前田 朗@歴史の事実を視つめる会、です。
4月2日
1) 国連人権委員会のラディカ・クマラスワミ「女性に対する暴力」特別報告
者の報告書が、人権高等弁務官事務所によって公表されました。メイン報告書の
文書番号は、E/CN.4/2001/73です。
2) クマラスワミ報告者は、95年の予備報告書以来、多くの報告書を提出し
てきました。その主要なものは、クマラスワミ報告書研究会編訳『女性に対する
暴力』(明石書店、2000年)として公刊されています。「女性に対する暴
力」は、家庭における暴力、共同体における暴力、国家による暴力に分けられて
います。今年は国家による暴力を扱っています。従って、国際刑事裁判所規程
や、ICTY、ICTRの判決が分析されています。
3) 全文45頁、本文33頁。目次は次のようなものです。
1 序
2 武力紛争と女性に対する暴力に関して現れてきた法的基準
A 国際刑事裁判所
B ICTY判例法
C ICTR判例法
3 今後の方向と未解決の問題
4 女性に対する暴力と武力紛争に関する一般的問題(1997年―2000
年)
A 想像すらできない残忍さ
B 化学兵器
C 非国家勢力の役割
D 少女
E 紛争地域内外の女性売買
F 国内難民女性
G 軍国主義化
H 国連平和維持部隊/基地
I 和平プロセスにおける女性
K 説明責任/真実と和解
L 不処罰/説明責任
5 武力紛争時における女性に対する暴力の事例(1997年―2000年)
A アフガニスタン
B ブルンジ
C コロンビア
D コンゴ民主共和国
E 東ティモール
F ユーゴスラヴィア共和国(コソヴォ)
G インド
H インドネシア/西ティモール
I 日本。慰安婦のための正義に関する発展
J ミャンマー
K ロシア連邦(チェチェン)
L シエラレオネ
M スリランカ
6 勧告
A 国際的
B 国内的
4)日本が取り上げられたのは、95年の予備報告書、96年の「慰安婦」問題
報告書、98年の国家による暴力報告書に続いて4度目です。今回も視点は変わ
っていません。「慰安婦」問題の状況が書かれています。96年のクマラスワミ
報告書以来の動き、特にマクドゥーガル「戦時性暴力」人権小委員会報告書、日
本の国内裁判所の動き(関釜事件、ただし一審まで。フィリピン、オランダ、宋
神道さん、ワシントン地裁への提訴)、そして女性国際戦犯法廷が紹介されてい
ます。ポイントは、日本政府が法的責任を認めていないこと、「アジア女性基
金」は民間基金にすぎないこと、クマラスワミ勧告が全然実施されていないこ
と、国内裁判の結果は別れていること、被害者への賠償とともに責任者処罰問題
(不処罰問題)が浮上していることの指摘です。詳しくは、おそらく、女性国際
戦犯法廷を開催したVAWW NET Japanが翻訳・発表することと思いま
す。