From: "Nakada Hiroyasu" <nakada_h@jca.ax.apc.org>
To: "キーストーン" <keystone@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 1047] 米軍用地特措法違憲訴訟裁判
Date: Tue, 2 Feb 1999 19:18:59 +0900
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仲田です。
2月2日11時から「米軍用地特措法違憲訴訟裁判」第1回公判が那覇地裁にて行わ
れました。
被告国側答弁書と原告有銘政夫さん、原告代理人弁護士・西太郎さんの意見陳述書です。
資料提供は違憲共闘会議事務局長の安里秀雄さん。
 

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                               答  弁  書

第一 請求の趣旨に対する答弁
 一 原告らの請求をいずれも棄却する
 二 訴訟費用は原告らの負担とするとの判決を求める

第二 請求の原因に対する認否
 1 第一の一について
   原告らが、いずれも駐留軍施設及び区域内に土地を所有し、昭和47年5月1
   5日の沖縄の本土復帰後、国との間の賃貸借契約に応じていないことは認め、
   その余は不知。
 2 第一の二について
   国が、沖縄の本土復帰後、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安
   全保障条約」(昭和35年条約第6号・乙第1号証)及び「日本国とアメリカ合
   衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日
   本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」(昭和35年条約第7号。以下
   「日米地位協定」という。乙第2号証)の義務を履行するため、原告らの所有
   地(訴状の別紙「物件目録及び損害金目録」記載の各土地(以下「本件各土地」
   という。))をアメリカ合衆国に提供してきたことは認める。
 3 第二について
   原告らが本件各土地を訴状の別紙「物件目録及び損害金目録」記載の各施設及
   び区域内にそれぞれ所有している事は認める。
 4 第三について
   沖縄県収用委員会が昭和62年2月24日に行った使用の裁決において、本件
   各土地についても使用期間を取得する時期から10年間、権利取得の時期を昭
   和62年5月15日と定めていること、当該裁決による本件各土地の使用期間
   満了日は平成9年5月14日であることは認める。
 5 第四の一の1について
   「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく
   施設及び区域並びに日本国におけるが合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に
   伴う土地等の使用等に関する特別措置法の一部を改正する法律」(以下「改正
   法」という。)が平成9年4月23日に公布、施行されたことは認め、その余
   は否認する。
 6 第四の一の2について
   認める。
 7 第四の一の3について
   改正駐留軍用地特措法附則二項の要旨として認める。
 8 第四の一の4について
   改正法附則二項により、改正後の「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力
   及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍
   隊の地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」(以
   下「駐留軍用地特措法」という。乙第3号証)15条ないし17条が本件各土
   地にも適用されることとなり、那覇防衛施設局長は、本件各土地について、6
   月ごとに自己の見積もった損失補償額を那覇地方法務局沖縄支局に供託するこ
   とにより使用権原を取得したことは認める。
   本件各土地の担保金の供託状況は以下のとおりである。 ・平成9年5月15
   日から同年11月14日までの担保金合計748万2086円は同年5月6日
   に、 ・同年11月15日から平成10年5月14日までの担保金合計751
   万260円は平成9年10月27日に、 ・平成10年5月15日から同年1
   1月14日までの担保金合計755万63円は同年4月7日ないし同月13日
   に、 ・同年11月15日から平成11年5月14日までの担保金合計753
   万8819円は平成10年10月19日にそれぞれ供託した(乙第4号証の1
   ないし37)。
 9 第四の二について
   争う。
10 第五の一について
   駐留軍特措法により適用される土地収用法105条が「起業者は、土地を使用
   する場合において、その期間が満了したとき、又は使用する必要がなくなった
   ときは、遅滞なく、その土地を所有者又はその承継人に返還しなければならな
   い。」と規定していることは認め、その余は不知ないし争う。
11 第五の二について
   国が改正法附則2項及び改正後の駐留軍用地特措法の規定に基づく暫定使用に
   よる用権原を得て、本件各土地を駐留軍の用に供していることは認め、その余
   は不知ないし争う。
12 第六の一について
   わが国の施政権の及ばない時代のことについては、本件訴訟の争点とは関係が
   ないので、認否を差し控える。
13 第六の二の1について
   国は沖縄の本土復帰に際して「沖縄における公用地等の暫定使用に関する法律」
   (昭46年法律第132号。以下「公用地暫定使用法」という。乙第5号証)
   を制定して、この法律の施行の際(昭和47年5月15日)沖縄においてアメ
   リカ合衆国の軍隊の用に供されている土地等で、引き続き日米地位協定の規定
   に従いアメリカ合衆国の用に供する土地等は、昭和47年5月15日から5年
   間国が暫定使用できることとなったことは認め、その余は争う。
14 第六の二の2について
   公用地暫定使用法により駐留軍の用に供した土地の使用期限(昭和52年5月
   14日)の到来に伴い、「沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆
   の土地の位置境界の明確化等に関する特別措置法」(昭和52年法律第40号。
   以下「位置境界明確化法」という。乙第6号証)が制定され、その附則6項に
   より、公用地暫定使用法の当該土地の使用期限が10年と改正されたことは認
   め、その余は争う。
15 第六の二の3について
   公用地暫定使用法に基づく使用期間の満了(昭和57年5月14日)に伴い、
   国が所有者との合意の得られない土地について、駐留軍用地特措法に基づいて、
   昭和57年4月1日に沖縄県収用委員会の裁決を得て同年5月15日から昭和
   62年5月14日まで5年間、昭和62年2月24日に同収用委員会の裁決を
   得て、同年5月15日から平成9年5月14日まで10年間それぞれ使用し、
   また、改正法附則2項及び改正後の駐留軍用地特措法の規定に基づいて本件各
   土地を平成9年5月15日以降暫定使用していることは認める。
16 第六の三の1について
   駐留軍の用に供する土地のうち、所有者との合意が得られないものについて、
   沖縄の本土復帰から平成9年5月14日までの期間、公用地暫定使用法及び駐
   留軍用地特措法に基づき使用権原を得たことは認め、その余は争う。
17 第六の三の2について
   沖縄の本土復帰から昭和57年5月14日まで、昭和57年5月15日から昭
   和62年5月14日まで及び昭和62年5月15日から平成9年5月14日ま
   でのそれぞれの期間の国による本件各土地の使用権は、いずれも従前の使用権
   とは別個の新しい権利の発生・取得であること、国が公用地暫定使用法及び駐
   留軍用地特措法に基づき本件各土地の使用権を得た結果として、これを継続的
   に使用してきたことは認め、その余は不知ないし争う。
18 第六の四について
   不知
19 第七について
   争う。

