在日米軍機が高知沖と釜石近くの山林に相次いで墜落しましたが、釜石の墜落現場で
はジェット燃料が沢に流出したと報道されています。
([aml 10814][keystone 1010]から一部引用)
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ジェット燃料が流出し、揮発油臭が漂う現場近くの沢檜(さわひ)川では、市当局が
吸着マットとオイルネットを二重に設置し、21日に引き続き回収に当たっています
が、「現場周辺はにおいも汚れもひどい状況だ」(市生活環境課)ということです。
市役所は災害警戒本部を設置し、情報収拾にあたりましたが、市民には多くしらされ
ませんでした。約90人の警察官も現場に派遣されましたが、直接捜査はできず、現
場確保にあたっただけ
でした。
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これに関連して、Stars and Strips onlineに記事があります。
http://www.pstripes.com/edsu.html
Sunday, January 24, 1999
Team negotiates terrain to reach F-16 wreckage
その最後の部分に、
There are environmental concerns, too. Specialists, breathing through
respirator masks and clad in protective coveralls and boots, cleaned
up
traces of a clear, oily fluid called hydrazine.
環境汚染も懸念されており、防毒マスクと防護服・防護靴に身を固めた専門家がヒ
ドラジンと呼ばれる透明で油性の液体の除染を行った。
Hazardous if airborne, hydrazine has been used for decades by NASA as
a
propellant in the Space Shuttle's maneuvering engines and rocket boosters.
気化すると危険な液体であるヒドラジンは、スペースシャトルのエンジンやロケッ
トブースターの推進用に何十年もNASAで使われてきた。
In the F-16, hydrazine is used to "kick start" the aircraft's General
Electric F-110 engine. Smith said hydrazine concerns were handled in
short
order.
F-16では、搭載されているジェネラル・エレクトリック製F-110エンジンの「キッ
クスタート(始動)」のために使われている。スミスが言うには、ヒドラジンによる
汚染の問題は短時間のうちに何とかなるだろうとのこと。
Air Force workers placed large absorption pads in the clear, cold waters
of
the Hashino River to capture stray fluids that might have found their
way
into pristine river waters.
空軍の作業員は、流出した液体がきれいな川に流れ込まないように、橋野川の澄ん
だ冷たい水の中に大きな吸着パッドを設置した。
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ヒドラジンに関しては、国立医薬品食品衛生研究所の国際化学物質安全性カード
(ICSC) に記述があります。
http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj/icss0281.html
===============(一部省略して引用)=====
ヒドラジン
HYDRAZINE
Diamine
Nitrogen hydride
(無水)
N2H4/H2N-NH2
分子量 32.1
CAS番号 302-01-2
RTECS番号 MU7175000
ICSC番号 0281
国連番号 2029
EC番号 007-008-00-3
[物性]
沸点:114℃
融点:2℃
比重:1.01
水への溶解性:非常によく溶ける
蒸気圧:1.4 kPa(20℃)
相対蒸気密度(空気=1):1.1 (計算値)
20℃での蒸気/空気混合気体の相対密度(空気=1):1.00 (計算値)
引火点:38℃(C.C.)
発火温度:「注」参照℃
爆発限界:1.8〜100 vol%(空気中)
log Pow (オクタノール/水分配係数):−3.1
[重要データ]
物理的状態;外観
・刺激臭のある、無色で発煙性の吸湿性液体。
化学的危険性
・分解して、 アンモニアのフューム、水素、窒素酸化物を生じ、火災や
爆発の危険をもたらす。
・この物質は強力な還元剤で、酸化剤と激しく反応する。
・この物質は中程度の強塩基である。
・多くの金属、金属の酸化物、多孔性物質と激しく反応し、火災、爆発の
危険をもたらす。
・空気や酸素がなくても分解する。
許容濃度
・TLV :0.01 ppm, A3; 0.013 mg/m3, A3 (皮膚) (TWA) (ACGIH 1996)
暴露の経路
・蒸気の吸入、経口摂取により、あるいは経皮的に体内に吸収される。
吸入の危険性
・この物質が20℃で気化すると、空気が汚染されてきわめて急速に有害濃度に
達することがある。
短期暴露の影響
・この物質は眼、皮膚に対し腐食性を示す。
・この物質の蒸気は気道に対して腐食性を示す。
・蒸気を吸入すると肺水腫を起こすことがある(「注」参照)。
・この物質は肝臓、腎臓、中枢神経系に影響を与えることがある。
・暴露すると死に至ることがある。
・これらの影響は遅れて現われることがある。
・医学的な経過観察が必要である。
長期または反復暴露の影響
・反復してあるいは長期にわたり接触すると、皮膚が感作されることがある。
・この物質は肝臓、腎臓、中枢神経系に影響を与えることがある。
・この物質は人で発がん性を示す可能性がある。
環境への影響
・水生生物に対して毒性が非常に強い。
[火災]
一次災害
・引火性である。
予防
・裸火禁止、火花禁止、禁煙。
消火薬剤
・粉末消火薬剤、水溶性液体用泡消火薬剤、水噴霧、二酸化炭素。
[爆発]
一次災害
・38℃以上では蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがある。
・多くの物質と接触すると火災と爆発の危険性がある。
予防
・38℃以上では、密閉系、換気、防爆型電気設備。
消火薬剤
・火災時:ドラム缶などに水を噴霧して冷却する。
・安全な場所から消火作業を行う。
[身体への暴露]
急性の有害性/症状
予防
・作業環境管理を厳密に!
