前田 朗@歴史の事実を視つめる会、です。
6月11日
1) 「韓国人権国際センター」が発行している「韓国人権ニュース127号
(2001年6月9日)」が紹介している韓国の「中央日報」6月8日付記事に
よると、ILO(国際労働機関)が日本軍性奴隷制・「慰安婦」問題を取り上げ
ることになったようです。
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2) 「中央日報」6月8日
日本軍の慰安婦問題が、国際労働機関(ILO)総会傘下の基準適用委員会の
労働者グループ会議で、初めて正式案件に採択された。
慰安婦問題が国際労働協約に反するという陳情書が1996年に提出されて以
来、ILOが二本の慰安婦問題を公式議題として扱うのは今回が初めて。
ILO基準適用委員会は総会開幕2日目の6日、日本の強い反対にもかかわら
ず、今回の9会議の議題として慰安婦問題をいれることを決定した。
議題選定はドイツ、フランス、中国、イタリアなどが韓国の立場を強く支持す
ることで、日本を除き事実上満場一致で決定されたと発表された。
基準適用委員会がこれを公式議題として最終決定するには、労働者グループの
他に使用者、政府グループなどとの労・使・政グループ会議で最終承認を受けな
ければならない。
基準適用委員会は8日、労使政3者の代表者会議を開き、慰安婦問題を正式議
題として採択するかを最終決定する計画だ。
しかし、労働者グループが採択した議題は、ほとんど原案通り受け入れられて
きた慣例により、正式案件として採択される可能性が高いとされている。
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3) ILOの決定が6月6日で、中央日報記事が6月8日付です。8日の最終
決定がどうなったか、日本のメディアではまだ出ていないようです。ILOに
は、日本からも「強制労働裁判支援全国ネット」のメンバーがロビー活動に行っ
ているのですが、情報が入りません。ILOのホームページを探してみたのです
が、個別の決定事項は掲載されていませんので確認できません。ILO総会89
会期(6月5日―21日)の日程表や発言者リストが出ていますが、6月11日
の部分を見ても、日本関係はないようです。基準適用委員会に関する議論は11
日11時&15時となっています。
4) これまでの経過を少々解説しておきます。
ILOへの提訴は、最初は「韓国労総」が行いました。ところが、ILOはま
ったく反応しませんでした。後に判明したことですが、当時ILOの事務局長は
日本人でして、韓国労総の提訴を握り潰したのです。ひどいものです。
5) 1996年3月に公表されたILO基準適用専門家委員会の報告書は、
「慰安婦」問題を取り上げて、日本政府による解決を要請しました(拘束力はあ
りません)。強制労働条約に違反することを明示しましたので重要でした。同じ
1996年1月に国連人権委員会に提出されたクマラスワミ報告書とともに、強
烈なインパクトをもちました。これは大阪在住の外国人英語教師の労働組合OF
SETがILOに出した手紙によるものです。
6) その後、韓国労総、韓国民主労総、OFSET、強制労働裁判支援全国ネ
ットなどが協力しながらILOへのロビー活動を続けてきました。1998年、
2001年にも、基準適用専門家委員会の報告書は「慰安婦」問題や強制労働問
題を取り上げてきました。
7) しかし、毎年6月に開催されるILO総会では、「慰安婦」問題が取り上
げられませんでした。ILO総会は2週間しか開催されませんから、世界各地の
労働問題のうち特に重要な項目に限って取り上げます。「慰安婦」問題は、最後
の最後まで議案の候補として残っていましたが、しかし、あと一歩で、取り上げ
られずに来ました。日本の労働組合が猛烈な反対活動をしてきたからです。連合
です。連合が「アジア女性基金」というハレンチ基金の中軸を担っていることは
御承知のとおりです。「謝罪はしない、法的責任は認めない、でもお金をつかま
せて黙らせる」という路線です。韓国やフィリピンでこの路線で活動し、これを
根拠に、「慰安婦」問題が解決したかのような宣伝が行われてきました。
8) 強制労働裁判支援全国ネットのメンバーは、何度もILOに通い、欧米を
始めとする諸国の労働組合にも働きかけてきました。特に国際自由労連への要請
が重要でしたが、やはり「連合が反対している以上、国際自由労連としては動け
ない」という反応でした。
9)ただ、全国ネットの活動、韓国労総の努力の結果、今年はうまくいくかもし
れないとの情報が事前に流れていました。詳しい経過はわかりませんが、基準適
用委員会に乗ったようです。もっとも、日本政府は最後の最後まで抵抗するでし
ょうから、結論はわかりません。全国ネットが帰国すれば詳しい情報が入りま
す。