Date: Mon, 25 Jan 1999 21:27:25 +0900
From: Masahiko Aoki <btree@pop11.odn.ne.jp>
To: aml@jca.ax.apc.org, keystone@jca.ax.apc.org
Subject: [keystone 1018] 低空合意への公開質問書
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X-Sequence: keystone 1018
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Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

 日本で現在行われている米軍機の低空飛行訓練は、空軍のF-16と海軍のF/A-
18によって主として行われています。F-16は東北地方で、F/A-18は中国地方で
頻繁に訓練を行っています。そのF-16とF/A-18が先日相次いで墜落したのはご
存じの通り。しかも1月14日に低空飛行は安全に配慮するという内容の「日
米合意」(加賀谷さんが全文を投稿されています)が発表された直後の事故で
すから、何をかいわんや。
 その合意文書を公表した外務省に対して、中国地方の「ピースリンク」が要
請書と公開質問書を送りました。ここではそれを転載しました。
 この質問書を黙殺するようなら、外務省は日本人の人命よりも米軍パイロッ
トをかばうことに力を注いでいるということ。それなら外務省の諸君は今後給料
は米軍からもらいなさい。

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外務大臣                          1999年1月22日
   高村正彦様
アメリカ合衆国大統領
   B.クリントン様
                要 請 及び 質 問 書
       1月14日づけ日米合同委員会合意を踏み台として、
      在日米軍による低空飛行訓練の中止へ向けて更なる尽力を!

 1月14日、日米合同委員会は、在日米軍による低空飛行訓練についていくつか合意
した内容を公表し、今後、日米両国政府は、必要に応じ、低空飛行訓練について協議し
ていくことになったとしています。これによると、原子力エネルギ−施設や民間空港な
どの場所を回避し、人口密集地域や公共の安全に係る他の建造物(学校、病院等)に妥
当な考慮を払う。 週末及び日本の祭日における低空飛行訓練を、米軍の運用即応態勢
上の必要性から必要かつ不可欠と認められるものに限定するなど、いくつか具体的な前
進が見られます。
 しかし、他方で「日本において実施される軍事訓練は、日米安全保障条約の目的を支
えることに役立つものである。空軍、海軍、陸軍及び海兵隊は、この目的のため、定期
的に技能を錬成している。戦闘即応体制を維持するために必要とされる技能の1つが低
空飛行訓練であり、これは日本で活動する米軍の不可欠な訓練所要を構成する」と低空
飛行訓練の必要不可欠な側面を明確に確認しており、これは、危険な低空飛行は止めて
ほしいという住民の想いを踏みにじるものです。個別的には一歩前進とも見えますが、
安全に配慮するから、公然と低空飛行訓練を政府間が公認することの宣言という側面こ
そ、本質的であり、絶対に容認できません。合意は、低空飛行の必要性を明確に位置づ
けた後、その「安全性が最重要であることから、在日米軍は低空飛行訓練を実施する際
に安全性を最大限確保する」としているだけです。
 私たちは、世界の平和を希求し暴力を否定する日本の市民として、軍事力によって秩
序を守るという理念に即して、低強烈度戦争をすばやく遂行するための低空飛行訓練は、
合理的に人殺しを行うためのものであり、絶対に容認できません。
 特に、低空飛行訓練は、周辺住民の生命と安全に関わる重大な問題であり、「市民の
安全」を保障するという観点からは、低空飛行訓練こそ、最も危険な「安全を脅かす」
存在なのです。この矛盾を克服するためには、軍事力による平和という幻想を捨てるべ
きです。
 政府として国民一人一人が安心して生きていける社会づくりを目指した政策を早急に
実行されるよう強く要求します。本合意は、一歩前進、五歩後退とでも言うべきもので、
これで、低空飛行を政府が公認したというのであってはなりません。むしろ1月14日
の合意を踏み台として、最終的には、低空飛行訓練の中止に向けて交渉するよう強く要
請します。また、いくつか疑問点がありますので、別紙の公開質問状を提出させていた
だきますので、誠意ある対応を求めるものです。