応急処置
・いずれの場合も医師に相談!
[吸入]
急性の有害性/症状
・腐食性、灼熱感、咳、頭痛、吐き気、息切れ、咽頭痛、痙攣。
予防
・換気、局所排気、または呼吸用保護具。
応急処置
・新鮮な空気、安静。
・半座位。
・医療機関に連絡する。
[皮膚]
急性の有害性/症状
・腐食性。
・吸収される可能性あり!
・発赤、皮膚熱傷、痛み。
予防
・保護手袋、保護衣。
応急処置
・多量の水で洗い流した後、汚染された衣服を脱がせ、再度洗い流す。
・医療機関に連絡する。
・応急処置を行うときは保護手袋を着用する。
[眼]
急性の有害性/症状
・腐食性。
・発赤、痛み、重度の熱傷。
予防
・呼吸用保護具と眼用保護具の併用。
応急処置
・数分間多量の水で洗い流し(できればコンタクトレンズをはずして)、医師に
連れて行く。
[経口摂取]
急性の有害性/症状
・胃痙攣、脱力感、嘔吐、錯乱、痙攣、意識喪失。[1,12]
予防
・作業中は飲食、喫煙をしない。
・食事前に手を洗う。
応急処置
・口をすすぐ。
・吐かせない。
・医療機関に連絡する。
[漏洩物処理]
・危険区域から立ち退く!
・専門家に相談する!
・漏れた液を密閉式の容器に集める。
・残留液を砂または不活性吸収物質に吸収させて安全な場所に移す。
・おがくず他可燃性吸収物質に吸収させてはならない。 [27]
・この物質を環境中に放出してはならない。
・(特別個人用保護具:自給式呼吸器を含む完全保護衣)
[貯蔵]
・耐火設備(条件)。
・食品や飼料から離しておく(「化学的危険性」参照)。
[包装・表示]
・特殊材料。
・破損しない包装;破損しやすい包装のものは密閉式の破損しない容器に入れ
る。
・食品や飼料と一緒に輸送してはならない。
・UN Haz Class[国連危険物分類]:8
・UN Subsidiary Risks[国連の副次的危険性による分類]:3, 6.1
・UN Pack Group[国連包装等級]:I
[注]
・発火温度は、さびた鉄の表面での24℃からガラス表面での270℃までさまざま
である。
・暴露の程度によっては、定期検診が必要である。
・肺水腫の症状は 2〜3 時間経過するまで現われない場合が多く、安静を保たな
いと悪化する。したがって、安静と経過観察が不可欠である。
・医師または医師が認定した者が適切なスプレー剤を直ちに使用することを検
討する。
・許容濃度を超えても臭気として十分に感じないので注意すること。
・(火災の危険があるため)汚染された衣服は多量の水ですすぎ洗いする。
・他の国連番号:UN 2030 ヒドラジン水和物またはヒドラジン水溶液(37%を超
え64%未満);UN 3293 ヒドラジン水溶液(37% 以下)
・Transport Emergency Card[輸送時応急処理カード]:Tec(R)−85
・NFPA(米国防火協会)コード:H(健康危険性)3;F(燃焼危険性)3;R(反応危険
性)2
[参考文献](略)
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この手の情報は、一般には知らされてないんだろうな。回収にあたったと言われる
市の職員はちゃんと防護対策をしていたのだろうか??
OSHA(Occupational Safety and Health Administration:労働環境のチェックや
指導を行っているところ米国の機関。)の資料によると、ヒドラジンは人間に対して
発癌性があると考えられている物質(グループ2B)に入っている。
http://www.osha-slc.gov/ChemSamp_data/CH_245900.html
グループ2Bのリストは、
http://193.51.164.11/monoeval/crthgr02b.html
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MARUYAMA K. kaymaru@jca.ax.apc.org
2GO GREEN
http://www.jca.ax.apc.org/~kaymaru/2GG_JCANET.html