「つくろう平和!練馬ネットワーク」からの活動報告を紹介します。
練馬区長さん、何を早とちりしたのか、「周辺事態法案」を「当然憲法の範囲内である
」などと公言なさったとのこと。まだ成立してないのに。
以下報告
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〈報告〉 「周辺事態法案」をめぐる自治体の対応の一例
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東京都練馬区は「『周辺事態法案』合憲論」を、ついに撤回
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報告者=「つくろう平和!練馬ネットワーク」
報告の日=1998年12月23日
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◇報告者の自己紹介・これまでの活動の経過◇
私たち「つくろう平和!練馬ネットワーク」(略称・平和ネット)は、東京都の区
部では一番西の端に位置する練馬区で、反戦・平和の市民運動をつづけているグルー
プです。練馬区には、陸上自衛隊の駐屯地(基地)が二つもあり(朝霞駐屯地と練馬
駐屯地)、それによって、軍用ヘリコプターによる騒音公害を初め、さまざまな被害
が私たちの日々の生活に及んでいます。
私たちは、1990年、PKO法案と基地機能の強化に反対して反戦の活動を始め
、以来8年間、こつこつと蟻が地を這うような努力をつづけてきました。本年は、3
月と9月に「新ガイドライン」に反対するデモを行ない、11月1日には、《自衛隊
の日・中央観閲式》に反対して、観閲式の会場となった朝霞駐屯地にデモをし、自衛
隊に「抗議と要求」の文書を手渡しました。
これらの活動のほか、ときどき「ティー・ブレイク」という名で勉強会や討論会を
行ない、昨年からは反戦メディア『季刊・練馬から』を発行しています。また「平和
ネット」のメンバーは、区内外のさまざまな企画に参加しています。私たちのモット
ーは、あえていえば、〈練馬大根〉のようにしっかりこの地に根ざし、二つの自衛隊
基地を監視しながら、日々なしうることを模索するということです。そしてそのよう
なありようの基本は、私たちが生活者あるいは労働者であり、この国と世界の政治の
動きに責任を負う市民であるという意識です。
しかし「平和ネット」は、その名が示すとおり、とてもゆるやかなネットワークで
、いろいろな職業の仲間たちで構成されていますので、たとえば私たちのデモには、
子どもたち、高校生から80代の高齢者まで多様な年齢の人びとが参加しています。
ですからいつもにぎやかで明るいアピールを行なっています。
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◇「周辺自体法案」をめぐる練馬区とのやりとりの経過◇
さて「平和ネット」は、本年(1998年)8月7日、岩波三郎・練馬区長に質問
書を出しました(資料1)。それへの「回答」は同月20日に得られましたが(資料
2)、これは「木で鼻をくくる」という表現がぴったりの官僚的答弁であったばかり
か、「周辺事態法案」を「当然憲法の範囲内である」とする、おそらく全国的に最も
突出して悪質なものでありました。そこで私たちは区の《無条件合憲論》への対応を
、学者・弁護士を含むさまざな仲間たちの意見を聞いて、注意深く検討し、10月2
日、再質問書を提出しました(資料3)。
そして10月15日、区長室の最高責任者(区長室長事務代理・粕川創造氏、現在
、区長室長はいない)に面談して、再質問書の趣旨を説明しました。この会合で私た
ちは、ごくあたりまえの憲法論をじゅんじゅんと説いて、区の《無条件合憲論》の根
拠を質(ただ)しました。これに対して粕川氏はまったく論理的な対応ができず、つ
いに返答に窮して、「おっしゃることは真にもっともです。全面的に回答を出し直し
ます。3週間時間を下さい」とのべたのです。(つけ加えておくと、私たちはこの会
合で激しい言葉を一度も使いませんでした。)
しかし区の「再回答書」は、約束の期限内には得られませんでした。聞くところに
よると、区長室の「再回答書」の原案は比較的早く用意されたけれども、最初の「回
答書」を担当した総務課が対応を遅らせたということのようです。
得られた「再回答書」(資料4)は、むろん完全に納得のいくものではなく、いろ
いろ問題のあるものですが、「周辺事態法案」については、以前の《無条件合憲論》