第三 被告の主張
   おって、準備書面で明らかにする。

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有銘政夫さん意見陳述要旨

 私は、嘉手納米軍基地に土地を所有する有銘政夫です。
 私は現在まで続いている米軍用地の強制使用に対し地権者としてどうしても納得で
きません。具体的には、沖縄の米軍基地の形成過程から見ても、日本国憲法に明記さ
れいる、地権者の諸権利を保障する立場からみても、国による強制使用は不当・不法
な仕打ちだと考えこの裁判を提起しております。

 では、いくつかの事例をあげながら意見陳述を行います。
1 沖縄が米軍支配下にあった、1956年、プライス勧告によって、「沖縄の米軍
  基地を一括払いによってその永代借地権を得よう」とする暴挙が公表されました。

 *沖縄県民は主権回復の立場から、四原則貫徹・一括払い反対の島ぐるみ闘争を組
  織し、軍用地主を先頭に県内のあらゆる団体が団結してたたかった
 *四原則は、「一括払い反対、適正補償、損害賠償、新規接収反対」
 *2週間の間で各市町村で総決起大会が開催された。那覇市で行われた県民大会に
  は10万人が結集
 *県民大会において直訴団が結成され、アメリカ大統領への直訴の結果、軍用地の
  毎年契約、土地代を6倍に引き上げるという初歩的な勝利を得た

2 祖国復帰の前年、1971年の国会において沖縄の米軍基地をそのままの状態で
  米軍に提供するための「公用地暫定使用法」が、県民の強い反対を無視して大混
  乱の中で自民党多数によって強行可決された。

 *1972年の復帰の時点でも公用地暫定使用法の下で3000名余の軍用地主が
  具体的に契約を拒否した
 *以上1966年の島ぐるみ土地闘争、1972年の祖国復帰の時点における具体
  的な契約拒否が示す地権者及び県民の米軍基地に対する反対の意思は誰の目にも
  明らか

3 復帰後、公用地暫定使用法で6年、地籍明確化法で5年間、米軍特措法で6年と、
  10年、計26年間も一方的に強制使用を続けています。
  今回、4回目の米軍用地特措法による強制使用手続き審理中、1998年4月1
  7日、県収用委員会の公開審理の最中、国会において、米軍用地特措法を改悪し、
  地権者の意思をまったく無視して米軍用地を継続使用するという暴挙を強行しま
  した。

 *その内容は、国による強制使用の手続き申請中はいかなる状況においでも強制使
  用が出来る、また、県収用委員会において使用認定が却下されても建設大臣に対
  し不服申請中は強制使用できるという、まったく地権者の権利も、法の精神も無
  視した一方的なものでした
 *裁判長
  日米安全保障条約が優先され、日本国憲法が無視されては、主権者である国民の
  権利は保障されません。また、国会における多数決であれば法及び法手続きを無
  視してもよいという道理は民主主義社会において通用致しません
 *憲法99条は天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官、その他の公務員に
  対し憲法の擁護を義務付けています
 *憲法29条は、財産権はこれを侵してはならないと明記しています
 *更に憲法9条の精神により土地収用法は、自衛隊に関する土地の強制使用を除外
  しているはずです

