前田 朗@歴史の事実を視つめる会、です。
1月13日
1)「戦争犯罪の成立要素」の続きです。今回は第八条第二項のbです。
2)戦時性暴力に関する規定は後半にあります。
3)子ども兵士の禁止は、ここでは15歳以下とされています。なお、2000
年4月に人権委員会で採択され、後に成立した「子どもの権利条約選択議定書・
子ども兵士の禁止」では、18歳未満となっています。
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第八条第二項b
第八条第二項b(i) 戦争犯罪としての民間人攻撃
要素
1 実行者が、攻撃を指令した。
2 その攻撃目標が、民間住民、または敵対行為に直接参加していない民間の個
人であった。
3 実行者が、民間住民、または敵対行為に直接参加していない民間の個人を攻
撃目標にしようと意図した。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(ii) 戦争犯罪として民用物攻撃
要素
1 実行者が、攻撃を指令した。
2 その攻撃目標が、民用物、すなわち軍用物でない物であった。
3 実行者が、その民用物を攻撃目標にしようと意図した。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(iii) 戦争犯罪としての人道的援助または平和維持活動に関与
する人員または物への攻撃
要素
1 実行者が、攻撃を指令した。
2 その攻撃目標が、人道的援助または国連憲章に従った平和維持活動に関与す
る人員、施設、物資、部隊または車輌であった。
3 実行者が、その人員、施設、物資、部隊または車輌を攻撃目標にしようと意
図した。
4 その人員、施設、物資、部隊または車輌が、武力紛争に関する国際法におい
て民間人または民用物に与えられる保護を与えられていた。
5 実行者が、その保護を決定づける事実条件を知っていた。
6 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(iv) 戦争犯罪としての過剰で付随的な死、負傷、または損害
要素
1 実行者が、攻撃を始めた。
2 その攻撃が、民間人の付随的な死または負傷、民用物の損害を引き起こし、
または自然環境に広範、長期かつ重大な損害を引き起こし、かつ、その死、負傷
または損害が、具体的かつ直接的な予期された軍事的優位全体との関連で、明ら
かに過剰な程度のものであった(36)。
3 実行者が、その攻撃が、民間人の付随的な死または負傷、民用物の損害、ま
たは自然環境の後半、長期かつ重大な損害を引き起こすことを知っていた、およ
びその死、負傷または損害が、具体的かつ直接的な予期された軍事的優位全体と
の関連で、明らかに過剰な程度のものとなることを知っていた(37)。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(36)「具体的かつ直接的な軍事的優位全体」という表現は、その当時、実行
者が予見することのできる軍事的優位を指す。その優位は、攻撃目標と時間的ま
たは地理的に関連していても、関連していなくてもよい、この犯罪が合法的な付
随的負傷や二次的損害の可能性を許容している事実は、武力紛争に適用される法
の違反をいずれにせよ正当化するわけではない。この事実は、戦争の正当化また
は に関するその他の規則を扱っていない。武力紛争の文脈で行われる軍
事活動の合法性を判断する均衡条件を反映している。
(37)総論の4項で設定された一般規則とは反対に、この認識要素は、実行者
がそこに記述された価値判断を行うことを要求している。その価値判断の評価
は、その当時、実行者が利用できた情報に基いていなければならない。
第八条第二項b(v) 戦争犯罪としての無防備な場所攻撃(38)
要素
1 実行者が、一つ以上の都市、村落、居住地または建物を攻撃した。
2 その都市、村落、居住地または建物が、無抵抗の占領に無防備であった。
3 その都市、村落、居住地または建物が軍事目標ではなかった。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(38)一九四九年のジュネーブ諸条約で特に保護された人のその場所での存
在、または法と秩序を維持するだけの目的で保持されている警備隊の存在は、そ
れ自体では、軍事目標の場所であることを示さない。
第八条第二項b(vi) 戦争犯罪としての降伏した戦闘員の殺害または傷害
要素
1 実行者が、一人以上の人を殺害、または傷害した。
2 その一人以上の人が、降伏した戦闘員であった。
