Date: Fri, 30 Mar 2001 17:24:59 +0900
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Subject: [keystone 3740] 冊子「ビッグレスキュー東京2000」とは
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〔お知らせ〕
自衛隊中心の東京都総合防災訓練「ビッグレスキュー東京2000」
            を検証・批判する冊子が刊行されました!!
 
  発信者=「やめて!東京都による『防災』に名を借りた9・3自衛隊演習」
                                               実行委員会・冊子編集部
  発信時=2001年3月30日
 
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  新冊子の名は
 
           〈東京都〉総合防災訓練・〈自衛隊〉統合防災実動演習
            「ビッグレスキュー東京2000」とは何だったのか
 
  です。本冊子編集・刊行の趣旨は、以下に掲載する「冊子刊行にあたって」をご
覧下さい。また内容については、その後に掲載する総目次をご参照下さい。冊子と
記していますが、B5判で170ページという1冊の単行本の分量です。
  私たちの実行委員会は、運動主体の形成過程で、討論を重視してきました。
  その様子は、第1部と第2部に、如実に、そして正確に反映されています。それは
全国の仲間たちにとって、きっと参考になるでしょう。
  また本冊子の第3部は資料編で、50ページにも及ぶ膨大なものです。「ビッグレス
キュー」的な軍事演習は、今後各地で繰り返される危険があります。そのような事
態に対応するとき、この資料編は非常に役立つと思います。
  自衛隊の災害派遣、あるいは自衛隊そのものを批判する上で、本冊子が活用され
ることを、私たちは願っています。なお、入手の方法は、「お知らせ」の後半に記
します。
 最後に、軍事評論家・西沢優さんの「推薦のことば」を掲載します。

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【冊子刊行にあたって】
 
 「やめて!東京都による『防災』に名を借りた9・3自衛隊演習」実行委員会
                           ・冊子編集部
 
  2000年9月3日、自衛隊を中軸に据えた「平成12年度東京都総合防災訓練」
(「ビッグレスキュー東京2000〜首都を救え〜」)が行なわれた。自衛隊は、全参
加人員約25000人のうち7100人(約28%)を占めたのであるが、「ビッグレス
キュー」で自衛隊が実施した演習は、「第1回統合防災実動演習」(統裁官・藤縄統
合幕僚会議議長)という独自の名称をもっていた(2000年9月7日付『朝雲』)。
「統合」は、陸・海・空3自衛隊がともに動員されることで、「実動」は、机上(指
揮所)演習とは違い、実際に部隊を動かすことである。
 自衛隊にとって、「ビッグレスキュー」への参加の目的は、「南関東地域震災発
生時に陸上自衛隊を主体とする3自衛隊の協同対処要領を東京都等と共同して実践的
に演練し、統合運用能力の向上を図る」ことであった。防衛庁は、1990年6月21日に
「南関東地域震災災害派遣計画」(巻末の資料編参照)を策定したが、「ビッグレ
スキュー」で自衛隊は、同計画の実施を想定して演習したのである。
 
  2000年4月9日、石原慎太郎都知事が、陸上自衛隊練馬駐屯地で行なわれた創隊記
念式典に参加して、第1師団を前に「三国人・治安出動要請」暴言を発したことは、
周知のことである。彼にとって「ビッグレスキュー」は、「三国人の騒擾(そう
じょう)」を想定した治安出動訓練であり、同時に中国や朝鮮民主主義人民共和国
に対する軍事的威圧を目的とし、「外国からの侵犯」という有事を想定した軍事演
習でもあった。彼は都議会で、治安出動とは関係ないと小さな声で答えたが、それ
を信じた人はいないだろう。
 
