中学歴史教科書問題で超党派の議員連盟「歴史教科書問題を考える会」が26
日、設立総会を開いた。議連には自民、民主両党などの有志議員約50人が参
加。会長に中川昭一元農相を選出し、(1)公正な採択が行われているかどうか
を書面で確認(2)他国の教科書について共同研究を進める――などの活動方針
を決めた。 [毎日新聞 6月26日]
とのこと。国会や各地の議会も終わり、議員らは「教科書採択運動」にも本腰
を入れることでしょう。
教科書採択に国会レベルを含む議員が首を突っ込むということは、私たちの
手の届かない、そして見えない「高度」なところから、文部科学省、教育庁、
教育委員会の判断を左右させる可能性を含み、教育への政治介入に道を開く危
険な動きです。
同会の言うところの「公正な採択」というのが、いわゆる教科書展示会場に
用意されている「アンケート」の多寡をも視野に入れたものであることは容易
に推察されます。歴史改ざん勢力では組織をあげてこれに取り組んでおり、は
がき・ビラまきの他、用紙を持ち帰ってコピーし、あらかじめ扶桑社教科書を
推薦する内容を記入した用紙を会場に持ち込ませるという「水増しアンケー
ト」をしているところもあるといいます。一方、各教育庁では教育長から学校
長へ、教員へ対して勤務時間中の閲覧の配慮要請がされているはずですが、実
際に校長が教員の教育権を保障できているかは不明です。所によっては「開か
れた学校」を利用してバッジ族が校舎へ出入りし、直接採択に関係ないことで
教員をいびってよろこんでいる例もあると聞きます。このような実態の中での
「アンケート」結果の多数決がはたして「公正」なものでありえるでしょう
か。
そして私たちが求めているのは、教科書をバーゲンセールで数を競って選ぶ
ような採択ではなく、憲法、教育基本法に則った採択手続きと、教科書の選定
です。その実現のために私たちは、▽地域の教育委員や関係市区町村の中学校
長、社会科教員などにその意思を伝える▽街頭での訴えや署名活動▽採択課程
の情報公開を含む教育委員会への請願行動▽新聞への意見広告▽教科書問題の
講演会やシンポの開催などに取り組んできているのです。
また、「扶桑社」検定済教科書の拒否は、政府間の枠を越え、日本政府や日
本国民の孤立を危惧するアジア民衆が連帯して取り組んでいる基本的人権に基
づく意思表示で、日本政府も「内政干渉にはあたらない」と正式に表明してい
ます。これは、国家に対してだけではなく、どんな組織内においても奪われて
はならない個々人固有の権利です。
さらに、扶桑社の歴史教科書については検定を通ったとはいえ、採択が間近
に迫っているこの期に及んでいまだ文部科学省では同教科書に関する「精査」
が行われています。どちら側を「精査」しているにせよ、このような不確定な
要素を残す教科書を採択した場合、子どもたちや保護者、教員などへの直接の
説明責任を負うのは教育委員会ですが、その無責任のそしりは免れません。
「超党派の会」にとっても大きなマイナス要因。その排除にかかったようで
す。
崔相龍駐日韓国大使は27日、首相官邸に小泉純一郎首相を訪ね、日本の歴史
教科書問題について、「日本側の誠意ある対応をお願いしたい」と、改めて再
修正を要請した。これに対し首相は、「真摯(しんし)に受け止めており、文
部科学省で専門家による精査が行われている」と述べるにとどめた。[時事通
信社6月27日]
「歴史教科書を考える超党派の会」の中川昭一代表らは29日、文部科学省が
「新しい歴史教科書をつくる会」主導の歴史教科書を精査していることに対
し、「公正・中立な教科書採択に少なからず影響を与える」と批判した申し入
れ書を福田康夫官房長官に提出した。[毎日新聞 6月29日]
なお、教育委員会への請願活動をしている中で、「請願」は「議会」あての
みだからと、教育委員会への請願を断ろうとした市があったとのこと。悪法を
も遵守する行政関係者としては、はなはだ不見識な姿勢です。憲法第16条で国
民の請願権は保障されています。50年余使い慣れてきたはずの憲法条文をいち
いち持ち歩かなければならないとは誠に情けない話で、今なお憲法の精神が生
かし切れていないこの国の行政のつたなさを知らされた次第です。
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【北海道】
来年度の小中学校教科書について、札幌市教委は27日、7月中旬に市教科用
図書選定審議会の答申を受け、同下旬に教育委員会を開いて採択する教科書を
決めることを明らかにした。決定後、採択の経緯などを情報公開する方針を示
