日本の独自の軍事戦略というものはなく、ひたすら米軍の戦略に追随する以
外ない以上、首相や防衛庁長官の発言でなく、米国防長官や国防次官補の発言
をフォローするのが、日本のやりたいことを理解する唯一の道です。その点で、
来日したコーエン国防長官の14日の記者会見は精読すべきものと思います。
この中で長官は、I expressed our gratitude for Japan being among the
very first - indeed, the first - to express its support for the action
that was taken.と先のイラク空爆に日本が世界最初に支持を表明したことを
感謝していて、こちらはもう穴があったら入りたい気持ちです。政府の太鼓持
ちぶりを公の場で絶賛するとはホントにイヤミな性格です。
この会見は長いのでここに転載はしません。色々重要な論点が出ているので
日本の安保問題に関心のある方は、ぜひ国防総省のNewsの部分で全文を見てく
ださい。
DoD News Briefing
Thursday, January 14, 1999
Secretary of Defense William S. Cohen
Press Conference at the U.S. Embassy, Tokyo, Japan
ここでは一点だけ重大問題の質疑についてお知らせして、その典拠について
質問です。
巷では99年前半の「北朝鮮危機」のシナリオが、新聞・雑誌に氾濫してい
るのはご存じの通り。こういうシナリオの大部分は売らんかなの雑誌のセンセ
ーショナル記事ですが、米軍自身も「第2次朝鮮戦争」の「新シナリオ」を最
近策定したという報道があります。今回の記者会見でも、そのシナリオは本物
かという質問が出ました。
Q: I have two questions. (略) In the case of contingency,
the Far
Eastern Economic Review and other magazines have reported that U.S.
forces in Japan may go to Pyongyang - there is such a war plan.
Is
there such a war plan, really? And is this plan frequently revised?
Could you talk about these points? Thank you.
A:(略)With respect to contingency plans, we believe that we must
maintain a very strong deterrent against any attack upon the South
or
upon Japan on the part of North Korea. And that deterrent capability
is one that we will maintain, strengthen as need be, but to remain
vigilant and strong. At the same time, we are seeking to be as
open
and flexible in dealing with the North as far as our negotiations are
concerned. We think it's important that we continue to engage
the
North to seek to persuade them that the path toward their integration
into the international community is one that should be pursued on a
peaceful basis rather than a confrontational one, or one that seeks
to
in any way intimidate the countries throughout the region.
質問者はFar Eastern Economic Reviewなどに載っている「在日米軍を平壌
に送る」戦争計画について質していますが、長官は一般論にして答えを回避し
ています。ご参考までに、この「米軍筋が明らかにしている」計画は(たぶん
ソースは同じはず)産経新聞によれば以下のようにまとめられています。
B1長距離戦略爆撃機とB52戦略爆撃機が、米本土を次々に飛び立って北朝鮮
上空に向かう。在日米軍横須賀基地を母港とする空母キティ・ホークも日本海
に回り、飛行甲板からは戦闘爆撃機が一斉に発進する。巡航ミサイルを搭載す
る潜水艦も日本海へと急行する。
・・・・・・・・・・
韓国軍約六十七万はもちろん、在韓米軍約三万六千を投入し、DMZを越えて
北朝鮮の奥深く進攻。沖縄に駐留する米海兵隊の第三遠征軍と米本土を拠点と
する残る第一、第二遠征軍は海から上陸急襲作戦を展開する。目指すは平壌。
首都を制圧して金正日体制を倒し、北朝鮮を韓国の支配下に置く。
(1月14日付け)
要するに以前のように政権の「崩壊」をねらうのでなく、武力で政権を転覆
するということです。重大なことは在日米軍がそ
のために単に「投入」されているだけでなく、沖縄海兵隊は首都を制圧する任
務を担っているということです。長官か全く否定しなかったことからも、また
米軍の配置からしても、確かにこのような計画が存在することは確実だし、日
本政府も知ってはいるのですが、これは事前協議の対象だがと、長官を問い詰
めたという話も聞きません(そんなことするはずない)。
それでこのFar Eastern Economic Review誌の記事や関連する記事の存在に
ついてご存じの方はおられるでしょうか。
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Masahiko Aoki
青木雅彦
btree@pop11.odn.ne.jp
メールアドレスが変わりました
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