Date: Wed, 11 Apr 2001 18:56:38 +0900
From: "MAEDA,Akira" <maeda@zokei.ac.jp>
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Subject: [keystone 3783] 人権委員会57会期「女性に対する暴力」(4)
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前田 朗@歴史の事実を視つめる会、です。
4月11日

1) 4月9日の夜と10日に、国連人権委員会57会期の「女性に対する暴
力」の議論が行われました。以下、プレスリリースより「慰安婦」問題の議論の
様子を紹介します。今回は日本のNGOの参加がなく、NGOの側の手薄さが心
配されましたが、議論はすごく盛り上がっています。歴史教科書問題のために、
韓国と朝鮮が厳しい日本批判を繰り広げたからです。

2) 韓国は、一度目の発言で、このところ「慰安婦」問題を国際的に取り上げ
ることを控えてきたが、今回の教科書はなんだと詰め寄っています。日本政府の
反論を聞いて、さらに「慰安婦」問題の解決をはっきりと要求しました。反論権
を二度も行使しています。韓国は、朝鮮政府と比べると、人権委員会ではあまり
「慰安婦」問題を取り上げてきていませんでした。しかし、今回の発言は非常に
厳しいものです。

3) 朝鮮は、一度目の発言で、日本人の差別的姿勢を批判しています。日本政
府の反論に対して、朝鮮政府も反論して、正面から否定しています。

4) 日本政府は、一度目の反論では、謝罪の経過説明をし、教科書は政府が選
ぶものではないなどと言い訳をしています。二度目の反論では、補償問題は解決
していると主張しています。

5) プレスリリースは一部の紹介しかしていませんから、議論の全体像はわか
りませんが、今回はすごい白熱の議論だと思われます。去年は朝鮮政府が1度発
言しただけで、日本も韓国も何も発言しませんでしたから、えらい違いです。い
やぁ、参加していればよかった。

6) 以下、人権高等弁務官事務所のプレスリリースより。

4月9日夜の部

1)韓国政府の発言
  韓国は一月に女性平等省を設置し、女性問題に焦点をあてている。韓国は、各
国にジェンダー問題のための機関設置を呼びかけた北京女性会議の行動綱領に寄
与している。
  旧ユーゴスラヴィア国際法廷が武力紛争時における強姦と奴隷化を人道に対す
る罪として有罪を言渡したことは、紛争状況で被害にさらされやすい女性に対す
るこうした暴力行為は重大犯罪にあたり、不処罰のままであってはならないとい
う強いメッセージを送るものである。韓国政府は、女性に対する戦時の人権侵害
のもっとも忌まわしい事件である「慰安婦」問題について人権委員会の注意を喚
起したい。「慰安婦」問題では、韓国の女性が第二次大戦時に日本軍によって性
奴隷にされた。1998年4月、韓国政府は、この問題を政府レベルでは追及し
ないことを表明し、生存している被害者に韓国政府の財源で支援を提供してき
た。また、1998年の韓日パートナーシップ共同宣言で新しい歴史のページが
開かれたので、この問題を国際的に提起することを控えてきた。韓国政府は、日
本政府が誠実な悔恨を表明し、こうした重大人権侵害の再発予防のための努力を
することを期待した。しかし、日本の歴史教科書検定の最近の結果を見ると、故
意に日本の悪事を隠したり、記述を減らしている教科書がある。「慰安婦」問題
も無視されたり、以前と比べるとずっと不正確な記述になっている。韓国政府
は、日本政府がこの問題を改正するのに必要な措置を講じ、こうした歴史の歪曲
を予防するよう要求する。

2)朝鮮政府の発言
  昨年7月、普天間基地に駐留するアメリカ軍兵士が14歳の日本人少女に性暴
力をはたらいた。この事件の結果、米軍基地の閉鎖と米軍の撤退を求める米軍に
対する抗議が盛り上がった。
  自分の民族の一人の少女に対する暴力に敏感に反応するのに、日本は、第二次
大戦時に日本帝国軍が他国の女性を性奴隷とすることで犯した人道に対する罪の
責任から逃げようと努力している。日本人は、自国の女性に対する暴力は屈辱で
あり虐待であるとしながら、他国の女性に対する暴力をノーマルだ(as normal
)とする倫理を持っている。日本人が一人の女性に対する暴力にひっくり返った
のと同じように、朝鮮人は、過去に日本によって20万以上の朝鮮女性に対して
行われた性的虐待に対して、ずっと大きい憤激を燃え上がらせている。さらに、
いま日本では犯罪的過去の歴史を正当化することが堂々と行われている。日本の
侵略と虐殺の歴史を美化する歴史教科書の改訂が4月に公式に是認されている。