を事実上撤回しています。これは、国会に上程されただけで、趣旨説明さえ行われず
一度も審議されていない法案を「当然憲法の範囲内」とする姿勢が変えられただけで
すから、いわば行政として当然の立場に戻ったにすぎないのですが、最初の回答は区
議会での区長答弁そのままなのですから、「再回答書」の文言は《従来の区長答弁の
変更》であり、《区の見解の「修正」》と言えます。このような「修正」が文書化さ
れたことの意味は小さくないと、私たちは考えています。
むろん問題は改めてスタートラインについたのであり、「平和ネット」は今後、「
周辺事態法案」そのものについて粘り強く区の見解を求め、区に同法案反対の姿勢を
表明させるよう努力します。そのような活動をもって、全国の仲間たちのたたかいに
連帯し、ともに同法案を葬りたいと思います。これで報告を終わり、以下に関連の資
料を掲載します。
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《お断り》
この情報提供については、「つくろう平和!練馬ネットワーク」のメディア『季刊
・練馬から』の編集者である井上澄夫が担当しました。なお、私たち「平和ネット」
は現在、「日米共同方面隊指揮所演習(ヤマサクラ35)」を中止させるという大き
な課題に取り組んでいます。同演習は、来年(1999年)1月21日から31日に
かけて、東京都練馬区と埼玉県朝霞市・新座市にまたがる、陸上自衛隊・朝霞駐屯地
を中心に行なわれる予定ですが、演習の中止を求め、同駐屯地の米軍使用に反対する
声が、練馬区側でも埼玉県側でも上がり始めています。私たちは、さして多くない人
数で、その声をもっと大きくすることに全力を傾けているので、当面みなさんのお問
い合わせに対応する余裕がありません。そのため、この送信においては、とりあえず
情報の提供のみ行ないます。この点、どうかご理解下さい。
(なお、「ヤマサクラ35」阻止に関する情報も、近く提供できるよう努力するつも
りです。)
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【資料1】
練馬区長 岩波三郎 殿
質 問 書
国会で審議中の“周辺事態法案”(周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保
するための措置に関する法律〔案〕)等に関連して、下記の点につきお尋ねします。
回答は8月24日までに文書で下さるよう、お願いします。
1998年8月7日
つくろう平和!練馬ネットワーク
代表連絡先 池尻成二
(住所・電話番号略)
記
一、“周辺事態法案”には、いわゆる「周辺有事」に際して自治体に「必要な協力を
求めることができる」旨の規定が盛り込まれ、国は「自治体の協力は義務」との説明
を行っています。この点については、「周辺有事」への関与そのものが憲法はもちろ
ん、日米安保条約の枠組みすら超えるものであること、住民の生活と権利に大きな影
響を及ぼしかねないこと、自治体へのヒアリングすら行わないままに法案に盛り込ま
れたことなどの理由から、全国の自治体から反発と疑問の声があがっています。私た
ちもまた、“周辺事態法案”に反対するとともに、練馬区がこの問題にどのような態
度を取っていくのかを深く注視しているところです。そこでうかがいます。
@「周辺有事」の際に自治体の協力を義務付ける“周辺事態法案”の規定に対する
、練馬区の考え方を示してください。とりわけ、「非核平和都市宣言」の精神に照ら
してどう考えるか、お聞かせ下さい。
A同規定の見直しを求め区として何らかの意思表示を行うべきと考えますが、いか
がでしょう。
B“周辺事態法案”が規定する自治体の「協力」の内容について、政府・防衛庁に
照会し、明らかにしてください。
二、私たちは、朝霞駐屯地(大泉学園町)で開催されてきた自衛隊中央観閲式に反対
してきましたが、今年11月1日、3年ぶりに区内での観閲式が予定されています。
この観閲式について質問します。
@観閲式の際に、自衛隊員が都立公園や一般住宅地を巡回していること、付近の学
校施設などを利用していることをご存知ですか。
A観閲式の際の騒音、交通渋滞、そして軍事車輌や部隊が多数往来する事態に、住
民は大きな不安と迷惑を感じています。観閲式をふたたび練馬区内で開催することに
ついて、防衛庁・自衛隊から事前の説明や協力依頼はありましたか。観閲式のために
、区立施設や区道、区立公園などを提供することはありますか。
三、今年の防災訓練について伺います。
