Date: Fri, 15 Jun 2001 12:37:36 +0900
From: 加賀谷いそみ<QZF01055@nifty.ne.jp>
To: aml@jca.ax.apc.org
Cc: keystone@jca.ax.apc.org, cne@jca.apc.org
Subject: [keystone 4007] <熊本>韓国から教科書問題訪問団
Sender: owner-keystone@jca.ax.apc.org
X-Sequence: keystone 4007
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

 6月7日、熊本県と姉妹関係にある韓国忠清南道から「日本の歴史教科書要請の
ための忠清南道熊本訪問団」が、熊本県を訪問しました。同訪問団は、忠清南道
地域市民社会団体代表、教育界代表、宗教界代表、放送及び新聞取材陣13名(う
ち報道関係者3名)から構成されています。一行は県庁や熊本市役所を訪れ、知
事・県議会及び市長・市議会への表敬訪問、県と市町村の教育委員会への教科書
問題に関する要請を行いました。熊本市民でつくる「教科書問題歓迎実行委員
会」では、歓迎集会を開催。
 扶桑社刊の市販本教科書もしっかり携えてお帰りになったとのこと。「アジア
敵視教科書」とも言うべき、文部科学省お墨付きの教科書が海外流出したわけで
す。各地からは郷土の歴史の「改ざん」も指摘されているようです。「つくる
会」にとっての「日本の文化・伝統」とは「天皇の文化・伝統」あるのみなので
しょうが、検定制度の権威を地に落としかねない醜態。

−−−−−−−−−−−−−−−
■歴史歪曲を許さないアジア連帯緊急集会参加者のみなさまへ
              教科書ネットくまもと 田中信幸

 熊本県は「日本会議」の組織化が最も進んでいる県であり、「つくる会」の教
科書採択に関する議会請願が、3月議会時点で採択数が全国一というありがたく
ない記録を背負ったところでもあります。その熊本で、4月22日に「教科書ネッ
トくまもと」を立ち上げて、県下11採択区全部に教科書ネットを立ち上げるため
に奮闘しています。
 1997年の教科書採択時に、「中学教科書から『従軍慰安婦』の記述を削除せ
よ」という、県議会への右翼からの請願に対して、ちょうど熊本県と姉妹関係に
ある韓国忠清南道の市民団体と連携して、これを取り下げに追い込むことができ
ました。これをきっかけにして忠清南道の市民団体との民間交流を続けて今年で
5年目となります。今年4月の「新しい歴史教科書をつくる会」の中学歴史・公民
教科書の検定合格に対して、忠清南道市民団体から熊本県を訪問して、直接県民
に訴えたいとの連絡があり、これを受けて熊本でも教科書ネットを中心に歓迎実
行委員会を組織して、訪問団受け入れ準備を進めてきました。
 6月7日から9日まで、KBSテレビなど報道陣3名を含む13名の教科書訪問団が熊
本県を訪問しました。訪問団は忠清南道の社会団体、言論界、宗教界、教育関係
者など様々な人々を含んでいました。7日には県知事、県教委、及び熊本市教
委、市議会などを訪問し、夕方からは労働会館で歓迎集会が開かれました。集会
では県民へのアピールや、文部科学省へ送る共同声明などが採択され、活発な意
見交換が交わされました。8日には県教組・高教組との会見を始め、NHK訪問、民
放の熊本放送ではラジオ番組の収録、地元紙の熊本日日新聞社訪問の後、2班に
分かれて県内市町村の訪問を行いました。県北班は菊池市、玉名市、荒尾市を訪
問して、市長や教育委員会への申し入れを行いました。また県南班は矢部町と八
代市を訪問しました。そして夜は荒尾と八代で地元の市民や労働組合による歓迎
集会が取り組まれ、多くの市民が参加して、有意義な交流ができました。
 またKBSテレビや新聞記者は県教委や市町村教委へのインタビューや取材、
中・高校生など市民への取材、戦争体験者の取材など精力的に取り組みました。
韓国ではKBSテレビで50分番組として全国放送されるそうです。
 教科書訪問団の今回の訪問は、熊本県下の「あぶない教科書NO!」不採択運
動への大きな励ましとなったのはもちろん、県教委や、各市町村教委に対して
は、かなりのプレッシャーになりました。私たちは現在6月県議会へ「忠清南道
との友好関係を深める教科書採択を求める請願」を提出しています。また訪問団
の要請文を今回訪問できなかったすべての市町村教育委員会へ郵送します。熊本
県では6月22日から7月5日まで教科書展示会が県下59ヶ所の展示場で開かれま
す。6月24日には高嶋伸欣さんを招いて講演会も開きます。なんとしても県下11
採択区すべてのネットワークをつくり、「つくる会」教科書採択ゼロを目指しま
す。以上報告します。
                        2001年6月10日

