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〈石原都知事批判〉
ダボスでの暴言を批判する
発信者=井上澄夫(東京都は戦争協力をするな!平和をつくる市民連絡会)
発信時=2001年1月30日
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1月25日から、スイスのダボスで始まった世界経済フォーラムの年次総会
(ダボス会議)には、小林陽太郎・経済同友会代表幹事など財界人のほか、森喜
朗首相、鳩山由紀夫民主党代表、石原慎太郎東京都知事などが参加した。各紙の
報道から、ダボス会議での石原の発言を、いくつか引用する。
1、東京都内の刑務所の約3000人の受刑者のうち約600人は外国人で、ほ
とんどが中国人だ。中国マフィアが不法入国者を日本に送り込む商売をしてい
る。仕事ができない不法入国者が生活費を稼ごうと犯罪に走る。
2、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国のこと、引用者)から日本に工作員が入っ
て150人の日本人が誘拐され、取り戻すすべがない。日本が独自の責任で、自
分の国民を守るために艦船を配備すべきだ。場合によってはミサイルを発射し
て、日本の国民を誘拐している工作船を沈める必要がある。
3、東京はかつて共産主義者の知事(故美濃部亮吉氏のこと、引用者)のおかげ
で開発が遅れた。共産主義者の知事が道路の建設をしなかった。東京は首都機能
が集中してこそ良さがある。国の首都機能の分散化政策を私がつぶした。東京の
首都機能を高めるため、昼間に東京で仕事をして隣県の自宅に帰る他県在住者か
らも徴税したい。
4、グローバルスタンダードはアメリカンスタンダードではあり得ない。同じデ
モクラシーでも人権とか家族と個人の関係とか、西洋とアジアとはかなり違う。
それを西洋的なスタンダードでくくって批判するのは違う。
1は、昨年の4月9日に陸上自衛隊の第一師団に向かって発せられた「三国
人・治安出動要請」発言を、石原がなんら反省していないことを明瞭に示してい
る。2は、その差別・排外主義への無反省の上に、石原の好戦感情がいよいよ
募っていることを実証している。3は、石原の開発至上主義のあらわれだが、同
時に都の福祉予算削減政策が、首都機能強化のためであることを、理解させてく
れる。彼には、東京都の内外で暮らす生活者の視点は皆無である。首都機能移転
反対論でいえば、かつて石原が、政治、行政、経済のそれぞれの中心である永田
町、霞が関、丸の内が狭い範囲に集中していることを「東京の長所」と強調した
際、「ましてその周りに赤坂とか新橋とか高級娼婦がいるところがある」とのべ
たことが、ここで想起されていい。
4は、石原の主張によく見られる論理性の欠如の典型である。米国の標準と世
界の標準が同じでないことに、誰にも異論はなかろう。しかし、次の点は石原に
説明してもらいたい。〈西洋とアジアで、人権がどう違うのか〉。石原は「アジ
ア」をよく振りかざすが、その中身は説明されない。人権という概念の出自が
ヨーロッパであることは、まぎれもない事実だが、それはすでに世界標準であ
り、西洋のみの標準ではない。米軍を筆頭にNATO(北大西洋条約機構)軍
が、「人権」を掲げて「人道的(軍事)介入」を強行することは許されることで
はない。しかし、アジアで人権が、「アジア」風に抑圧されていいわけはない。
ここに露呈しているのは、実は、石原自身の人権意識の欠如なのである。