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Date: Fri, 20 Nov 1998 23:27:00 +0900
To: keystone@jca.ax.apc.org
From: higa akiko <higa@jca.ax.apc.org>
Subject: [keystone 836] 澤田さんから
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X-Sequence: keystone 836
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Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

比嘉@京都在住です。

名護・二見で10区の会を手伝っていた京都の澤田さんからメッセージを
もらいましたので、ご紹介します。(本人には了承済)
難しい言葉がありますが、読みやすい文章です。

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                            澤田春彦

 敗北から一夜明けた16日、ヘリ基地建設予定地のキャンプ・シュワブ沖
の海はまるで何事もなかったかのように碧緑の色を見せていた。この地域で
反対運動を続けていた人々の落胆はおおきい。知事選という闘いの敗北の後
でいったいこの地域の人々に言葉が残されているのだろうか。そうした疑問
が一切ならず私の心を掠めた。思えば昨年の名護の市民投票以来、市長選で
敗れ、今回の知事選でも敗れた。人々のふるさとを想う心と基地移設反対の
意思を想う時、一抹の疲れを感じざるをえないのは人間ならば誰しもあるこ
とだろう。しかし、その度に沖縄の人々はあまりにも強いと確信せざるをえ
ない。すでに、政府と稲嶺氏は、北部に軍民共用の陸上基地をと、建設予定
地の具体的な選定に入り始めた。東村の高江区は16日に緊急代議員会を開
催し「基地建設反対」を明確に掲げている。さらにヘリ基地予定地キャンプ
・シュワブをかかえる名護市でもヘリ基地反対協が動き始めるなど活発な動
きが始まりつつある。陸上案を公約に掲げて、あえて基地問題を知事選の焦
点から外して当選した稲嶺氏だがこれから彼の行く先には様々な難問が山積
しているといわざるをえないであろう。

 15日の知事選の敗北の後で多くの沖縄の人々、本土の人々が落胆に襲わ
れ、敗北の後でいったい何が残されているのかと自問しているかもしれない。
しかし、よく闘われた敗北は、安易に得られた勝利よりも、その後の運動の
発展にとって時にはおおきな役割をすることがあるという事を想い起こすな
らば、今回の敗北が非常におおきな敗北であったにせよ、取り返しのつかな
い決定的な敗北ではないと断言することができる。

 確かに稲嶺県政の誕生は、沖縄の反基地運動にとって重大な敗北であるこ
とは疑いをえない。にもかかわらず、それは決定的な敗北ではありえないこ
とを再度確認しよう。味方の戦列の乱れからその抬頭の時に粉砕できた敵は
今日、県政を握り、基地建設のための重要な2,3の拠点も占領した。これは
彼らにとって非常に有利な事態だが、決定的な闘いは未だ交えられていない。
議会闘争はブルジョア社会にあっては民衆にとって非常に不利な局面での闘
いとなる。大衆的な街頭での闘いこそが民衆が真価を発揮するべき場所なの
だ。

 普天間基地の県内移設という道を選んだ日本政府と稲嶺県政は早晩、壮大
な規模での民衆の反乱に遭遇するであろうことは疑うことすらできない。今
回の知事選の稲嶺氏の当選が即、ヘリ基地容認と受け取られることはあるま
いと思われるが、知事選直前のマスコミの世論調査によっても普天間基地
「返還」に伴う代替策はグアムやハワイなどの米国本国に移設が43%とも
っとも多くさらに本土移設を加えると60%を越え、大田前知事の主張した
県外移設が過半数を超えている。今回の選挙の焦点は基地問題であったこと
は歴然たる事実であるが、「県政不況」などという低い次元のプロパガンダ
で焦点を経済問題にすり替え当選したのが稲嶺氏なのだ。しかし、そのこと
によってパラドキシカルではあるが、本当の焦点に稲嶺県政が逆襲されるこ
とは明らかである。現在、稲嶺陣営はやんばるのどこに軍民共用の基地をつ
くるのか、未だに候補地さえ明確にできないありさまで、しかも、業を煮や
した米国政府は再び「海上案」を述べ始めている。もともと、日本政府でさ
え陸上ではあまりにも被害が多すぎるからといって「海上案」にしたものを、
再びひっくり返して一体どう責任をとるつもりなのか。

