名護市民訴訟(「海上基地建設問題名護市住民投票(損害賠償請求)訴訟」)の被告
側答弁書が出ました(4月17日)。資料として、原告の訴状(1月20日)・市民
原告団・提訴声明文(1月20日・被告の答弁書を分けて流します。
裁判資料提供は三宅俊司法律事務所。
声明文は比嘉明子さんがmarine-mlに流したもの([marine-ml 5771])。
なお、それぞれの文書及び関連文書は以下のページからたどれます。
「海上ヘリ基地建設計画」
http://www.jca.ax.apc.org/~sei-u/hitotsubo_kanto/Heliport/Heliport.html
第一回公判は4月28日(火)午後1時30分〜、那覇地裁・名護支部。
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名護市民訴訟
「海上基地建設問題名護市住民投票(損害賠償請求)訴訟」
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訴 状
原 告 別紙原告目録記載通り。
右原告ら代理人人 別紙代理人目録記載の通り。
被 告
別紙被告目録記載通り。
訴訟物の価格 金 五,〇四〇,〇〇〇円
手数料
金 三三,六〇〇円
請 求 の 趣 旨
一 被告らは、連帯して原告らに対して、それぞれ金一万円及びこれ
に対するら、一九九七年(平成九年)一二月二四日から支払い済み
まで、年五分の割合による、金員を支払え。
二 訴訟費用は、被告らの負担とする。
との判決および、仮執行の宣言を求める。
請 求 の 原 因
第一 当事者
一 原告らは、いずれも名護市に居住する、名護市民である。
二 被告比嘉鉄也は、一九九八年(平成一〇年)一月一三日まで名護
市長の職にあった者である。
第二 本件事件の背景
一 普天間基地の返還と、キャンプ・シュワブ沖海上ヘリポート建設
計画。
1 日本政府と、米国政府によって設立された、沖縄に関する特別
行動委員会(SACO)は、一九九六年一二月二日、沖縄県にお
ける米軍の運用の調整等に関して最終報告をとりまとめ、これを
発表した。
2 その際、宜野湾市に所在する、県内唯一の米海兵隊専用航空基
地である、普天間飛行場の返還が日米両政府間で合意された。
ところが、それは、基地返還とは名ばかりで、名護市久志地域
に二二四万平方メートルという広大な面積をもつ、キャンプ・シ
ュワブの地先に海上ヘリポート基地を作り、ここに移設するにす
ぎないというものであった。
3 普天間飛行場に関するSACO最終報告によると、
(1) 普天間飛行場の機能ヘリコプター運用機能のほとんどを吸収
し。
(2) 施設の長さは、一五〇〇メートルとし、計器飛行への対応能
力を備えた滑走路(長さ約一三〇〇メートル)航空機の運用の
ための直接支援、並びに司令部、整備、後方支援、厚生機能及
び基地業務支援等の間接支援基盤を含む、普天間飛行場におけ
る飛行活動の大半を支援するものとする。海上施設は、ヘリコ
プターに係る部隊・装備等の駐留をするように設計せれ、短距
離で、離発着できる航空機の運用をも支援する。
というもなであって、普天間飛行場機能をそのまま名護に移動
せるものにすぎず、結局基地の「沖縄県内たらい回し」にすぎな
い。
二 海上ヘリポート建設予定地域には、キャンプ・ハンセン、キャン
プ・シュワブ、辺野古弾薬庫が続き、米軍基地に伴う被害に悩まされ
続けて来た。
広大な訓練基地では、戦車装甲車を陸揚げして、山中で訓練を繰
り返し、北部の水源涵養林を切り倒し、赤土を海に流し込む元凶と
なっている。
航空機の援護を伴う強襲上陸訓練で、学校内の教室の天井にヒビ
が入るという爆音被害を引き起こしたり、久志山麓に撃ち込まれた
機関銃やライフルの実弾訓練では、たびたび跳弾が民間区域にまで
飛んできて、八四年五月一八日には農道に止めていたダンプカーの
フロント部分を機関銃が撃ち抜くという事故が起こった。
その時名護市は、「We are not your target!」(我々は標的で
はない。) との看板を掲げている。
三 普天間飛行場は、県内唯一海兵隊飛行場であり、海兵隊が唯一海
外における戦闘攻撃部隊主力の前進拠点である山口県岩国基地と連
動し、輸送、攻撃ヘリを中心として、上陸作戦の対地攻撃、偵察、
空輸を主任務としている。
ヘリは、無方向を低空で飛び回り周辺は、常時騒音で悩まされ続
けている。
航空機騒音から住民の生活を守るための「うるささ指数」は、七
