遠山敦子文部科学大臣は就任直後、検定合格した教科書の修正はあり得ずと
言明しました。これが韓国をはじめとするアジア市民にどれほど落胆と怒りを
与えたかを、ご本人はもちろん政府内で自覚している官僚・議員は皆無のよう
です。
この姿勢は自治体も同じです。日韓市民が共同で教科書問題に取り組んでい
る一方で、教科書問題を理由に文化交流の取り消しや延期などがつづいていま
す。現在多くの自治体が韓国各地と姉妹都市縁組みなどを結び自治体主導によ
る文化交流がなされていますが、拒否通知に対し自治体では自らの歴史認識を
省みることなく、ただ「残念だ」「『政治問題』が沈静化するのを待ちたい」
などと傍観するのみです。このような高圧的な態度は、日本政府と同様、根底
にアジアに対する植民地支配的思想が温存していることを表すものです。日本
政府の変わらぬ無礼は、いやが上にも韓国市民の反日感情を高め、韓国では与
野党一致して対日姿勢を硬化させて政府を突き上げていますが、これから政府
間のみならず自治体レベルでも韓国からの議員団訪問などで歴史認識や日韓友
好の真の価値が問われようとしています。
また同大臣は子どもには伸びる子どもと、そうでない子どもがいると決めつ
けているようですが、子どもは工作物ではありません。確かに国が使いやすい
ように子どもたちを工作するには侵略の歴史は不要かもしれません。しかし文
部大臣自らそれを認めるならば、子どもの権利条約、憲法、教育基本法に反
し、人権を蹂躙する教育姿勢です。
文部科学省は大臣の名で教科書と認めたにも関わらず、あたかも教科書出版
側に責任があるかのような態度です。しかし検定制度は国の教育権を示すもの
であり、検定基準には国家責任があります。日本史も世界史の一部なのですか
ら、検定結果が出た時点で政府には、少なくとも検定済歴史教科書の内容に関
して関係諸国が納得できる歴史認識に基づいた説明責任があり、それができな
ければ方針を根本的に修正しなければならないはずです。外務大臣や野党らの
リップサービスでことが収まるような段階はとうに過ぎ、政府や国会の姿勢を
ただすことが求められています。
中国は一貫して日本政府に「実際の行動」を望むとしていますが、これはア
ジア諸国民の共通した主張です。それを回避しようとするのは、戦時の慰安所
施設の設置に国が関与したことを否定し、国が設置を許可した企業が公害を出
しても国の責任を認めずにきた体質と同じです。そしてそれらを覆してきたの
は官僚でも大臣でもない市民です。同様に教科書問題に対して、多様な角度か
らの市民の取り組みがつづいています。
今、各自治体では、教科用図書審議会で「学校教科用図書採択要綱(採択基
準)」などの改訂がすすんでいます。歴史改ざん勢力が提出した「教科書採択
制度の改善」の求めに呼応するごとく教員の教育権を排除する内容になろうと
しています。教科用図書審議会は採択基準案、採択方針案、採択資料案などに
ついて審議をします。教科用図書選定審議会規則は自治体ごとに定められてい
ますが、多くは同規則により調査員は教育委員会が任命します。
選定審議会や調査員は、教育委員会に意見を述べ、参考資料をつくる組織だ
から、絞り込みすることなく、教育委員会が最終的に教科書を決定すべきだと
いうのが同勢力の主張です。
教育委員会は「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」に基づいて設置
され、教育事務を執行する機関として、地方公共団体の長から独立して自ら決
定権をもち、教育委員会の職務権限として「教料書その他の教材の取扱いに関
すること」があります。しかし教育委員会の任務は地域の教育環境を整えるた
めの事務的措置を行うことであって、教育内容に直接関わる教科書の決定権ま
で有しているかは、教育基本法第十条「教育は、不当な支配に服することな
く、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」「教育行政
は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目
標として行われなければならない」に照らしても法的な問題を生じることで
す。
1999年第145国会で「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関す
