秋田県議会2月定例会で「日の丸」「県旗」が設置されました。昨年12
月、自民党が提案し県民クラブが同意したまま、その後の動きは見えず、今年
の議会運営委員会で賛成多数で設置することを決めたものです。これは一部マ
スコミが結果だけですが、報道したから分かったことで、それもなかったら、
議員ですら、議場に入ったら「日の丸」が設置されていたという状況です。
設置の唯一の理由が「他県の動向」らしいですが、東北の県議会の中ではさ
きがけとなった動きです。福島県議会でも設置に向けた動きが再活発してきた
ようです。
県民も注視はしていたようですが、これに対する県内の反応はあまりありま
せんでした。知事選を控えて何らかの「算段」もあったかもしれませんが、議
員の中でも意見が分かれていたことから、いくらなんでも全員協議会で「紳士
協定」くらいは結ぶだろうというみかたもあったようです。
一昨年から、よもやよもやの不条理が、すかすかと国会や地方議会を通って
きた流れを見れば、今回の市民の判断のほうが「非常識」だったということで
す。
私はこれに関して、会派としての理由を公開質問していましたが、おおかた
の議員は「賢明」で、「しゃべればしゃべたでしゃべらへ(え)るし、しゃべ
ねばしゃべねてしゃべらへるし、しゃべてもしゃべねてもしゃべらへるごった
ら、しゃべねでおこう」(意味不明の方はお知り合いの東北人に聞いてみてく
ださい)ということか、回答はなく「一昨年八月に国旗国歌法が施行されたこ
とを受けた対応」以外の理由は分かりませんでした。
秋田県庁内敷地には、いつの間にか「日の丸」の旗が3本にも増えていま
す。経費削減で職員には事務用品の節約を呼びかけていますが、県や議会に
とって「日の丸」は、補助金来い来いのおまじないなのでしょうか。地方分権
だ、道州制だのといってる割には、いぜんとして明治時代の政府出先機関とい
う概念から抜け出せていないのかもしれません。
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秋田県議会議会運営委員会(能登裕一委員長)は2月9日、議場に国旗と県
旗を掲げることを決めた。2月定例会が開会する16日から実施することと
し、方法は議長に一任。国旗を掲げるのは、一昨年8月に国旗国歌法が施行さ
れたことを受けた対応で、能登委員長が昨年12月の議運で各会派に意見の取
りまとめを要請していた。
国旗掲揚については自民党から提案があり、県民クラブが賛成した。社民の
佐々木長秀議員が「日の丸については、国民の中に、かつての侵略戦争の象徴
と見る人もおり、議場への設置は関係者の理解を得てから行うべきだ。県民の
代表である各会派の合意ができていない段階でなぜ設置を急ぐのか」と反対。
市民派クラブの栗林次美議員は、全員合意での実施を求め、オブザーバーで出
席していた公明党の工藤任国議員は、県旗のみの掲揚を提案。能登裕一委員長
(自民)が挙手採択に持ち込み、社民党以外の全委員が賛成して、賛成多数で
掲げることを決めた。
(秋田さきがけ・朝日・産経2月10日)
十六日開会した二月定例県議会から本会議場に、議長席を挟む形で国旗と県
旗が設置された。
これに対し、社民党と市民派クラブの県議六人が連名で「国旗(日の丸)設
置に反対する声明」を発表した。
「国旗に対する県民の思いはさまざまであり、十分な理解を得ながらすすめる
べき」と強調。反対理由は、▽他県の動向を唯一の理由とする主体性のない説
明には納得できない▽県議会への設置を契機として、市町村議会や公共・教育
施設への設置が強要されていくことを危惧する−など。
一昨年八月の国旗国歌法が施行され、昨年十月二日現在で三十六都道府県が
議場に国旗を設置している(県議会事務局調べ)。
六議員は、国旗国歌を強制しないよう求める意見書を議会に提出する予定。
「法制化されたとはいえ、肝心の国会でもまだ国旗を設置していない。県旗は
賛成だが、国旗設置は地方分権という時代の流れに逆行する」「多数決による
強行設置は民主主義の原則に反する」
これらに対し県議会運営委員の大里祐一県議(自民)は「社民党が『二月議
会まで待ってほしい』というので採決を延ばして配慮してきた。『数の力で強
行』という言い方はどうか。個人の考えは別としても、設置のどこが悪いの
か」と反論。
(さきがけ・各紙地方版01.2.17)
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ささやかな取り組みではありますが、下記を送付。同趣旨の一部を投書。地元
紙が開会日夕刊に「毒気」を抜いて掲載。
秋田県議会議長 安杖正義 様
県議会議場に「日の丸」を設置する案について
2月10日の新聞報道によると、9日の県議会議会運営委員会で、県議会議
場に二月会期から、国旗と県旗を設置することを賛成多数で決めたとのことで
した。
報道ではその理由を、「一昨年八月に国旗国歌法が施行されたことを受けた
対応」としていますが、国旗国歌法には、尊重義務はありませんし、尊重する
場合でも、そのしかたは個人の自由です。法を根拠に議場に国旗を設置すると
いうのは個人的解釈でしかありません。
私は、これに関し、議場に「日の丸」「県旗」を設置したいとする会派と
しての理由が不明確なので、教えてほしい旨、2000年12月16日付けで
公開質問状を各会派に差し上げました。しかしほとんどの会派からは今もって
何らお返事は頂いておりません。
どのような理由・根拠で国旗の設置を求めているのか県民に何ら説明もない