五以下と定められているが、基地周辺では、八〇から九〇を示し、
演習の時は九〇を越え、電話やテレビの音も聞こえず、赤ん坊はび
っくりして泣き叫ぶ。子どもたちも、爆音で何度も授業が中断し、
子どもも教師もイライラして神経をすり減らしている。
ヘリは安定性も悪く、たびたび墜落、不時着事故を起こしており
一九八四年五月、七月には、Ch53大型空輸ヘリが墜落炎上する
事故を起こしている。
四 普天間から名護にヘリ基地を移動させることは、甚大な基地被害
で悩まされている地域に更なる基地被害を押しつけるにすぎない。
しかも、県内移設を条件として普天間基地返還を認めるという日本
政府の態度は、単なる基地の県内たらい回しを強要するものにすぎ
ず、県民の望む基地返還に逆行するものである。
五 名護市民は、新たな基地被害に反対すると共に、自らの地域の将
来は、地方自治の原点煮立ち帰り住民自身の意志を明らかにする手
段として、市民の直接請求に基づいて、名護市における米軍のヘリ
ポート基地建設の是非を問う市民投票に関する条例の制定請求を行
った。
第三 住民投票条例と住民投票
一 名護市民は、一九九七年七月八日から一か月の間に、有権者の内
一九、七三五名の署名を集め名護市選挙管理委員会に提出した。
九月二五日には、住民が求めた市民投票条例案が名護市議会に提
案された。
二 住民の求めた市民投票の選択肢は、(1)基地建設に賛成か、(2)反
対か。の二者択一を求める単純で市民にとって極めてわかりやすい
ものであった。
ところが基地建設を容認する議員集団は、基地建設反対が市民の
中で圧倒的であったことから、議会において、市民の請求した条例
の選択肢を、(1)賛成。(2)環境対策や経済効果が期待出来るので賛
成。(3)環境対策や経済効果が期待出来ないので反対。(4)反対。
の四択に修正可決してまった。
地域振興策と基地建設容認とを一体のものとすることで、建設容
認票を増やそうという、姑息な手段にでたものである。
三 一九九七年一二月二一日「名護市における米軍のヘリポート基地
建設の是非を問う市民投票が実施された。
これに対して、日本政府は、なりふりかまわない妨害工作を行
い、地方自治権の行使として行われている住民投票に対して、大量
の防衛施設局職員を名護に投入し、各家庭を回って個別訪問をさせ
自衛隊員にも、賛成派のための集票活動を行わせた。
また、地域振興策は、ヘリポート基地建設を容認する事が条件で
あるとして、露骨な利益誘導を行い、建設賛成派の業界団体は、各
企業に、投票のとりまとめに止まらず、不在者投票を積極的に行わ
せ、その数までノルマをかしたのである。そのため不在者投票は有
権者の約二割(七六三三名)という、異常な数にのぼった。
四 しかし、名護市民の良心は、政府を先頭とした露骨な介入に抗し
て明確に基地受け入れ拒否を明確にした。
投票結果は
1 賛成 2,562票 (8,28%)
2 環境対策や経済効果に期待できるので賛成
11,705票 (37,87%)
3 反対 16,254票 (52,59%)
4 環境対策や経済効果に期待できないので反対
385票 ( 1,24%)
であり、投票の結果は明確であり、市民の意志は、海上基地建設
に反対である事が明確に示されたのである。
第四 被告比嘉鉄也による基地建設容認と違法行為。
一 被告比嘉鉄也は、名護市市長として右市民投票の結果を尊重し、
海上ヘリポート基地建設に反対し、これを容認しない決定をすべき
義務があった。
ところが、被告比嘉鉄也は、市民投票が行われてわずか、三日後
の一二月二四日に至り、内閣総理大臣橋本龍太郎と面談した後、突
然海上ヘリポート基地建設の受け入れと、名護市長を辞任する旨の
意志表示をした。
二 「名護市における米軍のヘリポート基地建設の是非を問う市民投
票に関する条例」第三条は、
2 市長は、ヘリポート基地の建設予定地内外の市有地の売却、使
用、賃貸その他ヘリポート基地の建設に関係する事務の執行にあ
たり、地方自治の本旨に基づき市民投票における有効投票の賛否
いずれか過半数の意志を尊重しなければならない。
としている。
三 住民投票は、憲法の原理である民主主義の実現形態である間接民
主主義を補完する手段であり、個別具体的課題に対して直接民意を
示すものであって、もっとも民主的な手法である。
間接民主制・代議制・は、国民から選任された代表者に国民から
乖離した判断権限を与えたものではなく、主権者たる国民の意志に
反する行政判断をする事はできず、ましてや個別具体的事案につい
