国会答弁ショーにお株をとられ、影が薄くなりつつあるかにみえますが、改
憲勢力にとって民意を担保する「バイパス機関」としての憲法調査会の重要性
には変わりなく、これからは国会の動きと連動して「首相公選制」がメインと
なりそうです。その「バイパス」がどんなに細いものであるかを証明したの
が、仙台公聴会でした。
どの国も「あるべき姿」の理想を掲げ、それに近づこうと努力するのは当た
り前のことですが、この国の与党と第二与党らの中の改憲勢力の理想は、空母
とミサイルとプルトニウムを持つ「普通の軍事国家」に体裁を整えることで
す。これも日本の憲法や多くの国が軍備を持て余している国際的流れの現実と
大きくかい離したもので、「非武装非戦」の理想だけが現実とかい離している
かのような論調はトリックに過ぎません。先の試みの、丹誠込めた軍国少年・
少女づくりも、その成人を待つ前に戦争が終わり、後遺症だけを残しました。
そしてどちらに理想を求めるかを決めるのは政府ではなく主権者である国民で
あることを議員自身が自覚しないまま、「あるべき姿」を構築しているため、
この国では国会と国民との「かい離」も生じています。
佐藤道夫議員は以前から国民も議員も憲法に関心が薄いと嘆いていますが、
今回はさらに「肝心の憲法学者がこれまた本当に無関心、情けない限りだ」
と、議員自らの姿勢は棚に上げておっしゃっています。しかし「業界ぐるみ」
意識から抜けきれない経済界「国民」が早々に九条に関心を寄せ「改憲論」を
誘発してきた面があります。また憲法学者も関心がないのではありません。む
しろ武装平和主義学者が、かつて村山政権時「自衛隊合憲」への転換に少なか
らぬ影響を及ぼしたのは記憶に新しいところです。今も「論憲」を標榜する
「玉虫改憲学者」が「一緒にわたれば怖くない」と「多数」を形成しつつある
ことを忘れてはなりません。それら「無党派」党の学者が調査会になだれ込ん
できたとき、議員はそれに対し、民意を代表して正面から「論憲」を張り合え
るでしょうか。学者大臣の説法をおとなしく聞き入るさまを拝見すると心細い
限りです。
小泉純一郎首相は24日の米CNNテレビのインタビューで、「憲法改正を右
傾化だとか、靖国神社参拝は軍国主義を賛美することだとかいう考え方は誤解
や偏見に基づいていると考える」「憲法改正が戦争に結びつくという考え方も
おかしい。どこの国でも時代に合わせて憲法を改正するということはあるはず
だ」と「反論」したとのこと。「特攻隊に比べれば、総理の苦労は何でもな
い」(21日の参院予算委)と、「特攻隊」のキーワード一つで、うるうると靖
国のオーラに酔ってしまわれるようなお方を首相とする国を「右傾化」してい
ないとするのは「右傾化」した国しかありません。二十世紀のモニュメントと
なるはずの靖国は、いまだに生々しく「英霊」を求めて国会内を彷徨している
ようです。
自衛権にしても、有事法制の「検討」にしても、政府は「持つ権利」を主張
していますが、憲法如何を問わず、主権を持つ国家には、同時に「持たない権
利」もあります。日本は、憲法にこれらを「持たない権利」として明記した主
権国家です。ですからいかなる自衛権も持たないことは主体的な権利の主張で
あり、有事法については法制化はもちろんのこと、「検討」することも国際公
約としてタブーです。
<参考>有事法制検討の現状について http://www.jda.go.jp/(ニュース)
斉藤前防衛庁長官記者会見の概要
13.4.24 (1014〜1025)
−−−−−−−−−−−−−−−−−
参院憲法調査会(上杉光弘会長)は九日、諸井虔・地方分権推進委員会委員
長、前田英昭駒沢大教授を参考人として招き意見聴取と質疑を行った。
諸井氏は、小泉首相が主張する首相公選制について「国民の意思をより早
く、より良く伝える一つの方法だと思う」と賛意を示した。前田氏は、首相が
提唱する首相公選制に限った憲法改正に否定的な考えを示した。
