相模原の仲田です。
沖縄県収用委員会による却下の裁決に対する那覇防衛施設局長から、建設大臣に
提出された「審査請求書」が手に入りました。長くて申し訳ありませんが、資料
として流します。
次回は、那覇防衛施設局長提出の「位置境界明確化作業手続き」をアップします。
OCR変換によるテキスト化ですが、変換ミスに気付かれた方はご連絡をお願い
します。
資料提供は違憲共闘会議の安里さんです。
−−−−−−−−−−− ここから −−−−−−−−−−−−−−−−
施那第2200号(AFS)
平成10年6月17日
建設大臣
瓦 力 殿
那覇防衛施設局長
嶋口武彦
審 査 請 求 審
次のとおり審査請求する。
1 審査請求人の名称及び住所
名称:那覇防衛施設局長 嶋口武彦
住所:那覇市久米1丁目5番16号
2 審査請求に係る処分
平成10年5月19日付け沖縄県収用委員会による却下の裁決(平成8年
(権)第11号及び平成8年(明)第11号)(牧港補給地区2)
3 審査請求に係る処分があったことを知った年月日
平成10年5月19日(裁決書の送達を受けた日)
4 審査請求の趣旨及び理由
趣旨:「上記2に掲げる処分を取り消す。」との裁決を求める。
理由:別紙のとおり。
5 処分庁の教示の有無及びその内容
裁決審において、「この裁決に不服がある場合は、裁決書の正本の送達を受
けた日の翌日から起算して30日以内に建設大臣に対し審査請求をすることが
できる」との教示があった。
6 審査請求の年月日
平成10年6月17日
別 紙
審 査 請 求 の 理 由
平成10年5月19日付け沖縄県収用委員会の裁決書(平成8年(権)第11
号及び平成8年(明)第11号)(牧港補給地区2)による却下の裁決(以下
「本件却下裁決」という。)の取り消しを求める理由は、次のとおりである。
1 当局が行った使用の裁決申請及び明度裁決の申立てに対して、沖縄県収用
委員会は牧港補給地区内の未認証地(浦添市字城間嵩下1112番及び同1
268番。以下「本件各土地」という。(付紙1))について、「地籍が確
定していない以上、土地の特定はあり得ない。」として、「起業者の裁決申
請書及び添付書類によっては本件裁決申請対象土地の特定ができないのであ
る。したがって、起業者が本件裁決申請対象土地に対してなした裁決申請に
は土地収用法第40条第1項第2号イの要件を欠いた瑕疵があり、本件にお
ける同瑕疵は補正にはなじまないものであることから、同法第47条第1項
本文に該当するものである。」と判断しているが、当局は、国土調査法の成
果としての認証が得られていない土地であっても、現地に即して特定される
限り、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に
基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の
実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法(昭和27年法律第140号。
以下「駐留軍用地特措法」という。)の手続を執ることができるものと考え
ている。
沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地の位置境界の明
確化等に関する特別措直法(昭和52年法律第40号。以下「位置境界明確
化法」という。)による各筆の位置境界の明確化とは、本来あるべき各筆の
土地の位置境界を見出すことであるところ、沖縄県の区域内においては位置
境界不明地域が広範かつ大規模に所在している等の特殊な事情にかんがみ、
位置境界明確化法は、物証や古老・土地所有者等の人証を基に関係所有者の
協議により各筆の土地の位置境界を現地に即して確認していくことを、その
仕組みとしている(付紙2)。
すなわち、同法は、関係所有者に対し、第10条の規定において「関係所
有者は、…全員の協議により…各筆の土地の位置境界を(地図上に)確認す
るように努めなければならない。」こと及び第12条の規定において「(第
10条の規定により確認されたときは、土地の所有者は、)土地の位置境界
を現地に即して確認しなければならない。」ことを義務付けているが、本件
各土地を含む字等の区域は、遺憾ながら浦添市字城間嵩下1112番の土地