て国民の意志が明確に示された場合には、当然その判断に拘束され
るというべきである。
係る事態においても、国民の意志に拘束されないというのであれ
ば、これは、民主主義の死滅であり、専制政治にほかならない。
四 本件市民投票条例はヘリポート基地建設の可否に関して市民の選
択を直接求めたものであって、民主主義の理念からしても、名護市
長たる比嘉鉄也は当然に投票結果について、拘束を受けるというべ
きである。
また、本条例は、前記のとおり、第三条において「有効投票の賛
否いずれかの過半数の意志を尊重するとして、市長の行為を投票結
果に因って拘束するものとしている。
第五 原告らの権利侵害
一 海上ヘリポート基地建設に関して日本政府は地元名護の意志を尊
重する事を主張しており、名護市の意志として建設拒否が明確とな
れば、海上ヘリポート基地の建設は、断念せざるを得ない状況とな
ってい。
とこころが、被告比嘉鉄也によって、基地建設容認発言がなされ
た為、名護市民の基地拒否の思想信条は不当に侵害され琉に至った
た。
二 平和に、生きる権利の侵害。
1 原告らは、いずれも海上ヘリポート基地に反対し、基地との共
生を拒否していた者らである。
憲法は、憲法前文第九条において、平和に生きる権利を保障し
ている。
2 原告らは、市民投票の成果として、基地との共生を選択せず平
和に生きる権利を具体的に確保した。
ところが、被告比嘉鉄也の行為によって、基地を拒否拒否し平
和に生きる権利の実現を困難とした。
3 被告比嘉鉄也の行為は原告ら市民投票の成果として得ることの
できた、平和的生存権の享受を侵害する不法行為である。
三 思想、信条の自由の侵害。
1 原告らは、海上ヘリポート基地の建設に反対するという思想信
条から、建設に反対していたもにであるが、市民投票の結果、基
地建設を拒否するという民意が形成された。
2 ところが、比嘉鉄也の行為により、基地建設を許さないとする
原告らの思想信条を不法に侵害したものであって、原告らの思想
信条の自由を侵害する不法行為である。
第六 被告比嘉鉄也及び被告名護市の共同不法行為。
一 名護市の責任
被告比嘉鉄也は、名護市長としの職務として、市民投票条例に従
って海上ヘリポート基地建設を応諾しない旨の意志表示をすべき義
務があるにもかかわらず、これを行わず、基地受け入れの意志表示
をしたものであって、職務上の行為として国家賠償法第一条により、
賠償義務を免れない。
二 被告比嘉鉄也の責任
被告比嘉鉄也は、市長を辞任する事により、市民投票の結果に関
して市長として行うべき責任を回避しながら、基地建設応諾の意志
表示を行ったものであって、名護市長としの職務行為を越えて、被
告比嘉鉄也個人の行為としての責任を免れないというべきである。
三 両者の関係は、共同不法行為の関係にある。
第七 被告らの被害
一 原告らは、右行為によって金銭では評価しえない、重大な精神的
苦痛を受けたが、その損害は、一人あたり一万円が相当である。
第八 結語
因って、請求の趣旨記載の通りの判決を求める次第である。
添付書類
一 委任状 五〇四 通
一九九八年一月二〇日
那覇地方裁判所 名護支部 御中
右原告ら代理人
弁護士 前 田 武 行
同 池 宮 城 紀 夫
同 永 吉 盛 元
同 三 宅 俊 司
代理人目録
那覇市識名一丁目一七番三〇号
原告ら代理人
弁護士
前 田 武 行
那覇市樋川一丁目一六番地三八号
パークサイドビル二階
同 池 宮 城 紀 夫
同 所 同 番 地
同 永 吉 盛 元
那覇市泉崎二丁目一番地四
大建ハーバービューマンション九〇二
同 三 宅 俊 司
被 告 目 録
沖縄県名護市港一丁目一番一号
被 告 名 護 市
右名護市長職務代理者
稲 嶺
進
沖縄県名護市東江三丁目一〇番一六号
同 比 嘉 鉄 也
原 告 目 録
輿 石
正
外 五 〇 三 名
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出典:三宅俊司法律事務所、テキスト化は仲田
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沖縄・一坪反戦地主会 関東ブロック
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東京都千代田区三崎町2-2-13-502
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