クーデター」だと言ってきましたが、ここまで事実が明らかになったからに
はもう「 」はいらないでしょう。
ここでは記事本体でなく、朝日新聞の伝える「協力項目」リストを転載しま
した。「●支援要求の対応措置全般=《主管》内閣安保室《関係》全省庁」な
んてリストもあります。つまり米軍に協力するのは国を挙げて、しかも民間人
も一人残らず協力せよというガイドライン精神が見事に表されています。
これは94年のリストですが、現在の「周辺事態法」にもそのまま受け継がれ
ていると考えるのが自然ですし、ひょっとしたら「協力」項目や港も追加されて
いるかもしれません。
以下のリストは22日の朝日新聞からの転載ですが、朝日新聞の許可を得て
いません。そもそもこれは防衛庁資料の転載なので著作権?は防衛庁にありま
す。
--------以下転載-----------------------------------------------
朝鮮半島有事を想定した在日米軍の「対日支援要求」を受け、防衛庁が検討
した支援項目と担当する省庁は次の通り。
【空港】
●成田(千葉県)、福岡、長崎、那覇、新手歳(北海道)、関西(大阪府)、
宮崎、鹿児島の各民間空港で米軍が管理権を行使するための日米地位協定二条
四項bの適用=《主管省庁》防衛施設、運輸、建設《関係省庁》大蔵、通産
●新千歳、関西、福岡、宮崎、鹿児島、那覇の民間六空港での輸送機などの
支援及び整備=《主管》防衛施設《関係》通産、労働、運輸
●民間六空港での宿泊、医療=《主管》防衛施設《関係》通産、厚生、運輸
●民間六空港での給食=《主管》防衛施設《関係》通産、農水、労働
●非戦闘員退避作戦(NEO)での民間六空港の施設、宿泊、給食、医療=
《主管》法務、外務、大蔵、厚生、農水、通産、運輸
●民間六空港での通信=《主管》防衛施設《関係》通産
【港湾】
●苫小牧(北海道)、八戸(青森県)、天願、金武湾、那覇(いずれも沖縄
県)など十一港湾で、米軍が管理権を行使するための日米地位協定二条四項b
の適用/松山、大阪、名古屋、水島(岡山県)、福岡、神戸の事務所、倉庫の
設置のための同二条四項bの適用=《主管》防衛施設、運輸、建設《関係》大
蔵、通産、労働
【その他の施設】
●厚木基地の使用条件などの変更/プレハブ、ヘリポートなどの建設と備品
の提供/米軍基地の給電、給水、ごみ処理などの増加対策=《主管》防衛施設、
運輸、建設《関係》大蔵、通産、労働、厚生
●米海軍部隊による海上自衛隊の港湾と航空基地使用=《主管》防衛施設
《関係》防衛
●海上自衛隊五基地での航空分遣隊に対する医療宿泊=《主管》防衛施設
《関係》通産、厚生、運輸
●沖縄の港湾基地での医療、宿泊支援=《主管》防衛施設《関係》通産、厚
生、運輸
●非戦闘員退避作戦での海軍の横須賀、佐世保及び空軍の三沢、横田、嘉手
納の輸送、宿泊、給食、医療など=《主管》法務、外務、大蔵、厚生、農水、
通産、運輸
【輪送】
●民間調達を含む米軍の艦船・航空機の国内港湾・空港の優先使用など=
《主管》運輸、建設
●国内での陸上輸送のための民間輸送業者の調達/兵員、軍需物資などの輸
送/米軍基地、空港、港湾での荷役資器材などの民間業者からの調達=《主
管》防衛施設《関係》大蔵、厚生、通産、運輸、労働、建設、警察
●海外から到着した人員、貨物などに対する港湾、空港での通関、検疫、出
入国管理=《主管》大蔵、農水、法務、厚生、運輸、通産
●国内陸上輸送のための道路の優先使用、交通統制など=《主管》警察、建
設、運輸
●弾薬・戦闘車両の輸送、ヘリ空輸・共同基地での荷役=《主管》防衛施設
《関係》大蔵、厚生、通産、運輸、労働、建設、警察
【補給】
●事務機、通信機器、宿泊関連物資、燃料などの調達/対潜戦武器/弾薬、
機雷掃海具の提供=《主管》防衛施設《関係》通産、運輸
●米軍艦船、航空機の修理及びP−3C修理部品の提供など/けん引車、P−3C
整備器材の提供=《主管》防衛施設《関係》通産、労働、運輸
●補給、整備、警備などの在日米軍従業員の増強=《主管》防衛施設《関
係》労働
●給食関係で海軍通信所(三千六百食/日)、沖縄港湾基地(百四十四食/
日)・海軍航空分遣隊(百八十九食/日)、十一港湾(八百八十九食/日)=
《主管》防衛施設《関係》通産、農水、労働
【掃海】
●機雷掃海、日本海での救難・捜索/軍事海上輸送軍の船舶入出港時の掃海
=《主管》防衛
【通信】
●NTTなどの商用電話回線、インマルサット端末機の調達、設置=《主管》
防衛施設《関係》通産
●携帯無線機などの周波数の割り当て=《主管》郵政
●通信電波中継=《主菅》防衛
【警備】
●防弾チョッキ、ドラム缶、簡易警備所など警備用資器材の提供=《主管》
防衛施設《関係》通産
●港湾内及び港湾接近航路の海上警備=《主管》海上保安
●基地などの警備=《主管》警察
【その他】
●対潜水艦戦作戦センター(ASWOC)支援/飛行場運用時間の延長など/飛
行前後における自衛隊情報の提供、ロシア情報の提供=《主管》防衛
●支援要求の対応措置全般=《主管》内閣安保室《関係》全省庁
●対米調整全般=《主管》外務《関係》全省庁
−−−−−−−−転載ここまで−−−−−−−−−−−−
<参考>
日米地位協定
第2条〔施設・区域の提供と返還〕
4 (a)合衆国軍隊が施設及び区域を一時的に使用していないときは、日本国
政府は、臨時にそのような施設及び区域をみずから使用し、又は日本国民に使
用させることができる。ただし、この使用が、合衆国軍隊による当該施設及び
区域の正規の使用の目的にとつて有害でないことが合同委員会を通じて両政府
間に合意された場合に限る。
(b)合衆国軍隊が一定の期間を限つて使用すべき施設及び区域に関しては、
合同委員会は、当該施設及び区域に関する協定中に、適用があるこの協定の規
定の範囲を明記しなければならない。
****************************
Masahiko Aoki
青木雅彦
btree@pop11.odn.ne.jp
****************************