Date: Fri, 06 Nov 1998 21:22:54 +0900
From: Masahiko Aoki <btree@pop1.osk.3web.ne.jp>
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Subject: [keystone 780] ひき逃げ、当て逃げ外務省会見
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 先月の沖縄での海兵隊のひき逃げと当て逃げについての、外務省の公式見解。
報道官の会見の要旨が、外務省のホームページにようやく載っています。その
部分だけを転載します。
 ご存じの通り、「遺憾」というのは官庁・政治家用語では「別にたいしたこ
ととは思わない」という意味。また「状況を見つつ今後の方針を考えていく」
というのは、お役所表現では、単純な時間稼ぎの表現で何もしないという意味
だと、大蔵省勤務の経験のあるある経済学者が喝破しています。
 ひき逃げ事件については、この報道官は被害者が海兵隊だけでなく後続の車
にも轢かれた点を特に強調して、すでに弁護士モードに入っています。

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報道官会見要旨 (平成10年10月30日(金)17:00〜 於 会見室)

 沖縄の米兵による当て逃げ事件

        (問)海兵隊参謀長からの回答はどうだったか。

        (報道官)とりあえず申し入れたという状況であり、いま警察当局で
        も事実関係を調べているところであるが、米側の反応は先ほど申し上
        げた通り、米国大使から野中官房長官に対して「遺憾である」という
        ことと「再発防止のため一層の綱紀粛正に努めたい」という言葉があ
        ったが、現時点での反応はそれに集約されていると思う。

        (問)米国人2名は沖縄県警当局の逮捕下にあるということか。

        (報道官)まだ逮捕状が出ているというふうには理解していない。身
        柄を確保して事実関係を調査しているところであると承知している。

        (問)2名は海兵隊員か。

        (報道官)1名は海兵隊員で、もう1名は「空軍所属の模様」とされ、
        今、確認中である。

        (問)その近くで当て逃げをした米軍公用車も確保されたのか。

        (報道官)そこまでは申し訳ないが事実関係を承知していないが、車
        両がしばらく離れた民間駐車場で見つかったということで、乗ってい
        た2名は車から下りて逃げていたところで身柄を確保されたというこ
        とかと思う。

        (問)野中官房長官はフォーリー大使にどういう形で伝えたのか。

        (報道官)官房長官はたまたま今日の午後、大使と会われる機会があ
        ったとは承知しているが、フォーリー大使と会われたときに「遺憾の
        意」と「再発防止と綱紀粛正」を強く申し入れたと承知している。

        (問)先日のひき逃げ事件があった際も再発防止を申し入れたと思う
        が、また起きてしまったことに対し、外務省としてどうとらえている
        か。

        (報道官)まさにこういう事件が起きないようにということで、再発
        防止、綱紀粛正を申し入れてきているわけで、今回の事件の事実関係
        をさらに把握する必要があるが、当て逃げというような事件が起きた
        ことについては、非常に遺憾に思っている。今後どうするかというこ
        とについては警察当局が調査中なので、その状況を見つつ今後の方針
        を考えていくという所である。

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報道官会見要旨 (平成10年10月9日(金)17:00〜 於 会見室)

