京都の藤村です。
昨日あたり発売の岩波の「世界」9月号に、全ての科学者に賛同を呼びかけると
して、次のような声明が18人の科学者の連名で出ています。「世界」では「科
学技術の非武装化を」という見出しをつけています。声明文は原子力資料情報室
のウェブページ
http://www.jca.ax.apc.org/cnic/japanese/index.html
から取って来ました。主には反核を述べているのですが、最後の第五節に
「科学者は、一時的で独善的な、自国・自民族の利害の奴隷になることは許され
ない。理性的で普遍的な立場に立ち、人類全体の利益をつねに考えて研究し、活
動しなければならない。自らの内にこの人類としてのモラルを形作らなければな
らない。自分の行った研究、開発の成果について、科学者は人類の一員として、
また地域社会に生きる市民の一員として、責任を負わなければならない。それこ
そ人類の英知の担い手にふさわしい途である。」
と述べています。これと関連して、ちょっと自分の職場がらみの話になってしま
うのですが、この6月30日に文部省の大学審議会が「21世紀の大学像と今後
の改革方策について −競争的環境の中で個性が輝く大学−」 (中間まとめ)
というものを発表しています。その中で描かれている21世紀の社会状況とか我
が国の発展の方向は「科学技術創造立国」として国際競争を勝ち抜くという、そ
れこそ「一国平和主義」が前面に押し出されていて読むに堪えないものです。ま
さに上に引用したことの正反対のことが述べてあると言ってよい代物です。
国立大学は国家予算を投じる以上、国策である「科学技術創造立国」路線にかな
う理工系大学院を中心にし、学部教育は縮小する方向が打ち出されています。そ
して極端に言うと、こういった国策に忠実にシステムいじりをする大学には、少
ない国家予算の中から重点的にお金をあげましょうということが書かれていま
す。全文は
http://www.monbu.go.jp/singi/daigaku/00000253/
に出ています。第II章あたりにその問題の21世紀の展望などが書かれていま
す。
大学の形態がどうなるかということが、この中間まとめ(秋には本答申)に対す
る大学に居る人間の主たる関心になったりしているのですが、私はそれよりも、
こんなことでは、ますます日本の教育システムは小中高大院を通じて、自国のみ
ならず地球上の人々を全て幸せにするためにはどう社会を変えていくべきかとい
ったことなど考えない、処世術に長けたエリート官僚・エリート技術者を作り出
すばかりだと思います。
そして何よりも情けないのは20万字を越えるこの文書の中に「平和」という単
語が一回も登場しないことです。地球環境問題への対応などといったことも書か
れていますが、繰り返し出てくる「国際社会での知的リーダーシップ」という言
葉も、経済戦争を勝ち抜くための「超ハイテク技術」考案に過ぎず、経済戦争を
肯定している以上、「平和」という言葉が出て来ないのも当然でしょう。
こうした答申が出つつある背景には「産業界」すなわち「会社」の強い要求があ
るのですが、この文書では「会社」がひっくり返って「社会」の要求ということ
になっています。こんな方針の下での「大学改革」などをしては、市民のために
ならない、すなわち「社会」のためにならないという風に思います。
そこで、お願いがあります。もし、この「中間まとめ」なるものをザッとでも見
て頂いて、市民として「社会」の要求として、このような「改革」が望ましくな
いと思われましたら、御意見募集中ということなので(例によってアリバイでし
かないのでしょうが)
daigaku@monbu.go.jp
まで声を上げて頂けないでしょうか。このメーリングリストの趣旨に合っていな
い投稿のようでしたら申し訳ありませんが、「平和」が間に合っているような認
識は到底許されるものではないと思います。こんなことしても本答申では「地球
環境問題」の隣に「国際平和」とかいった単語が付け足されるだけかもしれませ
んが、市民が知らぬところで勝手に「社会の要求」が作り上げられていることを
お知らせしたく投稿しました。
3月、4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月、12月