る法律」が成立(2000年4月1日施行)し、地方分権推進委員会の勧告を受け
て策定された「地方分権推進計画」(99年5月29日閣議決定)に基づき、関連
法475本が一括して改訂されました。文部省(当時)関係法律については、中
央教育審議会の答申「今後の地方教育行政の在り方について」(99年9月21
日)等に基づき21本の法律を改訂しました(教育委員会制度の在り方等の見直
しについては「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」「公立義務教育諸
学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」)。その趣旨は教育行政
における国、都道府県、市町村の役割分担を見直し、「対等な」協力体制を構
築し、保護者や地域住民の多様な意向をより一層的確に教育行政に反映させ、
指導等を文部科学大臣の「地教行法」による義務付けを廃止し、必要に応じて
指導等を行う法的拘束力のない本来の「指導・助言」にとどめるというもので
す。
改ざん勢力が、自治体の採択基準の改訂は、同勢力の「国民運動」によるも
のと「地域住民の意思」を強調するのはこのためです。しかし教育委員会が
「保護者や地域住民の多様な意向」とは言い難い政府自民党と深い仲にある保
護者・住民のみに追随したならば、教育委員会が公僕たるを捨て、武装国家な
らんとする日本政府の下僕と成り下がるものであり、地方分権ともほど遠く、
その結果子どもたちへの被害甚大であろうことは火を見るより明らかです。
なお今国会には教育関連六法案が提出されています
(http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/index.htm)が、これにも多くの問
題点が指摘されています。
そして今後、歴史改ざん勢力の扶桑社刊教科書採択の実働組織として、「新
しい歴史教科書をつくる会」「教科書改善連絡協議会」に加え、より地域に密
着している青年会議所OBを中心に組織した「教科書採択問題を考える会(松
山政司会長)」が、威力を発揮することが予想されています。すでに北海道、
茨城、京都などで活躍していますが、「青年会議所(20歳〜40歳の会員約
54,000人)」は全国に750を越え、その中には「教育改革プログラム実戦委員
会」が組織されており、「考える会」では小林よしのりさんや、かつて青年会
議所会頭を務めた自民党国会議員麻生太郎さんなどとも密接な関係を持って、
採択活動を展開しています。
文部科学省では、各都道府県教委に住民を加えるよう通知しています。ほと
んどの自治体でいまだに法的拘束力があるかのように、何ら配慮もないまま追
従しています。すでに教育委員などに青年会議所OBが少なからず就いていま
すが、今後特定の意図をもった住民や保護者として採択に直接加わる可能性も
否定できません。
(日本青年会議所・教育改革プログラム実戦委員会
http://www.jaycee.or.jp/2001/er/index.htm)
「新しい歴史教科書をつくる会」は財界から多くの賛同と資金を得て活動し
てきました。「教科書改善連絡協議会」にも、財界人が役員を務めています。
そして財界のホープらが「教科書採択問題を考える会」を結成して「つくる
会」教科書の採択に動いています。
最近、かつてないほどの友好的な韓国関係を背景に中小企業が韓国社会に活
路を求めていますが、教科書問題はその交渉にも影を落としています。歴史改
ざん勢力の動向が不況を増進するような事態に至っているにも関わらず、侵略
の史実を抹殺する歴史の改ざんに財界が同調し、さらには改ざん勢力として
「国民運動」にも主体的に関わるということは、外交交渉による経済の国際化
から脱し、日本とアメリカしか持てない高価で強力な攻撃軍艦であるイージス
艦を乗り入れて武力を持って経済侵略の道を進むという意図をアジア諸国に明
確にしたものと受け取っていいものです。
「つくる会」では、扶桑社刊の教科書を一般書店で販売したい意向も表明し
ています。収益の関係もあるでしょうが、「つくる会」での教科書採択に向け
た「基本戦略」の中に「教育荒廃の根本要因の一つに教科書の偏向問題があ
