昨日(6月4日)沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック主催の「土地を明渡せ 米軍
用地強制使用却下裁決報告集会」が開かれました。内容は、収用委裁決についての解
説(松島暁弁護士)、今後の闘いについての説明(池原秀明反戦地主会事務局長)、
防衛施設庁への今後の対応を考えるための寸劇(関東ブロック)。
松島弁護士の配付資料のうち、今回の収用委裁決の解説部分を転載します(許可済
み)。ホームページにも掲載してあります。
http://www.jca.ax.apc.org/~sei-u/hitotsubo_kanto/Kokaishinri/Matsushima.html
なお、注にもありますが、これは反戦地主弁護団の統一見解ではなく、松島弁護士
個人の解説です。
(改行位置等を変更してあります)
============================ 転載ここから ==================================
国の裁決申請を却下した沖縄県収用委員会 裁決の内容と問題点
弁護士 松 島 暁(反戦地主弁護団)
一 去る五月一九日、沖縄県収用委員会は、国(那覇防衛施設局長)から出されてい
た反戦地主らの土地二九九筆の強制使用(権利取得裁決申請及び明渡裁決申立)につ
いて、一部却下(一三筆)を含む決定を下した。一九九七年二月から約一年間、一一
回の公開審理を踏まえての裁決であった。本稿において、右裁決の概要と問題点を指
摘したい。
二 右裁決の第一の特徴は、嘉手納、普天間、キャンプ・シールズ、牧港の四施設、
一三筆の土地について、国の申請を却下したことである。過去三回の沖縄収用委での
たたかいにおいて初めてのことである。
却下理由は、土地収用法四〇条一項二号イの求める特定の要求を、一三筆について
は充足しておらず、国の申請が違法だというものである。
沖縄戦において焦土と化し、引き続き米軍に占領された沖縄では、登記簿や権利証
等の関係書類が失われたばかりではなく、土地の境界が不明になったり、地形そのも
のの変容を生じてしまった土地が多く存在した。そこで地籍明確化法によって、その
修復を行ったが、その作業が地域ごとの「集団的和解方式」であったため、最終的に
同意せず和解に応じなかった土地、「地籍不明地」が残ることとなったものである。
今回却下の一三筆はいずれもこの「地籍不明地」である。
これら地籍不明地について却下の結論が出た意味は極めて大きい。何故ならば、そ
の内の一筆は、嘉手納基地のメイン滑走路のほぼ中央に存在するため、その部分が使
用できないと嘉手納基地機能そのものが麻痺してしまう関係にあるからである。仮に
、昨年の米軍用地特別措置法の強行を許していなければ、この決定によって極東最大
の米空軍基地である嘉手納基地の機能が麻痺してしまう可能性があったのである。
そうであるが故に、国は当然、建設大臣に対する審査請求を行うことになるであろ
う。(米軍用地特措法によって、審査請求によって暫定使用権原が生まれる。)
三 第二の特徴は、瀬名波通信所について、認容はしたものの使用期間を一年とした
(申請は約四年)ことである。一年間の使用期間というのは、再申請手続を考えると
ほとんど却下に等しいものである。
収用委は、その理由において「本件裁決申請対象土地が日米両国で既に具体的早期
返還合意がなされていること、本件裁決対象土地を速やかに返還しても瀬名波通信施
設の機能には、ほとんど影響のないこと、土地所有者は、返還地の使用方法すら制約
を受ける等の不利益を受けている、このような偏頗な形状を作出したのは起業者であ
ること等に鑑み、使用期間を一年と定めるのを相当とする。」(裁決書一二頁)とし
た。
これは、収用委員会の現地調査を踏まえての決定であるが、実質的には、収用委員
会が総論において審査権限がないとした使用認定の適法性・妥当性の判断を、使用期
間の認定に滑り込ませることによって、事実上の却下裁決を行ったと等しいものと評
価できる。
同時に、理論的・実践的には、国においてこの「認容」裁決に対し審査請求するの
か、暫定使用権原が生じているのか等の問題を生じさせることとなった。
四 この他にも、中間利息の控除率を年〇・二五パーセントとしたことも高く評価さ
れるべきである。契約地主の地代支払いが年払いであるのに対し、反戦地主に対する
支払が一括の中間利息控除であるための差別的取扱を極力解消しようという収用委員
会の努力の現れである。
しかし、収用委員会の判断を評価しつつも、看過できない問題点の存在することを
以下において簡単に指摘したい。
第一は、内閣総理大臣の使用認定について、反戦地主側が強く主張した日米安保条
約や米軍用地特別措置法の合憲性についての収用委員会の審査権限をことごとく排斥
したことである。総理大臣の使用認定については、重大かつ明白な瑕疵についての審
査権限を肯定しながら、「本件使用認定をみると、重大かつ明白な瑕疵は存在しない
。」と何らの理由をも示すことなく切り捨てている。
第二は、土地・物件調書の瑕疵についてである。調書に添付された実測平面図が使
用認定前に作成されている点について、土地収用法三六条の土地・物件調書とは、「
正確には『土地調書の素案及び物件調書の素案』と理解されるべき」だとして、土地
・物件調書の作成は有効だとした。さらに、収用委の決定における問題点として看過
できないのは、現地立会を認めないで作成された土地・物件調書をも有効とした点で
ある。決定は、「土地収用法第三六条第二項の『立ち会わせた上』とは、調書作成の
全過程について立ち会わせることを言うのではなく、調書が法的に有効に成立する署
名押印の段階で・・・・立ち会わせることをいうのである」とした。これは従来の政
府の解釈そのものであり、職務執行命令訴訟において沖縄県側が主張したものと比べ
ても大きく後退した判断となっていると言わざるをえないものである。
(注) 以上は、反戦地主弁護団の討議を経たものではなく、松島個人の見解である
ことをおことわりしておく。
=========================== 転載ここまで ================================
関連資料:
・県収用委裁決要旨(沖縄タイムス)
http://www.okinawatimes.co.jp/spe/980520.html
・公開審理
http://www.jca.ax.apc.org/~sei-u/hitotsubo_kanto/Kokaishinri/Kokaishinri.html
・米軍用地特措法
http://www.jca.ax.apc.org/~sei-u/hitotsubo_kanto/Tokusoho/Tokusoho.html
・瀬名波通信施設(第6回公開審理)
http://www.jca.ax.apc.org/~sei-u/hitotsubo_kanto/Kokaishinri/6th/Kanda.html
・反戦地主に対する経済差別(第11回公開審理)
http://www.jca.ax.apc.org/~sei-u/hitotsubo_kanto/Kokaishinri/11th/katoh11.html
・収用委員会の審理権限(意見書)
http://www.jca.ax.apc.org/~sei-u/hitotsubo_kanto/Kokaishinri/ikensyo/ikensyo
-002.html#anchor174022
・土地・物件調書の瑕疵(意見書)
http://www.jca.ax.apc.org/~sei-u/hitotsubo_kanto/Kokaishinri/ikensyo/ikensyo
-008.html
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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
http://www.jca.ax.apc.org/~sei-u/hitotsubo_kanto/index.html
東京都千代田区三崎町2-2-13-502
電話:030-910-4140、ファックス:03-3386-2203
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