3 実行者が、この地位を決定する事実条件を知っていた。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(vii)-1 戦争犯罪としての休戦旗の不正使用
要素
1 実行者が、休戦旗を用いた。
2 実行者が、自己の側に交渉の意図がないのに交渉の意図があるように装うた
めに、それを用いた。
3 実行者が、その使用が禁止されていることを知っていた、または知るべきで
あった(39)。
4 実行行為が、死または重傷をもたらした。
5 実行者が、実行行為が死または重傷をもたらすだろうと知っていた。
6 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(39)この心理要素は、ICC規程三〇条と三二条の間の相互作用を認める。
「禁止されている」という語句は、違法であることを意味する。
第八条第二項b(vii)-2 戦争犯罪としての敵国の旗、軍章、制服の不正使用
要素
1 実行者が、敵国の旗、軍章、制服を用いた。
2 実行者が、攻撃の際に、武力紛争に関する国際法で禁止された方法でそれを
用いた。
3 実行者が、その使用が禁止されていることを知っていた、または知るべきで
あった(40)。
4 実行行為が、死または重傷をもたらした。
5 実行者が、実行行為が死または重傷をもたらすだろうと知っていた。
6 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(vii)-3 戦争犯罪としての国連の旗、軍章、制服の不正使用
要素
1 実行者が、国連の旗、軍章、制服を用いた。
2 実行者が、武力紛争に関する国際法で禁止された方法でそれを用いた。
3 実行者が、その使用が禁止されていることを知っていた(41)。
4 実行行為が、死または重傷をもたらした。
5 実行者が、実行行為が死または重傷をもたらすだろうと知っていた。
6 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(41)この心理要素は、ICC規程三〇条と三二条の間の相互作用を認める。
ICC規程第八条第二項b(vii)の他の犯罪で要求されている「知るべきであっ
た」基準は、その禁止のさまざまの性質や調整的性質のゆえに、ここでは適用さ
れない。
第八条第二項b(vii)-4 戦争犯罪としてのジュネーブ諸条約の特定の徽章の不
正使用
要素
1 実行者が、ジュネーブ諸条約の特定の徽章を用いた。
2 実行者が、武力紛争に関する国際法で禁止された方法での戦闘目的でそれを
用いた(42)。
3 実行者が、その使用が禁止されていることを知っていた、または知るべきで
あった(43)。
4 実行行為が、死または重傷をもたらした。
5 実行者が、実行行為が死または重傷をもたらすだろうと知っていた。
6 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(42)この条件での「戦闘目的」とは、敵に直接関係した目的を意味し、医
療、宗教その他の活動を含まない。
(43)この心理要素は、ICC規程三〇条と三二条の間の相互作用を認める。
「禁止されている」という語句は違法であること意味する。
第八条第二項b(viii) 占領軍によってその占領する地域に自国の民間人の一
部を直接もしくは間接的に移転させ、または被占領地域の住民の全部もしくは一
部をその被占領地域の内もしくは外に強制移送もしくは移転させること
要素
1 実行者が、
(a)その占領する地域に自国の民間人の一部を直接もしくは間接的に移転さ
せた(44)、
(b)被占領地域の住民の全部もしくは一部をその被占領地域の内もしくは外
に強制移送もしくは移転させた。
2 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
3 実行者が、武力紛争の存在を決定する事実条件を知っていた。
(44)「移転する」という語句は、国際人道法の関連諸規定に従って解釈され
る必要がある。
第八条第二項b(ix) 戦争犯罪としての保護された物への攻撃(45)
要素
1 実行者が、攻撃を指令した。
2 その攻撃目標が、宗教、教育、芸術、科学もしくは慈善の目的に使われる建
物、歴史的遺跡、病院または病者および傷者を集合させている場所で、軍事目標
でないものであった。
3 実行者が、その宗教、教育、芸術、科学もしくは慈善の目的に使われる建
物、歴史的遺跡、病院または病者および傷者を集合させている場所で、軍事目標
でないものを、攻撃目標とすることを意図した。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(45)一九四九年のジュネーブ諸条約で特に保護された人のその場所での存
