Date: Mon, 04 Jun 2001 11:43:09 +0900
From: NAKADA-Hiroyasu <nakada_h@jca.apc.org>
To: keystone <keystone@jca.apc.org>
Subject: [keystone 3964] 基地経済の幻想4・5
Sender: owner-keystone@jca.ax.apc.org
X-Sequence: keystone 3964
Reply-To: keystone@jca.ax.apc.org

仲田です。
基地経済の幻想4、5です。短いのでまとめて送ります。
 
 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 

基地経済の幻影−4−

軍人・軍属消費支出

あやしげな統計数字      社民党沖縄県連那覇支部長 金 城 良 雄
 
 おきなわの「基地経済」についてはさまざまな見方がある。しかし、いずれの
論者も大別すると二つに分かれる。
 その第一の類型は日米安保を容認し基地の存続を受け入れる立場の人々。第二
はこれを全面的に否定する立場からの論考である。
 第一の立場に立つ人々は「基地経済」がいかに大きいかを強調しその恩恵につ
いて論ずる。第二の立場からの論考はその逆であるという具合に基本的には平行
線をたどっている。
 この基本的パターンは復帰前と後も変化はない。今回は両者の立場を離れて
「基地経済」はほんとうはどれくらいなのか。その統計的な数字について考えて
みたい。
 まず「基地経済」の三本柱である軍用地料、軍雇用者所得・軍人軍属の消費支
出について見る。平成九年度の県統計によれば軍関係受取りとして軍用地料七百
四三億円、軍雇用者所得五百二九億円、軍人軍属消費支出五百五六億円、合計で
千八百二八億円となっている。これは県民総支出に対して五・二%で全体に占め
る数字としては小さい。
 ところが農林水産業の純生産額、六百二二億に比べると三倍と大きく見える。
このように統計的数字は対比することによって大きくもなり、小さくもなると言
う不思議な力を持っている。もちろんその数字が正しいという前提に立たなけれ
ば全ての論理はあやしいものとなる。ところが「基地経済」の数字や統計にはそ
の「あやしさ」がつきまとっているのである。
 そのもっともあやしいものが軍人軍属消費支出である。支出の年度毎の額を見
ると最も多い年(昭和五九年度)で七百八六億円である。これはその年の軍用地
料と軍雇用者所得をあわせた額よりも多い。一番少ない年(昭和四九年度)で二
百八八億円である。これは軍雇用者所得よりも小さく軍関係受取りに占める割合
としては三六%と最も少ない。この乱高下は平成三年度あたりまで続きその後は
五百億台で推移して「安定」している。
 ところが消費が最も少ない昭和四九年の軍人軍属の数は六万人余と最も多いの
である。このことから軍人軍属の数と消費額とは一致しないということができる。
 さて、統計数字の経過をざつと見ただけでも疑問点は出て来るがさらに不思議
なことは平成九年度の県民一世帯当り消費支出額と比較すると信じられないこと
ばかりである。
 まず平成九年度の米軍人軍属の消費支出五百五六億円を一世帯当りにすると1
ケ月二七万六千円となる。これは同年の沖縄県民勤労世帯の二七万七千円と同額
になる。
 彼らは基地の中で生活し、衣食住ともいわゆる官給品で保障されている。その
彼らが基地の外で、県民と同額の消費をしていると言うことは考えられない。こ
のことが最も大きな疑問である。そこで実際の彼等の消費支出はどれくらいか、
次回に推計を試みることにする。
 
 

基地経済の幻影−5−

軍人・軍属消費支出考

大きな県統計の誤り       社民党沖縄県連那覇支部長 金 城 良 雄 

 県統計による平成九年度の「米軍人軍属の消費支出」は五百五六億円と推計さ
れている。しかし、これは大きな誤りである。筆者の推計では百二億円にすぎな
い。県の推計値とは四五四億の開きがある。なぜそうなるのか。
 まず県当局の推計の根拠について考えてみる。県の推計方法について問い合わ
せたところ「現在の推計値は昭和五三年から同五九年までのアメリカンエキスプ
レス銀行の資料に基づくものである。ドルを円に替えた額に物価や米兵の数など
を加味して推計している。
 この方法は昭和五九年にアメリカ銀行が引上げた後も継続している」というこ
とであった。
 つまり通常の統計で用いる悉皆調査やサンプル調査は行われず十八年以上も前
の資料による推計値である。
 この方法では軍人軍属の消費の実態を正しく計量することはできない。
 県は単にアメリカ銀行の資料に基づいて推計していると言うがその資料はどの
程度の信憑性があるのか。ドルと円の交換額を消費支出と見なす根拠はあるのか。
円からドルへの再交換も考えられる。また円の合計額は私的消費と公的資金の区
別はあるのか。米軍の直接工事の代金や雇用所得も含まれてないか。等々、疑問
は多い。いずれにしても基地の中で生活している彼等が基地外で県民と同等の消
費をしているということはあり得ない。
 では次に筆者の推計値について説明する。県の外郭団体である対米請求権事業
協会が平成十一年度に「米軍人軍属等の消費支出実態調査」を実施しその概要を
まとめている。その調査に基づいて積算すると中古車五千台で二十一億円、米軍
向貸住宅四十億円、ベースタクシー五千万円、しめて六十一億五千万円となる。
 次にこの実態調査には含まれていないが彼等が支出すると思われる水道光熱費、
外食費について県統計の勤労世帯家計消費支出を参考に算出してみる。水道光熱
費は県民の七〇パーセントと見て二十三億円、外食費は県民の八〇パーセントと
見て十八億円と推計して前記の六十一億円と合計すると約百二億円となる。これ
がいわゆる「米軍人軍属の消費支出」の実態ではないか。
 このことを裏付ける出来事はいくつかある。その一つは民間による逆オフリミ
ッツである。米人相手のディスコが米兵の立入りを禁止したのである。また沖縄
市議会は全会一致で夜十二時以降の米兵の外出を禁止するよう決議したのである。
 このことは何を意味するのか。彼等の支出する消費は地元経済には何らの影響
もないという証明でありむしろ商売には邪魔な存在であるということができる。
 次回は現在の県首脳が「誤れる統計」をうのみにして語る県経済の認識につい
て考えてみたい。
 
 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 
 

仲田博康
nakada_h@jca.apc.org



 
  • 1998年   3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 1999年   1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 2000年   1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 2001年   1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

  • キーストーンメーリングリスト 目次