■平和と共存の未来のために、共に歩みましょう
      −隣の国から熊本県民のみなさまに望むこと−

 アンニョンハシムニカ
 私たちは、熊本県民と久しく姉妹提携を結んでいる隣の国、韓国忠清南道の道
民代表です。このように、みなさんとお近づきになり、お会いできたことを心か
らうれしく思います。
 今回、私たちは、みなさんとともに、今日の韓日地域間における真の友好と平
和共存のために、「日本中学校歴史教科書問題」に対する忠清南道道民の願いを
お伝えしようと、このようにはせ参じました。
 去る3月、日本政府は、「新しい歴史教科書をつくる会」の申請した教科書を
含めた8社の中学校歴史教科書を検定で通過させました。検定で通過した教科書
に対して、韓国国民は、一部の内容は修正補完されたけれども、依然として、事
実関係が正しく記述されていないと考えています。
 わが民族は過去において、日本軍国主義の侵略により、耐えがたい苦痛をうけ
ました。しかし、「新しい歴史教科書」は、日本の侵略を合理化しているばかり
か、「従軍慰安婦」など、日本が韓国やアジアの国々に与えた被害を隠ぺいした
内容となっています。私たちの政府が、日本政府に伝えた歪曲された教科書の再
修正要求だけでも35ヶ所にのぼります。このため、「教科書問題」は、過去にふ
まえて、国際社会の一員として、友好関係を維持することを願っていた韓国国民
たちに、癒えようとする古傷をほじくりかえされたような反日感情を呼び覚まし
てしまいました。このように韓国では、日本が過去の侵略の歴史を正当化する教
科書を検定通過させたため、苦痛の歴史を再び思い浮かべることとなり、未来に
対して不安と憂慮をいだくようになりました。

 熊本県民のみなさま!
 私たちは、両国の幼き子どもたちが、戦争の惨禍を被ることなく、となりどう
しで、平和におつきあいできることを心から痛切に願っております。
 しかしながら、日本から受けた「被害」の歴史を苦痛に思っている韓国の青少
年たちと、歴史的事実を知らず、「加害」は正当であり、たいしたことではない
と考える日本の青少年たちが出会うとき、一方の韓国の青少年たちは、おのずか
ら憂慮と警戒と脅威をいだかざるをえないのです。これではたして、本当の和解
と共存の未来を期待できるでしょうか。
 平和を愛する熊本県民のみなさん!
 どうか、未来を担う両国の青少年たちが、過去の苦痛の歴史をふまえて、平和
を愛するこころを持った人間として成長するようにみちびいてください。みなさ
まに、他国のものが、歴史教科書の内容まで関与することを、内政干渉と考えら
れるまえに、長い侵略の過去の中で、苦痛を受けた「被害者」の立場にたつ思い
やりのこころで、歴史教科書の内容を、今一度冷静に見つめてほしいものです。
 そして、熊本県内の教科書採択権者である各市町村教育委員会にたいし、県民
のみなさまが、教科書採択課程で、となりの国である韓国忠清南道道民ととも
に、アジアと世界平和、共存の未来のために、侵略の過去を美化する教科書が採
択されないようともに声をあげてほしいのです。
 また、日本政府に、両国地域民間のあつい信頼関係を形成するため、一日も早
く、歪曲された内容を訂正するように、ともに訴えてきましょう。
 私たちは、教科書問題で、これ以上、韓日地域民衆のこころに溝をつくり、こ
の問題によって、そだちゆく青少年たちが不安な未来に生きていくことを願って
いません。
 「平和憲法を活かす熊本県民の会」をはじめとして、私たちの訪問を歓迎して
くださった熊本県民のみなさまに感謝を表し、教科書問題が賢明に克服され、両
国地域民間の友好関係がより深まることをこころから祈念いたします。
 ありがとうございます。カムサハムニダ。
          2001.6.7
          日本の歴史教科書要請のための忠清南道熊本訪問団

