島川です。 [TO: aml, keystone]
今年に入って2回目のMV-22の墜落事故(米現地時間11日夜)について、かの
マッコークル中将の記者会見が12日に国防総省で行なわれています。
<http://www.defenselink.mil/news/Dec2000/t12122000_t212mv22.html>
前回の傲慢さとはうってかわって、今回は将軍も丁寧に応答している様子で、
記者の呼びかけに「Yes, sir.」と応えるなど殊勝な感じですが、事故原因等
については詳細は調査中で不明ということで、ほとんど情報らしいものはあ
りません。
事実関係としては、
* 夜間飛行中にノースカロライナ州ジャクソンビル近くの森林地帯に墜落
し乗員4名全員死亡。
* 墜落機は飛行場到達3分前に「メーデー(緊急事態)」を通報し、その
直後に墜落。基地との距離からして、「ヘリコプター・モード」ではな
く「飛行機モード」で前進飛行中と推定される。
* 乗員は中佐と少佐、2名の下士官の計4名。中佐はMV-22の経験が最も長
いパイロットで、来春に編成される予定の初代MV-22飛行隊の指揮官に擬
されていた人物であった。中佐と少佐はヘリ・パイロット出身。
とのことです。夜間計器飛行と離着陸に関連する試験飛行をしていたようです。
前の事故の時のブリーフィングでは、10月にMV-22の「本格的量産」の可否
が決定されるとのことでしたが、これは数週間延期されたのだそうです。今回
の事故によって、さらに延期されることになります。記者がこの「第三段階の
決定(Milestone 3 decision)」が延期されたのは、MV-22の安全性・信頼性
について何か根本的な問題が生じたからなのか、と聞いていますが、中将は「
絶対にそうではない」と答えて、4月の墜落事故によるスケジュールの遅れを
示唆しています。また、これまでに「ヒューマン・ファクター」以外で何かが
起こったとは聞いていないと言っています。
記者は事故が多いことや価格が高価なことなどを挙げてMV-22計画を再考する
ことはないのか、現有ヘリの退役にMV-22計画が間に合わない場合は補修で老
朽機の寿命を保たせるのか、等の質問をしていますが、中将の答は、現有機の
補修予算は必要であるが海兵隊はあくまでもMV-22計画を推進する、というも
のです。
一方、コーエン国防長官は、MV-22の事故続き、世論の批判に耐えかねたのか、
15日に、MV-22計画についての特別調査委員会を発足させるという決定を発表
しました。
<http://www.defenselink.mil/news/Dec2000/b12152000_bt748-00.html>
海兵隊の退役将軍を議長とし空軍の退役将軍が加わる独立委員会を設立して、
安全性、戦闘上の有用性、設計、用兵上の要求、訓練等、全面的に見直すとさ
れています。さて、退役将軍たちは古巣に対して、「ヒューマン・ファクター」
以外の何かを指摘する可能性はあるのでしょうか?
この委員会を設立するという意向は12日のブリーフィングで報道官を通して表
明済みのことですが、
<http://www.defenselink.mil/news/Dec2000/t12122000_t1212asd.html>
そこでベーコン報道官は、コーエン長官は議員時代からMV-22計画にかかわっ
ており、安全性・有用性・費用対効果については確信を持っていると述べてい
ますから、結論は先にありきというところでしょう。また事実上は、現政権は
この件(「本格的量産」の決定)をブッシュ新政権に委ねるということでしょう
か。
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島川雅史 mshmkw@tama.or.jp
mshmkw@jca.apc.org
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