(以下「1112番の土地」という。)の所有者(津波善英氏)がこの義務
を履行せず、確認に加わらないため(付紙3、付紙4)、やむを得ず、同法
に定める手続が進められずにいる。しかしながら、
(1)本件各土地を含む字等の区域とこれに隣接している字等の区域との境
界は確定していること、
(2)本件各土地を含む字等の区域内において1112番の土地とその隣接
土地との境界を除きすべての土地の境界は関係土地所有者において確認済
みであること(浦添市字城間嵩下1268番の土地(以下「1268番の
土地」という。)の所有者(宮城健一氏)は、当該土地が現地に即して特
定されていることを確認している。付紙3、付紙4)、
(3)1112番の土地とその隣接土地との境界についても隣接土地所有者
は全員確認済みであること(付紙3、付紙4)、
(4)1268番の土地については、昭和29年4月30日、宮城健一名義
で所有権保存登記がされており、また、1112番の土地については、昭
和49年12月23日、津波善英名義で所有権移転登記がされていること、
(5)本件各土地については、昭和57年4月1日付け及び昭和62年2月
24日付けで沖縄県収用委員会の使用裁決(後記2)がなされ、これら裁
決において1112番の土地の所有者は津波善英氏であり1268番の土
地の所有者は宮城健一氏であると認定され、両氏ともこれら裁決に係る補
償金をいずれも受領し、格別補償金に関しては不服を申し立てたことはな
いこと、
(6)津波善英氏が土地の位置境界の確認に関し押印を拒否していたのは、
位置境界に異議があるものではないこと(付紙5、付紙6)、
(7)津波善英氏は1112番の土地の位置境界について隣接所有者と争っ
ていないこと、
以上のことから、位置境界明確化法に定める手続は進め難いが、事実上本件
各土地は現地に即して特定されていると考えている。
2 本件各土地が特定されていることについては、沖縄県収用委員会が過去2
度にわたる裁決において認めているところである。すなわち、
(1)昭和57年4月1日付け裁決書によると、
ア …地籍明確化法の目的とするところは、戦前の土地の位置境界をで
きる限り復元することにあると解されているところ、…戦前の地形が
著しく変容し、位置境界の標識もなく、公簿、公図もその大部分が消
失した今日、…地薄明確化法等により認証された土地でも必ずしも戦
前の位置、境界を正確に確認したものとは言えず、むしろ、上記認証
土地の位置、境界は地籍明確化法等により新しく議定された位置、境
界であると解するを相当とする。
イ 本件申請に係る各土地は…現地に即して精密に測量の上、特定され
たものであることは、本件裁決申請の添付書類及び現地調査の結果か
らして明らかである。
ウ …未認証土地についても…認証土地と同様な手続により、位置境界
の確認作業がなされているが、これらの土地の所有者が地籍明確化法
の定める署名押印を拒否したため未認証となっているにすぎない。
エ これら未認証土地を囲む隣接地及び周辺土地の各所有者らは、すべ
て地籍明確化法の各手続に積極的に協力し同法に定める署名押印を行
なっている。
オ 以上のとおり、本件申請に係る未認証土地については、その近隣及
び隣接地の位置、境界はすべてそれぞれの土地所有者らによって確認
されていること。登記簿上本件申請未認証土地が所有者とされている
者の所有名義に登記されていること。他に本件土地につき権利を主張
する者がないこと及び上記地籍明確化法に定める過程、並びにその成
果を総合勘案し、また、土地所有者の権利保護の見地から、本件各申
請土地はその所有名義人の土地であると認めるのが相当である。
とされており、
(2)昭和62年2月24日付け裁決書によると、
ア …地籍明確化法の目的とするところは、できる限り戦前の土地の位
置境界を復元することであると解されるところ、…戦前の地形が著し
く変容し、位置境界の標識もなく、土地登記簿や添付図面の消失した
現在において、…地籍明確化法等により認証された土地であっても、
必ずしも戦前の状態に正確に復元されたとはいえないのであるが、他
にこれを覆す明白な証拠や資料が示されない限り、地籍明確化法等に
より新しく設定された…認定土地の位置境界は、公証されたものと解
するを拍当とする。なお、地籍明確化法により未だ登正されていない