■韓日両国地域民間団体 共同宣言文

         日本の歪曲歴史教科書採択に反対する

 日本は結局、日本国内の平和愛好市民と東アジアの国々から孤立を招く、歴史
を歪曲する道を選択し、不幸な過去に回帰しようとしている。
 「新しい歴史教科書をつくる会」など極右集団が作成した歪曲教科書が、文部
科学省検定を通過したことに引き続き、日本の各自治体教育委員会での採択が差
し迫っている。
 歪曲された教科書がつくられた背景には、軍国主義の亡霊を復活させようとす
る日本政府の意図がかくされている。それは、韓国国民の教科書修正要求に対し
て、日本政府首相が、靖国神社公式参拝と憲法改正の意思を堂々と披瀝すること
で応じているからである。
 すでに、私たちは、数回におよび日本文部科学省に、歴史教科書検定申請を出
した8社の出版社すべてが、過去の歴史を歪曲または縮小、捏造しており、国際
化時代に適応した共存共栄に道を歩むなら、歴史歪曲の決定版である「新しい歴
史教科書」の検定合格判定を下さないようにと訴えてきた。
 しかし、今回の合格判定を受けた問題の歴史教科書は、日本政府の部分修正に
もかかわらず、このような韓国国民の根元的な願いは、まったく反映されてな
い。その教科書の根底には、総体的に戦前の「皇国史観」が克明にあらわれてお
り、歴史学的には全く否定されている、いわゆる「任那日本府説」をそのまま取
り入れるなど侵略を合理化するまちがった認識の枠組みを維持している。
 特に、古代から現代までの韓国史を「従属」「服属国」「宗主国」などの用語
でおとしめており、「従軍慰安婦」「強制連行」など、日本が韓国や他の国々に
およぼした深刻な犯罪行為は、隠ぺい、縮小されるか省略されてる。朝鮮から植
民地収奪するために、強制労働でつくった施設を、あたかも朝鮮の開発と発展の
ための恩恵であるかのように歪曲記述している。韓国政府が、日本政府に伝えた
日本の歪曲歴史教科書の修正要求だけでも35ヶ所にのぼっている。これにとどま
らず、「新しい歴史教科書をつくる会」は、問題だらけのこの教科書を、とうと
う市中販売まで始めてしまった。
 日本のこのような歴史歪曲は、昨日今日に始まったことではないが、私たちが
特に今回の教科書で憤りを覚えるのは、最近、日本の一連の行いが、周辺隣接国
との平和維持のための最小限度の境界線を越えていると判断されるからである。
 少し前に採択された米日新ガイドライン法案は、「有事」を名分に韓半島を想
定した軍事行動を念頭に置いており、日本の防衛費は、南北韓軍事費の数十倍の
規模を越えて久しい。このような日本は、韓国の植民地支配に対し反省すらせ
ず、隙さえあれば正当化しようとたくらんできた。
 私たちにとって、「歴史教科書問題」は、日本の再武装とともに推進されてき
た、対外膨張的新軍国主義(再侵略野望)と関連していると断定せざるをえない理
由がここにある。
 従って私たちは、東アジア諸国と築きあげてきた友好協力と共存の流れに、冷
水をあびせて、アジアの平和に脅威を与え、近隣諸国だけではなく、日本人まで
もすべて不幸にする日本のまちがった選択を歴史教科書問題をつうじて、防止し
ようとするものである。
 一方、日本では、なぜ他国の教科書問題に干渉するのかとめくじらをたてる人
たちがいる。しかし「加害者」から受けた痛みを抱いて生きている「被害者」た
ちには当時の苦痛は忘れようにも忘れられない現在進行形の苦痛であることが、
どうしてわからないのだろう! 忘れたい者がいるとすれば、それは「加害者」
だけであり、恥ずべき歴史であるなら、それを繰り返さないようにするために
も、歴史の一章として記録されねばならない。ドイツ人たちが、ナチス崇拝を
法、制度的に禁止して、ユダヤ人虐殺の醜い過去を記録し、反省することによ
り、世界から多くの尊敬と賛辞を受けているということに、日本は注目しなくて
はならないであろう。
 日本は、いや、日本人たちは、世界各国の平和愛好民衆と善隣友好関係を持続
するのか、世界の平和的勢力から無視されて、孤立無援の道を進むのか、その分
かれ道にたっている。今からでも遅くはない。ただちに日本政府が、歴史歪曲の
決定版である教科書の再修正作業に、積極的に進み出るよう強く要請する。
 私たちは、日本国内すべての地方自治体に、育ちゆく両国学生たちが、正しい
歴史意識で、平和を愛する善良なこころを持った人間に成長するために、歪曲歴
史教科書が採択されないよう強く望みます。なおかつ、忠清南道と18年におよぶ
姉妹提携を結んでいる熊本県内の各自治体におれましては、「被害者」である忠
清南道道民の心情を考慮されて、歴史歪曲教科書を採択されないことを信じてや
みません。
 私たちは、両国地域で、歪曲歴史問題などにより、ながい協力と共存関係に悪
影響を及ぼさないようにする志をもって、両国地域民間交流協力をさらに強くし
て、平和を維持する可能なすべての力を合わせていくことをここに重ねて宣言す
る。
            2001年6月7日
     韓国忠清南道教科書訪問団歓迎実行委員会     代表 上村文男
     日本の歴史教科書要請のための忠清南道熊本訪問団 団長 鄭秀溶

