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*- FACTIVE MES(13):●分科会 戦争 平和 基地問題
*154 SDI00872 山崎 久隆
安保>アメリカ軍アフガンとスーダン爆撃
(13) 98/08/21 16:51 004へのコメント
この事件が安保のリンクにあるのを訝る向きもあるかもしれませんが、在日米軍基
地の機能は世界各地の戦場に軍事力を送り込む出撃拠点といった性格がありますし、
今回も使われた兵器には紅海とアラビア海に展開中の艦艇による「巡航ミサイルトマ
ホーク」が含まれるとされておりますから、アフガニスタンに撃ち込まれたのは第七
艦隊所属艦艇のトマホークであろうと考えられることで、こっちのリンクにつけまし
た。
いずれ正確な情報があるかと思いますが、日米安保というのは実はこういうことな
わけです。
タリバンにしろイスラム原理主義にしろ日本と直接の利害対立があるというわけで
もないのに、日本を出撃拠点としている米第七艦隊が直接それらの勢力を攻撃してい
るのであれば、これらテロ組織が在日米軍基地ないし日本の在外施設を攻撃目標とし
たとしてもあながち荒唐無稽なことではありますまい。
秋野さんが命を懸けてタジキスタンの和平のために努力を続けていたのに対し、そ
れを送り出したはずのこの国の外交は、一向にアメリカの政策の補完物と兵たん基地
に過ぎないというお粗末なもので、さらに悪いことにテロにはテロをというアメリカ
の武断主義さえも補完・支援しているというわけです。まさに秋野さんの理想として
いた平和外交を自ら土足で汚す国と。
報道をチェックしておきます。21日午前中まで。
毎日新聞 08/21 03:23 <爆破テロ>米大使館事件 米国、アフガン内など攻撃と発表
毎日新聞 08/21 03:40 <爆破テロ>米大使館事件 米国がアフガンとスーダンを攻撃
毎日新聞 08/21 04:05 <爆破テロ>米大使館事件 クリントン大統領急きょワシント
毎日新聞 08/21 04:09 <爆破テロ>米大使館事件 「化学兵器施設はない」スーダン
毎日新聞 08/21 04:16 <爆破テロ>スーダンは国際テロリストの温床−−米国防総省
毎日新聞 08/21 05:42 <爆破テロ>米大使館事件 米国がアフガンとスーダン攻撃=
朝日新聞 08/21 05:47 ◇米国がアフガニスタンとスーダンの「テロ施設」を攻撃◇
朝日新聞 08/21 06:02 ◇アフガニスタンにいるビン・ラディン氏は安全な場所に◇
朝日新聞 08/21 06:15 ◇スーダンへの攻撃は戦闘機だったとスーダン内相語る◇
朝日新聞 08/21 06:36 ◇米大統領が英、エジプト、パキスタン首脳と電話協議◇
時事通信 08/21 07:07 ◎あらゆる形態のテロを非難―国連総長
朝日新聞 08/21 07:09 ◇英国、イスラエルが米国の攻撃を支持、ロシアは反対◇
朝日新聞 08/21 07:18 ◇アナン国連事務総長があらゆる形態のテロを非難◇
読売新聞 08/21 07:22 米軍、アフガンのテロ基地などを攻撃
朝日新聞 08/21 07:28 ◇パレスチナのハマス指導者が報復を警告◇
朝日新聞 08/21 07:41 ◇アフガンとスーダンのテロ施設を巡航ミサイルで攻撃か◇
朝日新聞 08/21 08:10 ◇スーダン政府、米国の攻撃を「侵略行為」と強調◇
共同通信 08/21 08:29 スキャンダル隠しと反発 報復の悪循環再現が懸念
共同通信 08/21 08:35 米、テロ関連施設を空爆 アフガンとスーダン
共同通信 08/21 08:38 テロへの対決姿勢を強調 解決困難にいら立ちの米
共同通信 08/21 08:40 事態の展開懸念と事務総長
