X-Sender: kaymaru@mail.jca.ax.apc.org (Unverified)
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Date: Tue, 16 Feb 1999 05:48:07 +0900
To: aml@jca.ax.apc.org
From: "MARUYAMA K." <kaymaru@mail.jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 1101] 前田哲男さん講演(2・14 集会)
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 2月14日に日比谷公会堂で行われた「春一番 新ガイドライン関連法案を吹きと
ばせ! 2・14戦争協力を許さないつどい」(1999年2月14日 東京・日比谷公会堂
)についてはすでに吉川さんからの報告がありました([aml 11118]、[keystone
1095])。前田哲男さんの集会での講演をテキスト化し、ホームページに掲載しまし
た。関連文書などにリンクを付けてあります。
http://www.jca.ax.apc.org/~kaymaru/Guideline/Maeda990214.html

 自衛隊法を直接「改正」せず、付則・雑則で対処するといういかがわしさ(「付則
・雑則ガイドライン」)、すでに米軍に対しては周辺事態法が先取りされている事実
(「先取り・詐欺的ガイドライン」)など、非常に分かり易く解説されています。少
々長いのですが、投稿させていただきます。

 なお、テープおこしとメイリングリストへの投稿についての責任は丸山にあります。

前田哲男さんの講演

===========================================================
 ご紹介に預かりました前田哲男でございます。

 つとに明かであり、また先ほど内田さんが指摘されたように、新ガイドライン及びそ
れに基づく関連国内法は、自衛隊の海外派兵及びそこにおける戦闘行動を規定するその
ような内容を含んでおります。条文を読みますと、我が国の周辺地域における日本の安
全に重要な影響を与える事態、と記されているだけで、周辺とはどこなのか、事態とは
何なのか、全く規定されていない。そうした場所と状況に、アメリカ軍の後方地域支
援、機雷の除去、船舶の検査活動、様々な領域を設定し、乗り出していこうとする。そ
ういう法案を今私たちは目前に抱えている。これをどうするかが問われているのだと思
います。

 問題は周辺事態の定義の曖昧さだけではないと思います。自衛隊の行動に新しい任務
を与える。自衛隊が領域の外で行動する。そうした新任務が、法案の中でどのように規
定されているかをみますと、今回のガイドライン・周辺事態法案が持つからくり・欠
陥、それは「法的な陰謀」という言葉を使っていいのではないかと思うほど大変な問題
を含んでいると私には思えます。

 自衛隊が新しい任務によって行動するわけですから、当然自衛隊法に周辺事態に関す
る規定が盛り込まれ、自衛隊法改正という手続きが踏まれるものと私たちは考えます。
それが普通の考え方です。しかし、今回国会に提出されている関連国内法3法案の中
に、自衛隊法改正案は含まれておりますが、しかし、それは周辺事態に自衛隊を派遣す
る、そういう内容ではありません。では、自衛隊はどのような法的根拠によって、周辺
事態における協力行動を行うとするのか。

 周辺事態法の付則、一番おしまい、条文がつきたところに付則というのがあって、付
則の2、そこに自衛隊法の第100条に100条の10を追加するという自衛隊法改正がなされ
ています。自衛隊法そのものを改正するのではなく、周辺事態法の付則に自衛隊法100
条に10を追加する。リモコン改正によって、自衛隊に海外任務が与えられるきわめて異
様な法的構造を持っています。自衛隊は自衛隊法第3条(任務)によって、「直接侵略
及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務と」することが規定されていま
す。ここで明らかなように、自衛隊が海外任務を持つことは、第3条(任務)によっ
て、明らかにできません。もし、周辺事態法を新設しようとするならば、この自衛隊法
第3条を改正しなくてはなりません。しかし、そうはしませんでした。自衛隊法第100
条(雑則)の中にある様々な部外協力、第100条の見出しは「土木工事等の受託」と書
かれています。100条の2は、「教育訓練の受託」と書かれています。100条の3は「運
動競技会に対するの協力」と書かれています。100条の4は「南極地域観測に対する協
力」と書かれています。そうした部外協力の雑則の中に、今回100条の10を加え、そこ
に周辺事態に対し自衛隊の行動を規定する。そういう作りをとったわけです。しかも、
自衛隊法そのものを改正することではなしに、周辺事態法の付則から、リモコンで操作
する。そういう作りをしている。「付則・雑則ガイドライン」この法的な作りこそ、
ガイドライン・周辺事態法が持っているいかがわしさ、法的な自信のなさ、憲法に目を
向けられない、直視できない後ろめたさを示しているのだと思います。しかし、そのこ
とを国会の中で、また法的な側面からきちっと突いていく議論はまだなされていないと
思います。このようないかがわしさ、不健全さを持つ法律であるということを私たちは
まず知っておきたいと思います。