(読売5月9日)
第151回国会
参議院憲法調査会 第7号
http://www.sangiin.go.jp/japanese/kenpou/keika_g/151_07g.htm
五月九日 午後一時一分開会 午後一時一分開会
参考人
太平洋セメント株式会社相談役 諸井 虔君
駒澤大学法学部教授 前田 英昭君
○参考人(諸井虔君)
明治憲法には地方自治や地方公共団体に関する記述はないが、日本国憲法で
は九十二条から九十五条で、国民主権と同時に地方自治というものを明確にし
ている。だが実質的には行政が主導してことは否めない。しかし国民の支持が
あったと言える。日本が先進国を目指して一生懸命経済成長していた時期に
は、かえって行政が中央集権型で省庁間調整でお互いに責任を分担してやって
いくという形が公正であり公平であり効率的であった。しかし、一九八〇年代
には先進国の水準に追いつく。しかも東西冷戦が大体一九九〇年前後になく
なって、激動の世界になり、かつ非常にグローバルな世界的な大競争時代が始
まってくる。こういう段階になると、内政であれ外交であれ、やはり国民みず
からが決めていかなくてはならなくなる。だが、その体制というものが必ずし
も十分に整っていない。
経済の問題について言えば、これは本来は企業がみずからの経営について責
任を持って、みずからの道をみずから選択をして、自分の責任でチャレンジを
していく。もし失敗をすれば退場していくしか仕方がない。しかし企業も役所
に何とかしてくれというふうな気持ちが抜け切れない、あるいは業界ぐるみで
どうとかしようというふうな話になってしまう。地方の公共団体についても、
役所の言いなりにしていけばいろんな問題というものは解決をしていく時代が
ずっと続いていた。
政治にしても企業にしても地方公共団体にしても、憲法の国民主権、国会主
導、政治主導に早く切りかえなくちゃいけないがなかなか切りかえられないで
ここ十数年たってしまった。
首相公選制問題も、最終的に国民主権ということであれば、国会が代表制で
決めるか、直接代表、直接民主主義でいくべきなのかは非常に難しい。議会と
首相の意思が食い違ったときどういう形でその処理をしていくのか、早く結論
を出すということがどうしても必要になる。地方の問題では、地方の行政の責
任が重くなってくると国会の法律でどこまで決めるべきなのかということと、
財源の配分の問題も絡んでくる。
経済界でやはり一番問題になるのは九条の問題だ。場合によっては報告、答
申のようなものを出しているが、必ずしも経済界の意見が完全に一致している
わけではない。この問題についてはかなり今まで繰り返し議論をしてきた。今
度、小泉さんが首相公選制を言い出したことで、恐らくこの首相公選制の問題
というのは相当これから経済界の中でも賛否分かれていろいろ議論がされてい
くんではないだろうかと思う。
○参考人(前田英昭君)
憲法第四十一条、立法機関に焦点を当てて、外国の事情と比較する。
一、法律案の発案者はだれか
イギリスの議会はもともと立法機関で、議員立法中心。それが十九世紀、小さ
な政府から大きな政府へと移行するのに伴い内閣主導に変わり、さらに首相主
導に発展をする。内閣主導は政党制の発達と公務員制度の整備と結びついて実
現した。内閣と与党は一体関係になり、日本のように二重構造にはならない。
議員は法案づくりを信頼できる同僚議員の大臣に任せて、内閣提出の法案審議
に専念する。憲法上、法案提出権は議員に限られ、官僚立法にはならない。公
務員制度については、内閣に法制局を設置した。立法と行政は分離し、議員は
個人的に官僚に接触せず、議員が必要なときには大臣を通じて折衝する。
日本の帝国議会では、明治二十三年の議会開設のときに既に官僚機構はでき
ており、その頂点に内閣がある。内閣法制局は明治十八年にでき、二十三年に
強化された。戦後、昭和二十年、官僚立法の牙城であった内閣法制局は、アメ
