Subject: [keystone 428] アジアの核開発
From: XC8H-NKD@j.asahi-net.or.jp (Nakada Hiroyasu)
Date: 17 Jul 1998 21:39:23 +0900
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相模原の仲田です。

インドとパキスタンが国民の貧困をよそに愚かな核実験を強行しましたが、ア
ジア・中東諸国の核開発の現状が「原子力資料情報室通信」289号に掲載さ
れていましたので転載します。
なお、日本の現状については、次の機会にふれたいと思います。
 

−−−−−−−−−− ここから −−−−−−−−−−−−−−−−−−−

アジア・中東各国の核開発
5月に相次いで核実験を行なったインドとパキスタンの西にはイラン、イラク、
イスラエルがあり、東には中国を挟んで北朝鮮、韓国、台湾がある。いれも多
かれ少なかれ核兵器開発の疑惑をかけられている国であるが、印・パの核実験
の影響により、これら諸国で核兵器保有への動機が強まり、核兵器開発が進展
の度を加える可能性も考えられる。ここでは印・パおよびその周辺諸国の核・
原子力開発状況について簡単に概観してみたい。

インド
5カ所に商用原発10基(他に建設中・計画中多数)、2カ所に研究炉5基が
あり、再処理工場や高速増殖炉も有するなど、大規模な原子力開発を進めてい
る。1974年5月18日に行なわれた第1回核実験の材料はトロンベイのバ
ーバ核研究所にある重水炉サイラス(Cirus、4万kW)で生産されたプルトニ
ウムだったが、サイラスと同じバーバ研究所にある重水炉ドゥルヴァ(Dhruva、
10万kW)はサイラスよりも規模が大きく、年間数十kgのプルトニウムを生産
可能と見られる。核兵器級プルトニウムの推定保有量は300kg前後。ミサイ
ル「アグニ」(射程距離2500km)、「プリトビ」(同250km)を有する。

パキスタン
カラチにカナダ製のCANDU炉(13.7万kW)があり、チャシュマに中国製のPW
R(32.5万kW)を建設中。イスラマバード近郊のラワルピンディに核科学技
術研究所、カフタにカーン研究所がある。ウラン濃縮が核開発の主要な位置を
占め、カフタのウラン濃縮工場は1991年にいったん停止するまでに核兵器
級ウランを累計200kg前後生産したと見られる。また、クシャブには50MW
前後のプルトニウム生産炉があると見られる。ミサイル「ガウリ」(射程距離
1500km)を有する。

イラン
ブシェールにPWRを建設中、エステグラルに同じくPWRを計画中。ブシェールは
ドイツ企業による建設時にイラクの攻撃を受けたが、ロシアによって建設が再
開された。エステグラルは中国製。またテヘランおよびイスファハンに研究炉
計4基がある。核兵器保有の明証はないが、ロシアや中国など各国と接触して
核技術・設備を入手していることが明らかにされている。

イラク
バグダッド近郊のアル・トゥワイサ研究所のタムズ1号(オシラク)炉は19
81年6月にイスラエル空軍機に爆撃されたが、それ以後もイラクは核兵器保
有計画を進めており、湾岸戦争後のIAEAによる査察や、ヨルダンに亡命したフ
セイン・カメルの証言によってその詳細が明らかになった。アル・トゥワイサ
研究所のIRT5000炉とタムズ2号(イシス)炉は湾岸戦争の際に多国籍軍
に爆撃され、アル・タルミヤ、アル・フラトなどにあったウラン濃縮施設も、
多くは湾岸戦争時や戦後の国連査察団によって破壊された。98年4月のIAEA
報告では、「核開発能力はなくなったと見られるが、核保有への意思を捨てた
かは疑問であり、今後も監視が必要」としている。

イスラエル
すでに核兵器保有国である。核実験も実施済みである可能性が高い。ヤフネの
ソレク原子力研究センターにIRR-1炉、ディモナのネゲブ原子力研究センター
にIRR-2炉と再処理工場、レホポットに重水工場がある。フランス製のIRR-2
炉は天然ウラン・重水減速で、核兵器級プルトニウムを累積数百kg生産してい
ると推定される。核兵器開発の中心であるディモナの詳細は、元技師のバヌヌ
の証言によって明らかになった。核弾頭の推定保有数は数百。しかし政府は核
保有の有無について明言していない。ミサイル「エリコ1」(射程距離500
km)「エリコ2」(同1500km)も所有している。

北朝鮮
1950年代から原子力開発を開始し、1962年には寧辺にソ連からIRT炉
を輸入。寧辺には核施設が集中し、IRT炉の他に研究炉1基(5000kW)、
核燃料工場などがある。1990年頃から寧辺における再処理・プルトニウム
抽出疑惑が問題となった。北朝鮮は寧辺で実験的にプルトニウムを抽出してい
たことは認めている。93年のIAEA特別査察拒否や94年の米朝枠組協定の調
印を経てKEDOが設立されたが、KEDOによる新蒲での軽水炉建設は難航している。

韓国
4地点12基の商用炉が操業中で(蔚珍、月城、古里、霊光)、うち月城1号
・2号はCANDU型である。大田の原子力研究所などに研究炉2基がある。濃縮
工場・再処理工場はないが、朴正煕大統領は核兵器保有を目的とした再処理工
場計画を立てていた(1979年の朴大統領暗殺により中止)とされる。

台湾
3地点6基の商業用軽水炉が操業中(金山、国聖、馬鞍山)のほか、龍門に建
設計画がある。研究炉は原子力研究所や清華大学に現在4基がある。かつてカ
ナダから輸入して原子力研究所に建設したTRR(TaiwanResearchReactor,天然
ウラン燃料・重水減速)は1973年に運転開始した。しかし1988年に米
国に亡命した原子力研究所副所長の証言により、TRRの使用済み燃料からプル
トニウムを抽出する再処理施設の建設が進んでいたことが発覚。アメリカの圧
力によりTRRは閉鎖され、TRRの使用済み燃料と重水はアメリカに搬送された。
蒋介石の時代からすでに原爆開発計画があったとの証言がある。
 

核物質推定保有量

インド     プルトニウム 315〜345kg(95年末)
パキスタン   濃縮ウラン  157〜263kg(91年末)
イスラエル   プルトニウム 330〜580kg(95年末)
北朝鮮     プルトニウム 0.1〜9.5kg ?
(出典は省略:仲田)
 

−−−−−−−−−− ここまで −−−−−−−−−−−−−−−−−−−

注1:情報室
 イスラエルの「レホポット」に重水工場がある旨の記述がありますが、これ
は或るひとつの文献にのみもとづいて書いた部分で、他の文献によりますとレ
ホボトというところにワイツマン研究所という研究所があります。これは核関
連の研究を行なっているといわれているところです。このワイツマン研究所内
に重水製造施設があるのかもしれませんがこれは推測です。
 全般に核開発疑惑に関しては情報が錯綜しており、色々な資料を見ましたが
なかなか明瞭には確認できない部分もあります。ごく大まかな記述であること
にご留意いただければ幸いです。
 

注2:仲田
北朝鮮・台湾という国はないが引用のため、そのまま表記。
 
 
 
 

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仲田 博康
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