 沖縄県における米国兵による少女轢き逃げ事件について

        (問)身柄引き渡しを巡って日米の合同委員会とかで取り扱われるよ
        うな話があるが、現時点における本件の状況如何。

        (報道官)今回の米海兵隊員による轢き逃げ事件の現況を申し上げる
        と、10月7日早朝に事件が発生、被疑者立ち会いの下に沖縄の警察が
        実況検分を実施し、更に被疑者および同乗者の取り調べを行うなど、
        米軍当局の協力を得ながら所要の調査を行っている状況である。今、
        被疑者の身柄は米軍当局にあり、地位協定17条5項Cの下で、被疑者が
        起訴されるまでは米軍当局が身柄の拘禁を継続するものとされている。
        沖縄県警が本件被疑者につき逮捕状の発行を受けたことから、捜査の
        一環として刑事特別法第10条第1項に基づき、被疑者の逮捕状の執行
        に関する同意を米側に要請したが、これに対して、現地米軍司令部は
        「既に米軍当局側において被疑者の身柄を拘禁している」として、沖
        縄県警の要請には応じなかったと承知している。
         今後、更に捜査が続いていく訳であるが、質問の趣旨は刑事裁判手
        続きに関する平成7年10月25日の日米合同委員会合意(一定の場合
        「起訴前の拘禁移転」の要請を行うことができる)に係わるものと思
        う。この合同委員会合意の下では、「殺人又は強姦」という凶悪な犯
        罪と特定された場合に、被疑者の起訴前の拘禁移転についての如何な
        る日本側の要請に対しても、米側は好意的考慮を払うことになってい
        る。また、日本国が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合につ
        いて、日本側が合同委員会に提示することがある特別の見解を十分に
        考慮することを規定している。そこで、合同委員会合意に基づく起訴
        前の拘禁移転の要請を行うかどうかについては、捜査当局の捜査の状
        況等を十分踏まえる必要があるので、現段階でどうなるかを申し上げ
        る状況にはない。
         一点付け加えると、事故の時に海兵隊員が乗っていた車と、それか
        らもう1台別な車があって、高校生の少女は非常にお気の毒なことに
        海兵隊員が乗った車に轢かれた後、更に別な1台の車に轢かれたとい
        うことがあるようだ。現在もう1台の車がまだ特定されていないとい
        う状況であるので、その辺の事情も含めて、今捜査が進められている
        ところであり、それらの状況等を十分踏まえて検討する必要がある。

        (問)轢き逃げは「凶悪な事件」ではないということか。

        (報道官)先ほど申し上げたように、「殺人または強姦」という凶悪
        な犯罪と特定の場合というのが一つあり、それからもう一つ、日本国
        が考慮されるべきと信ずるその他の特定の場合について、日本側が提
        示することがある特別の見解を十分考慮するということだ。殺人や強
        姦ははっきりしているが、後者の場合にどういうものが該当するか、
        色々な要素を考慮すべきである必要があると申し上げている。前者に
        該当しないという結論に達したとは言っていない。

        (問)沖縄県警は身柄引き渡しの要請を行い、米軍当局は今のところ
        右に応じていない。沖縄県警当局は身柄引き渡しが必要な事件と判断
        しているが、これだけでは十分な考慮を払えないということか。

        (報道官)刑事特別法第10条第1項に「米軍の施設または区域内にお
        いて日本の逮捕状を執行しようとする場合に、米軍側の同意を求め
        る」と定めている。この種の事件が起きたときに、日本側警察当局が
        逮捕状を執行するために米軍側の同意を求めるという例は他にも色々
        あるようだ。ただ、その場合に被疑者の身柄が既に米軍当局の手中に
        ある今回のような場合も多々ある訳であり、先ほど申し上げたように、
        地位協定第17条5項Cの下では被疑者が起訴されるまでは米軍当局が拘
        禁を継続することになっているので、この逮捕状の執行についての同
        意を求めた場合に米軍側が請求に応じることはないというのが通例で
        あると理解している。
         それとは別の問題として、先ほど申し上げた合同委員会合意に基づ
        く起訴前の拘禁移転の要請があり、それがどういう場合に考慮される
        かは先述した二つの場合がある。右との関連では、今後の捜査の進展
        状況等を踏まえてこれから検討していくこととなろう。

        (問)確認だが、沖縄県警が行ったのは日米合同委員会合意による起
        訴前の拘禁移転でなく、これまでの通常の手続きによるものか。そし
        て今後この合意に基づく拘禁移転の申し出を行うかどうかは今後の捜
        査の進捗状況によるということか。

        (報道官)通常の手続きによるものと理解している。今後の捜査の進
        展状況を踏まえて更に検討するということだ。
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   Masahiko Aoki
   青木雅彦
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