@今年練馬区が行う防災訓練において、自衛隊はどのような形で参加するのでしょ
うか。参加する目的、形態、参加する装備や人員などを示してください。
以上
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【資料2】
練区陳収第41号
池尻成二 様 平成10年8月20日
練馬区
区長室長事務代理 粕川創造
質問書「周辺事態安全確保法案等について」(回答)
時下、池尻様にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、先般、池尻様からいただいた「質問書」にお答えいたします。
1.「周辺事態安全確保法案」について
我が国は法治国家として、あらゆる国際的・国内的活動が、法の根源である憲法の
もとで行われており、「周辺事態安全確保法案」も、当然憲法の範囲内であると考え
ております。
現在、「周辺事態安全確保法案」は、国会に提出されておりますので、その審議等
をとおして、国の適切な対応を注意深く見守っております。
2.朝霞駐屯地における観閲式について
観閲式が朝霞駐屯地で行われることについては、通知がありましたので承知いたし
ております。また、開催にあたり区施設等の使用および提供の要請はありません。
いずれにいたしましても、観閲式は国の行事であり、我が国の安全を確保するため
に必要な自衛隊の内容を公開するものでありますので、区民の方がたのご理解をいた
だいているものと存じております。
3.防災訓練への自衛隊の参加について
現在予定されているのは、以下の通りです。
(1)訓練名称 防災機関合同訓練
(2)訓練目的 ライフライン途絶等の際の応急対策への対応など
(3)訓練予定日 平成10年11月4日(水)
(4)訓練会場 総合教育センター
なお、訓練の詳細、形態、装備、人員等については、今現在未定です。
(担当)1.2.総務部総務課、3.総務部防災課
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【資料3】
練馬区長 岩波三郎 殿
1998年10月2日
再 質 問 書
つくろう平和!練馬ネットワーク
代表連絡先 池尻 成二
住所・電話番号(略)
私たち「つくろう平和!練馬ネットワーク」が、本年(1998年)8月7日、練
馬区長宛てに提出した質問書に対し、練馬区は、同年8月20日、区長室長事務代理
の粕川創造氏名で「回答」を寄せました。
しかしながら、「回答」の1は、私たちの質問に正面から答えておらず、後述のよ
うに、かえって大きな疑問を生じせしめるものであり、また2も、同様に正面からの
回答を回避しているのみならず、これも後述のように、その文言に多大の疑義を抱か
ざるをえないものであるので、ここに改めて質問を発します。
なお、私たちが2度にわたり、区長の見解を質すのは、いま国会に上程されてる「
周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(案)」
(以下、「周辺事態法案」と略記します)が、国会で可決されれば、私たち区民の生
活と権利が著しくおびやかされる恐れがあること、またアジア太平洋の近隣諸国にと
って巨大な軍事的圧力となることなどを、強く危惧し、深く憂慮するからであって、
いわば私たちの今後の生存を左右する問題ととらえているからです。以下の区民によ
る再質問に対し、区長が自治体行政の最高責任者として誠実に回答することを強く求
めます。
一、「回答」の1について
「回答」の1は、「『周辺事態安全確保法案』も、当然憲法の範囲内であると考え
ています」とのべています。これは、私たちの質問書の一の全三項目への回答を回避
し、「一般論」をのべた形をとっていますが、私たちはこの内容に大きな疑問を感じ
ます。
そもそも「周辺事態法案」は、現在の段階では、政府が国会に提案している法律案
にすぎず、立法機関である国会を通過成立したものではありません。したがって、こ
の法案が国会によって合憲であると認められたわけではありません。またかりに同法
案が国会を通過した場合でも、それが合憲であるかどうかは、最終的には裁判所によ
って判断されるというのが、違憲審査制度をもつ日本国憲法の基本的な考え方です。
ところが「回答」は、国会での合憲判断さえなされていない「周辺事態法案」につ
いて、「当然憲法の範囲内であると考えております」とのべています。そこで、まず
、練馬区が「周辺事態法案」を「当然憲法の範囲内である」と判断した根拠を、明ら