■要望書
熊本県教育委員会
教育委員長 今村潤子 様
教 育 長 田中力男 様

 貴委員会におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 私たちは、熊本県と久しく姉妹提携を結んでいる隣の国、韓国忠清南道の各界
各層市民社会団体を代表して、歴史教科書問題にたいする忠清南道道民の願いを
お伝えするために、貴県を訪問いたしました。
 去る3月、日本政府は、「新しい歴史教科書をつくる会」が申請した教科書を
含めた8社の中学校歴史教科書を検定通過させました。検定で通過した教科書に
対して、韓国国民は、一部の内容は修正補完されたけれども、依然として、事実
関係が正しく記述されていないと考えています。いうならば、一つの歴史事実に
対して、多面的な見方をしなければならないのに、加害者である日本は、自国に
都合の良いところだけを「事実」として取り上げ、被害者の訴えには耳もかさな
いと言う状況にあると思われます。
 わが政府が、日本政府に伝えた日本の歴史教科書再修正要求だけでも、35ヶ所
にのぼります。このような教科書内容は、政府が過去の歴史に対し韓国国民に過
ちを認め反省した内容まで否認し、過去だけではなく、現在と未来の歴史まで退
行させているという憂慮の原因となっています。
 「歴史教科書問題」は、過去を踏まえて、国際社会の一員として、日本と友好
関係を維持することを願っていた韓国国民に、忘れてしまいたい古傷を傷つけ、
またもや苦痛を与えてしまうことになりました。そのため韓国国民にとっては、
日本が、過去の侵略の歴史を正当化していることによって、苦痛の過去が呼び覚
まされ、未来の両国関係に対して、憂慮と警戒心を持たざるをえなくなったので
す。
 忠清南道道民にとって、熊本県民のみなさまは、すでに18年間も姉妹提携を重
ね、友好関係を築いた印象深いとても近いおとなりとして、心に刻まれていま
す。
 私たちは、ながい両地域の友好関係が、後世まで、末永く引き継がれていくこ
とをこころから願っております。しかしながら、日本から受けた「被害」の歴史
を苦痛に思っている韓国の青少年たちと、歴史的事実さえも知らず、「加害」は
正当であり、たいしたことではないと考える日本の青少年たちが出会う時、一方
の韓国の青少年たちは、おのずから憂慮と警戒心、脅威をいだかざるをえないで
しょう。
 熊本県教育委員会委員の皆様!
 育ちゆく両国地域学生たちが、過去の苦痛の歴史をふまえて、平和を愛する善
良な隣人として成長するように、どうか手をさしのべてください。
 他国のものが、歴史教科書の内容まで関与することを、内政干渉とお考えにな
るまえに、過去の侵略に中で苦痛を受けた「被害者」に立場にたつ思いやりのこ
ころで、「新しい歴史教科書」の内容を、今一度冷静に見つめてほしいのです。
 そして、となりの韓国忠清南道道民とともに、アジアと世界の平和、共存の未
来のために、「被害者」の立場を考慮しない教科書が採択されないよう賢明な判
断を切に願うものです。
 私たちは、「歴史教科書問題」で、これ以上、韓日地域間のこころの溝が深ま
り、育ちゆく子どもたちが、不安な未来に生きてゆくことを願いません。
 もう一度、貴委員会のご発展を願い、雨が降り地がかたまるように、「歴史教
科書問題」が賢明に解決され、両国地域間の協力と友好関係をより厚くする契機
になることをこころから祈念いたします。

