Date: Mon, 01 Mar 1999 21:36:01 +0900
From: Masahiko Aoki <btree@pop11.odn.ne.jp>
To: keystone@jca.ax.apc.org, aml@jca.ax.apc.org
Subject: [keystone 1138] 非核条例の違法合法を巡って
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 例の非核条例が提出された高知県議会で本日(3・1)から質疑が行われて
います。予想通り、自民党議員が橋本知事を攻撃。
 自民党の先生に忠告。どういう主張を持つのも自由ですが、今高知県議会は
函館市議会と同じく全国の注目を集めているのだから、以下のような支離滅裂
な質問は恥の上塗りになるだけです。

 本日の高知新聞夕刊によると自民党の依光隆夫氏は以下の3点を質した。
(1)国が違法とする「非核証明書方式」をあえて実行しようとする理由は何か
(2)これによって国の平和や安全、日米関係を損なった 場合、知事は責任を取
   れるのか
(3)実効性がなく、国に悪影響をもたらすだけの「非核証 明書方式」になぜ固
   執するのか

 先に引用者のコメントを。
 まず(1)、国は「非核証明書」を「違法」と断定したことはないのです。2
月二十三日、衆院地方行政委員会で共産党春名直章議員が、「非核港湾条例が
どの法律に違反しているのか」と尋ねたところ、野田自治相は「(どの法律に
違反しているかどうかは)明示しなければならない問題ではない」と答え、自
治省の香山総務審議官も「条例をみれば法律的にただちにどの法律に違反する
とはいえない」と答弁。該当する法律がないから当然なのです。
 次に(2)ですが、地方自治法で首長は住民の安全を守る義務があるのだから
核艦船(あるいは軍艦一般)の入港を断るのが自然。逆に、核艦船の入港を認
めて事故があったり攻撃された時に国はどう責任を取るのか。
 (3)「実効性がない」という言い方は(2)に矛盾する。「国に悪影響」って非
核三原則は「悪」なのか?それなら非核三原則を撤廃しろとなぜ言わないのか。

 橋本知事の答弁は以下のようなものです。
「この条例は基本的に日常の港湾管理に関するもので、その中で非核三原則を
守る姿勢を示すことが国の平和や安全、ひいては日米関係などを損なうといっ
たことはあり得ないことだと思う」

 それから高知条例関連ですが、以前私が[keystone 973]に投稿したものが
Niftyのフォーラムに転載されて、それに対するResが個人メールで送られてき
ていますので紹介しておきます。
Aoki wrote:
>(3)上記の高知新聞記事に以下のようなくだりがあります。
>> ただ、自民党は九年の十二月定例会で「高知県の港湾における非核平和利
>> 用に関する決議案」を共同提案、全会一致で可決している。このため、決議
>> と条例の位置付けをどう整理し、落としどころを見いだすか
> この自民党の「非核利用決議」とはどんなものでしょう。
 これに対して高知在住のIさんから高知県議会の決議を送ってもらいました。
以下全会一致の決議。
======================================================================

     高知県の港湾における非核平和利用に関する決議

 世界の恒久平和は、人類共通の願いであり、昭和59年7月には「非核平和高
知県宣言」を決議したところである。
 高知新港の一部開港を控え、県内全ての港において非核三原則を遵守し、県
民に親しまれる平和な港としなければならない。
 よって、当県議会は、ここに改めて高知県の港湾における非核平和利用を決
議する。
  平成9年12月19日
                              高知県議会
======================================================================
 「県内全ての港において非核三原則を遵守し」なければならないというなら、
自民党の先生も高知方式に賛成するのが自然というか、子供にも分かるまっと
うな行動というものでしょう。

 ついでながら、別の機会にこのIさんから、御自身の高知条例関連での高知
新聞への投書を送ってもらったので転載しておきます。御本人の意図とは逆に、
新聞社の側が、まるで有事立法制定の必要を訴えるかの印象を与える題名に変
更してしまったようです。高知新聞の投書欄では、Iさんによると、現在掲載
数で7:3ないし、6:4で知事支持派が優勢だそうです。

=====高知新聞投書欄==2月27日===========================

特別法制定して「権限逸脱」言え

 2月定例県議会において橋本県知事が提案している「非核港湾」化条例につ
いて一言。自民党や政府は、外国艦船入港拒否は自治体の権限逸脱だと言って
いるが、少なくとも「法的には」正しくないと考えます。
 日本は法治国家なので、何をするにも法的な根拠があるはずです。だから、
艦船の入港許可に関して、港湾管理者に特段の義務を課す場合はそのための法
律が必要です。
 「港湾法」は「入港届の受理」を含む港湾の管理者を、原則として地方公共
団体と定めています。もし外国艦船の入港を政府だけが一元的に決定できるこ
とにしたいなら、港湾法の一部を無効にする、いわば「港湾特別法」のような
ものを作らないといけなかったのです。
 ところが政府はそうした「努力」を怠って、言わば日本的な以心伝心、つま
り力関係だけで「口出しするとは何事ぞ」と主張しているように思えます。非
核三原則が日本の国是であるにもかかわらず。
 こうした政府などのやり方は、今度の周辺事態法においても自治体の「協力
」をめぐって、その問題点が指摘されているようです。
 いずれにせよ、「自治体の権限逸脱」を言うならば、まずそれを根拠づける
法律を作ってから、というのが私の意見です。

−−−−−−−−転載ここまで−−−−−−−−−−−−

 余計な説明を付け加えるなら、現在日本の法律には米軍を守るための、明ら
かに憲法に違反する「MSA秘密保護法」や「刑事特別法」が存在します。例え
ば我々が「許可なく」米軍基地に立ち入ると刑事特別法によってパクられます
が、これは「違憲合法」です。高知県の条例などは、憲法や地方自治法、港湾
法に照らしてみれば「合憲合法」、法的に何の問題もないのです。「違法」だ
というなら法律を作って、せめて「違憲合法」状態にまでしないといけない。
 高知や函館の「遵法闘争」が広がれば外務省は困るという事情は分からない
わけではありませんが、ごまかしの政策を取ってきたつけを払う時です。イデ
オロギー的な圧力によって法治国家であることを放棄していいわけはありませ
ん。こんなことを言うのも法治国家が素晴らしいからでなく、現代の国家が法
治国家でなくなると恐ろしいことが必ず起きてきたからです。20世紀の恐らく
最大の教訓です。
 
 

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     Masahiko Aoki
     青木雅彦
     btree@pop11.odn.ne.jp
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