在、または法と秩序を維持する目的で保持されている警備隊の存在は、それ自体
では、軍事目標の場所であることを示さない。
第八条第二項b(x)-1 戦争犯罪としての切断(傷害)
要素
1 実行者が、一人以上の人に、特に永久的に損傷を与え、または身体器官を永
久的に傷害しもしくは取り去ることによって、切断した。
2 実行行為が、一人以上の人の死を引き起こした、または重大な身体的もしく
は精神的健康への危険を生じさせた。
3 実行行為が、その一人以上の関係人の医療、歯科治療もしくは療養によって
は正当化されず、または、その人の利益のために行われたのではない(46)。
4 その一人以上の人が、敵側の権力の掌中にあった。
5 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
6 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(46)同意があったことは、この犯罪の抗弁にはならない。この犯罪が禁止し
ている医療手続きは、関係人の健康状態によって必要とされない手続き、かつ、
その手続きを行う側と同じ国民で、かつ自由を剥奪されていない人に、同様の医
療条件のもとで適用される一般に承認されている医療基準に合致しない手続きで
ある。この註は第八条第二項b(x)-2の同じ要素にも適用される。
第八条第二項b(x)-2 戦争犯罪としての医学的もしくは科学的実験
要素
1 実行者が、一人以上の人に医学的もしくは科学的実験を行った。
2 その実験が、一人以上の人の死を引き起こした、または、重大な身体的もし
くは精神的な健康または完全性への危険を生じさせた。
3 実行行為が、関係人の医療、歯科治療もしくは療養によっては正当化され
ず、または、その人の利益のために行われたものではない。
4 その一人以上の人が、敵側の権力の掌中にあった。
5 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
6 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xi) 戦争犯罪としての偽計による殺害または傷害
要素
1 実行者が、彼らが武力紛争において適用される国際法の諸規定のもとで保護
を与えられ、または与えられると思わせた一人以上の人の信用もしくは信頼を招
いた。
2 実行者が、その信用または信頼を裏切る意図であった。
3 実行者が、その人を殺害または傷害した。
4 実行者が、その人の殺害または傷害に、その信用または信頼を利用した。
5 その一人以上の人が、敵側の権力の掌中にあった。
6 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xii) 戦争犯罪としての宿泊所の拒否(もっと適切な訳はない
か)
要素
1 実行者が、生存者がいなくなるであろうと宣言し、または命令した。
2 その宣言または命令が、生存者がいなくなるであろうことを基準に、敵側を
威嚇し、または敵対行為を行うために、下された。
3 実行者が、その宣言または命令が出された従属軍に実効的な指令または監督
をする地位にあった。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xiii) 戦争犯罪としての敵側の財産の破壊または接収
要素
1 実行者が、一定の財産を破壊または接収した。
2 その財産が、敵側の財産であった。
3 その財産が、武力紛争に関する国際法で破壊または接収から保護されてい
た。
4 実行者が、その財産の地位を決定づける事実条件を知っていた。
5 破壊または接収が、軍事的必要性から正当化されなかった。
6 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
7 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xiv) 戦争犯罪としての敵側国民の権利または訴訟活動の剥奪
要素
1 実行者が、一定の権利または訴訟活動について、裁判所においてその失効、
停止または許容性の欠如を宣告した。
2 その失効、停止または許容性の欠如が、敵側国民に向けられた。
3 実行者が、失効、停止または許容性の欠如が敵側国民に向けられることを意
図した。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xv) 戦争犯罪としての作戦行動への強制参加
要素
1 実行者が、一人以上の人に、自国または自国軍に対する作戦行動に参加する
ことを強迫して強制した。
2 その一人以上の人が、敵側国民であった。