朝日新聞 08/21 08:41 ◇柳井外務次官が米国の報復爆撃に一定の理解◇
朝日新聞 08/21 08:48 ◇米軍の攻撃は「新たなテロ」の具体的情報で決断◇
毎日新聞 08/21 08:50 <爆破テロ>米大使館事件 米がアフガンとスーダンに報復攻
時事通信 08/21 08:55 ◎攻撃は「自衛権の行使」=米国連大使
時事通信 08/21 09:19 ◎対空システム警戒し、巡航ミサイル採用=高い精度と破壊力
共同通信 08/21 09:54 スーダンが安保理に抗議へ
共同通信 08/21 09:57 タリバン政権は未承認 米、スーダンはテロ指定
朝日新聞 08/21 10:08 ◇米国、アフガニスタンとスーダンの「テロ施設」を攻撃◇
朝日新聞 08/21 10:16 ◇米政界、「支持」の一方で「不倫疑惑隠し」の見方も◇
朝日新聞 08/21 10:19 ◇キューバ国営通信が「ごう慢なスキャンダル隠し」と非難◇
読売新聞 08/21 10:29 スーダン政府、「犯罪行為」と非難
共同通信 08/21 10:34 自衛権行使と安保理に報告 テロ再発防止が目的と米国
毎日新聞 08/21 10:35 <米テロ報復>不倫疑惑から関心そらす狙い? 米で憶測広が
毎日新聞 08/21 10:35 <米テロ報復>米国防長官が概要発表 攻撃の主力はトマホー
朝日新聞 08/21 10:38 ◇米軍攻撃のスーダン、市民にも被害か、米大使館占拠◇
朝日新聞 08/21 10:40 ◇米爆撃で、国連事務総長が憂慮表明◇
朝日新聞 08/21 10:44 ◇外務省、在留邦人の安否確認に追われる◇
NHK 08/21 10:51 米攻撃 スーダン国営テレビ 建物炎上の現地映像を放映
NHK 08/21 10:51 米攻撃 ラディン氏とは、テロ事件を背後から指示か
NHK 08/21 10:51 米大使館同時爆弾テロ事件経緯
NHK 08/21 10:51 米が攻撃のアフガン軍事施設 テロ活動の世界最大規模拠点
NHK 08/21 10:51 米大統領補佐官 アフガニスタン攻撃は新たなテロ阻止
NHK 08/21 10:51 米 爆弾テロ事件でアフガニスタンなど攻撃
NHK 08/21 10:51 米、アフガンなど攻撃 各国と国連の反応
NHK 08/21 10:51 米攻撃 スーダン国営テレビ 建物炎上の現地映像を放映
NHK 08/21 10:51 米攻撃 アフガニスタン オマル師、米を強く非難
NHK 08/21 10:51 米 爆弾テロ事件でアフガニスタンなど攻撃
NHK 08/21 10:52 米、アフガンとスーダン攻撃 爆弾テロの本拠地へ単独で
毎日新聞 08/21 10:52 <米テロ報復>脅迫電話相次ぐ ブラジル米領事館
毎日新聞 08/21 10:52 <米テロ報復>夜空引き裂く閃光 住民からは怒りの声 スー
毎日新聞 08/21 10:52 <米テロ報復>原理主義との対決姿勢誇示 米政権、危険なか
朝日新聞 08/21 10:53 ◇米国連大使が安保理に書簡で「個別的自衛権を強調」◇
朝日新聞 08/21 10:55 ◇イスラエル首相が「米のテロとの戦いを歓迎」との声明◇
読売新聞 08/21 10:58 空爆攻撃に米議会、ほとんどが支持
毎日新聞 08/21 11:06 <米テロ報復>米大使館爆弾テロ事件をめぐる動き=表
毎日新聞 08/21 11:06 <米テロ報復>イスラム原理主義とは 信者8億4000万人
毎日新聞 08/21 11:06 <米テロ報復>「モラルに反す攻撃」 東京のスーダン大使館
毎日新聞 08/21 11:06 <米テロ報復>米大統領の演説要旨
毎日新聞 08/21 11:06 <米テロ報復>米大使館爆弾テロ事件をめぐる動き=表