リカの占領下、廃止されたが、昭和二十七年に復活して今日に至る。明治時代
の超然内閣は、議会や民意を無視して官僚に法案をつくらせたから、内閣立法
はイコール官僚立法だった。
イギリスの議会では立法権は最高のもので、議会政治の基盤の上に官僚政治
のレールが敷かれた。日本では官僚制度の基盤の上に議会政治のレールが敷か
れた。イギリスでは国会審議には官僚は加わらない。日本の帝国議会は官僚中
心で官僚が政府委員の形で審議をリードした。政府委員は廃止になったが参考
人として残った。
アメリカは大統領制の国で厳格な三権分立の憲法規定に縛られ、議会は当初
から自分たちで立法する自前の立法を続け、行政優位時代になると、議会の中
に法制局と立法考査局を設置し、立法補佐体制を強化して対応してきた。二十
世紀になると、大統領が直接立法に乗り出し、大統領勧告法案は、事実上、大
統領提出法案となり、大統領は第一の立法者であると書かれるようになった。
日本国憲法は、アメリカの影響を強く受けたため、議院内閣制の国では世界
一の立法補佐機構を実現した。国会に議院法制局が衆参二つあるのは日本だ
け。
第二次大戦後の行政優位時代にできた新しい憲法は、内閣と議員双方に議案
の提出権を認め、議員より政府を上位に置いている。フランスの一九五八年、
現行第五共和国憲法、ドイツの一九四九年、現行の憲法がその例。日本国憲法
は新しい憲法だが、アメリカの最古の成文憲法の影響でできたもので、内容は
非常に古い。
二 民意のルート
イギリスでは政党は民意を吸収するための独特のマニフェスト(宣言・声明)
の仕組みができた。政党は選挙の前に公約を発表し、政党が政権をとった場合
にマニフェストを実行する。選挙は政策の対決になる。選挙では国民は政策選
択、政党選択、内閣総理大臣を選ぶ。現在、事実上の首相公選制を実現してお
り、内閣主導の立法は官僚立法にならず、民意を反映したものになる。特定団
体や特定の省庁の利害の突出や各省と特定団体との癒着の発生を未然に防ぐた
めに、内閣主導のバイパスというものがあり、団体の要求を聞くために各省に
窓口を設けた。さらに、内閣の下に、大臣や党役員で構成された閣僚委員会を
設置して各省の意見調整に当たる。
日本では、こういう民意を政策に反映させる回路を構築できず、いまだにで
きていない。明治憲法下の議会が決定権がなかったがゆえにこのようになった
のではないか。政策を提示しても決定権がなければスローガンでしかない。イ
ギリスのマニフェストは、選挙公約は公文書扱いで一冊の本として長く保存さ
れる。日本では、一部の者が団体を組織してバイパスを通して要求をする。こ
れが政官業のトライアングルと考えられる。日本の政治主導というものは、こ
れまで欠落していた民意のルートを構築する必要がある。
三 審議機能
イギリスでは選挙に勝った政党は内閣を組織し、国民に公約した政策を、国
民の承認を得たというものとして立法化しなければならない。次に、議会が開
会すれば冒頭に女王の演説がある。我が国の施政方針演説に相当する女王の演
説は、具体的な政策提言であり、首相を初め、約百三十人ぐらいの議員が質問
あるいは討論に参加する。一週間に五日間審議している。イギリスの議会は昼
の二時三十分から休憩なしで十時半までは必ずやる。本会議の討論だけではな
くて、委員会でも与野党が向かい合い、すべて委員が審議する。審議時間が非
常に長いので情報が国会からたくさん国民に対して提供される。
日本の国会は審議時間が短いので有名だ。各国とも定足数よりも情報提供と
いうところに力点を置いて審議をしている。それは、主権者に対する説明責任
(アカウンタビリティー)の概念が登場してきたからだと思われる。斎藤議長
の有識者懇談会の答申にある定足数の弾力化も、そういう観点で取り上げられ
たのではないか。国会は立法のための審議機関である。採決は一瞬であるが、
それに至る審議が大事だ。