   ところで防衛庁・自衛隊にとって、「ビッグレスキュー」への参加は、どのよう
な意味を持っていたのか。「南関東地域震災災害派遣計画」自体が、そもそも一般
に知られていないことが象徴するように、首都で初めて実施された「統合防災実動
演習」の軍事的意味は、明らかにされていない。
 1995年1月に起きた阪神・淡路大震災時の災害派遣以来、自衛隊の災害派遣は、多
くの自治体から歓迎されるようになった。災害派遣は自衛隊の「国民に最も身近な
活動」として、自衛隊の本務であるかのように受け取られ始めている。また自衛隊
側も、そういう期待に応える姿勢を見せている。
 だが、「ビッグレスキュー」に参加した自衛隊は、これまでなしえなかった首都
における大実動演習を実現したのである。それに関連して気になる動きがいろいろ
ある。防衛・治安出動ではなく、大規模災害が発生した場合などでも、統合幕僚会
議が防衛庁長官を補佐して自衛隊の統合運用ができるようにした防衛庁設置法など
の「改正」(98年4月、統合幕僚会議の機能の「充実」)や、新中央指揮システム
(NCCS)をもつ中央指揮所の発足(2000年5月、防衛庁の市ヶ谷移転)、あるいは陸
上自衛隊練馬駐屯地の第1師団が、本年(2001)年度に首都圏防衛警備機能を強化し
た「政経中枢型師団」に改編されること、などなど。それらの事実を、周辺事態法
など新ガイドライン関連3法や船舶検査法の制定、有事法制確立の策動など、進行す
る《戦争ができる国家体制づくり》の文脈に置いてみると、「ビッグレスキュー」
で自衛隊がやったことの意味は、さらに深く追究される必要があることがわかる。
それが、有事を想定して、首都を「戒厳令」下に置く軍事演習でなかったとは、誰
にも言い切れないだろう。
 「ビッグレスキュー」が強行されてから3カ月後(2000年12月)、自衛隊と警察と
の間で結ばれた「治安出動の際における治安の維持に関する協定」が46年ぶりに
「改正」され、ゲリラなどへの対処においては、最初から自衛隊が前面に出て対処
することもあり得ることになった。「統合防災実動演習」における経験も大いに活
かされたのではないだろうか。
 
 本冊子は、多くの問題提起を含んでいるだろう。全国各地で反戦・反軍運動を続
けている仲間たちにとって、有用な資料となることを切望している。

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【本冊子の内容=目次】
 
第1部 実行委員会の活動報告・略史
        2000年9月1日〜9月3日連続行動までの準備の日々
        2000年9月1日〜9月3日連続行動の報告
        ●9・1関東大震災から77年
         ―石原・都知事による自衛隊「防災演習」を問う―映画と講演の夕べ
            *「9・1映画と講演の夕べ」基調
        ●9月2日 都庁にデモ、夜の全国交流会
        ●9月3日 午前の行動と午後の銀座デモ
        ●特別報告 練馬のたたかい
          〈元気印インタビュー〉自衛隊が仰天・動転した練馬での抗議行動
 
第2部 講演と討論の記録
        【講演】〈「住まい」は、生存の基盤〉 国、自治体がなすべきこと
               中島絢子 (「公的援助法」実現ネットワーク・事務局長
                      /阪神・淡路大震災の被災者)
        【講演】石原「三国人」発言の意味するもの
                   内海愛子 (恵泉女学園大学教員) 
 
        【9・2全国交流会・全記録】
             自衛隊の災害派遣に反対する根拠、私たちにとっての防災

        【9・29監視行動報告・討論会】
            「ビッグレスキュー東京2000」監視行動から見えてきたもの
        ◆ 写真特集 
            ・駒沢会場・地下鉄大江戸線による部隊進出訓練・都庁会場
      ・晴海会場・「災害派遣」で自衛隊の存在理由を都民にアピール
      ・石原都知事に抗議する市民
 
      〔関連データ〕
          ◎「ビッグレスキュー東京2000」の全体像
              訓練会場全体図、各会場全体図(エリア別配置図)
             会場別訓練内容、実施細目(訓練全般に関すること)
              実施機関参加規模
             航空統制関連=訓練統制空域のイメージ断面図、訓練飛行経路
       被害状況調査及び人員・物資輸送訓練における航空機の飛行経路
          ◎東京都総合防災訓練のこれまでの実施状況
          ◎「ビッグレスキュー東京2000」の調整経過
        (全体進行関係、防災機関会議/内閣安全保障・危機管理室関係)
        *出典 東京都の諸資料
 