2001年6月7日
韓国 忠清南道
・参与自治大田忠南地域運動連帯(10団体)
・全国教職員労働組合忠南支部(15支部)
・全国農民会忠南道連盟(13農民会)
・忠南教育研究所

−−−−−−−−−−−−
熊本日日新聞より
「つくる会」の教科書、県内記述に誤り
  「新しい歴史教科書をつくる会」が主導してつくった扶桑社刊中学校歴史教
科書の熊本に関する誤った記述(俗説)が複数あることが十一日、分かった。藤崎
八旛宮や郷土史家や熊本市内の朝鮮飴製造・販売関係者らが指摘。江戸時代の項
目で、二ページにわたって熊本の生活文化を紹介。「藤崎八幡宮で『随兵』とよ
ばれる大祭が開かれ、清正の朝鮮遠征にちなんだとされる馬追いの行事がある。
熊本名物の朝鮮飴や赤酒も、清正が朝鮮から伝えたという」
同八旛宮宮司「既に馬追いの部分は、関係団体を通じて史実と異なることを指摘
した」
扶桑社書籍編集部「初めて指摘を受けた。事実関係を確認後、訂正すべきは訂正
したい」。
 同教科書をめぐっては、文部科学省の検定意見が他社平均五倍以上の百三十七
カ所に上り、発行元がすべてを修正・削除。検定合格後も、歴史学者らが「近現
代史部分だけでも誤りや不適切な部分が五十一カ所残っている」と声明を出すな
ど、問題点が数多く指摘されている。(6月12日)

韓国中学への訪問中止 「教科書問題」飛び火 矢部町
 上益城郡矢部町教育委員会が七年前から実施していた日韓中学生の交流事業
「同町少年の翼」が今年、韓国側の中学校の意向で中止になった。県によると、
教科書問題で日韓交流事業に支障が出たのは県内で初めて。最近三年間は、県と
姉妹提携を結ぶ忠清南道の扶餘(プヨ)中と扶餘女子中との交流が定着。昨年八
月には姉妹提携も結んだ。
 町教委は、例年通り七月三十一日から忠清南道訪問を計画。四月十八日に両中
に日程を知らせるファクスを送った。ところが、五月九日の返信には「今年は貴
国の歴史教科書のわい曲編集による両国間の不幸なかっとうで、大部分の韓日交
流活動が暫定的に中断しております。本校も保留せざるを得ず、了承していただ
きますようお願い申し上げます」と記してあった。
 このため、町教委は両中との交流事業を中止。日程を三泊四日に短縮し、慶州
市の日本人女性保護施設「ナザレ園」やソウル市の歴史資料館を訪れ、日韓の歴
史的関係を学ぶ研修旅行に切り替えた。
 町教委は「両中はとても交流熱心で、中止の決定も意に反することだと思う。
われわれが積み上げてきた交流が、このような国際情勢で中断するのは、どうに
もならない悔しさがある。早く再開できるよう願っている」と話す。
 一方、忠清南道熊本事務所の明学植(ミョン・ハクシク)所長は「道は、熊本
と従来通りの交流を続ける考えでいる。教科書問題で地域間の交流が妨げられた
ことは非常に残念。事情をよく調べたい」と話している。(6月14日)
−−−−−−−−−−−−−
▽6月6日 三浦朱門・教科書改善連絡協議会会長・編著「『歴史・公民』全教科
書を検証する−教科書改善白書」(小学館文庫)発売。

