イタリア低空飛行事故は日本にとって「周辺事態」※なのですが、日本での報
道は十分ではありません。あのばかげた評決の余波は続いています。
※日本人の安全に影響を及ぼす軍事的な事態のこと。例えば米軍機が墜落したり
して民間人の死傷者が出るようなこと。なお「周辺」は地理的概念でない(笑)
ので、イタリアも周辺に含まれる。
まず、イタリア首相の発言。
http://www.yomiuri.co.jp/newsj/id11id01.htm
に短い記事がありますが、詳しくは、
http://www.infobeat.com/stories/cgi/story.cgi?id=2558732511-ad4
ダレマ首相は、このままお咎めなしで終わってしまうようではNATO地位協定の
見直しを要求せざるを得ない、と言っています。
首相は、テロの罪でアメリカ43年の刑に服しているイタリア人の引き渡しと
交換に、ケーブル事故での要求を取り下げるという取り引きに合意したとの報道
を否定。「まず司法のプロセスの終結を待ちたい」との考えを明らかにした。
「もちろん、このNATO地位協定で正義が行われないことが明らかになったなら、
この協定署名の18ヶ国はこれを見直さざるをえないだろう」とダレマ首相は語
った。
ちょうどNATO創設半世紀、アメリカに裁判権を握られたままでいいのかという
反省は他の諸国にもあるようです。
しかし当のアメリカと言うか、海兵隊の方は裁判はもうお開きにしようという
気持ちのようです。あの事故の時の乗員は四名でしたが、なにしろ「主犯」格の
パイロットが「無罪」なのだから、他の乗員の裁判の必要は論理的にない。
まだ確定ではありませんが、結局彼らからパイロット免許を取り上げるくらい
で、刑事罰はなし。そう言う方向で終結させたい意向だそうです。その記事は、
http://www.infobeat.com/stories/cgi/story.cgi?id=2558735184-6cc
しかし、我々が無謀運転で20人を殺したとしたら免許停止くらいで済むか、
と考えただけで、この処分の「寛大」さが分かります。これでは亡くなった人は
全く浮かばれません。
当然ダレマ氏は地位協定の改定を要求せざるを得ないはずですが、政治的判断
があるのでどうなるかは分かりません。しかしもしNATO地位協定が改定されるこ
とにでもなれば、同様にアメリカに1次裁判権を認めている日米地位協定も改定
しないとおかしいという議論が出てくる。
これまで安保条約そのものと並んで、いわば「不磨の大典」として全く手が触
れられていない地位協定の改定が浮上してくる可能性があります。もちろん戦争
をするためには憲法改正の労を惜しまないけれど、国民の安全と主権をを守るた
めの協定改正は夢にも考えたくないというのが我が政府と政治家の先生ですから、
できる限り知らんぷりを決め込もうとするでしょうが。
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Masahiko Aoki
青木雅彦
btree@pop11.odn.ne.jp
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