毎日新聞 08/21 11:06 <米テロ報復>過去の主な米軍による報復空爆=表
毎日新聞 08/21 11:07 <米テロ報復>南米3国が警戒体制に イスラム過激派の報復
毎日新聞 08/21 11:15 <米テロ報復>ラディン氏 イスラム過激派の最重要支援者
毎日新聞 08/21 11:15 <米テロ報復>「犯罪・侵略行為」と非難 スーダン政府
毎日新聞 08/21 11:15 <米テロ報復>大使館爆破の報復攻撃を発表 クリントン米大
毎日新聞 08/21 11:15 <米テロ報復>米がアフガンとスーダンを攻撃 大使館爆破に
朝日新聞 08/21 11:25 ◇米国の大使館爆撃報で、スーダン大使館の反応◇
読売新聞 08/21 11:32 小渕首相、米のテロ報復攻撃に理解
毎日新聞 08/21 11:34 <米テロ報復>不倫疑惑から関心そらす狙い? 憶測広がる
毎日新聞 08/21 11:34 <米テロ報復>空爆を激しく非難 アフガンのタリバン指導者
朝日新聞 08/21 11:37 ◇テロ組織を支持するラディン氏は、元イスラム戦士◇
毎日新聞 08/21 11:43 <米テロ報復>爆撃前にアフガン国連職員へ出国促す 米当局
朝日新聞 08/21 11:47 ◇スーダン政府が「犯罪的行為」と非難◇
朝日新聞 08/21 11:52 ◇ラディン氏、直前の「警告」にも関与か◇
共同通信 08/21 11:53 米、大使館爆破で報復攻撃 アフガンとスーダンの拠点
朝日新聞 08/21 11:55 ◇テロ報復攻撃に関するクリントン演説要旨◇
読売新聞 08/21 11:57 反米テロ終息、保証なし
読売新聞 08/21 11:57 米大統領、英首相らに協力要請
朝日新聞 08/21 11:58 ◇米国、大使館爆破報復の狙いをラディン氏らの組織に絞る◇
朝日新聞 08/21 12:01 ◇小渕首相が米国の報復攻撃に「断固たる姿勢に理解」◇
毎日新聞 08/21 12:07 <米テロ報復>爆撃に否定的見解を示す 露外務省筋
毎日新聞 08/21 12:22 <米テロ報復>援助物資のスーダン空輸延期も 独国防省
毎日新聞 08/21 12:22 <米テロ報復>新華社が速報 関心の高さ示す 中国
朝日新聞 08/21 12:25 ◇米国、アフガニスタンとスーダンに報復攻撃◇
NHK 08/21 12:34 米テロ報復攻撃 スーダン 群集が大使館に乱入し抗議
朝日新聞 08/21 12:40 ◇ビン・ラディン氏、米のトマホーク攻撃を逃れる◇
8月7日に発生したケニアとタンザニアのアメリカ大使館爆破テロへの報復として、
日本時間21日午前2時半からおよそ1時間にわたり主に巡航ミサイルトマホークを
合計100発程度使用して行われたとされています。この攻撃時間はアメリカ東部時
間午後1時半、アフガニスタン現地時間では午後10時、スーダン現地時間では午後
7時半にあたります。コーエン国防長官とシェルトン統合参謀本部議長によると、人
命など副次被害を最小限にとどめるためにこの時刻が選ばれたのだそうな。
アフガニスタン国内の目標地点はカブールの南約150キロのアメリカによれば
「テロリスト大学」と略称されるタリバンのテロ支援複合施設。内部の訓練基地4カ
所、補給、司令基地の計6カ所を攻撃、スーダンではハルツーム郊外にある「アルシ
ファ薬品工場」で、アメリカによれば毒ガスのVX原料製造工場。
しかしアフガニスタンのテロ基地とは誰も見てきたわけではなく、アメリカが主張
しているだけです。(かといってタリバン側が否定しているというわけでもないが)
さらにスーダンの「VXガス製造工場」にいたっては、スーダン側は「薬品工場」と
主張、子供用ワクチンの半分を製造していたとしており、これが事実であるとしたら
重大な誤爆となります。