土地であっても…基礎図、地籍編さん図、調査図の作成手続等及び所
有者として登記がなされていること、隣接地の所有者らによって、そ
の境界が確認されていることに徴すると、本件未認証の土地は、その
地目、地積がその範囲において明確化されていることを認めることが
できる。
従って、本件裁決申請にかかる土地は、特定されているものと認め
られる。
イ 本件裁決申請土地が、使用認定土地と同一であることは土地調書、
現地調査等により明らかである。
とされているところである。
3 さらに、沖縄県知事に対する職務執行命令訴訟における福岡高裁那覇支部
平成8年3月25日判決は、本件各土地と同様に未認証となっているキャン
プ・シールズ内の土地について、「本件6土地は、位置境界明確化法による
手続が完了しておらず、認証された国土調査の成果と同一の効果があるもの
として指定された地図及び簿冊の存在しない土地である。しかしながら、前
記認定のとおり、本件6土地を含むブロックとこれに隣接しているブロック
との境界は確定しており、本件6土地を含むブロック内において本件6土地
とその隣接土地との境界を除きすべての土地の境界は関係土地所有者におい
て確認済みであり、本件6土地とその隣接土地との境界についても隣接土地
所有者は全員確認済みである。そして、本件6土地については、島袋善祐名
義で所有権保存登記がされており、今回使用手続がされているのと同一の範
囲で、これまで2回にわたり使用裁決がされ、右裁決では同土地の所有者は
島袋善祐であると認定され、島袋善祐は、右裁決に係る補償金を受領し、格
別補償金に関しては不服を申し立てたことはない。これらの事実にかんがみ
ると、那覇防衛施設局長が、本件6土地と隣接土地との境界を同隣接土地所
有者の同意に係る境界と認定して本件6土地の位置を特定し、その所有者を
島袋善祐であると認定した上、前記のとおり地籍図原図を基にして実測平面
図を作成し、その結果を現地において復元して確認するなどして土地・物件
調書となるべき図書及びこれに添付すべき実測平面図を作成したことには、
一応の合理牲が認められるというべきである。」とし、「地籍が明確化され
なくても、本件6土地のように、一応の合理牲をもって、現地復元性を有す
る図面によって当該土地の位置境界を特定でき、さらに、土地所有者も特定
できる場合には、防衛施設局長は、その旨の土地調書を作成できるのであっ
て、地番及び所有者を不明としなければ違法となるものではない。」と判断
しており、さらに、この判断について最高裁大法廷平成8年8月28日判決
は、「原審の適法に確定した事実関係の下においては、本件調書の記載事項
の調査方法や土地調書に添付すべき実測平面図の作成方法に違法の点はなく、
これらはいずれも適正に作成されたものということができる。…以上に説示
したところによれば、…本件調書の作成に違法の点はなく、これと同旨の原
審の判断は、正当として是認することができ、右判断を非難する論旨は、採
用することができない。」として、上記高裁判決を支持している。
4 さらに付言すれば、福岡高裁那覇支部昭和58年11月22日判決は、本
件各土地と同様に未認証となっている土地について、「前記各土地は位置境
界不明地域に指定されて引き続き測量調査が進められた結果、各筆の位置境
界を示す地図が作成され、原告四郎(ママ)も昭和55年9月2日本件13
の土地の分につき現地確認を了した。もっとも本件13の土地を含む付近2
4筆の土地中3筆の所有者の現地確認が未了のため、認証等の手続が取られ
ておらず、右図面は、那覇地方法務局沖縄支局に保管されてはいても、現段
階においては不動産登記法17条の図面としての現地復元性の効力は認めら
れていないし、本件13の土地の登記簿上の地積(1004.95平方メートル)
が右図面による面積(1034.66平方メートル)に更正されてもいないが、本
件13の土地の東側と南側の土地所有者(いずれも被告)及び北側の土地所
有者は右確認を終えており、…右明確化作業により、関係地主の現地確認も
ほぼ終え、各筆の位置境界を示す地図も作成され、これによる本件13の土
地の形状及び位置関係は事実上現地復元性を有し…」として、土地は事実上
特定されている旨の判断を行っている。