3 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xvi) 戦争犯罪としての略奪
要素
1 実行者が、一定の財産を専有した。
2 実行者が、財産を所有者から奪い、または、その私的利用のために専有する
ことを意図した(47)。
3 専有が、その所有者の同意なしに行われた。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定する事実条件を知っていた。
(47)「私的利用」という語句の使用によって示されているように、軍事的必
要によって正当化される専有は、略奪の罪にあたらない。
第八条第二項b(xvii) 戦争犯罪としての毒または毒性のある兵器の使用
要素
1 実行者が、ある物質、またはその使用の欠陥としてある物質を放出する兵器
を使用した。
2 その物質が、有毒の特性により、通常の過程において、死を引き起こし、ま
たは健康を重大に損うものであった。
3 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xviii) 戦争犯罪としての禁止されたガス、液体、物質または
装置の使用
要素
1 実行者が、ガス、またはその他の類似した物質もしくは装置を使用した。
2 そのガス、物質または装置が、窒息性または有毒の特性により、通常の過程
において、死を引き起こし、または健康を重大に損なうものであった(48)。
3 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(48)この要素について、化学兵器の開発、製造、貯蔵または使用に関する国
際法の現行規則または発展している規則を制限したり、損なうものと解釈される
べきではない。
第八条第二項b(xix) 戦争犯罪としての禁止された弾丸の使用
要素
1 実行者が、一定の弾丸を使用した。
2 その弾丸が、人体内において容易に拡大またはつぶれるがゆえに、その使用
が武力紛争に関する国際法に違反するものであった。
3 実行者が、その弾丸の性質が、それを使用すれば無用に苦痛や傷害を悪化さ
せるものであることを知っていた。
4 実行行為が、国際武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xx) 戦争犯罪としての規程付録に掲げられた武器、投擲物、
物資、戦闘手段の使用
要素
(規程付録に含まれる武器、投擲物、物資、戦闘手段については、これから起草
されなければならない。)
第八条第二項b(xxi) 戦争犯罪としての人格の尊厳の侵害
要素
1 実行者が、一人以上の人の尊厳を侮辱し、品位を引き下げ、またはその他侵
害した。
2 その侮辱、品位の引き下げ、またはその他侵害の激しさが、一般に人格の尊
厳の侵害と認められる程度のものであった。
3 実行行為が、国際武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xxii)-1 戦争犯罪としての強姦
要素
1 実行者が、実行者の性器を被害者の身体のいずれかの部分に、わずかであれ
貫通させる行為や、なんらかの物体や身体の他の部分を被害者の肛門または生殖
器に貫通させる行為によって、人の身体に侵入した(50)。
2 その侵入が、その人または他の人に対して、暴力の恐怖、強迫、拘禁、心理
的抑圧、権限濫用によってまたは強制的状況を利用して引き起こされたような、
実力、実力の威嚇、強制によって行われた。または、その侵入が、真の同意を与
える能力のない人に対して行われた(51)。
3 実行行為が、国際武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(50)「侵入」という概念は、ジェンダーに中立な幅広い意味をもつ。
(51)生来的に、後天的に、または年齢のために能力がない場合、人は真の同
意を与えることができないと理解される。この註は、ICC規程第八条第二項b
(xxii)-3、5、6の同じ要素にも適用される。
第八条第二項b(xxii)-2 人道に対する罪としての性的奴隷制(52)
要素
1 実行者が、一人以上の人を買う、売る、貸す、交換することにより、または
その人から同様の自由を剥奪することにより、所有権に伴う権能の一部または全
部を行使した(53)。
2 実行者が、その人または人々に、性的性質の行為に従事させた。
3 実行行為が、国際武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件とを知っていた。
(52)この犯罪の複雑な性質のために、その実行には複数の犯罪者が共通の犯
罪目的の一部として関与するものと認められる。