 本来ならば、このガイドラインは、すでに多くの議論でなされている通り、安保条約
そのものが定めていない、そういう領域を設定しています。ご承知のように安保条約は
第5条と6条に軍事条項を規定していおりますけれども、第5条は共同防衛であり、日本
の施政の下にある領域に対する攻撃、ですから、どこからか攻撃がなされない限り発動
できない。それ以外に読みようがありません。第6条は、アメリカ軍に対して基地を供
与する、貸し与えるということを定めた条項で、どちらからも周辺事態という概念、自
衛隊が領域の外で米軍に協力するというようなつながりを解釈上引き出すことはできま
せん。安保条約に対する見解はどうであっても、ともかく安保条約からこの周辺事態
法・ガイドラインを導き出すことは到底不可能なことなのですが、そうした不可能なこ
とを強引な解釈によってなしたばかりか、法律にする際に、申し上げましたようなから
くりを持って成し遂げようとしている。形の上ではありますが、そこに大変大きな問題
がある。「付則・雑則ガイドライン」そのものがこの日米安保体制の新しい形の持って
いる忌まわしさを表していると思います。

 第2は、これも指摘されましたが、「先取り・詐欺的ガイドライン」だろうと思い
ます。

 私は昨日大分県の日出生台から戻って参りました。そこで、アメリカ軍の実弾砲撃演
習が行われていました。沖縄の痛みを分かち合うという名目で、沖縄で行われていた1
55ミリりゅう弾砲の実弾演習を、北海道の矢臼別、宮城県王城寺原、静岡県東富士、
山梨県北富士、そして大分県の日出生台の5カ所に分散する本土分散演習の一巡の終了
の現場に行って見てまいりました。それが先週から行われておりまして、現場に行って
見てまいりました。もちろん中に入ることは出来ないのですが、様々な人にお会いした
り、また、話をお聞きしたところで痛感したのは、ガイドラインが法案の成立を待たず
にすでに現実のものとして動いている、という実感でした。先ほど、田(英夫)さんが
おっしゃたように、ガイドラインは97年9月に決定されて、アメリカに対してはもうす
でに実際のものとして動かされているということを目の前で確認して参りました。

 日出生台演習で使われた大砲は155ミリ砲、沖縄の海兵隊が日本のフェリーをチャ
ーターして、大分港の県営桟橋に陸揚げしました。演習で使う砲弾は、沖縄から佐世保
港の弾薬庫に一時移され、佐世保から九州横断道を通って、日通の車が輸送しました。
民間協力と自治体協力がここではっきり見えております。大分県の埠頭は県営ですの
で、港湾管理者は大分県知事です。大分県知事に対して申し入れをしたのは、防衛施設
庁でした。「地位協定にもとづく岸壁の使用」というふうに言いました。このようなこ
とは、かつてなかったことです。これまでも、米軍が民間船をチャーターして、佐世保
港に入る、岩国港に入る、また、大分のような民間の港に入ったことがありました。そ
うした場合は、かならず米軍の契約担当官が日本の代理店を通じて民間会社と契約を結
び、あるいは港湾管理者である県もしくは市に対し、積み荷の内容、種類、用量を通告
し、かつ接岸料・入港料を払って入港するという手続きを踏んでおりました。今回、―
―実は昨年7月岩国で初めて始まったのですが――、日米地位協定を適用した公共岸壁
の使用が始まりました。岩国の岸壁は市営岸壁です。岩国市に対しては、それまでアメ
リカ軍の民間船もしくは軍のチャーター船がはいる場合には、通告と内容の説明および
料金の支払いをしていたのですが、昨年7月に入った船から、日米地位協定によって入
港する。ということは、積み荷の内容を説明しないということです。お金を支払わない
ということです。日米地位協定の5条は、入港料または着陸料を課せられないで日本の
飛行場もしくは港に出入りできると書かれています。今回の大分でもこれを適用してき
ました。民間の港に、公共岸壁に、地位協定が適用されたと言うこと、それをコントロ
ールしたのが防衛施設庁だったということは、大変重大な問題を含んでいると思いま
す。これはガイドラインそのものだと思います。周辺事態法が成立すれば、法的にそれ
は規定されるわけですが、まだそこに至っていない段階で、すでにそのようなことが行
われている。