した。市教委は、公正の確保のため、採択前には審議会の日程など詳細は公表
はしないとした。
共産党委員が、「新しい歴史教科書をつくる会」が主導して編集した公民の
教科書には男女平等にふさわしくない記述があるとした上で、「憲法をきちん
と教えるための教科書を採択することが教委の立場ですね」と確認した。教育
長は「承知しました」と述べた。「つくる会」の歴史教科書に多数の誤りがあ
ることなどをただす各委員の質問に、「検定を通っており、調査、研究を進め
ている。内容への見解は控える」と繰り返した。
同日の市議会文教委員会で、2月以降に提出された小中学校の教科書に関す
る陳情9件と継続審査中の請願と陳情計9件について審査し、継続審査とし
た。
(朝日6月28日)
【青森】
日本の歴史教科書検定問題の影響で、五戸町と姉妹都市の縁組を結んでいる
韓国忠清北道沃川郡(柳鳳烈郡守)との交流が中断している問題で、同郡から
8月下旬に予定していた中学生の派遣を見合わせる趣旨の書面が同町に届いて
いたことが、27日分かった。同町では四月下旬に、町議団の訪韓を取り消され
ており、二国間の政治問題が決着をみず、尾を引いたまま、二回続けて交流事
業が取りやめになった。
書面は「貴国の歴史教科書問題が、いまだに円満解決ができていない状況に
あります」と同問題への懸念を重ねて表明。「このような状況で貴町を訪問す
るのはまだ早い気がします」と、前回の町議団訪韓取り消しと同様に、事実
上、中学生派遣を見合わせるという内容。
町地域振興課の担当者は「事務方同士のやりとりとはいえ、沃川郡側でも、
トップレベルで検討した上での判断では」とみている。
三浦正名町長は「現時点では二国間の政治問題の早い解決を望むしか手だて
がない」と話しており、今後とも交流は継続したい姿勢は変えない。一方では
「この状態が長引くと町民感情にも影響が出てくるのでは」と懸念もしてい
る。
(東奥日報6月28日)
【宮城】
宮城県の浅野史郎知事は26日、扶桑社の中学校歴史・公民教科書が海外から
批判されている問題について、「私の感じでは場合によっては程度を超えてい
るのではないか。いい加減にしてくれ。日本の教科書は日本の問題だというふ
うに言いたくなるのが率直な気持ちだ」などと述べ、中国や韓国による教科書
批判を批判した。開会中の県議会で、自民党(県民会議)県議の質問に答え
た。
また、扶桑社の公民教科書一社が北朝鮮の拉致(らち)問題を教科書に掲載し
ている点について、浅野知事は「これは歴史的事実。これを書くか書かないか
は編集する人の一つの見識だろう」などと、自らの見解を明らかにした。
(産経6月23日)
【山形】
「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した中学校社会科の歴史教科書内容
に反対する県内の市民グループは27日、県庁で会見し、県内全44市町村教育委
員会に対し、同教科書を採択しないよう求める請願を提出したことを明らかに
した。グループは山形大教授や市民団体などで構成されており、これまでに約
1600人の署名を集め、今後も運動を展開する方針という。
(毎日6月28日)
【東京】
「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学歴史、公民教科書について、杉
並区の市民グループ「『つくる会』の教科書採択に反対する杉並・親の会」の
メンバーが27日、同区役所を訪れ、この教科書を採択しないことなどを求める
陳情書と6234人分の反対署名を区教委に提出した。
陳情書は「つくる会」の教科書は「現憲法を否定するもの」「戦争を肯定的
に記述した個所がある」などと反対理由を説明。教科書の採択に当たって教師
の意見を尊重し、採択までの経過を公開することも求めた。同区教委は、七月
中にどの教科書を採択するか決める予定。
(東京新聞 6月28日)
【東京】&【大阪】
6月23日、東京と大阪で歴史教育を考える在日韓国人研究者の集いが開か
れ、<『新しい歴史教科書』による歴史教育に危倶を抱く「歴史教育を考える
在日韓国人研究者の集い」の声明>を発表。
【新潟】
「歴史を歪曲する教科書の採択を許さない県民フォーラム」の代表者など7
人が28日、新潟市役所を訪れ、「教科書採択の公正確保を求める要望書」を市
教育委員会に提出した。フォーラムは「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史
と公民の教科書を採用しないよう求めた請願、陳情を不採択にした市町村議会
の教委に、直接要望書を手渡している。
(新潟日報6月28日)