なお、クリントン大統領が行った演説は要旨以下の通り。
私は今日、わが国の安全に切迫した脅威を与えたアフガニスタンとスーダンのテロ
関連施設に対する攻撃を軍に命令した。私たちの使命ははっきりしている。世界のテ
ロリズムを組織し、援助していると思われるウサマ・ビン・ラディンの流れを汲むテ
ロ組織を攻撃することである。ラディンによるグループは民主主義を嫌悪、暴力を賛
美し、無実の人々に対する殺人を正当化する。そして米国を明確に敵と位置付けてい
る。
彼らの組織はここ数年で、ソマリアの平和維持活動に従事する米国人兵士らを殺害
し、エジプト大統領やローマ法王の殺害、米国の民間航空機の爆破も計画した。2週
間前のケニア、タンザニアの米大使館爆破テロでもラディンの組織が実行したことを
確信できる情報がある。
米国は今朝早く、世界でもっとも活動的なテロリストの拠点の一つであるアフガニ
スタンの施設を攻撃した。この施設はラディンの組織の中核で、数千人のテロリスト
の訓練キャンプとなっている。また、スーダンの化学兵器用物資工場も攻撃した。
私が米国民と世界に理解を求めたいのは、今回の攻撃がイスラムを標的にしたもの
ではない、ということだ。テロとの戦いは大使館爆破から始まったわけではないし、
きょうの攻撃で終わるわけでもない。戦いには勇気と忍耐が必要だが、私たちが脅威
に屈することはない。テロリストに聖域はない。
*
しかしながら「テロにはテロを」という対応が和平を招いたためしなどはなく、恒
久的な和平活動を取らずして武力で解決を図ろうとしても良い結果など得られるはず
はありません。アナン国連事務総長も「あらゆる形態のテロを非難する」との声明を
発表し、暗にアメリカの攻撃もテロ活動との認識を示唆しました。
アメリカ大使館爆破事件の容疑者として、既に何名かの身柄が拘束されているとは
いえ、それがイスラム原理主義テロリストであると断定されたという話は報道にはな
く、まだ裁判さえ始まってもいないわけです。
この攻撃を直ちに支持する発言をしたと報じられているのは、いまのところイギリ
スのブレア首相とイスラエルのネタニアフ首相だけでした。
ブレア首相は「ケニアとタンザニアで起きたテロ爆弾事件や北アイルランドのオマ
ーで起きた爆弾テロ事件は世界に悲しみをもたらした。今回の攻撃はこうしたテロ行
為に勇気を持って立ち向かう民主国家の姿勢を示した」。
ネタニヤフ首相は、アメリカがアフガニスタンとスーダンのテロリストの施設を攻
撃したことを歓迎しているとアメリカを支持する声明を発表したそうです。
イギリスは直前にリアルIRAのテロによる犠牲を出したばかりだったし、イスラ
エルはヒズボラなどのイスラム勢力と戦争中なので、こういう姿勢を示した理由はあ
るわけですが。
ロシアはアメリカの攻撃を干渉として非難しています。
わからんのは日本の小渕首相「米軍の軍事行動の事実関係については調査中だが、
米国のテロリストに対する断固たる姿勢は理解できる」と予算委員会で答弁。とりあ
えず「(支持できるかどうか)詳細を見極めたうえで政府見解を発表したい」と野中
官房長官が発言をしているのですが、アメリカ・グリーンウッド臨時代理駐日大使が
午前9時半に外務省を訪れて柳井俊二事務次官に経過を説明し「間違いない証拠をも
っている。国際法上十分に正当化されるものだ。友好国からのサポートを得たい」と
述べたのに対して柳井次官が「テロリストへの断固たる姿勢として理解する」と言っ
てしまっているのですけれどもね。
相手がどう理解したかは明白です。グリーンウッド臨時代理大使が持ってきたのか
どうかわかりませんが、その「間違いない証拠」とやらがあれば「テロリストへの断
固たる姿勢として理解する」わけですので、軍事行動そのものを問題とすることには