り、その是非こそ教育再生の第一歩であることを広く国民各界各層に訴える広
報宣伝活動を推進する」として、子どもたちだけではなく、教師や保護者にも
教科書を手渡したいとしています。すでに「パイロット版」や「国民の歴史」
などで取り組んでいますが、販売分野は限られます。検定済教科書となれば、
保護者も興味を示すだろうというところでしょう。また教育基本法で育った教
師がおいそれと「教育勅語」を教えられるはずもなく、教科書採択によって同
時に参考資料もそろえることになりますから、まずは国家から「感謝」される
子どもをつくれる教師を育てようという考えかもしれません。小中学校の教科
書やそれに付随した指導書や一部の副教材は、採択事務も含めて公費によって
まかなわれます。自治体が公費をもって「少国民」教育に荷担することを住民
として座視するわけにはいきません。
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○教科書採択から「教師の意向」の排除進む
http://www.asahi.com/special/newtext/010502a.html
教科書採択手続きの主な変更
・教師らによる「絞り込み」廃止など
北海道、栃木、群馬、埼玉、東京、神奈川、新潟(昨年から)、静岡、京都、
岡山、広島、愛媛、高知、長崎、宮崎
・各校の希望集約(学校票)を廃止
東京、神奈川、広島
・保護者参加や手続き透明化など
北海道、青森、秋田、福島、茨城、栃木、東京、福井、京都、奈良、鳥取、島
根、岡山、広島、山口、香川、愛媛、高知、福岡、熊本、大分、鹿児島
(朝日新聞社の取材に対する都道府県教委などの回答による)
○秋田県内の採択地区協議会は市郡のブロックごとに9つに分けられている。
構成メンバーは10〜21人で、市町村の教育長や教育委員が中心。
県教委は4月27日付の通知「教科書採択事務の改善について」で、協議会の
委員に保護者代表者等を1名以上任命する・採択に関する住民の情報公開請求
があれば、各自治体の公開条例に沿って対応する−ことなどを各市町村委に求
めている。住民代表の数や選び方は、各協議会に任せる方針。文部省(当時)
では90年、各都道府県教委に通知していたが、秋田県では対応が遅れてい
た。
教科書の採択は、採択地区協議会が実質的な決定権を持つ。各協議会の下に
は、現場の教員による調査員がいて、協議会に意見を出すこともできる仕組み
になっている。
採択に当たっては、まず、教員や学識経験者らで構成する県教委の教科用図
書選定審議会が、5月末までに各教科書の内容を比較する基準資料を作り、各
協議会はこれらの資料を基に教科書を選ぶ。市町村教委は協議会の選定結果ど
おりに教科書を採択し、7月中旬までに県教委に報告する。
教科書採択に住民参加を求めたことについて
県教育庁義務教育課「住民参加、情報公開の時代で、、教育関係者だけ教科書
を選ぶことに、世間の目は厳しくなっている」「保護者が参加することで、親
の視点から見た素直な意見が出るのではないか」
秋田県教職員組合委員長「保護者参加はいいことだが、もし今年導入するな
ら、来年の教科書を選ぶのに2ヶ月しか時間がなく、準備不足だ」「『新しい
歴史教科書をつくる会』の歴史教科書を巡りアジア諸国との関係に問題が生じ
ている中で、保護者代表を誰にするか、選び方などで混乱が生じるのではない
か」
不登校を考える親の会・あきた代表「保護者間で子どもの教科書に対する関
心が高まる」「専門知識のない保護者が一人だけでは、大した意見は述べられ
ない。導入するなら複数にすべきで、しかも特定の政治的意図などをもった人
が協議会に入らないように、委員の選考基準や選考過程も明らかにしてほし
い」
(朝日新聞秋田版05/03)
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教育委員会員 様
公正で民主的な教科書採択に関する要請書
常日頃、地域市町村の教科書問題にご尽力いただき感謝申し上げます。
さて、2002年使用の小中学校教科書の検定作業が終了し、このほどその結
果が公表されました。そのなかで、特に「新しい歴史教科書をつくる会」編集
主導、扶桑社刊の中学校「歴史」「公民」教科書について、国内はもとより海
外からも多くの反発の声があがっていることは御存じと思います。