▽6月8日 京都市教科書見本本展示会開催
 来春から小、中学校で使う教科書の採択を前に、京都市が8日から始めた教科
書見本本の展示会の来場者が4日間で、昨年度実績(29人)の30倍を超える
904人に達していることが、12日の京都市議会文教委員会で報告された。
 市教委では、文部科学省が定める期間より2週間早く、市内5か所で展示会を
スタート。各会場に設けた「意見箱」にも来場者の1割程度が投書しているとい
う。アジアの近隣諸国から批判が出ている歴史教科書問題や、新学習指導要領に
よる学習内容の3割削減などが高い関心につながっているとみられる。(読売京
都6/13)
 
▽6月9日 AWW-NETジャパン新刊発売
『ここまでひどい!「つくる会」歴史・公民教科書』
        ―女性蔑視・歴史歪曲・国家主義批判―
VAWW-NETジャパン編
編者:松井やより、西野瑠美子、金富子、徳永理彩、池田恵理子
A5版/並製 120ページ
定価(本体800円+税)
明石書店

▽6月9日 東京都教委は九日までに、来春から使われる小中学校教科書の内容を
学習指導要領に基づいて比較した「教科書調査研究資料」を策定した。十四日に
も公表し、市区町村教委に送られる。都教委は今年二月、教科書の採択につい
て、採択権者である市区町村教委に対して「自らの判断で採択すべき教科書を決
定する」などを明示した改善策を通知するなど、教科書採択の適正化に取り組ん
できた。
 都教委は四月に「都教科書用図書選定審議会」を設置し、教科書の採択方針や
教科書調査研究資料の作成を諮問。同審議会から答申を受けた。調査研究資料が
採択決定前に公表されるのは東京都では初めて。(産経6月9日)

▽6月11日 三重県の「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書が検定を合
格したことをめぐり、同会などの動きに反対する「伊賀地区実行委員会」が11日
伊賀7市町村の教育委員会に、公正に教科書を採択するよう求める要望書を提出
した。要望書は「独善的な歴史観で日本の過去を美化したような教科書で学ぶこ
とは、日本を国際的な孤立に導く」などとして、同会が主導し、扶桑社が出版し
た中学校の歴史と公民の教科書が、中学生の教科書にふさわしくないと指摘。憲
法と教育基本法の理念に合致した教科書を採択するよう求めている。(朝日三重
伊賀版6月12日)

▽6月12日 三重県教科用図書選定審議会は、県下十地区の採択協議会が教科書
選定する際の参考にしてもらう「選定資料」を決めた。来週中にも各採択地区に
送付する予定。
 今回は、検定済みの小学校用教科書四十九種類、中学校用教科書七十二種類に
ついて、県教委の調査員六人が約一カ月かけて調査研究し、選定資料を作り上げ
た。
 この日は、市町村教育長や小中学校長、学識経験者ら十六人で構成する同審議
会が、調査員が作成した選定資料について同意した。選定資料に対する修正など
は行われなかった。
 今後、約一週間かけて製本し、来週中には各採択地区に送る予定。 (伊勢新
聞01.6.13)
 