3)日本政府の反論権の行使
  日本政府代表は第二次大戦に関する見解を繰り返したい。第二次大戦時、日本
は、各国に、特に東南アジア諸国に損害と苦痛を引き起こした。日本は被害者に
謝罪したし、過去の行為について自責の念(remorse)を表明した。学校教科書
については、政府が学校教科書を選択するのではない。選択は学校それぞれが行
うものである。

4)韓国政府の反論権の行使
  過去数年間、「慰安婦」問題についてはいくつもの国連機関が取り上げてきた
ように、国際共同体の重大関心事である。1995年の北京宣言はこの犯罪の根
絶を呼びかけた。女性に対する暴力特別報告者は1996年に「慰安婦」問題の
報告書を提出した。特別報告者(クマラスワミさん)は、日本政府が責任を受け
入れ、補償を支払うよう勧告している。被害者は日本政府が補償を支払わないこ
とに失望を表明してきた。韓国政府は、日本政府に「慰安婦」問題をすべての者
が受け入れられる方法で解決するよう呼びかける。

5)日本政府の再反論
  日本は第二次大戦時に日本が行った犯罪(crimes)について道義的責任をとっ
てきた。日本はアジア女性基金と協力してきた。被害者への補償については、日
本はサンフランシスコ条約およびその他の二国間条約に従って、日本と関係各国
との間で解決した問題であると考える。

6)朝鮮政府の反論権の行使
  朝鮮民主主義人民共和国は日本の主張を拒絶する(rejected)。日本は20万
の朝鮮女性を性奴隷にし、100万以上の朝鮮人を殺すという人道に対する罪を
犯した。しかし、被害者には何の補償も払われていない。日本は犯罪を認めてい
ない。ILOは、アジア女性基金は被害者の補償問題の解決にはならないと述べ
ている。日本は過去の犯罪の責任を受け入れるべきである。

7) 韓国政府の再反論
  1998年のゲイ・マクドゥーガル特別報告者の報告書が、アジア女性基金
は、被害者に公式の法的補償を支払う日本の責任に応じるものではないとしてい
ることを、人権委員会が想起するよう望む。

8) 4月10日午前・午後にNGOの発言がありました。今回のNGOの「慰
安婦」問題の発言は下記の一つです。例年、3つから6つほどあったのですが、
今回はNGOは寂しい状況です。今回の「慰安婦」問題の議論はこれで終了。

女性・法・開発に関するアジア太平洋フォーラムの発言
  過去10年間、日本軍性奴隷制の被害者たちは、日本政府がその法的責任を受
け入れ、補償を支払い、犯行者を裁判にかけるように要求してきた。女性に対す
る暴力特別報告者(クマラスワミさん)と戦時組織的強姦・性奴隷特別報告者
(マクドゥーガルさん)は、日本政府が法的責任を受け入れ、被害者に補償を支
払うように勧告してきた。
  しかし、今日もなお、日本はこれらの勧告を実行することを拒否している。そ
れどころか、最近、日本は、中学校の歴史教科書を是認したが、それは右翼団体
が編集したもので、第二次大戦時に起きたことを捻じ曲げている。文部科学省の
検定を通過した8種の教科書には誤った歴史記述がふくまれている。アジア太平
洋戦争は侵略ではなくアジア各国を「解放」するためだったとしたり、「慰安
婦」制度の記述を削除したり、南京大虐殺を否定している。このように歴史を捻
じ曲げて、自分が犯した犯罪についての国家責任を認めることを拒否しているの
で、日本は国連安保理事会の常任理事国になるべきではない。過去と正面から向
きあうことなしに、日本が政治的指導者となったり、世界平和について論じたり
する資格はない。



 
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