「つくる会」は検定申請前から、そして検定作業中にも、現行教科書を自虐
的・反日本的だと一方的に非難し、同会の教科書採択を意図したパンフレット
やそのパイロット版と称する図書を大量に教育関係者に送付しています。ま
た、全国の自治体議会に対して、学習指導要領の「我が国の歴史に対する愛情
を深め、国民としての自覚を育てる」部分のみをことさら強調し、それに合致
しない現行教科書の排除・採択に当たって教職員の意見を排除する等の趣旨の
請願や陳情を繰り返しています、
私たちは、同会教科書の記述内容と併せ、こうした違法とも言える宣伝、営
業活動、政治活動に強く疑念を持ちます。
貴委員会におかれましては、こうした動向に毅然と対処され、2月県議会に
おける秋田県教育長の答弁にもありますように、教科書の調査研究、採択に当
たって一層の公式な確保を務められるよう要請し、下記の事項について特段の
配慮をお願い申し上げます。
記
1.「国家や民族の壁を超えた交流が急速に増している21世紀に、若い世代
が国際社会で信頼を得て生きていくための知識や感受性は不可欠です。自画、
自賛を越えた歴史の認識と教育が今こそ必要で、それに相応しい教科書を」と
いう視点が大切だと考えますし、国際的孤立の道へ踏み込む「つくる会」教科
書を新たに採択するということは、現行教科書をすべて否定することにもなる
と考えます。
2.教科書の調査研究は、中学校社会科の歴史・公民だけでも8社分、他分
野・他教科も含めると相当数になります。「つくる会」が主張するように、こ
うした調査研究も含めて採択を教育委員会だけで行うことは、その作業量だけ
を見ても到底不可能なことと考えます。
3.教科書の選定・採択に当たって、教育の専門職であり、日常的に教科書を
使用し、子どもたちを最もよく知っている教職員の意見を重視するのは当然で
はないでしょうか。
このことはユネスコの「教師の地位に関する勧告」や「1997年現場教師
の意向を重視する」とした閣議決定にもあることです。
これらを踏まえ、各学校の教科書の展示会への参加、教科書の調査研究が十
分できるように配慮し、各学校の学校票を採択に反映させるべきだと考えます
し、保護者、地域住民にもその機会を与えるべきだと考えます。
4.採択地区においても県と同様、教科書の調査研究報告書及び選定経過、そ
れに関わった委員等の情報公開をすすめ、より「開かれた採択」をめざすべき
と考えます。
5.2月県議会や秋田市議会に「新しい教科書をつくる会」から前記のような
陳情がなされましたが、それに引き続きこの後の県内各市長村議会にも同様の
陳情・請願がなされるという動きが伝えられています。
教科書の内容の記述の是非・採択等に関することを議会の多数決で決定する
等ということはなじまないばかりかあってはならないことと考えます。
それは教育、教科書への政治の「不当な配慮・介入」であり、憲法・教育基
本法の理念に反する重大な誤りであることを念のために申し添えます。
2001年5月2日
賛同団体
*子どもと教科書秋田地域ネット21準備会/*秋田県民間教育研究団体連絡
協議会/*秋田県歴史教育者協議会/*秋田県高等学校教職員組合/*秋田県
教職員組合/*平和民主主義革新統一をすすめる全国懇話会秋田県事務局
事務局 子どもと教科書秋田地域ネット21準備会
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2001/04 平成13年度に行われる教科書検定結果の公開について
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/index.htm
教科書特約供給所(平成13年2月)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/index.htm
東亜日報特集
日本の歴史教科書問題
http://japanese.chosun.com/service/special/textbook.html
崔相龍(チェ・サンリョン)駐日大使が4月19日日本に帰任、韓国政府の抗議
を正式に伝えた。しかし同日、河野洋平外相に手渡された外交通商部長官の親
書にも「再修正要請」は盛り込まれていないことが分かった。(朝鮮日報
04/19)