まま、賛成多数という数の暴挙で設置するというのは、まさに国旗国歌法の悪
弊の例を国民にわざわざ示すようなものです。
県民の負託を受けて議員となりながら、県民の疑問には、なにも答えないま
ま、県民の意思とするのはたいへん失礼で傲慢な話です。これは、選挙の際、
握手を求め、頭を下げて「お願い」したのは、ただ議員になりたいがためで、
県民の意思を代表するという責務は全く念頭になかったということを示すもの
です。
もし、国旗になにかしら求めたいのであれば、公費を使わずとも、個人の経
費で自宅なり、事務所なりに設置すればいいと思います。ここに、公費をずさ
んに扱う精神風土がなにも改まっていないことも伺われます。
昨年10月に発表された米国の「アーミーテージ・レポート:米国と日本−
成熟したパートナーシップに向けての前進」の中では、国旗国歌法についても
触れ「日本の大衆は国旗と国歌に公式の位置づけをあたえ、尖閣列島のような
領土要求に関心を集中して、国家の主権、および保全を尊重していることを改
めて証明した」と日本の政治家や、一般大衆の最近の変化について指摘してい
ます。同様な懸念はアジア諸国にもあり、国旗国歌法成立時に、国会での判断
を注目していたことが、新聞等で紹介されていました。「日の丸」に刻まれた
侵略の歴史を世界は忘れていないということです。
秋田県では、中国をはじめとするアジア諸国と友好関係を培っている市民も
多く、また行政でも経済交流を推進しています。そのような中で、市民の意思
を代表する場である県議会議場に「日の丸」を設置することは、ややもする
と、近隣諸国に間違ったメッセージを発信することにもなりかねません。
「日の丸」は、良心の自由にも関わるきわめてデリケートな問題です。設置
については、議員の中でも意見が分かれています。今早急に結論を出さなけれ
ばならないいかなる事情もないはずです。議会を預かる議長として、拙速な判
断をして禍根を残すことのないよう「日の丸」の県議会議場の設置について、
慎重な対応を求めます。
2001年2月15日
加賀谷いそみ
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「日の丸」の設置を意に介さないとする根拠に、学校や庁舎ですでに使ってい
るものを今更取り立てていうほどのこともない、という声が出はじめていま
す。流れにさおさす者にとって、公共の福祉施設も迷惑施設になりつつあるよ
うですが、さおをささなければ見えない潮の流れのほうがもっと恐怖です。
日常的「日の丸」「君が代」化と、この国のちまたにも目立ってきた、差別
の相対化、正当化が無関係でないことは、戦前の「非国民」づくりの学校への
「日の丸」強制から四囲への広まりという仕組みが、その後の侵略への暴走を
制御不能にした歴史が物語っています。その潮流が、ますます大きな渦となる
ことを懸念する経験者も多くいます。
海外研修生等に対する「強制労働」問題が起きて久しいですが、
2月3日、内閣府が「外国人労働者問題に関する世論調査」で、観光客とし
て入国した外国人不法就労者を「良くないこと」と思う人が四九・二%と、半
数近くに達し、不法就労者への対応でも治安の悪化や日本人の失業者増を理由
に、「すべて強制送還する」との回答が半数近くに上った、その一方で、日本
人が嫌がるいわゆる「きつい、汚い、危険」の「3K」職場は「外国人に任せ
ればいい」との意識もうかがえた、と発表。(東京新聞2001年2月4日)
法務省入国管理局によると、外国人登録者数は98年に、百五十一万二千百
人で過去最高を更新。九十日以上、日本に滞在する外国人の登録数は総人口の
一・二%。
北海道では、ロシア人歓迎の飲食店がオープンするなど新しい兆しも見えて
いるものの、「日本人専用」のロシア語看板を飲食店、温泉施設の多くが掲
げ、人権団体から批判がでています。
静岡県では、ブラジル人の女性記者が、浜松市内の宝石店で外国人であるこ
とを理由に、店外に追い出されたのは「私人による人種差別だ」として、人種
差別撤廃条約違反などを理由に百五十万円の損害賠償を求めた裁判で、静岡地
裁浜松支部で99年10月13日、人種差別撤廃条約を「憲法優位の下に、国
内法としての効力を有する」として、請求通りの百五十万円の支払いを宝石店
経営者らに命じました。
これらは、新聞記事になったものだけですが、周りにも似た例は枚挙にいと
まがありません。
また、資本主導のグローバライゼーションからくる、排外主義の台頭は東西
変わらないようです。CNNや毎日新聞では、地震で1万7000人を超える
死者が出たインドでは、カースト上位の特権階級が援助物資を優先的に入手す
るなど、必需品が被災者全員に行き渡りにくい状況が生まれていると報じてい
ましたが、持つ者と持たざる者の2極化による差別も欧米そして日本の市民に
とって、他国の制度的出来事だけに起因することではなくなりつつあります。
ドイツでは、極右政党問題が憲法裁判所へ持ち込まれ、外国人の比率19・
2%のスイスでは反対63・7%で否決はされたましたが昨年、国内在住外国
人を総人口の18%以内に制限する憲法改正案が提出され国民投票が行われて
います。
今年2月、米連邦捜査局(FBI)では、1999年の米国内で発生した憎
悪犯罪で、「人種差別」による犯罪がトップを占めたと発表。犯罪件数が増加
傾向にあるのは、99年に入ってから、FBIに憎悪犯罪の報告をする各州の
警察が増加したことが理由にあげられている。(CNN2001.02.14)