ならないということになるわけで、攻撃に参加した艦艇が日本から出撃したのであろ
うとなんであろうと問わないことになってしまうわけです。
新ガイドラインがどれだけ恐ろしい代物であるかはこれだけで十分な証拠といえな
いだろうか。相手がその気になれば在日米軍基地なども当然テロ対象になり得るわけ
ですから。で、日本がアメリカの重要な後方支援基地であれば日本へのテロ攻撃も誘
発しますわな。日本の防衛のためにいるらしい(=^_^;=)在日米軍がテロを呼び込むと
したら、一体何のためにいるのやらってなるわけですから。
クリントン米大統領は20日に事前に、ブレア英首相、ムバラク・エジプト大統領、
シャリフ・パキスタン首相と電話で協議を行ったそうです。電話協議の相手がこれだ
けかどうかはよくわかりません。エリツィン・ロシア大統領、江沢民・中国国家主席、
シラク・仏大統領にもメッセージを送り、米国のテロ対策を説明しているということ
ですが、これが攻撃前なのかどうかがよくわかりません。
はい、これらがいわば「公式の」流れなんですが、誰でも思うわね、いったいなん
でまた「今日」だったんかと。これほど重大な政治決断がなんの脈絡もなく決定され
るわけがないと思ってみれば今日はクリントン大統領の下半身スキャンダルのお相手
が大陪審で証言する日だったんだとか。
アメリカのマスコミは大統領の「不適切な関係」(=^_^;=)をめぐって連日過熱報道
を繰り返していたそうで、当然ながら「なにもなければ」この日のトップは大陪審で
何が証言されるかに集中したはずなんですが、アメリカの攻撃によりトップの座を滑
り落ちたわけで。あ、そういえばイラク空爆がとりだたされてた時期(98年1月)
も、このスキャンダルの前身であるセクハラ疑惑が佳境を迎えつつある時期でしたね
え。実際にイラクをミサイルで爆撃したのは大統領選挙前の96年9月のことでした。
どーも何らかの政治的正念場とか、 本来そんなご大層なものではないはずのsexス
キャンダルでも、クリントンにかかれば他国を爆撃したりする理由になるというのが
恐ろしい。
というわけで、この爆撃も結局はクリントンのスキャンダル隠しだったというお粗
末な理由。しかしこれにより関係もない人々が犠牲になったとしたら、その罪は計り
知れない。
YAMASAKI (SDI00872)
*147 SDI00872 山崎 久隆
RE:核>53年目の原爆の日にむけて(7月末)
(13) 98/08/18 14:14 124へのコメント
|朝日新聞 07/31 18:44 ◇日本の科学者18人が「核文明」との闘いを世界に発信◇
|毎日新聞 07/31 19:29 <反核運動>科学者有志が核エネルギーの利用を見直す声明
|
核拡散の新たな危機的状況のなかで、科学者自身のモラルと責任を問い、日本の
科学者は世界の科学者・市民に訴える
に関して以下に原文を転載します
一九九八年五月、インドとパキスタンの核実験実施のニュースを、被爆国日本
の自然科学のさまざまな分野に携わる私たち一八名は、大きな悲しみと怒りと悔
しさをもって、耳にした。両国の核実験は、核戦争の危険性が新たな重大な段階
に到達したことを意味している。両国の今回の実験によって、核兵器を所有・実
験することへの障壁が著しく低くなり、いまにも世界のどこかで核兵器が実際に
使われるかもしれないような危険な状況が生まれた。私たちはこれまでにない切
迫した危機感をもって、被爆五三年目の八月にあたり、科学に携わる立場から、
あえて世界の科学者・市民に訴えたい。
大量の核兵器をもって威嚇し合った米ソ二大国の冷戦が終結したあと、核につ
いての世界の市民の関心は急速に薄れていった。だれもが核軍縮が進行すると思
ったからにほかならない。私たちは、冷戦時代の市民の張りつめたような関心と