入れるな核艦船!飛ばすな核攻撃機!ピースリンク広島・呉・岩国(30団体)
アジアに学ぶ会   岩国市職労平和研究所  カトリック正義と平和広島協議会
  共育・共生を進める広島連絡会議  呉教育労働者研究会   呉YWCA79女たちから
 8.5広島集会世話人会    芸南火電阻止連絡協議会
 原水爆禁止広島県協議会(広島県原水禁)   原発はごめんだ!ヒロシマ市民の会
公害をなくす三原市民連絡会       在日韓国青年同盟広島県本部
更紗の会    市民運動交流センター福山    従軍慰安婦問題を考える会・広島
  ストップ・ザ・戦争への道!ひろしま講座  性差別は許さん!私たちは行動する会
   全国水平運動研究会      電磁波問題を考える会
    トマホークの配備を許すな!呉市民の会   東チモール問題を考える会
広島キリスト者平和の会      広島地区連帯労働組合  広島平和と生活を結ぶ会
 デルタ女の会  日本キリスト教団西分区牧師会   ピースサイクル広島ネットワーク
   除虫菊の会  広島YWCA    憲法九条の会ヒロシマ
連絡先:トマホークの配備を許すな!呉市民の会    世話人 湯浅一郎
     呉市幸町3−1 呉YWCA気付   0823−21−2414
                                            世話人  三木のりこ
      広島市中区大手町4−3−10  広島YWCA気付    
         岩国市職労平和研究所          代表  田村順玄
     岩国市今津町1−14−51     岩国22−1611

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                 公 開 質 問 状

  私たちは、この間、中国山地における低空飛行訓練の実態に関し、地元住民から
の聞き取りや独自の調査に基づき、貴職に対しても様々な問題提起をさせていただ
いています。その立場から合同委員会の合意に関連して、若干の質問をさせていた
だきます。合同委員会の合意が、マスコミなどを通じて一般に公表されたことは、
極めて希なことであり、情報公開の流れに即した意義のある対応であることを評価
しつつ、そうであればこそ、私どもからの質問にも文書にて回答されるよう心から
要請します。同封の返信用封筒にて、2月15日を目途に回答いただければ幸いで
す。

(1)米軍機による低空飛行訓練について、日米両政府が合意した文書を公表した
のは、初めてのことと認識するが、そのように捉えていいのでしょうか。従来、外
務省は、低空飛行訓練については、「通常の訓練をするのは当たり前」「地位協定
5条に定められた基地間の移動にあたる」などと明確にその存在を位置づけること
を避け続けてきたはずですが、ここに来て、低空飛行訓練の存在を認め、かつそれ
が「米軍の不可欠の訓練所要を構成する」と容認したことはなぜなのでしょうか。
 もし、初めてだとするとなぜ、この時期にそのような合意に達したのか説明して
ください。安全には配慮するが、「安保条約の目的を支えることに役立つものであ
る」から国として認めていくというのでは、私たち国民は納得できません。

(2)どのような訓練のことを低空飛行訓練というのか、その定義を明確にしてく
ださい。例えば、中国山地沿いの地域では、ダムや山の周辺で、旋回したり、谷間
をぬって飛んだり、ダムの堰堤をめがけて急降下したりという飛行が確認されてい
ます。また、町役場や学校などのある谷間を、かなり低空で飛びさっていくと言う
ことが、多くの町で確認されています。これらの両方とも低空飛行訓練なのでしょ
うか。

(3)私たちの調査では、日本列島に8本の低空飛行訓練ルートをつくっていると
みられますが、そのルート図、及び開設の時期などについて、日米合同委員会とし
て確認しているのですか。海上などに設定されている訓練空域と同じように、低空
飛行訓練空域も、正式に位置づけて、地図上に明記したと言うことでしょうか。私
たちは、低空飛行訓練ルートは、日米地位協定に基づいて設置されたものでなく、
米軍がかってに線を引いたものと認識していますが、もし、確認しているのであれ
ば、地位協定に明確に位置づけたと言うことでしょうか。いずれにしろルート図や
訓練所要を公表してください。