▽6月11日
 長野県労組会議と県護憲連合は十一日までに、「新しい歴史教科書をつくる
会」メンバーらが執筆した中学校の歴史、公民教科書の採択に反対する立場か
ら、公正で民主的な教科書採択を求めるはがきを、県内の市町村教委に送る運動
を始めた。今月下旬に始まる教科書展示会にも出かけるよう、呼びかける。(信
濃新聞6月12日)

▽6月11日 社大党の島袋宗康委員長、喜納昌春政審会長らは十一日、沖縄県庁
記者クラブで会見、「新しい歴史教科書をつくる会」による中学校の歴史・公民
教科書について、「沖縄戦の記述などに重大な誤りがあり、採択すべきではな
い」との声明を発表した。(1)「ひめゆり学徒隊」が通称であり「ひめゆり部
隊」は誤り(2)学徒隊が「勇敢に戦った」事実はない(3)日本軍の戦死者は
十一万人を数え一般住民より多く記述されているが、県史では逆―など。県、県
教育庁、県内六教育事務所に不採択を要請したほか、全国の都道府県知事・教育
委員会にも要請文を郵送する。(沖縄タイムス6月12日)

▽6月11日 大阪府の関西の在日コリアンら約40人が、「新しい歴史教科書を
つくる会」が主導した扶桑社の中学歴史教科書を採択しないよう呼びかける座り
込みを、中央区の府庁前で行った。
 大阪では、中学校校長などに扶桑社刊の教科書を「推薦する」はがきが送付さ
れている。
(一例)「私たちは 日本人である 喜びと 日本人たる 美徳を学びたい、そ
れは 国民の 固有の 権利です。 扶桑社の 歴史と 公民の 教科書で 学
ばせてください。心から お願い 申し上げます。 わが子を 健全に 育てて
欲しい ペアレンツ」

▽6月11日 歴史教科書問題にからみ、新潟県新発田市と韓国京畿道議政府市と
の親善スポーツ交流の開催が危ぶまれている問題で、新発田市体育協会(田畔秀
登会長)は11日、今年の訪韓中止を正式に決めた。田畔会長「なんとか開催でき
ないかと協議を続けてきたが、時間切れになった。非常に残念です」
 この問題では、競技方法などを協議するために4月に訪韓した田畔会長に、議
政府市の金基亨市長が「(教科書問題の)発展的な解決がないと、開催が無理な
こともあり得る」と伝えた。また同月末、議政府市議会から「検定通過決定が撤
回されなければ、一切の交流を再考する」とする決議文が、新発田市長あてに送
られていた。
 2002年度から使用される小中学校教科書の見本展示会が13日の燕市の燕西小を
皮切りに、7月中旬まで県内19会場で順次開催される。(新潟日報06/11)

▽6月12日 宮城県仙台市教育局は、同市立小中学校の教科書採択に向けたスケ
ジュールを発表。教科書展示会の開催場所を増やし、教科書選定協議会の保護者
代表委員数を増やすなど、「開かれた採択となるよう、配慮した」(阿部勝彦教
育次長)のが特徴。
 来年度の教科書採択は、教科書展示会(七月十一日まで)、学校長などでつく
る調査研究委員会・専門委員会(七月上旬まで)を経て、校長らに保護者代表を
加えた選定協議会(同)が最終答申を提出。七月二十―二十九日の臨時教育委員
会で最終決定する。
 教科書展示会は従来、同市内八か所で十四日間行われていたが、今年度は二十
七日間、九か所に増やされた。選定協議会委員は、従来の十二人から今年度、三
十六人に増員され、このうち保護者代表など外部の有識者も六人から二十六人に
増員された。(読売宮城6/14)
 宮城県教育委員会義務教育課 http://www.pref.miyagi.jp/gikyou/

▽6月12日 「こどもの人権と教科書の問題を考える越智今治の会」では、 市議
会への陳情に続き、今治市教育委員会・今治市教育長へ「教科書採択に対しての
申し入れ」を行った。
「いま、教科書があぶない!」ホームページ
http://www.dokidoki.ne.jp/home2/zxvt29/index.htm
要請行動の呼びかけ、緊急ニュース(松山青年会議所の動きなど)、「つくる
会」教科書Q&A、他。愛媛県内の県・市教育委員会の連絡先や要請グッズ紹
介。