外務省は4月20日までに、「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した中学
歴史教科書について、検定前後の記述を在韓国日本大使館のホームページに掲
載した。「韓国併合」「強制連行・皇民化政策」など4カ所で、河野洋平外相
が韓国の韓昇洙(ハン・スン・ス)外交通商相にあてた親書なども韓国語で記
述されている。在中国日本大使館も近く、この問題に関する福田康夫官房長官
のコメントを日本語と中国語でHPに掲載する。
[毎日新聞4月20日]
韓国新千年民主党は23日、「日本の歴史教科書歪曲是正対策特委」を開き、
日本の新内閣が韓国政府の教科書再修正要求を早期に受け入れない場合、日本
の大衆文化の追加開放を中断し、被害国家たちと連帯し対応する方案を具体的
に検討するよう、政府に促すことにした。朴委員長「日本の国連安保理常任理
事国への進出の阻止などは、これからの推移を見守りながら、追加で論議する
ことにした」
(朝鮮日報2001/04/23)
▽8月初、スイス・ジュネーブで開かれる国連人権小委員会、▽8月末、南ア
フリカ共和国での世界人種差別撤廃会議、▽10〜11月、ニューヨークでの国連
総会第3委員会(人権、社会分野)、▽年末、ニューヨークでの国連女性地位委
員会ーなど
和田春樹・東京大名誉教授をはじめ、海野福寿・前明治大教授ら日本学者7名
が25日、「新しい歴史教科書をつくる会」が編集した中学校歴史教科書につい
て記者会見を開き、「検討の結果、最小限52カ所が事実関係とは大きな差があ
ることを見出した」とし、「この内容をまとめ次第、文部科学省、出版社、執
筆者などに送り、再修正を求める方針だ」と明らかにした。誤っていると指摘
された51カ所の中には韓国と関連するくだりが約20カ所にも及ぶ。
(東亜日報APRIL 26, 2001 )
「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーらが執筆した中学教科書が文部
科学省の検定に合格したことについて、元従軍慰安婦の韓国人女性らが二十六
日、同省を訪れて抗議、再検定を求める要望書を提出した。
[時事通信社 2001年 4月26日 ]
民主党は「次の内閣」の会合で、「新しい歴史教科書をつくる会」の中学歴
史教科書について、5月1日からの訪韓で金大中大統領らと会談の際に、「歴
史認識に反している」との考えを示す方針を決めた。韓国政府が近く要求する
見通しの検定やり直しについては、「各国の独自の判断が優先されるべき」と
受け入れない方針だ。
[毎日新聞 4月26日]
韓国政府は30日、日本歴史教科書の再修正と関連し、任那日本府説など、お
よそ40項目の再修正を要求する一方、誤った歴史認識を持っている「新しい歴
史教科書をつくる会」の教科書に対し、集中的に再修正を求めることにした。
「日本歴史教科書の韓国関連内容」は、A4用紙およそ100ページ分量で、大
きく分けると歴史歪曲に対する単純な指摘、再修正が必要とされる文句や内容
の提示などからなっている。
政府は、日本が再修正の要求を拒否する場合、「日本文化への追加開放の延
期」など段階別の対応方法を講じるほか、対策班を指揮する常設機構を設置
し、再修正要求を貫徹することを決めたと伝えられた。
(中央日報4月29日)
太平洋戦争の終戦後、日本の侵略戦争を歪曲する妄言をしたり、史実を歪曲
記述した出版物を出すなど、歴史歪曲の行動を見せた日本人の出入国を制限す
る内容の出入国管理法の改定が議員立法で推進されることになった。
(朝鮮日報2001/04/30)
北海道国際航空(エア・ドゥ)の石子彭培社長は1日、「札幌教科書改善連
絡協議会」からの脱退を書面で明らかにした。同協議会は「新しい歴史教科書
をつくる会」が編集した教科書を普及させようと発足したもの。しかし、市民
団体から「公共的性格の強い会社の社長が加わるのは問題」と抗議の公開質問
状を受けていた。
[毎日新聞 5月 1日]
韓国の崔相龍大使は2日、外務省に田中真紀子外相を訪ね、就任祝いのあい
さつをした。この中で崔大使は歴史教科書問題に言及し、「韓国内では、最近
の(日本の)動きについて1995年の村山富市首相談話と、1998年の日韓共同宣
言の精神に反しているという懸念が強まっており、厳しい。金大中大統領もた
いへんな思いをしている」と懸念を伝えた。これに対し田中外相は「村山首相