【石川】
6月定例県議会は最終日の26日、教科書採択についての決議案と意見書案を
採決。
「教科書の適正化を求める石川議員の会」のメンバーが大半を占める自民、
新進石川、21世紀政経研究会、地域政治研究会の4会派が提出した決議案は
「各市町村教委が自らの責任と判断のもとに教科書採択する」ことを求めてお
り、公明の賛成も得て可決。
スクラム喜望の意見書案は、「つくる会」主導の「新しい歴史教科書」を
「植民地支配と侵略への反省と謝罪をした95年の村山総理談話と相入れな
い」とした上で「より多くの教員の意向が反映される」よう求めていたが、民
主クラブが賛成したものの否決。
採決前の討論では、自民県議が「自国に誇りうる歴史教育を」、スクラム県
議が「決議案は特定の教科書の採択を意図するものだ」などと主張。
当初独自の決議案を提出していた公明は、自民などの案に「採択前に学識経
験者、教員及び保護者等の意見を十分に聴取する」との文言を加えることで一
本化して取り下げた。公明議員は、スクラムの意見書案については「歴史認識
は近い」として採決を棄権した。
金沢市議会は26日、市教委に対し教科書採択前に各界各層の意見を十分に聴
き、決定権者としての判断と責任で採択するよう求める「教科書採択の適正化
を求める決議」(新世紀フォーラム・新生ひびき提案)を共産以外の賛成多数
で可決した。共産提出の「歴史教科書に関する意見書」案は否決。
共産の意見書案は、「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された歴史
教科書について、「国は、憲法と教育基本法の理念に反する教科書に対する検
定合格を取り消すよう強く要望する」との内容。同党団長が提案理由で「『つ
くる会』の教科書は侵略戦争や植民地支配を美化しており、韓国でも問題に
なっている」と批判したところ、他会派の議員からは「内政干渉だ」「偏見
だ」との声も上がった。
公明・民主・社民の3会派も別の決議案を出していたが、新世紀フォーラ
ム・新生ひびきの案に修正を加えることで賛成に回った。
(朝日6月27日)
【愛知】
一宮市の教員や市民でつくる「教科書を考える会」は30日午後2時から、同
市時之島の有隣会館で「教科書をみる会」を開く。教員たちが教科書を比較し
て、問題点を指摘する。同会館内の一宮地域文化広場で開催中の教科書展示会
に合わせた。教科書を考える会は95年、「わかりやすい教科書と、よりよい教
育を継続的に考えよう」と発足した。同市の教員三人が勤務時間中に同展示会
に行こうとしたが、校長が許可しなかったことから、会の設立につながった。
(朝日6月26日)
【三重】
教育や平和運動に関わる県内15団体は27日、扶桑社の教科書を採択しないよ
う求める請願書を県教委に提出した。 請願では「大日本帝国憲法や教育勅語
を礼賛し、戦争を賛美する姿勢は、現在の憲法や教育基本法の理念とは相いれ
ない。ひとりよがりに日本の負の部分を隠して戦争を美化するのでは、アジア
諸国民との相互理解、信頼の道を閉ざしてしまう」と扶桑社の教科書を批判。
教科書採択で保護者や県民の意見を尊重することや、採択過程の情報公開を求
めている。
(毎日6月28日)
【滋賀】
来年度に小中学校で使う教科書の採択をめぐって、県教委は27日、検定済み
の各教科書の特長について県選定審議会がまとめた資料の要点を、教科書採択
前に公表する方針を明らかにした。資料は小学校延べ55、中学校同77の検定済
み教科書についてまとめたもので、県内6地区の採択協議会に送付済み。各地
区は8月15日までに教科書を選び、県教委を通じて文科省に報告する。県教委
は、報告後に資料を公開することを決めていたが、経過段階での透明性を求め
る声もあり、要点に限って公表する。「採択作業の公正さを知ってもらうた
め」としている。
(毎日6月28日)
【京都】
28日に開かれる京都府向日市教育委員会に、つくる会教科書の不採択を求め
る趣旨の請願が複数提出された。
【兵庫】
「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で編集された中学歴史教科書をめぐ
り、県内6つの在日韓国・朝鮮人の青年・学生団体で構成する「兵庫コリアン
青年学生協議会」が26日、「つくる会」の教科書の不採択を求める要望書を県
教委に出した。
要望書では、「つくる会」の教科書は日本のアジア諸国への戦争犯罪を認め
ず、朝鮮半島侵略を正当化し、在日コリアンが存在する歴史的経緯を隠ぺいし
ていると指摘。採択されれば、在日コリアンに対する偏見が教育現場に持ち込