▽6月13日 「新しい歴史教科書をつくる会」(西尾幹二会長)のメンバーらが
執筆した扶桑社(東京)の中学の歴史、公民教科書の市販本が、発売1週間で大
手書籍取次会社、トーハンの週間ベストセラーの最新総合ランキングの1、4位
に入ったことが、13日分かった。内容への批判などが話題性となり、教科書の
ベストセラー化という珍現象になった。(時事通信社6月13日)

▽6月13日 石川県議会開会
「教科書の適正化を求める石川議員の会」(会長・北村茂男県議、188人)が、
「教科書採択の適正化を求める決議案」の採択を目指している。5月には県内全
市町村の首長と教育長に、「開かれた採択」を求める要望書を提出。
 「つくる会」主導の教科書を支持する会社社長ら約100人も5月、「教科書の採
択を考える県民の会」を設立、「適切・公正な教科書採択制度」を求め、県議会
や県教委の教育委員、各市町村議会に請願書や要望書を提出。教科書採択後は
「教育オンブズマン石川(仮称)」に会を移行し、教科書の選定過程を情報公開
で求め、調査していくとしている。
 一方、県教組は、「民主的採択に関する要求書」を9採択地区の教育委員会に
手渡した。
 5月下旬には県高教組や県平和運動センター、「『大東亜聖戦大碑』の撤去を
求め、戦争の美化を許さない県民の会」、連合石川などとともに、「開かれた教
科書の採択を求め行動する県民の会」を設立。また、教科書展示会に行くことを
呼びかける運動を展開するとともに、教員や弁護士、保護者ら約10人に、歴史認
識など約10項目の視点から、8社教科書の「通信簿」をつけてもらい、7月上旬に
発表するとしている。
 「石川憲法会議」など8つの市民グループは、県・金沢市以外の市町村議会に
は6月4日付で、「公正な採択を求める」請願書や陳情書を郵送。8日に県と金沢
市の各教委と議会にも要請し、教科書の採択過程の公開も求めた。
教科書展示会は6月18日〜7月7日
http://mytown.asahi.com/ishikawa/news02.asp?kiji=1274
(朝日石川6/14)
・石川県議会(議事録検索可能) 
http://www.pref.ishikawa.jp/gikai/index.html

<例文> 教育オンブズマン △△
  教育委員の先生方へお願いします
 紆余曲折を経て「新しい歴史教科書」「新しい公民教科書」が検定を合格した
ことは教育委員の先生方には関心を持って見守って頂いていることと存じます。
 中国、韓国からの外圧に加え国内での心ない反発など、日本が本来の姿を取り
戻すことがこれほどに何故難しいのでしょうか?
 この問題は単に教科書の問題だけにとどまらず、我が国の誇りと国としての尊
厳をどう守るかという根源に関わる重大な問題であると思います。
 良識ある国民、市民として私共は下記のごとくお願いをするものです。

 従来からの採択は教育委員の先生方がその持てる力を十分に発揮して頂いてい
るとは思えません。
 どうか、文部省、△△教育委員会が何度も出しておられる指示を守って頂きま
すよう切にお願い申し上げます。

すなわち
 1、採択の公平性の確保
 2、開かれた採択
 3、学習指導要領の観点からの選定
 4、採択権限は事務局ではなく教育委員にある
等を踏まえ8社の教科書をつぶさにご検討頂きたいと思います。

教科書採択にあたっては
「我が国の歴史に対する愛情を深める」という学習指導要領の重要な観点から
「歴史」と「公民」の教科書は「扶桑社」の2冊のお決め頂くのが妥当であると
存じます。
 その他の教科書は前記の観点からはひどく逸脱していることはお分かり頂ける
ことと思います。良識ある一日本人として心からお願い申し上げます。
 以上何卒よろしくお願い申し上げます。
平成13年6月 日



 
  • 1998年   3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 1999年   1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 2000年   1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 2001年   1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

  • キーストーンメーリングリスト 目次