5 したがって、上記2の沖縄県収用委員会の裁決及び上記3、4の判例によ
れば、本件各土地が特定されていることは明らかである。
6 本件各土地は、上記の昭和62年2月24日の沖縄県収用委員会の裁決に
基づき(平成9年5月15日からは駐留軍用地特措法に基づく暫定使用によ
り)使用してきたところであるが、この裁決に基づいて使用してきている事
実こそ最も重視されるべきである。しかも、昭和62年の裁決の時点から今
日までの問に、本件各土地の形質が大幅に変更されるような事情は何ら見当
たらない。また、沖縄県収用委員会は昭和62年の裁決及び今回の裁決に当
たって現地調査を行っており本件各土地の状況を確認している。
このように、本件各土地を巡る状況は、昭和62年の裁決当時とでは変わ
っておらず、本件各土地が現地に即して特定されていることに変わりはない
ものと考える。
7 本件却下裁決の理由第2の2(3)について
沖縄県収用委員会は、「地籍が確定していない以上、土地の特定はあり得
ない。」と判断しているが、認証手続が完了していなくとも、土地が現地に
即して特定できることは上記裁決及び判例において認められているものであ
るから、収用委員会のこの判断が誤りであることは明らかである。
8 本件却下議決の理由第2の2(4)について
沖縄県収用委員会は、「過去の収用委員会の裁決においては、起業者の特
定した土地の位置、地積に基づき補償金が算定され、支払われた点について
は、当収用委員会は過去の裁決の適否を判断する権限を有しないので、判断
しない。」としているが、収用委員会は都道府県に置かれた行政機関であり、
そこには行政の継続性があるのであるから、収用委員会は過去の裁決の適否
を判断する権限を有しないとはいえないものと考える。
9 本件却下裁決の理由第2の3について
沖縄県収用委員会は、「本件裁決申請対象土地は、未認証の土地なので、
使用認定を受けた土地表示と本件裁決申請に係る土地調書添付の実測平面図
との整合性がない。」としているが、本件各土地が未認証であっても、現地
に即して特定されていることは上記で述べたとおりであり、使用認定申請の
土地等の調書における土地の所在、地番、数量と裁決申請の土地調書におけ
る土地の所在、地番、地積とは、土地の場所を示す表現としては同一であり、
しかも、同一内容の実測平面図を添付していることから、使用認定を受けた
土地と裁決申請対象土地が異なることはあり得ない。したがって、裁決申請
において添付された実測平面図によって特定される土地は、使用認定を受け
た土地そのものであるから、収用委員会のこの判断は誤りである。
10 本件却下裁決の理由第2の4について
沖縄県収用委員会は、「起業者は、土地収用法第40条第1項第2号イに
基づき、使用しようとする土地の所在、地番及び地目を特定して裁決申請し
なけれはならない。ところが、前記のように、起業者の裁決申請書及び添付
書類によっては本件裁決申請対象土地の特定ができないのである。したがっ
て、起案者が本件裁決申請対象土地に対してなした裁決申請には土地収用法
第40条第1項第2号イの要件を欠いた瑕疵があり、…同法第47条第1項
本文に該当するものである。」とするが、本件各土地の裁決申請手続は過去
2回の裁決において適法とされていたところであり、当局は今回も過去の時
と同様に、本件各土地が現地に即して特定されていることを前提として裁決
申請したものである。上記のとおり、本件各土地が現地に即して特定されて
いることは明らかであるから、本件各土地が特定されてないとして、裁決申
請を違法と判断した本件却下裁決は、違法、不当なものと考える。
11結論
以上述べてきたとおり、当局は、本件各土地が現地に即して特定できるこ
とから議決申請を行ったものであり、その手続には何ら瑕疵はないものと考
える。
本件各土地は、過去2度にわたる沖縄県収用委員会の裁決等により特定さ
れていることが認められており、その後の事情の変更は認められないのであ
るから、本件各土地の特定ができないとした収用委員会の本件却下裁決は違
法、不当なものとして速やかに取り消されるべきである。
−−−−−−−−−−− ここまで −−−−−−−−−−−−−−−−
仲田 博康
xc8h-nkd@asahi-net.or.jp
3月、4月、5月、6月、7月、