四 立法機関としての充実について
国会は、国会活性化法をつくり、政府委員を廃止し、政治主導を選択した。
その趣旨からいえば、立法についても政治主導というものは内閣が中心になる
のではないのか、その内閣というものが民主化される、それを確立することが
重要なのではないか。小泉首相は、総裁選に勝った勢いで、首相公選制に限定
して憲法改正を考える意向を表明したが、公選制は憲法改正をしなければでき
ないものか。
イギリスの国民は、政党が選んだ首相候補者に国民が選挙で票を投じてい
る。国民が首相を選ぶから選挙に関心を持つ。アメリカの大統領選挙と、議院
内閣制の今日におけるドイツ、イギリスにおける総選挙は極めて似てきてい
る。
小選挙区比例代表並立制を導入したとき、終わってから、熱病だったと言わ
れたが、これは法律である。憲法改正が、後に熱病だったというふうなことで
は済まされるものではない。
憲法改正の手続や発議、国民投票についてはよく議論になるが、憲法学界で
は内閣に発案権なしという反対論がある。しかし、議員が発案することについ
て反対する会員は一人もいない。通常の議員立法とすると、大変手続が軽い。
そうではなく、この調査会が発案しないという申し合わせで設置された経緯や
憲法というものの重要性を考えて、事前にルールを確認することが必要だ。
衆議院は、イギリスにおける首相質問をまねてクエスチョンタイムをつくっ
た。イギリスでは議員立法に対する採決はそれぞれ党議拘束をしないという原
則にしているが、それらを参考に衆議院がやれないことを参議院で補完しては
どうか。参議院は、政権をめぐる争いの場になるのをできるだけ避け、各会派
の意見交換の場として国民の世論を盛り上げるのに必要な情報発信源となるべ
きだ。衆議院選挙はどうしても民意の集約にならざるを得ず、民意を吸収する
パイプは細くなる。はじき出された民意を含めて多様な民意を反映するのが参
議院だ。パイプをなくしてしまうような憲法改正案がもし出るとすれば、私は
賛成できない。
議会制民主主義においては、人間の血液のように民意を体内で循環させ、議
会がその民意の循環を促進する心臓部として働く。国民主権と統治機構、その
中の立法機関としての関係はそのように考えるべきだ。
公聴会を中心にしてやることは全く賛成だが、賛否同数でなくていいから、
いろいろな人を参加させるべきだ。参考人は党のためにいくのではないから、
各党推薦でいいが、それを表へ出さないでほしい。質疑の時間も少ない。関連
質疑も30秒くらいはあってもいい。
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憲政記念館特別展「伊藤博文と大日本帝国憲法特別展」:無料
5 月19 日(土)〜6 月10 日(日):特別展開会中は無休
開館時間:午前9 時30 分から午後5 時(入館は、午後4 時まで)
展示場 国会前庭の憲政記念館
伊藤博文による旧憲法制定のための欧州渡航調査の足跡を遺品や書状、当時
の貴重な写真など
大日本帝国憲法の御署名原本(複製)
井上毅らの手による各種憲法草案
帝国憲法枢密院諮詢案
憲法発布勅語草案
板垣退助らによる民撰議院設立建白書(複製)
第1 回帝国議会開院式勅語
(衆議院憲法調査会ニュース 200 1.5.1 8 Vol.1 3 よ
り)
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<首相答弁>
▽首相公選制
4月27日記者会見「天皇制を維持しながら導入したい。(憲法の)他の条文は一
切いじらない」「首相を選ぶ権利を国会議員から一般国民に移管する政界の規
制緩和だ」「(同制度限定の改憲であれば)国民に理解されやすい」
5月9日衆院本会議「現実的な課題として取り上げられていい。そのためには憲
法改正が必要だ」「天皇制と首相公選制は矛盾しない。国会議員の推薦を要件