第3部 資  料  編       
   1 阪神・淡路大震災への自衛隊のかかわり
   2 阪神・淡路大震災後の政府、防衛庁・自衛隊の姿勢
   3  「ビッグレスキュー東京2000」と、その総括
   4  「ビッグレスキュー東京2000」後の動き
   5 東京都知事らの自衛隊に対する災害派遣要請手続きと
     南関東(首都圏)での大震災発生時における自衛隊の出動計画
         =「南関東地域震災災害派遣計画」
 
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【本冊子の入手法】
 頒価は1冊1200円ですが、5部以上ご注文いただくときは、1冊1000円
にします。ただし、いずれの場合でも、送料は必ずご負担下さいますよう、お願い
します。以下にその要領(頒価+送料〔冊子小包料金〕、単位=円)を記します。
 
    1冊    1200+310=1510
    2冊    2400+340=2740
    3冊    3600+450=4050
    4冊    4800+450=5250
    5冊    5000+520=5520
    6冊        6000+590=6590
    7冊    7000+590=7590
    8冊    8000+660=8660

      *9冊以上は、宅急便や一般小包(ゆうパック)でお届けします。
        その送料は、ご負担願います。
 
【送金の方法】
    以下の振替口座をご利用下さい。
     口座名   防災を考える会
      口座番号    00180・1・537560
 
 ご注文の際は、冊数、送料のほか、お名前、ご住所(ご連絡先)、電話番号を、
鮮明にお記し下さい。よろしくお願いします。

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   本書推薦のことば
                      軍事評論家 西沢 優

 防衛庁・自衛隊は昨年9月3日、東京都と共同で「平成12年度自衛隊統合防災
演習」を実施した。「ビッグレスキュー東京2000」は、東京都側がこれにつけ
た、しゃれたネーミングである。
 ここでは、都主催の訓練に参加する形をとりながら、7000人を超える陸海空
三自衛隊の各級指揮機関と部隊が、統合幕僚会議議長の指揮・命令下、首都・東京
で初めて、「防災出動」の名のもとに、大規模な機動演習を行なった。

 演習実施日の一年ほど前から、自衛隊の本格的な参加に期待をふくらませた石原
慎太郎都知事は、「北朝鮮(ママ)とか中国に対するある意味での威圧にもなる。
せめて実戦に近い演習をしたい。相手は災害でも、ここでやるのは市街戦ですよ」
(月刊誌『Voice』、1999年8月号)、「戦車とか装甲車で街を封鎖する
訓練もしてほしい」(月刊誌『正論』、2000年3月号)などと、書いたり、
しゃべったりした。
 また2000年4月9日、石原都知事は練馬駐屯地で行なわれた陸上自衛隊第1
師団の創隊記念式典に参加して、「大きな災害が起きたときに、三国人、外国人の
騒擾(じょう)事件に対処するために、治安の維持を大きな目的として出動願いた
い」という悪名高い挨拶をした。

 このような石原都知事のあいつぐ刺激的発言、そして他方、日米新ガイドライン
と周辺事態法成立による日米共同作戦のアジア・太平洋への拡大、日本の戦争国家
体制づくりという、重大な軍事的、政治的状況の急進展があるのであるから、
「9・3防災演習」の本質・性格は何か、どうとらえるべきかが、多くの市民とマ
スコミ報道の重要関心事になったのは当然である。
 そして、だれでも阪神・淡路大震災の痛ましさと、救援の人手の大事さを知って
いるから、「もしもの場合」の首都・東京への自衛隊大兵力集中計画への賛否の判
断で迷った人も多かったに違いない。