 知事選で示された沖縄の人々の意思が、即、ヘリ基地容認でないことは明
らかである。

 沖縄の心はけっして死んではいない、否、それは一段と逞しくなり蘇るこ
とだろう。

 それでは一体何が大田知事の3選を阻んだのかその理由を考えなくてはな
らない。だが、県知事選が終わって3日で、なぜ、革新の基盤であった沖縄
県の都市部で地滑り的敗北が起こったのかは天才の才能をもってしても明確
な回答は与えることはできないだろう。ただ、ひとつ言えることは90年代
にはいって起こった日本本土の社会党の崩壊を象徴とする保守-革新の政治
構造の崩壊が沖縄にも波及したということだ。

 93年政変で社会党の恥ずべき裏切りは、日本の政治の総保守化現象を招
くにいたった。社会党は従来掲げていた安保破棄、自衛隊違憲をそのまま現
実に追随する形で放棄した。その後の96年の米軍駐留特別措置法の改悪の
さいに見られた国会の総翼賛体制を生み出すに至った。その結果、社会党は
社民党と名前を変えて生き残りを図ったが後3年は持たないといわれるぐら
いの極小政党に空中分解してしまった。こうした、日本的な大きな政治の地
殻変動の過程に対応できなかったのが今回の沖縄の革新陣営の真の姿なので
ある。そのことは選挙の2日後に発表された公式の共産党の新聞「赤旗」の
主張を見てもよくわかる。「稲嶺氏は、普天間基地返還問題で自分も海上基
地に反対であるとしながら、基地問題を争点にすることを避け、「県政不況」
などと称して、政府の失敗による責任を大田県政におしつける宣伝をおこな
ってきました。・・・稲嶺氏は、基地問題の本質だけではなく、不況の原因
についても二重三重に有権者をごまかす宣伝をおこなったのです」と可哀想な
赤旗は述べている。可哀想なというのは、「ごまかす宣伝」に有権者が騙さ
れたなどという総括をしているような共産党に政治を語る資格はないという
ことだ。もちろん、私は、新左翼の人たちのようにことさら社会党・共産党
を攻撃し、彼らに誹謗・中傷を加えるためにこの文章を書いているのではな
い。しかし、ほんとうの共闘というのは相互の批判的精神が何よりも必要だ
と信じるからこそ彼らを批判しなければならないのだ。ごまかしに乗せられ
た有権者というのではあまりにも、無惨な、惨めな総括という他はないだろ
う。むしろ問題は、稲嶺陣営が確実に都市型に対応した疑似市民運動的色彩
を持った選挙戦を展開したことに対して、大田陣営はあまりにも55年体制
がそのまま残っているかのような労組-政党を中軸とする選挙戦を行ってし
まったというところにある。このことをいかに反省し、学ぶかが今後の展望
を左右するであろう。

 沖縄の闘いは今、自信を喪失し、打ちひしがれている。しかし、闘いが敗
北の涙を飲み込み新たな前進を始める日は近い。ヘリ基地問題は1年以内に
煮詰まるだろう。時間はあまり残されてはいない。明日には必ず95年の悲
しい事件以来の闘いが澎湃と巻き起こるだろう。それを信じる理由はある。

 ガイドライン関連法案の来年1月の通常国会での審議入りはほぼ確実視さ
れている。それを押し止める有効な手段は未だ闘う勢力のなかにはない。恐
慌型不況の一層の深刻化とアジア・太平洋地域の政情不安は日米政府をして
新ガイドライン安保という地獄へとくだる道にすべてをかけさせている。日
米新ガイドライン安保は、資本主義の断末魔におけるブルジョア社会の「救
いの手」だと彼らは言うであろう。われわれは、その救いの手に縋る必要の
ない自立的で、持続可能な資本主義にかわる新しい経済を模索しなければな
らない。そして、彼らのもっとも弱い結び目を突くのは、やはり新ガイド
ラインに持続的に抵抗する勢力であり、沖縄の新たなヘリ基地建設に反対す
る運動なのだ。知事選の敗北はおおきな敗北だ。だが、これからが始まりで
あることを自覚しよう。ガイドライン関連法案に抵抗し沖縄に連帯する、こ
れが未来への道だ。勝利の女神はそこにいる。

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比嘉明子  higa@jca.ax.apc.org 
 

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