とすれば売名や泡まつ候補は防げる」
5月10日参院本会議「学識者や各界の意見を聞かねばならない。首相と言っても
独断でやってはいけない。国民の理解を得なければならない」
5月11日衆院本会議「天皇制とは矛盾しない。国会議員何人かの推薦要件をつけ
て、一般国民も首相になれるような制度もいいのではないかという意味で提案
している。」
▽憲法九条
4月27日記者会見「命をかけて国を守る集団が憲法違反という議論をさせておく
のは自衛隊に失礼だ」「今の政治課題にのせることは難しい」
9日衆院本会議「世論の成熟を見定めるなど慎重な配慮を要する」
10日参院本会議「9条のみならず、見直し、改正の議論は大いに進めていって
しかるべきだ。自衛隊が憲法違反であるとかないとか、人により解釈が違うよ
りは、誤解の生じない文章の方がいい」「憲法は永久不変のものではない。国
民の理解を得た段階で、九条のみならず、改正したほうがいいとなれば当然改
正すべきだ」
(公明党・坂口力厚生労働相「首相から、この内閣で9条改正を目指すとは聞
いていない。現在は論憲の範囲にあると認識している」「議論は制約されるも
のではないが、九条の崇高な精神は限りなく尊重されなければならない」、保
守党党首・扇国土交通相「九条などをタブー視することなく、二十一世紀の国
づくりの根幹となる新しい憲法の制定が必要だ」)
(公明党の神崎武法代表は11日、党本部での全国県代表協議会で、小泉純一
郎首相の憲法改正などを巡る一連の発言について「懸念されていた靖国神社公
式参拝は個人として参拝すると明言され、集団的自衛権と9条改正についても
世論の成熟を見定めるなど慎重な配慮を要するとの姿勢を示された」と述べ、
容認する姿勢を示した。[毎日5月11日])
21日参院予算委「自主憲法制定は自民党の党是だ。衆参両院の憲法調査会で議
論が行われている。各条項を聖域なく見直すべき点は見直す。憲法改正論が
オープンに自由闊達に行われ、多くの国民の関心を集めたなかで憲法改正され
るのが望ましい。」
▽集団的自衛権国会決議 改憲までの暫定措置
自民党は13日、憲法論議の焦点である集団的自衛権の行使について、憲法改
正を伴わなくても国会決議によって容認できるよう具体策の検討に入る方針を
固めた。党幹部の1人は「憲法改正までの暫定的措置」と位置付けており、新法
によって行使の範囲を制限する案なども浮上している。小泉純一郎総裁(首
相)の直属機関「国家戦略本部」で近く検討を開始する考え。
(日経5月13日)
特集:憲法論議が加速
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt32/
◇集団的自衛権
<首相答弁>
4月27日記者会見「改正した方が望ましい」「日本近海で日米が共同訓練してい
て、米軍が攻撃を受けた場合、よその国の領土でも領空でも領海でもない場合
に日本が何もしないということが本当にできるのだろうか」
5月9日国会答弁「集団的自衛権についてもさまざまな角度から研究してもいい
のではないか」「『憲法上許されない』との解釈の変更は十分に慎重でなけれ
ばならない」
(山崎拓幹事長「憲法解釈をたびたび変えれば憲法の信頼性を損なう」、神崎
武法公明代表「国会で全会一致で決議できる政治状況ではない」)
5月11日衆院本会議「憲法解釈の変更は慎重にすべきだが、世の中の変化も踏ま
えつつ、幅広い議論が行われることは重要であり、さまざまな角度から研究し
てもいいのではないか。」「集団的自衛権に関するわが国の考えについては米
政府も理解していると思う。日本が主体的に考えるべきだ。」
15日衆院予算委(自民党の山崎拓幹事長が「日本の平和と安全に重大な影響を
及ぼす周辺事態に限り、国会決議を行うことで容認していいのではないか」と
の発言に)「一つの方法ではないか」「(従来の政府解釈の変更は)長年の国
会審議で積み上げられたものがあり、もし変えるならばよほど慎重な配慮をし