 ガイドラインを読んででいきますと、あの中に、包括的メカニズム、調整メカニズム
とよばれる日米の共同のメカニズム、調整部、あるいは指令部のようなものを作ること
が明記されています。包括的メカニズムには、日本政府の関係省庁が、中央省庁が横断
的に集まって、後方地域支援を効率的かつ迅速に行うためのシステムが作られるものと
いうふう理解されておりますが、日出生台演習では、すでに防衛施設庁が包括的メカニ
ズムの一端を握って、米軍の実弾演習のための陸送・海運輸送、そして公共岸壁の使用
をすべて取り仕切っている。それを日米地位協定という協定によって動かしている。そ
のような実態を見て参りました。明日から新潟県の関山演習場で、海兵隊と陸上自衛隊
の演習が始まります。ここでも、おそらく同じようなことが実施されると思います。

 大分県の日出生台演習は海兵隊だけの演習だったのですが、実はそうではありません
でした。500人以上の自衛隊が、海兵隊演習の円滑な進行と後方支援のために待機して
いる。さまざまな面で援助いたしました。ここにも、ガイドラインによって動かされる
日米の新しい軍事協力の形が、すでに演習の中で実施されていることををみることがで
きます。ガイドラインは、そして、周辺事態法は、日本の自衛隊を、日本の基地を、ど
こともわからない周辺、誰か相手さえ定かでない事態に対し、振り向ける、そうした海
外派兵、戦闘協力を示す。それと同時に、そうした外へ出るエネルギー、戦争目的が広
ければ広いほど、強ければ強い分だけ、内なる戦争基盤、軍事インフラストラクチャー
を固めなければならない。それは当然、軍事行動が外に対し、膨張すればするほど、軍
事行動の策源地である場所は、強力に戦争基盤を整えなくてはならない。周辺事態法が
規定している第9条、地方公共団体はその有する権限を中央政府に協力しなくてはなら
ない、そして国以外のもの、つまり民間に対しても同様の規定をおいているのは、コイ
ンの裏と表、戦争努力が外に大きく動いていく、その時は、内において基盤が固められ
なければならないことと相通じあっているのだと思います。

 ガイドラインが日米間で協議されている97年以降、日本の港に対する、民間の港への
アメリカ軍の艦艇の入港が急に多くなりました。北海道の小樽に、日本の港では初め
て、横須賀・佐世保以外では初めて航空母艦が入る、こういうことが行われました。
1997年1年間で全国12の港に、のべ20隻のアメリカ軍の艦艇、空母インディペンデン
ス、第七艦隊の旗艦ブルーリッジ、海兵隊のヘリ空母ベローウッドをはじめとする戦闘
艦艇が、小樽、函館、室蘭から鹿児島、別府、佐伯に至る日本列島南から北まで入港し
ました。昨年は、それが16の港、22回に増えました。民間の港に対するこうした寄港が
増えているということ、それは周辺事態が、米軍にとって従来の基地のみでは十分でな
いという認識に基づくものだと思われます。周辺事態がもし朝鮮で発生したらば、米軍
は日本の民間の港を予備の基地として使用しようと、そのために日常的に、友好と親善
の目的を名目とする寄港を繰り返し、情報を集めておくということになるのだと思いま
す。

 実際、1950年の朝鮮戦争の時、私は12歳の少年で北九州市に住んでいましたので、そ
のときの景色を良く覚えております。私の原体験の一つでもありますが、北九州、福岡
県の飛行場・港、博多港、門司港は米軍の専用港として接収されました。福岡空港、当
時は板付飛行場と呼ばれておりましたが、ここは、F86Fジェット戦闘機が直接朝鮮を攻
撃する、朝鮮上空で空中戦を行う発進基地になりました。日出生台はもちろん演習場で
したし、別府は帰休兵たちのR&R(レスト・アンド・リクリエーション)と呼ばれる
基地になりました。また、朝鮮の戦線で負傷し、後送されてくる負傷兵が福岡県の芦屋
飛行場だけで全期間30万人に達し、そのうち3万人が日本で治療を受けました。そのた
めに日赤の看護婦が動員された。召集令状によって、動員されたという記録が、国会の
議事録の中に残っております。厚生省の答弁として残っております。そのように、近く
で周辺事態が起こった際に、1950年の朝鮮戦争を例としながら、97年、98年における
アメリカの軍艦の本土巡航、国内民間港への入港が行われているのだと思います。