監視が弱まったことこそが、今回の危険な事態をもたらしたと考える。そして、
インドとパキスタンの核実験のあとも、なお反核の声が高まっていないことにさ
らに大きな危機感を覚える。核拡散を抑えるのは、いわゆる「大国」による管理
ではなく、市民と科学者の力であると信ずるからである。
抜本的な核軍縮が可能な条件があるにもかかわらず、資本主義のグローバリゼ
ーションのなかで、民族紛争は逆に激化し、核拡散の危険性は高まり、地域的な
戦争行為の一手段として核兵器が使用される可能性が大きくなっている。
私たちは、いま、改めて核兵器の意味をとらえ直してみる必要があると考え
る。人間を無差別に大量に殺戮すべく開発された核兵器は、未曾有の残虐な兵器
である。これまで日本の二都市に投下された原子爆弾は、たとえば、老人も赤ん
坊も、労働者も少年学徒も、兵士も武器をもたざる女学生も、日本人のみならず
在留外国人も区別なく殺し、また人の原形をとどめず、一瞬にして蒸発させ、炭
化させ、灰にしてしまった。たとえ生き延びたとしても、多くの人々は、浴びた
放射能によって苦しみながら死んでゆかざるをえなかった。半世紀以上も苦しみ
続けているヒバクシャも少なくない。核兵器は、通常の兵器の延長にある大量破
壊兵器なのではない。とりわけ残虐非道の兵器なのである。
核兵器は、人類の英知の結晶であるべき近代科学が深くかかわっている。その
意味で、核兵器開発に従事している科学者のモラル的責任は重大である。いや、
核兵器開発に従事していること自体が、すでに人類に対する犯罪行為に加担して
いる、とすら私たちは考える。国家や民族や宗教は責任回避の理由とはならな
い。いま改めてすべての科学者がこのことを自覚すべきである。
ヒロシマとナガサキは、核は人類と共存できない、という認識を多大な犠牲を
払って、文字通り身をもって学び、半世紀以上にわたって、この真理を世界に発
信し続けてきた。残念ながら、世界はこの深刻な認識をいまだに共有するにいた
っていない。いま私たちは新たな危機感をもって、核文明に対する闘いの再開
を、世界の科学者・市民に訴える。
1 インド・パキスタン両政府に対して
私たちは、インドの核実験が、既成核保有諸国を中心に締結された核拡散防止
条約(NPT)体制の欺瞞性と差別性を糾弾してきたインド自身のそれまでの主
張に対する重大な裏切り行為であると見なす。
核保有諸国の「特権」を批判しながら、核を保有し自らがその「特権」の枠内
に入ることは、問題の解決になるどころか、逆にその差別構造に積極的に加担す
ることである。核開発は、それが可能な諸国の連鎖的追随を呼ぶ行為である。実
際、インドと長年にわたって対立してきた隣国のパキスタンは、その最初の追随
例となった。
インドとパキスタンの今回の核実験は、核の脅威をこれまでになく増大させ
た。両国政府は愚かな核開発を停止し、核兵器保有への途をただちに自ら閉ざさ
なければならない。それこそが人間のモラルにかなった選択であり、両国の威信
を高めこそすれ、低めることはない。そして、両国に、核実験に反対している科
学者・市民が少なからず存在していることに、私たちはたいへん勇気づけられて
いる。私たちは彼らと国境を超えて友情をもって結び合える。彼らの良心にこそ
私たちは連帯するものである。
2 核保有五ヵ国に対して
私たちは、今回の核実験が、既成核保有諸国の欺瞞性とNPT体制の破綻を一
点の曇もないものとしたと考える。
NPTは、もともと差別的で、核廃絶をめざした条約ではない。しかも、核
保有諸国は、条約で定められた核削減の約束を誠実に遵守していない。それどこ
ろか、臨界前核実験などの新核技術開発に踏み込むことで、核開発を停止する意
思がないことを隠さないだけでなく、巧妙な形でより洗練された核兵器の開発を
