Date: Sun, 07 Mar 1999 03:11:36 +0900
From: Masahiko Aoki <btree@pop11.odn.ne.jp>
To: aml <aml@jca.ax.apc.org>, keystone M <keystone@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 1158] Re:無罪評決(コーエン国防長官のコメント)
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Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

>From:"MARUYAMA K." <kaymaru@mail.jca.ax.apc.org>
>To:aml@jca.ax.apc.org
>Cc:keystone@jca.ax.apc.org
>Subject:[aml 11363] 無罪評決(コーエン国防長官のコメント)
>Date:Sat, 6 Mar 1999 12:26:53 +0900

> 米海兵隊員に対する無罪評決を受けたコーエン国防長官の反応
> (和訳は丸山、原文は下に)
>==================================================
> 米軍報道、ナポリ発:

> 米海兵隊Richard Ashbyに対する3月4日の無罪評決は難しいが公平な決定だった
>と評価するコーエン国防長官は、評決に対する感情的な反響がイタリア側にあるもの
>の、合州国とイタリアの強いつながりは今後も変わらないだろうと述べた。

 「こんなのは評決なんて言えない。」と記者会見で遺族の一人は語っていま
すが、これは裁判ではなく茶番なのです。実際この種の裁判、つまり米軍人が
外国の民間人を航空機で死傷させた場合の軍事法廷では、有罪が宣告されたの
はただの1度しかないようです。裁判はイタリアでやるべきでした。あるいは
陪審員は全員外国人にすべきでした。
 ずいぶん昔の日本で起こったジラード事件を連想させます。米軍演習場で薬
莢をひらっていたおばさん(それが生活の糧だった)に声をかけて呼び寄せ、
その場で射殺したジラードという残忍な米軍人の裁判を日本でできずに、今回
のように米軍事法廷で無罪。日本人は烈火の如く怒った(当時は普通の感性が
生きていた)が、アメリカではジラードは英雄扱いされたとか。
 今回の評決の瞬間、被告アシュビーの恋人、母親、妹が法廷でキャッキャッ
と喝采をあげました。茫然とする多くの遺族のその目の前で。
 アシュビーは法廷で``My heart, my thoughts and prayers go out to the
families of victims of this tragedy.''(どういう意味なんですか?乞御教
示)とは言ったそうですが、遺族は彼は決して謝罪しなかったと思っています
(アメリカ流ではゴメンというと罪を認めたことになる。日本語なら「世間を
お騒がせして申し訳ない」という責任を認めずに謝る便利な表現がある)。法
廷で遺族達と目を合わせることもなかった。

 アルプスではもう低空飛行は行っていないというのが本当でも、まだそれが
許されている国(今年のF-16の釜石墜落を見よ)があり、それらの国民は本当
に真剣に心配しなければならない。パイロットはお粗末、地図はない、高度計
は壊れているのに平気で低空を飛ぶのが米軍流だということがこの裁判で明ら
かになったのだから。しかも裁判で「無罪」は保証されているのだから素行は
改まる気配もない。

 日本はむしろ当事者なのですが、日本のマスコミは「外国の事」として本当
に表面的にしか報道していません。外国の報道をインターネットで見るしかな
いというのも心細くも面倒な話です。

http://www.infobeat.com/stories/cgi/story.cgi?id=2558678255-af7
http://www.infobeat.com/stories/cgi/story.cgi?id=2558678189-a55
のAP報道で若干の補足を。
 8人のドイツ人犠牲者の弁護団代表は「この世には正義はない」とコメント。
「(こんな裁判では)今日が夫の2回目の葬式になります」と犠牲者の妻。
「アメリカに正義を求めてやってきたのに(亡くなった)子供たちに申し訳な
い」と遺族の一人。父と姉とを同時に失った遺族は「二十人を殺した人が無罪
なんて到底信じられません」。夫をなくした婦人は、「どうして?それじゃ誰
に責任があるの?その人たちをここに連れてきてちょうだい!」。イタリア下
院の外交委員会議長は「この評決は傲慢と言い逃れ以外のなにものでもない」
とコメント。
 民事裁判での損害賠償請求はこれとは別個に行われるが、遺族側の一人当り
六百万ドルという請求をアメリカ側は拒否している。なお、この「無罪」のパ
イロットは他にも、事故の時のビデオテープを「処分」した罪にも問われてい
るが、この件では有罪になったとしても1年である。

 イタリア首相とクリントンはもう会談を終えたはずですが、その中でこの裁
判はどう言及されたのでしょう。首相はクリントンにガツーンと言ったでしょ
うね。

 この伊事故で思い出したのが、87年ごろ奈良県の山中で起こった木材運搬
用ワイヤーを米軍機が切断した事故。「こんな危険なことが許されていいはず
はない。断固として立件する」と奈良県警の幹部の言葉が新聞の紙面に。<安
保の壁の厚さを知らんのかな>とちょっとびっくりしたのをおぼえていますが、
案の定1年くらい後に、「法的に難しいことが分かった」とションボリしてい
るとの小さな記事。その筋から圧力があったのでしょう。
 この時日本で問題化して米軍が飛行マニュアルを変えていたら、この20人
の犠牲はなかったと考えると、わが外務省も共犯であると言えないこともない。
今度はイタリアでの事件を日本が教訓にすべき時なのですが、政治のベクトル
は全然逆方向。「ゲリラが来るぞー。有事立法作れー。先制攻撃やれー」とま
あ子供みたいなはしゃぎよう。こういう危険な現実は知らないんですね。先生
方は。それとも、某国ゲリラに殺害されるのは我慢できんが、米軍機に殺され
るのは名誉なことだ、と思っておられる?
 

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Masahiko Aoki
青木雅彦
btree@pop11.odn.ne.jp
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