談話のラインが基本だ。これを実践することによって考えが本物になる」と述
べ、過去の植民地支配へのおわびを表明した「村山談話」を踏襲する考えを伝
えた。
[毎日新聞5月2日]
服部則夫外務報道官は2日の記者会見で、韓国政府が「新しい歴史教科書を
つくる会」編集の歴史教科書に対し再修正を要求した場合の対応について「検
定制度にのっとって合格した教科書を修正するのは基本的には無理かと思う」
と述べ、再修正に応じない姿勢を改めて示した。
[毎日新聞 5月 2日]
韓国の金ハンギル文化観光相は、遠山敦子文部科学相と会談し、教科書問題
などで意見交換した。金文化観光相は「日韓共同宣言の精神に反している」な
どと指摘し、「日本政府の公式見解と異なるので改める必要がある」と再修正
を求めた。これに対し、遠山文部科学相は、再修正には応じられないとの政府
方針を伝えた。
[毎日新聞 5月 2日]
韓国のキム・ハンギル文化観光相は2日、日本政府との歴史教科書問題の協
議などのため来日し、韓国政府が進めてきた日本大衆文化の追加開放は「歴史
教科書問題と分離して考えられない」として、韓国側の再修正要求が受け入れ
られない場合、日本文化の開放を当面、凍結することを示唆した。
(朝日05/03)
韓国訪問中の鳩山由紀夫民主党代表は3日、青瓦台で金大中大統領と会談し
た。大統領は教科書問題について「今が非常に大事だ。小さな傷が体全体に広
がる大きな病に至る可能性がある」と述べ、日韓関係全体を悪化させかねない
との強い懸念を示した。鳩山氏は「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科
書は「好ましくない」と伝え、大統領もこれを評価した。
金大統領は「心に受けた衝撃は大きい。誤って処理された場合、両国関係に
悪い影響を与えることを強く懸念する」と述べ、日本財界人に「円満解決を望
む」と述べた先月の発言から大きく踏み込んだ。
さらに「(旧)西独は自発的に謝罪し、補償もした。日本が西独以上にアジ
アの隣国や世界から信頼を受ける国になることを望む」と強調した。
一方、大統領は韓国政府に対し「むやみに感情的に反論せず、学問的、実証
的に検討し、日本が自発的に修正するよう自制的に行動することだ。日本人す
べてが(つくる会の)教科書支持ではない。十分区別すべきだ」と指示したと
いう。
大統領は鳩山氏の発言を評価したが、日韓両国による歴史教科書の共同研究提
案については言及しなかった。
(朝日05/03)
日本の歴史教科書問題で、韓国政府は3日、寺田輝介・駐韓大使を4日に呼
び、韓昇洙・外交通商相から伝達する予定だった日本政府への再修正要求を延
期することを決めた。3日に韓国政府から修正案の説明を受けた与党の新千年
民主党(総裁・金大中大統領)側が「不十分だ」などと補完を要求したため
で、7日以降に正式伝達されることになった。
(朝日05/04)
韓国の韓昇洙(ハンスンス)外交通商相は日本の中学校歴史教科書問題につ
いて4日、国会議員との懇談会で「政府が準備した30項目余りの修正要求を
来週初め、駐韓日本大使を呼んで伝達する」と語った。聯合ニュースが伝え
た。
外交通商相は24、25日に北京で開くアジア欧州会議(ASEM)外相会
合の際に行われる日韓外相会談でも、教科書問題を取り上げる考えを表明。田
中真紀子外相に「教科書わい曲に対する誠意ある是正措置」を促すと語った。
[毎日新聞5月4日]
山崎拓自民党幹事長は4日、「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書の再
修正を韓国政府が求めている問題で「外国から言われて変えることはあり得な
い」と、要求に応じる必要はないとの考えを示した。山崎氏は「教科書は一定
の基準に照らして検定している。いったん通れば、それ以上の干渉はできな
い」と述べた。
[毎日新聞 5月 4日]
公明党の冬柴鉄三幹事長は4日、訪韓し、金大中大統領に小泉純一郎首相か
らの親書を手渡した。首相は親書で、教科書問題への韓国内の厳しい雰囲気を
重く受け止めていると表明。政府の歴史認識については、過去の植民地支配な
どに対する反省と謝罪を表明した1995年の村山富市首相談話の通りである
と改めて強調した。
[毎日新聞 5月 4日]