 船が入るということは、単に岸壁を使うというだけではありません。岸壁の機能を使
うわけですから、港の施設を使うわけですから、そこに働く人、岸壁に着きますと水を
補給します。小樽市の場合ですと小樽市水道局。岸壁に着くためにタグボートで押され
てくる。小樽市港湾局。5日間の停泊中にゴミや屎尿が出る。小樽市衛生局。一般公開
してたくさんの人が見物にくる。小樽市役所は日曜日に職員を召集して、雑踏警備に当
たると。これはおまけとしましても、様々な面で、施設に付随する人々を要求します。
そうしたことが、民間港への友好と親善を名目とした寄港によって組織化されつつあ
る。ここ2年にわたる米軍艦艇の日本の民間港への立ち入りは周辺事態において、いか
にそうした港を予備の基地として活用するか、その瀬踏みをしている、と受け止めなく
てはなりません。そうした寄港が岩国や大分で見られるように地位協定に基づくという
ふうになっていくとすれば、港湾管理者は拒否することができない。そうなってしまし
ます。

 今、ごく少数の自治体ではありますが、たとえば神戸市のように、条例を作り、外国
の軍艦が神戸港に入港する場合には、核兵器を搭載していない旨を証明する文書を提出
してもらう。こうすることによって、実質的にアメリカ軍の軍艦を入港させない。その
ことを行っている自治体があります。今月は、高知県がそれと同じような条例を作ろう
として、今外務省のすさまじい圧力を受けておりますけれど、今ならばこういうことが
できる。地方自治は憲法に定められた権利でありますし、地方自治法は、その第2条
で、地方自治の本旨を住民の安全・健康・福祉の保持につとめるとかかれています。地
方自治体の首長は、地方自治法および憲法に従って、そして、港湾管理者として、ある
いは空港管理者として、住民の安全・健康・福祉の保持の観点から自主的な判断を下す
ことができる。それを条例化したのが神戸市であろうと思うのですが、今の憲法のもと
で、地方自治体にこのようなことが認められています。ですが、周辺事態法が成立し、
施行されますと、その第9条によって、国の命令は、関係機関の長は、――この流れか
ら見て、防衛庁長官はと読むべきでしょうが――、地方公共団体の長に対し、その有す
る権限について、協力を要請することができる。と書かれている。この要請とは一般的
な義務である。拒否は考えていないというふうに政府は答弁しておりますので、実質的
な意味で、地方自治は崩れざるを得ないと考えられます。つまり、ガイドラインと周辺
事態法は憲法9条を壊すだけでなしに、地方自治法の本旨、基本的人権に対しても、重
大な支障を与える、打撃を加える。より広範に、地域と職場に憲法の死を告げる出来事
になるだろうと、そう思います。その意味で、周辺事態法に反対することは、ひとつ
は、戦争と平和、憲法第9条に関わることですが、もうひとつは、地域と職場、地方自
治体と民間にかけられる戦争協力の強制、それに対し、「僕らはごめんだ」というふう
にいうのか、いえるのがが問われているのだと思います。

 1960年の安保国会、日米安保条約が改定され、それを審議する日米安全保障条約等特
別委員会は37日間、153時間にわたる審議を行いました。実に、緻密・綿密な議事録が
残されております。それにしても敗れてしまいましたが、安保特の最後の議事録は大変
印象的な言葉で終わっております。質問者は、社会党の横路節夫さんです。横路さん
は、函館や小樽などの民間港にこの安保条約は軍艦の寄港を認める、それを含んでいる
のではないかと質問しました。一括して上程された日米地位協定2条はそういうふうに
記しております。第5条は料金の免除を規定しています。横路さんはそれを取り上げ
て、小樽や函館という名称を挙げて、「そこでもし直接作戦行動が行われたら、どうす
るのか、総理答えてください」と。そのとき自民党から「動議中止」。以後議事録は、
発言するもの多く聴取不能。1960年5月の強行採決はこういうふうにして安保条約の成
立に強引に決着をつけた。その続きを私たちは今始めなければならない。その続きは勝
たなくければならない。そういうふうに思います。ありがとうございました。

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 MARUYAMA K.  kaymaru@jca.ax.apc.org
    2GO GREEN
  http://www.jca.ax.apc.org/~kaymaru/2GG_JCANET.html



 
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