ないといけない」「状況、時代の変化に応じて研究するのはいいと言ってい
る」「きちんと誤解のないように(憲法)改正手続きをやったほうが望まし
い」
<有事法制に関する首相答弁>
04月14日総裁選中「有事法整備は今の憲法の中でも『治(平和の時)にいて乱
を忘れず』というのが政治の要諦(ようてい)だから、平和の時こそ非常時
に、どういう対処ができるかやっておかなければならない」
4月27日記者会見「平時に有事の対策を研究することは大事だ。いつ法制化する
かは今後の問題だと思う」
5月11日参院本会議「平時においてこそ、非常時にどのような対処が可能かを考
え、備えておく必要がある。内閣官房を中心に検討する。」
坂口力厚生労働相「防衛出動に伴う緊急事態への対応措置として、あくまで憲
法の範囲内という原則に基づいた何らかの法整備が必要であると考えてい
る。」扇千景国土交通相「首相の方針に基づき一日も早い法制の整備を期待し
ている。」(5月18日衆院外務委・田中外務大臣「危機管理のためにも、平時に
おいて必要だ」)
▽防衛庁防衛研究所が事務局を務める「防衛戦略研究会議」(議長=渡辺昭夫
平和・安全保障研究所理事長)は二十二日、都内で会合を開き、集団的自衛権
をめぐる政府の憲法解釈について「後方支援を集団的自衛権行使の枠外とする
解釈変更が必要」などと明記した報告書をまとめた。同会議は報告書について
「防衛庁や防衛研究所の見解を代表するものではない」としているが、会合に
出席した中谷防衛長官は「防衛政策立案に報告書を大いに参考にしたい」と述
べた。
報告書は「政府は、武力行使と一体化した形での後方支援は憲法上できない
としている。現在の周辺事態法の下では(この解釈では)現実の場面に遭遇し
た時に不都合が生じ得る」と指摘している。
また、今後の政治課題として、多国籍軍後方支援法の制定、戦力の保持など
を否定した憲法九条二項の緩和などを例示した。
同会議は、秋山昌広・元防衛次官、北岡伸一東大教授、リチャード・クー野
村総研主席研究員ら二十人のメンバーで構成。九九年七月の初会合以来、九回
の討議を重ねてきた。 (読売5月22日)
▽自民、公明、保守の与党3党の幹事長、国会対策委員長が16日朝会談し、
政府の憲法解釈で禁止されている集団的自衛権の行使の問題について3党間で
話し合いに入ることで一致した。
山崎氏「(与党協議は)国会決議のためだ。どういう決議をするか話し合う
が、そう簡単ではない。方向はこれからだ」
公明党の冬柴鉄三幹事長「話し合うのはけっこうだが、非常に大きな問題
だ。行使は許されないと主張する」
民主党の鳩山由紀夫代表「(国会決議も一つの方法としたことは)国会決議
で簡単に認めてしまうのは非常に危険な話だ。憲法の内容を吟味しなければい
けない状況なのに、時間がかかるから決議で済まそうというのは、危ない発想
ではないか」
(朝日05/16)
▽柳井俊二駐米大使は二十二日の記者会見で、ブッシュ米政権内で、小泉政権
発足後、日本の集団的自衛権行使に向けた憲法解釈変更に対する期待感が強
まっているとの見解を示した。また、小泉首相の改革姿勢に関し、「米国では
不良債権処理による経済回復や規制改革への期待感が大きい」と述べた。
(読売5月23日)
◇防衛庁長官
「元自衛官の防衛庁長官は文民」政府が答弁書決定
政府は22日の閣議で、陸上自衛官出身の中谷元・防衛庁長官が「過去に自
衛官であったとしても自衛隊を離れ職務を行っていない以上、『文民』に当た
る」とする答弁書を閣議決定した。「自衛官出身者は文民ではない」とした質
問主意書に答えたもので、中谷氏は同日の記者会見で「(主意書は)非礼で人
権を無視している」と不快感をあらわにした。
質問主意書を出したのは平岡秀夫衆院議員(民主)。
た。(朝日5月22日)
中谷新防衛庁長官記者会見の概要 http://www.jda.go.jp/(ニュース)
13.5.22(0846〜0850)