 こうした状況を反映して、護憲・反戦・平和陣営の中で「9・3防災演習」への
対応では、大きく見解が三つに分かれ、足並みが乱れた。
 第1に、自衛隊災害出動賛成論が出てきた。ある軍事ジャーナリストは、軍事専
門月刊誌において、次のような論法を展開した。
 「自衛隊の任務の中で、災害派遣といった“副業”の占める比重が徐々に高まっ
ている」
 「“副業”がだんだん増えて」いくと、「名前は変わらなくとも、実態は本来の
軍隊とは異なったものに変化していくはずだ。換言するならば、これは“質的軍
縮”と言えるのかもしれない。」
 「長期的に見れば、現状は自衛隊の変質過程のはじまりなのかも知れない。」
 つまり自衛隊の大規模震災・災害出動は、自衛隊の「軍縮」、自衛隊の国民的・
平和的な「変質」を促進するという理屈をつけた賛成論である。
 それと対局をなす見解と運動は、石原都知事と防衛庁・自衛隊の「9・3防災演
習」は、「防災」に名を借りた治安出動訓練、あるいは防災出動と治安出動を表裏
一体としつつ、今回は前者の初の実動演習を通じて、後者の対応準備も進めると、
事態をとらえ、果敢に反対運動を行なった。
 三つ目は、前二者のいわば中間に位置するもので、次のような見解に立った。
 「“自衛隊頼み”は震災対策に逆行」とのタイトルの下、「大規模災害にさい
し、自衛隊の出動が必要となることは当然あります。しかし、自衛隊はもともと消
防や災害救助の専門集団ではなく、こういう組織に震災対策の主役を求めるのはす
じ違いです。」「予断と偏見にたった治安維持的発想で、自衛隊出動を督促する石
原知事の態度は、防災とは無縁・・・・」。
     *     *
 さて、本書は、2番目にあげた見解に属する人々によって編まれたものである。
本書にかかわった多くは、「9・3防災演習」を迎え撃つために、何カ月も前から
準備を重ね、その間、石原都知事の暴言・妄言批判や、「災害救難」に名を借りた
自衛隊治安出動の危険性などを市民に宣伝する活動を行ない、「9・3」の当日、
東京・銀座の街路での「演習反対」のデモ行進に参加された人々のようである。
 ところで私も、9月3日、日曜日の朝、演習の実際を監視するために銀座にい
た。そして午(ひる)や夕刻のNHKのテレビニュースや翌月曜日の各紙朝刊で、
演習反対のデモ行進をした一群の人々がいたことを知った。これらのニュースで
は、デモ参加者が、「9・3防災演習」イコール治安出動訓練ととらえて反対して
いるように伝えられていた。こうしたマスコミ報道を聴いたり読んだりした筆者
(西沢)は、自衛隊の防衛出動(日米共同作戦)にしろ、治安出動にしろ、厳重に
秘密にされている、それらの作戦計画について知る由もない普通の市民の立場にあ
る熱心な平和・反戦活動家が、防衛庁・自衛隊と石原都知事が、「9・3演習」を
震災出動準備のためとしながらも、その裏面で、新ガイドラインの定めた「周辺事
態」時のゲリラ・コマンドウ制圧の市街地戦闘演習、あるいは大震災時の市民騒乱
抑止作戦とを一体化させ、計画されているという複雑な内容を全面的にとらえ切れ
ずに、若干の一面化をしたとしても、無理からぬことと思われた。