まれると訴えている。同協議会はこの日、県内すべての市町教育委員会に同じ
要望書を郵送した。
県教委義務教育課は「中学校の設置者ではなく、教科書を採択する立場にな
いが、各市町は子どもたちにふさわしい教科書を選ぶと考えている」と話して
いる。
(朝日6月27日)
【和歌山】
26日開かれた県議会の文教委員会で、共産議員が、教科書採択について質問
する際、同教科書を掲げ、「この教科書は明らかに憲法の精神、教育基本法の
教育目的に反する」と発言。これに対し、副委員長(自民)が「教科採択の期
間中に、そのような発言は問題ではないか」と反発し紛糾。休憩を挟んで、共
産議員が「教科書を特定した発言についておわびしたい。発言を削除したい」
と撤回、決着。一方、教科書採択の制度についての質問で、学校教育課長は、
採択の透明性をはかるため方法を改良したことを明らかにした。従来の採択
は、各市町村教委の代表者が集まる「採択地区協議会」と、教科書について調
査・研究を行う調査員の2段階で行われていたが、この間に、新たにつくる保
護者の代表らが参加する「選定委員会」の検討を挟み、3段階の手続きを踏む
ことにした。
(毎日6月27日)
「日本の侵略の歴史を知るわかやまの会」と「9条の会和歌山」は28日、連
名で、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書を採択しないよう求める
要望書を県教委と和歌山市教委に提出した。メンバー5人が県教委学校教育課
長らを訪れ要望。「子供たちに侵略思想と国益のためには他地域・他国を侵略
してもかまわないという考えを植え付けようとする教科書を私たちは許さな
い」などと訴えた。また同様の要望書を県内各市町村教委に送付した。
(毎日6月29日)
【徳島】
「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した歴史、公民の教科書に反対して
いる徳島人権・平和運動センターと徳島地区労は27日夕、JR徳島駅前で、帰
宅途中の市民に対し教科書採択に興味を持つよう求めるビラを配った。
来年度の小中学校の教科書採択が県内各地で進められている。審査されてい
る教科書は小学校318点、中学校139点。各市町村教委が、四地区別採択協議会
が審査する。教科書の内容を調べる調査員は、地元の校長会などから選ばれた
教諭で構成、一教科を五〜六人の調査員が担当し、教科書に意見を付けて協議
会に答申。これをもとに各市町村の教育長と保護者とで作る協議会が、使用す
る教科書を決める。各地区とも7月初旬から中旬にかけて採択教科書が決ま
る。「つくる会」の教科書に対しては、昨年の9月県議会で調査対象に含むよ
う求める請願が提出され、議決。今年1月には県教委が各地教委に対し、現場
の教諭独自の判断で特定の教科書だけの意見を答申する「絞り込み」を禁止
し、すべての教科書を調査対象とするよう通知している。
(毎日6月28日)
【香川】
六月定例県議会は22日、本会議を再開。社民連合(綾歌)議員が教科書採択
への対応について質疑。(四国新聞6月21日)
社民党県連は5月25日、県教委に教科書採択について申し入れを行ってい
る。
【愛媛】
市民の関心が高く、2時間の間に2000枚のビラがが配れたとのこと。
「新しい教科書と教育を考える市民ネットワークえひめ」(約150人)は24
日、「新しい歴史教科書をつくる会」の歴史教科書の問題性を広く市民に知っ
てもらおうと、松山市湊町の市駅前で街宣を行った。
同ネットワークは、つくる会の教科書が、太平洋戦争を正当化し、他国や他
民族の立場を考慮していない内容と批判。県議会が、県内市町村に採択の指導
助言をしないよう、25日に請願書を提出することにしている。
街宣には、同ネット西条の会から10人が参加。道行く人にチラシを配りなが
ら、「戦争のできる国を目指す教科書を子どもたちに使わせないで」と呼び掛
けた。
「新しい教科書と教育を考える市民ネットワークえひめ」の会員約10人が25
日、県議会を訪れ、「教科書採択に関する請願書」を提出した。
請願書では、新しい歴史教科書について「一人ひとりの人権や民主主義を否
定的に扱っている」「日本の植民地政策や侵略戦争を一方的に正当化」などと
指摘。県教委に対し、∇市町村教委への教科書採択の指導、助言で特定の教科
書を採択させようとする団体の影響を受けないこと∇現場の教師が教科書採択
に深くかかわれるようにすること−などを要請するよう求めている。同ネット
によると、これまで県内六市町の議会に同様の請願か陳情を提出した。
(愛媛新聞6月25・26日)
【佐賀】