積極的に進めている国さえある。すなわち、これまで核保有諸国がやってきたこ
とは人類総体への挑戦にほかならない。
NPT体制の破綻が明らかになったいま、核保有五ヵ国は自らの欺瞞性を率直
に認めるべきである。私たちが今後目標とすべきは、核保有五ヵ国による核管理
体制の強化なのではない。それらの諸国は、自らの「特権」を放棄し、核廃絶に
向かって着実に包括的軍縮を進めなければならない。
3 核抑止論は最終的に破綻した
私たちは、インドとパキスタンの核保有の論理、すなわち「核抑止論」を拒絶
する。
インドとパキスタンの核保有を正当化する論理は、いわゆる「核抑止論」であ
る。「核抑止論」に立脚しての、「ヒロシマ、ナガサキになりたくなかった」と
いうパキスタン首脳の弁明は言語道断の誤りであり、錯誤である。この論理によ
れば、ヒロシマとナガサキの苦難に満ちた経験が核開発を促進する人類破滅への
逆説的メッセージになってしまいかねない。私たちは、この弁明はヒバクシャの
半世紀以上にわたる核廃絶の訴えに対する比類のない侮辱であると考える。断じ
て容認できるものではない。
「核抑止論」は、現実に核開発の進行を抑止する論理としては破綻している
ことが明らかになった。もともと「核抑止論」は、仮想敵国国民の生命を人質に
し、威嚇するという非人道的な論理の上に立っていることを想起すべきである。
原子爆弾の製造は現在、大学学部生レヴェルでのごく普通の物理学の知識によっ
て十分可能である。換言すれば、実際に核を開発し保有することには、「抑止」
ではなく「攻撃性」が含まれていると考えざるを得ない。すべての国はいまや、
「核抑止論」なる詭弁に基づく核保有を即刻中止しなければならない。
4 核文明からの脱却をめざそう
巨大な核エネルギーを開放し、制御しつつ使用しようと夢見られていた核文明
は、たとえ核戦争が起きないとしても、人類と自然環境に大きな災厄をもたらし
かねないことが明らかになっている。
核が生み出す放射能を的確に防止しうる技術の開発が極度に困難であること
は、確認済みの科学的真理である。チェルノブイリの悲劇を想起するまでもな
く、各国・各地域で、核開発に伴う多数のヒバクシャが生まれている。また、蓄
積され続ける猛毒物質プルトニウムは、夢のエネルギー源どころか、容易に兵器
に転用されうるところから、世界政治を不安定にし、情報機密を増大させ、人類
の生存を脅かしている。核技術の本性とは、まさにヒロシマ・ナガサキを焼き尽
くした破壊性・暴力性なのであり、それを人間がコントロールしようとする努力
は失敗し、数多くのヒバクシャと環境汚染を世界のいたるところで生み出してき
たのである。
民事と軍事の核は区別できず、核技術は一体である。核文明から非核文明への
転換は、人類焦眉の課題になっている。世界の科学者は、核兵器へのかかわりを
即刻停止することは言うまでもなく、もてる科学的知識と人間としてのモラルを
総動員して、いまこそ核文明からの脱却のために奮闘すべきであろう。
5 科学技術の非武装化をめざし、国際的な反核市民運動の再生を
私たちは、これまで核兵器の拡散を防止してきたのは、科学者の自発的努力と
市民の監視であったと考える。
科学者は、一時的で独善的な、自国・自民族の利害の奴隷になることは許され
ない。理性的で普遍的な立場に立ち、人類全体の利益をつねに考えて研究し、活
動しなければならない。自らの内にこの人類としてのモラルを形作らなければな
らない。自分の行った研究、開発の成果について、科学者は人類の一員として、
また地域社会に生きる市民の一員として、責任を負わなければならない。それこ
そ人類の英知の担い手にふさわしい途である。
省みれば、科学技術は、人類の福利のためだけにではなく、人間の殺戮のため