かにしていただきたいと思います。
このような重大な事案について、区として独自に合憲の判断を下した以上、区が「
周辺事態法案」の全内容を子細に検討し、日本国憲法の諸条項との厳格にして緻密な
照会を行なったにちがないと私たちは考えます。それゆえ、私たちはなによりも、区
の合憲判断の根拠を、詳細に知りたいと思います。誠意ある明確な回答を求めます。
二、「回答」の2には、「我が国の安全を確保するために必要な自衛隊」とあります
が、「我が国の安全を確保するために」自衛隊が「必要」であるという見解は、区の
正式見解でしょうか。そうであるなら、その見解の根拠を示してください。
三、「回答」の2は、自衛隊の観閲式について、「区民の方がたのご理解をいただい
ているものと存じております」とのべています。
しかしながら、練馬区民である私たちは、集会を開きデモを行なうことによって、
これまで自衛隊の観閲式の開催に反対してきました。本年11月1日に行なわれる予
定の同式典についても反対です。とりわけ今回の観閲式は、防衛庁の、どの官庁も及
ばない、信じがたいほどの腐敗が発覚し、額賀福志郎防衛庁長官の辞任を求める声が
日々高まる中で強行されるのであり、私たちは断じてこれを認めるわけにはいきませ
ん。
このように、これまでも反対集会とデモが行なわれ、今回も反対の声が広がろうと
しているのですが、それにもかかわらず「回答」の2が「区民の方がたのご理解をい
ただいている」と主張する根拠は、いったいなんでしょうか。この点も明確にご回答
願います。
以上
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《資料4》
練区陳収第61号
平成10年11月25日
池尻成二様
練馬区区長室長事務代理 粕川創造
「再質問書」について(回答)
時下、ますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
平成10年10月12日に文書および口頭でお申し出のあったご意見、ご質問につ
いて、つぎのとおりお答えいたします。なお、回答が遅れましたことをお詫び申し上
げます。
一について
わが国は法治国家として、あらゆる国際的・国内的活動が、法の根源である憲法の
もとで行われており、国会に提出される法案についても、憲法を頂点とする法体系に
矛盾しないよう、綿密な法的検討を経ているものと考えられます。事実、「周辺事態
安全確保法案」に対する政府の説明は、第9条の協力要請に応えなくても制裁的措置
をとることはないとするなど、現行法の遵守という立場を明確にしております。
しかしながら、一方では、同法第9条の規定がきわめて概括的であり、具体的な協
力内容が明確でないことや、実際には政府の協力要請を断りきれない懸念があること
など、種々の疑問が指摘されていることも承知しております。
したがいまして、区としては、こうした論点を念頭におきながら、国会における論
議を見守ってまいります。今後、同法案等に対する疑義が生じた場合には、他の自治
体と協力しながら、国に対し意見を述べるなどの対応を図ってまいります。
先般さしあげた回答は、上記の回答に訂正させていただきます。
なお、現在までに、国に対し問い合わせ等を行ったことはありません。国からの関
係文書の送付については、平成10年6月18日付け内閣安全保障・危機管理室長ほ
かから東京都知事あての文書の写しを、東京都から受け取っております。
二について
「我が国の安全を確保するために必要な自衛隊」との部分については、「自衛隊法
により、“わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため……わが国を防衛するこ
とを任務とする”旨規定されている自衛隊」と訂正させていただきます。
なお、8月7日付け質問書二の各項目については、つぎの通りです。@個々の事実
については把握しておりません。A事前に文書による通知を受けております。区立施
設等の使用許可については、各条例等の規定に則り判断いたします。
三について
自衛隊の観閲式に対し、一部に反対の声があることは承知しておりますが、区に寄
せられる意見等からみて、全体としては、区民の方々のご理解をいただいているもの
と存じております。
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3月、4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月、12月