 以上述べました憲法の理念が尊重されることによって、主権国家としての存在も民
主主義も資本主義社会も維持されると確信致しておりますので、当裁判におかれまし
ても県収用委員会において使用認定が却下きれた全軍用地が速やかに地権者に返還さ
れますよう特段のご配慮をお願い申しあげ陳述をおわります。

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 原告代理人の西です。
 原告代理人を代表いたしまして、意見を述べます。
 私の方ではまず最初に、本件訴訟において、私達が何を争点として提起し、審理を
求めているかについて述べた後、相代理人(新垣代理人)より本件訴訟の意義、ある
いは本件訴訟において裁判所の果たすべき役割等について申し述べます。

1 訴状請求の原因記載事項からも明らかなとおり、本件において原告ら七名は、そ
 れぞれ自己の土地所有権の侵害(被告国による不法占拠)を理由として、その損害
 (財産的損害及び精神的損害)の賠償を求めています。
  本来、駐留軍用地特措法により適用される土地収用法一〇五条においては「起業
 者は土地を使用する場合において、その期間が満了したとき、又は使用する必要が
 なくなったときは、遅滞なく、その土地を所有者又はその承継人に返還しなければ
 ならない。」と規定されています。
  今回提訴にかかる七名の土地についても一九九七年五月一四日の終了と共に返還
 されるべきものでした。
  ところが被告国は、直前の同年四月一七日、「改正」特措法を極めて短期間の間
 に成立させ、暫定使用の名のもとに五月一五日以降も引き続き土地の使用を続け、
 沖縄県土地収用委員会がきっぱりと却下の裁決を下した後も、今日に至るまで占拠
 を継続しているわけです。
  私達は、一九九七年五月一五日以降の被告の土地使用の根拠となるべき「改正」
 特措法一五条、及び附則2の違憲性を主張し、この点を審理の中心に設定するもの
 です。
  違憲の具体的内容については、訴状請求の原因等に委ねますが、憲法二九条、三
 一条、四一条、九五条違反等が主要な問題となります。
 
2 次に私達は、右「改正」特措法を成立させた国会の立法行為についても、単なる
 当・不当の領域を越えて、違法性があったものと考えております。国の違法立法行
 為とこれに基づく損害賠償請求をも重要な争点としております。
  すなわち被告国は、違憲の「改正」法を立法して、日本国憲法より保障された原
 告らの基本的人権、すなわち適法手続によらなければ財産権(所有権等)を侵害さ
 れない権利(憲法三一条)、本件土地の所有権を根拠に本件各土地を軍隊に基地と
 して使用させない思想・信条の自由(憲法二九条、一九条)を侵害したのでありま
 す。
  尚、右の争点に関しましては、最高裁が昭和六〇年に、立法行為が国家賠償法上、
 違法になる例外的な場合として「立法の内容が憲法の一義的な文言に違反している」
 場合をあげています。
  ただこれは、立法の内容が文字どおり「憲法の一義的文言に違反している」場合
 だけでなく、本件のように憲法解釈上明らかに違反していると解される場合も含ま
 れるものと考えます。実際にも右最高裁以降に出された下級審判決においては、必
 ずしも「憲法の一義的な文言」に拘泥することなく、例えば立法不作為の例ですが
 「作為義務が憲法上明文をもって定められている」場合だけでなく「憲法解釈上そ
 の義務の存在が明白な場合」にも立法(不作為)が適法となりうるとする東京地裁
 平成元年四月一八日判決(判時一三二九号三六頁)や、いわゆる従軍慰安婦に対す
 る救済立法の不作為を違法であるとして国に損害賠償が命じられ平成一〇年四月ニ
 七日山口地裁下関支部判決(判時一六四二号ニ四頁)等は、右昭和六〇年最高裁判
 決の弾力的運用を試みるものとして極めて注目されるものであり、私達も同様の立
 場に立つものであります。
 
3 原告ら代理人は、今後、以上申し述べました二点、すなわち「改正」特措法の憲
 法適合性及び国の違憲立法行為に基づく損害賠償請求を中心争点として、これらに
 基づく各原告らの損害(財産的、精神的)の主張・立証を尽くす意向であります。
 裁判所の充実した実質審理を求めるものであります。

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仲田博康
nakada_h@jca.ax.apc.org



 
  • 1998年     3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 1999年     1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

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