にもおおいに開発され、利用されてきた。日本の科学者も近代科学の体系的導入
以来、積極的に軍事科学技術に携わってきたという苦い過去をもっている。私た
ちもこの歴史に対する反省をけっして忘れてはいない。科学技術は国境を超えた
人類共同体の幸福のためにこそ、奉仕しなければならない。そのためには、科学
技術総体の非武装化が図られねばならない。
私たちは、この核拡散の新たな危機的状況の深い淵に立って、各国の市民に対
して、科学者と手を取り合い、あるいは科学者を監視し、目を国内だけにではな
く国外にも向け、自国政府のみならず核保有諸国を監視し、核文明との闘い、ひ
いては科学技術の非武装化のために国際的に固く連帯しあうことを、呼びかける
ものである。
一九九八年八月六日
<呼びかけ人>
安斎育郎(立命館大学教授・放射線防護学)
池内 了(名古屋大学教授・宇宙物理学)
石橋克彦(神戸大学都市安全研究センター教授・地震学)
梅林宏道(平和資料協同組合副代表・物性物理学)
江澤 洋(学習院大学教授・物理学)
尾池和夫(京都大学教授・地球科学)
可知直毅(東京都立大学助教授・植物生態学)
木村利人(早稲田大学教授・バイオエシックス)
黒田洋一郎(東京都神経科学総合研究所参事研究員・神経生物学)
小出昭一郎(東京大学名誉教授・理論物理学)
小沼通二(武蔵工業大学教授・物理学)
佐々木 力(東京大学教授・科学史)
佐藤文隆(京都大学教授・物理学)
高木仁三郎(原子力資料情報室代表・原子核化学)
豊田利幸(名古屋大学名誉教授・物理学)
樋口広芳(東京大学教授・野生動物学)
矢原徹一(九州大学教授・生態学)
米沢富美子(慶應大学教授・理論物理学)
日本政府に対する特別声明
私たちは今、深く恥じている。私たちの政府が、ヒロシマ、ナガサキの被爆国
として核軍縮を世界に訴えかける一方で、米国の核の傘に入っていることを公然
と明らかにし、核兵器の使用禁止を求める国連総会決議を過去三〇年間一貫して
棄権し続けてきたことを。また私たちの政府が、核の平和利用の名の下に、核兵
器の材料プルトニウムを大量に蓄積し、各国からの批判に誠実に応えようとしな
いことを。
核の廃絶を心から願う私たちの声が、説得力のあるものとして世界の人々に受
け入れられていくためには、日本政府が真剣に非核を追求し、行動する政策をと
らなければならないと私たちは考える。日本政府は米国の核の傘から出るべきで
ある。いわゆる核の傘が日本を護ると考えるのは幻想である。むしろ危険な淵に
立たせるものであることを知らねばならない。核戦略への一切の協力を拒むべき
である。日本周辺に非核地帯を拡げ、全世界の非核化に向けて誠実に努力するべ
きである。私たちはそれを日本政府に要求する。
一九九八年八月六日
<呼びかけ人>
安斎育郎(立命館大学教授・放射線防護学)
池内 了(名古屋大学教授・宇宙物理学)
石橋克彦(神戸大学都市安全研究センター教授・地震学)
梅林宏道(平和資料協同組合副代表・物性物理学)
江澤 洋(学習院大学教授・物理学)
尾池和夫(京都大学教授・地球科学)
木村利人(早稲田大学教授・バイオエシックス)
黒田洋一郎(東京都神経科学総合研究所参事研究員・神経生物学)
小出昭一郎(東京大学名誉教授・理論物理学)
小沼通二(武蔵工業大学教授・物理学)
佐々木 力(東京大学教授・科学史)
佐藤文隆(京都大学教授・物理学)
高木仁三郎(原子力資料情報室代表・原子核化学)
豊田利幸(名古屋大学名誉教授・物理学)
樋口広芳(東京大学教授・野生動物学)
矢原徹一(九州大学教授・生態学)
米沢富美子(慶應大学教授・理論物理学)
SDI00872 yamasaki
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