 だが、これは私の思い違いだった。というより、マスコミ報道に偏りがあったの
だ。本書を読んで、それがよくわかった。本書の作成に加わった人たちは、首都震
災出動イコール治安出動という単純な視点には、決して立っていないのである。
 それは、「『防災』に名を借りた自衛隊演習を許さないぞ!」をはじめ、全部で
20本の「私たちのシュプレヒコール」(9・2都庁デモ、9・3銀座デモ、本書
13ページ)ではっきりしているのである。
 本書の内容・構成は、このホームページの別記事で紹介されているであろうか
ら、本書を読んで、私が特に感じたことを述べてみたい。
 まず、本書の作成にかかわった人たちが、幅と奥行きのある視野で問題と状況を
皆で討議しながら、それを正しく、鋭くとらえようとしていることに敬意を表した
い。本書のはじめの部分に、こう書かれている。
 「この間の議論(3月から9月まで――引用者)」の中で私たちは、自衛隊も参
加する行政主導の防災訓練を批判する一方で、では民衆にとっての『防災』はどう
あるべきか、という点についても考えてきました。最近でも有珠山や伊豆諸島で噴
火や地震が頻発しており、東海大地震の発生が完全には否定できない状況で、では
実際に大規模災害が起こった時にはどうするのだ、誰が助けてくれるのだ、という
声が、民衆の中に確かにあります。私たちの中でも議論が十分に煮詰められてきた
とは言えませんが、少なくとも私たちは、『防災』そのものに反対ではありませ
ん。そうではなくて、次第に自衛隊主導・主体に変わってきている現在の防災訓練
に反対なのです。今日(こんにち)『防災』の名の下に、警察や自衛隊の市民生活
に対する管理・監視が強まってきており、日米新ガイドラインに見られる、戦争へ
の自治体や住民の動員につながる体制がつくられてきていることに注目しなければ
ならないと思います。」(本書7ページ)
 こうした視点の反対姿勢は、日本の平和・反戦陣営に属する多くの人々から共感
をもって迎えられるに違いない。

 本書の際立った特徴として、特に私が感じて推奨したいのは、「9・3防災演
習」の前日、9月2日に全国から馳せ参じた活動家たちの座談会、および演習後の
「9・29監視行動報告・討論会」の発言記録である。
 普通なら、座談会あるいは討論会の参加者の発言は、「要旨」に簡略化されるの
だが、本書では全く違う。全員の発言が、しかもそれぞれの人の言い回しまで、克
明に一語一語、テープ起こしされ、収録されている。
 そこには、普通の市民が、自衛隊の防災演習参加という問題を、どうとらえるべ
きかで判断に迷ったり、考えあぐねたりしながら、防災問題に立ち向かっている様
子が随所に出てくる。
 たとえば、ある人は、自らを「支離滅裂」などと表現しながら発言している。
「自衛隊には、レスキュー隊のような専門知識はないけれど、強力な機動力があ
る、いないよりは、いた方がいいかなと思うときもある。こちらの発想が悪いか
ら、防災演習を許しちゃっているところがあります。このままでは変な方向に行く
なと思っているんですが、まあ支離滅裂なんです。」(55ページ下段)
 他に「自衛隊が役に立たないというのは正しくない。一定の役に立つ。しかし、
阪神・淡路大震災のとき、自衛隊がやった瓦礫の処理などは民間でできる」とい
う、ある市民運動家の発言も紹介され、議論を誘発している。
 また「『防災』に名を借りて治安訓練をしているという批判では、十分ではない
のではないか」「テロ・ゲリラ対策→戦時防災→民間防衛ということを考える必要
がある」などとの鋭い問題指摘もある(池田五律氏の発言、70ページ)。

  要するに、本書掲載の二つの討論会は、活動家らの自由な意見交換だから、多面
的かつ多彩である。そして、井上澄夫氏や池田五律氏の立派な司会に方向づけされ
ながら(司会者の意図通りには、必ずしも進まない面もあったようだ
が・・・・)。全ての参加者が「9・3防災演習」という現実の事態の重大さを正
確にとらえようと、懸命に努力している様子が、手にとるように浮き出ているので
ある。
 そこのところが、私のような軍事問題研究者にとっては、問題究明の材料の宝庫
に思われ、実に興味深いのである。
 もちろん、このほかに、本書収録のさまざまな「9・3防災演習」関連の重要資
料、さらには「9・3」当日の演習監視記録などなど、広く人々に推奨したいこと
が多々あるが、それにふれる紙幅がもうない。
 本書は、防災・震災問題と自衛隊出動とのかかわりを批判的に考究し、今後この
種の問題への対応を一層しっかりしたものに構築していく上で、大いに役立つであ
ろう。
                        (2001・3・28記)



 
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