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Subject: [keystone 1035] RE: 伊藤政子さん・空爆下イラク報告集会
Date: Fri, 29 Jan 1999 22:57:19 +0900
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仲田です。
 

>山谷労働者福祉会館のなすびです。
 

> また、米軍に使われた劣化ウラン弾の影響と思われる被害も広がっています。放射
>性元素の違いも考えればチェルノブイリの事故にも劣らない規模で放射能汚染された
>水。そしてそれに頼っている人々の生活。劣化ウラン弾と言えば、沖縄を思い出しま
>す。
 

前に島川さんが紹介された『劣化ウラン弾 湾岸戦争で何が行われたか』に多方面から
の報告が載っています。『技術と人間』1・2月合併号に書評を書きましたので、流し
ます。長くてすみませんが。
また、同号に新潟の中山均さんが、「『新しい政治』に挑戦するフランス緑の党」とい
うタイトルで書かれています。ぜひ、ご購入を。消費税込みで893円です。
 

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                    『劣化ウラン弾 湾岸戦争で何が行われたか』
                                                                     仲田博康

 湾岸戦争で初めて使われた劣化ウラン弾。その存在はある程度知っていたが、自国の兵
士にも大きな被害をもたらす可能性があるだけに、実戦で使われるとは思ってもいなかっ
た。ウラン弾の威力の前に、イラク戦車部隊は壊滅状態になった。同時に粉塵となったウ
ラン粒子は、イラク市民に直接間接に摂取されることになる。数年後にイラクの人たち
に、
どのような障害が現われるのか、チェルノブイリの実情から心配をしていた。
 あるスポーツ紙で湾岸戦争帰還兵や、彼らの子どもに原因不明の奇病や障害が多発して
いることを知った。それが、劣化ウラン弾に関係しているのではないかという報道であ
る。
まさか、というのが最初の感覚であった。米軍には、兵士をも実験に使った放射能に対す
るデータが蓄積されているはずだ、いくら軍隊とはいえ、劣化ウラン弾の教育ぐらいは徹
底しているのではないか、なぜ米軍兵士に? という疑問であった。
 その回答の一つである。「戦闘その他の生命を脅かす危険な状況では、劣化ウランに関
するリスクよりも戦闘行為によるリスクのほうがずっと大きいので、劣化ウラン対策は無
視しうると、陸軍上層部が信じていたから」だと言う。さらに、「戦場の生存率の改善過
程で、ペンタゴンは、自国の兵員が劣化ウランに被曝することによって、長期的な健康被
害を引き起こすことは容認できると考えた」とも言う。それゆえ、兵士は劣化ウラン弾に
ついて教育はされず、彼らはウラン粉塵の飛び散る中を無防備で行動をしていたのだ。信
じ難いことである(本書より)。
 このような政治家や軍指導部が、旧兵器の消費と新兵器の実験の場として湾岸戦争を遂
行してきた。その結果、イラク国民に、そして帰還兵とその家族に何をもたらしたか、追
及していく人々の訴えをまとめた記録集『劣化ウラン弾 湾岸戦争で何が行われたか』が
翻訳出版された。二六人の執筆・講演を一〇人のスタッフで翻訳したものである。
 著者は、学者・ジャーナリスト・出版者・弁護士・帰還兵・活動家・元政府高官等、多
岐にわたっており、問題提起もそれぞれの分野からかなり突っ込んだものがなされてい
る。
 構成は、七部・二八章および付録からなる。それぞれの執筆、講演をテーマ別にまとめ
てあり、読者の問題意識に沿ってどこからでも読めるようになっている。
 アメリカの国益を守るために湾岸地域に派遣された兵士。「愛国心」に燃え、最前線で
「戦う」彼らは、味方の打ち込んだウラン粒子の飛散する中を作戦行動に従事した。数年
後に彼らに共通した体調の変化が現われ、子どもたちに障害が多発する。それに、政府や
軍当局はどう応えたのか、帰還兵は訴える。
 さらに重要なことは、情報が皆無に近いイラクをはじめ、クウェート、サウジアラビア
における被害の状況を報告していることである。帰還兵のことはもちろん問題にしなけれ
ばならない。しかし、それ以上に大きな問題は、直接ウラン弾で射撃されたイラクの人々
の状況である。ほぼ一〇〇万発のウラン弾、三五〇トンにのぼるウランがイラクの大地に
打ち込まれたと言う。その放射能は今も当地の人々を蝕んでいる。「経済制裁のため、イ
ラク人医師は基礎的薬剤すらもなく、……医者たちは、増え続ける死亡者数を記録するこ
としかできなかった」と言う。
 また、これまで見落しがちだったウラン採掘、精練の過程で被バクした人たちの問題を
も、われわれに提起する。つまり、劣化ウラン弾の問題は、それ自体が独立してあるので
はなく、ウランサイクル全体の問題としてとらえ直す必要性を感じた。
 核兵器・核燃料の製造過程で生み出される劣化ウランを、タダ同然で受け取って新たな
兵器を造り、売り込みをかける軍需産業。その威力をまざまざと見せ付けられた軍人の更
なる野望。そして死の商人によって世界各地の軍隊へと売り込まれ、開発競争はますます
激化していく。アメリカには五〇万トンもの劣化ウランが貯蔵されていると言う。
 核開発をめぐる現代アメリカ社会の矛盾、その縮図が本書に示されている。
 執筆者の一人は言う。「湾岸戦争は、劣化ウラン兵器が使われた最初の戦争だったが、
最後の戦争ではないだろう」と。しかし、最後にさせたい。読後、新たに感じた。

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仲田博康
nakada_h@jca.ax.apc.org



 
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