<参考>3 元自衛官は、過去に自衛官であったとしても、現に国の武力組織た
る自衛隊を離れ、自衛官の職務を行っていない以上、「文民」に当たる。な
お、旧職業軍人で軍国主義に深く染まっていると考えられる者が文民に当たら
ないこととの均衡上どうかという疑問も考えられるが、自衛隊は、旧陸海軍の
組織と異なり、平和主義と民主主義を基調とする現憲法下における、国の独立
と平和を守り、その安全を保つための組織であって、これに勤務したからと
いって軍国主義的思想に染まることはあり得ず、両者を同視すべきではない。
(昭和48年12月7日衆議院予算委員会理事会 配付資料法制局作成「憲法第66
条第2項の文民とは、次に掲げる者以外の者をいう。」より)
―有事法制の検討はどう進めるのか。法案化のめどは。
「小泉純一郎首相からは、検討を進めてほしい、と指示があった。研究を開始
したのは一九七七年で、国民意識、法律、国際情勢も変わってきており、政府
全体の検討と整合を取りながら進めていく。まだ法制化の指示はなく、あくま
でも検討段階だ」「世界の平和と安全確保にもっと貢献できることがないか検
討したい。」「今まで考えられなかった方がおかしい」
―憲法解釈を変更し、集団的自衛権を行使できるようにすべきだとの意見も出
ているが。
「憲法に関する解釈の変更で行使することを認めるべきではない。行使するな
らば、きちんと憲法を改正すべきだ。自民党総裁選などで『日本周辺で米海軍
が攻撃を受けたとき、日本が何もしなくていいのか』といわれていたが、それ
についても『わが国への攻撃とみなし、防衛できる』との政府の答えが出てい
る」
―首相は、憲法九条を将来改正すべきだと発言しているが。
「現時点では、自衛隊は国民に信頼される組織になっているし、憲法でも認め
られている。その点(九条)は問題ない。ただ、国会で議論を深めてもらい、
もっと分かりやすい憲法にすべきではないか」
(共同2001年05月02日)
◇山崎幹事長
自民党の山崎拓幹事長は21日、東京都内のホテルで講演し、憲法改正につ
いて、「憲法調査会は発足時、5年を目途に議論することで合意しており、小
泉政権の任期中に改正手続きに入ることは考えにくい」と述べ、憲法の全面的
な改正は衆参憲法調査会の結論を踏まえた上で行うべきだとの考えを示した。
山崎氏は現在、政府の憲法解釈で禁止されている集団的自衛権の行使につい
て、「公海上で米海軍の軍人が海に落ちても、救うことができない。そういう
日本が、米側に在日米軍基地の返還を求めることができるのか」と指摘、集団
的自衛権の不行使が沖縄など米軍基地問題の解決の障害になり得るとの認識を
示した。
[毎日新聞5月21日]
◇福田康夫官房長官
―有事法制への対応は。
「今年一月の森前首相の施政方針演説で『検討を始める』と言った。それを小
泉内閣でも継続する」
―集団的自衛権行使に関する政府の憲法解釈変更を検討するのか。
「憲法の範囲を超えるというのが従来の解釈だ。憲法解釈を変えるのはこれま
での議論の積み重ねからすると難しい。解釈の仕方などを研究することは、日
米防衛協力のための新指針(ガイドライン)の有効性を強める意味で、日米同
盟関係維持のため大事なことではないか」
(共同2001年05月04日)
◇中曽根元首相
中曽根康弘元首相は21日、東京都内で講演し「参院選後は、憲法、教育基
本法、国家安全保障、財政構造改革といった問題で、日本の骨組み、基軸を作
ることができる政治勢力を結集したい」と述べ、国家のあり方を軸に政界再編
を目指す考えを示した。
中曽根氏は、吉田茂首相以来の経済中心主義は「高度な文明を築いた」と評
価しながらも、「大きなマイナスもあった」と批判。国家の統治という観点を
重視するべきだとし、憲法改正や教育基本法の改正を訴えた。また「参院選後
は同志の力を借りて、そういう方向に誘導していきたい」と強調した。
[毎日新聞5月21日]