(53)この自由の剥奪には、ある場合には、一九五六年の奴隷制補足条約で定
義されたように、強制労働を課すことや、人を奴隷状態に置くことが含まれると
理解される。また、この要素で述べられた実行行為には、特に女性と子どもの人
身売買も含まれると理解される。
第八条第二項b(xxii)-3 人道に対する罪としての強制売春
要素
1 実行者が、一人以上の人に対して、暴力の恐怖、強迫、拘禁、心理的抑圧、
権限濫用によって、または強制的状況を利用して、実力、実力の威嚇、強制によ
って、性的性質の行為に従事させた。または、真の同意を与える能力のない人に
性的性質の行為に従事させた。
2 実行者または他の者が、その性的性質の行為と引き換えに、またはその行為
と関連して、金銭その他の利益を手にしたり、期待した。
3 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xxii)-4 人道に対する罪としての強制妊娠
要素
1 実行者が、いずれかの民間住民の民族構成に影響を与える意図、または国際
法のその他の重大な違反を行う意図をもって、一人以上の妊娠した女性を監禁し
た。
2 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
3 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xxii)-5 人道に対する罪としての強制不妊手術
要素
1 実行者が、一人以上の人から、生物学的な再生産能力を剥奪した(54)。
2 実行行為が、関係人の医療措置や療養措置によって正当化されず、または真
の同意なしに行われた(55)。
3 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
(54)剥奪とは、永続的な効果をもたない出産統制措置を含むことを意図して
いない。
(55)「真の同意」には偽計によって得られた同意は含まれないと理解され
る。
第八条第二項b(xxii)-6 人道に対する罪としての性的暴力
要素
1 実行者が、一人以上の人に、暴力の恐怖、強迫、拘禁、心理的抑圧、権限濫
用によって引き起こされたような、実力、実力の威嚇、強制によって、または強
制的な状況を利用して、または真の同意を与える能力のない人に、性的性質の行
為を行い、または、性的性質の行為に従事させた。
2 実行行為が、ジュネーブ諸条約の重大な違反の犯罪と比較できる重大なもの
であった。
3 実行者が、実行行為の重大さを決定づける事実状況を知っていた。
4 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xxiii) 戦争犯罪としての保護された者の防御壁としての利用
要素
1 実行者が、武力紛争に関する国際法によって保護された民間人その他の人の
所在を動かし、またはその他利用した。
2 実行者が、攻撃から軍事目標を防御し、または軍事作戦の防御、援助もしく
は妨げる意図をもっていた。
3 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xxiv) 戦争犯罪としてのジュネーブ諸条約の特定の徽章を用
いる物または人への攻撃
要素
1 実行者が、ジュネーブ諸条約によって保護されていることを証明する明白な
徽章またはその他の方法を国際法に従って用いている一人以上の人、一つ以上の
建物、医療施設、輸送またはその他の対象を攻撃した。
2 実行者が、その証明を用いている人、建物、医療施設、輸送またはその他の
物を攻撃目標にする意図をもっていた。
3 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xxv) 戦争犯罪としての戦闘手段としての飢餓
要素
1 実行者が、民間人からその生存に不可欠な物を奪った。
2 実行者が、戦闘手段として民間人を飢餓させる意図をもっていた。
3 実行行為が、国際的武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
4 実行者が、武力紛争の存在を決定づける事実条件を知っていた。
第八条第二項b(xxvi) 戦争犯罪としての子どもの利用、徴用、募集
要素
1 実行者が、一人以上の人を軍隊に徴用もしくは募集し、または、一人以上の
人を敵対行為に積極的に参加させるために利用した。
2 その一人以上の人が、一五歳未満であった。
3 実行者が、その一人以上の人が一五歳未満であると知っていた、または知る
べきであった。
4 実行行為が、国際武力紛争の文脈で、かつそれと結びついて行われた。
5 実行者が、武力紛争の存在を決定する事実条件を知っていた。