(4)1月14日付けの合意事項は、これまでも米軍によってこのように行われて
きたものなのか、そうではなく、今後この合意に基づいて実施していくというもの
なのかを、各項目ごとに明らかにしてください。

(5)合意事項1は、これまでは考慮していなかったが、今後は配慮すると言うこ
とでしょうか。例えば、これまで石見空港の上空を岩国所属機が何回も旋回したり
することが目撃されています。また、町の上空を通過する際は、役場、学校、保育
所の上空を飛んだり、そこで急に旋回し、逆に向いて飛んだなどの話がたくさんあ
ります。これらは、過去のことで、今後は、同様のことは行われないと言うことな
のか、それとも、過去においても注意していたが、実際には、約束は無視されてい
たのか明らかにしてください。
 
(6)合意項目2は、「国際民間航空機関(ICAO)や日本の航空法の基準を用
いている」とのことですが、いつ地位協定が変更になったのでしょうか。私たちの
認識では、日米地位協定に基づく航空特例法は、国内法である航空法に定められた
最低安全高度(81条)、粗暴な操縦の禁止(85条)などの義務を除外しています。
従って日本においては、米軍機には、日本の航空法は適用除外であるため、ごく低
高度の飛行が行われているのではないかと捉えていましたが、事情が変わったと言
うことでしょうか。
 また、従前から航空法の基準が用いられていたとすれば、事実は全く異なってい
ることをどうするのかという問題が残ります。パイロットの顔が見えたといった体
験を話す住民は後をたちませんし、谷間を飛んだり、峠を越えるときなどは、ほと
んど陸地すれすれに飛行することが目撃されており、現実は異なっていることを示
しています。

(7)合意項目4では、飛行経路の研究や、整備要員との点検などを十分行うとの
ことですが、合意が出されて1週間も経たないときに、日本列島の南と北で米軍機
が相次いで墜落事故を起こしています。20日には、岩国所属のホーネットが土佐湾
で、21日には、三沢所属のF−16が釜石市の山林で、相次いで落ちているのです。
たまたま住民が巻き込まれていないだけで、国民は不安を抱かざるをえません。こ
れらが、必ずしも低空飛行訓練であったとは限りませんが、通常訓練でも、これだ
け事故が起きているのですから、低空飛行ではもっと危ないはずです。さらに、部
品の落下事故などを含めれば、ひっきりなしに事故が起きていると言っても過言で
はありません。合意がどこまで実行されるのかと言うことに疑念を抱かざるをえな
い所以です。貴職として、この合意が実行されるために、どのような方法を講じよ
うとしているのでしょうか。

(8)最後に1月14日の合意は、どのような位置づけの下に行われたものなのか明
らかにしてください。つまり、合意の冒頭で触れているように、何があっても、安
保条約の目的を遂行するために、低空飛行訓練は必要不可欠のものであるとの宣言
は、変更しないという意志表示なのでしょうか。世界的には、ドイツやイタリアの
ように、米軍機による低空飛行訓練の空域はどんどん減っていっているのが趨勢で
す。ほとんど唯一残っているのが、日本列島なのではないでしょうか。そのような
文脈を考慮するとき、私たちは、最終的には日本における低空飛行はなくなる方向
性を持ちつつ、暫定的に、その安全性への配慮を求めるというものでなければなら
ないと考えます。貴職が、本合意を公表した意図は、それとは全く逆に向いている
ものと解釈していいのでしょうか。つまり、安全性への配慮を強化することを条件
として、低空飛行訓練自体は、正式に容認したものとして、本合意があるのでしょ
うか。

                                                      以上

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     Masahiko Aoki
     青木雅彦
     btree@pop11.odn.ne.jp
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