佐賀市議会三月定例会には、「つくる会」県支部を母体とする「県の教育を
考える会」が、「歴史教科書採択制度運用に関する請願」、佐教組を中心にし
た「民主教育を守る佐賀地区会議」の「教科書採択制度に関する請願」、市民
でつくる「さが・平和をつくる会」の「教科書の採択活動に公平を確保するこ
とを求める請願」が提出されたが、3月19日取り下げとなった。「歴史教科書
採択制度運用に関する請願」について、審議で「歴史については外交上の問題
もあり、慎重に扱うべき」「特定の教科に限った請願には疑問がある」などと
慎重論や反対意見が続出。紹介した保守系議員らが「再度内容を検討する」と
して請願を撤回し、この請願の採択阻止が目的だった他の二団体も取り下げ
た。上程された請願が撤回されるのは1985年12月議会以来。
「県の教育を考える会」が提出した請願は、県議会が昨年10月、福富町議会が
12月に採択。ただし、福富町議会は「歴史観については両論あり、議論の行方
を慎重に見守りたい」として議長預かり。北茂安町議会は12月、不採択。ま
た、武雄市議会では今年3月26日、「武雄市の中学校歴史教科書採択制度運用
に関する意見書」を賛成十三、反対八で可決。意見書は県内で初めて。同議会
では、提出された請願を意見書として取り扱うのが慣例となっており、総務文
教常任委員会に一任。議長を除く委員五人(自民四、無所属一)が意見書案を
提案。本会議の採決では自民の二議員が反対に回った。
県教委は今年2月、各市町村教委に対し「開かれた採択となるように、採択
関係者の中に保護者代表などを入れるのが望ましい」とする通知を送付。この
方針に沿って県内五カ所の教育事務所の管轄地区のうち藤津地区は5月中旬規
約改正を行い、保護者代表二人を加えた。保護者代表はPTA役員などから選
ぶ。他の地区もその後同様の方向で正式に決定。現在、県内の公立中学校が使
用している歴史教科書は「東京書籍」と「日本書籍」の二社。
平和運動に取り組む市民グループ「ピース・さが」は6月14日、「新しい歴史
教科書をつくる会」が編集した中学歴史・公民教科書を採択しないよう、県内
五地区の教科書採択協議会などに要請書を送付。そのほか、「つくる会」県支
部などが提出した請願、意見書を議会で採択可決した武雄市と杵島郡福富町の
教育委員会に送った。
(佐賀新聞)
【長崎】
県教委学校教育課は6月22日、大学の教員や元教師らでつくる3つの市民団
体から提出されていた、歴史教科書の採択などに関する質問書に対し、公正な
採択を確保していくなどとする回答書を市民団体に手渡した。
質問書では、教科書採択方法の変更点を明らかにすることや、教員の意見を
反映する必要性について、県教委の見解をただしていた。
これに対し、同課は、教職員の意見を参考にすることも大切であると回答
し、適正で公正な採択を確保するとした。「手続きは法に基づいており、制度
上の変更はない」。「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が採択されない
よう要請していた点については「指導要領に準拠している教科書の個別の優劣
は言えない」などと答えた。
市民団体からは「適正の根拠はどこにあるのか」などの質問が出た。「なが
さき・子どもと教科書ネット21」準備会代表は「そっけない回答。検討した
い」と話した。
「『あぶない教科書』から子どもを守るネットワーク長崎」は同日、長崎市
教委に、教科書の選定に現場の教職員の意向を十分に反映させることなどを求
める申し入れをした。また、同市の教科書選定方式などに関する質問事項も提
出した。質問は、選定方法の変更部分▽選定基準▽教師の意見を反映させる調
査票の有無――など8項目。市教委は「採択に支障があるので今は具体的に答
えられないが、8月中旬以降に経過を公開する」と答えた。
諫早・北高地区の6つの市民団体や住民なども同日、「新しい歴史教科書を
つくる会」の歴史・公民教科書(扶桑社刊)を採択しないよう求める要望書
を、諫早市教委に提出した。また、要望書では、採択に教職員意見を尊重する
ことや採択経過の全面的情報公開なども求めている。同市と北高4町は、合同
で教科書採択協議会を設置して、採択作業を進めることになっている。
(朝日・毎日 6月23日)
【宮崎】
県議会文教警察企業常任委員会が28日開かれ「新しい歴史教科書をつくる
会」が主導した中学歴史教科書の採択に反対する市民グループが提出した請願
を審議未了のため継続審査にした。請願は「教育を明るくする県民連合」と
「朝鮮女性と連帯する県女性の会」の連名で提出。
(毎日6月29日)