なすび＠現在アメリカです。
10/12、イエメンのアデン港に停泊中の米海軍イージス駆逐艦「コール」で起きた
小型ボート爆発「事件」については、皆さん既にご存じのことと思います（文末参照
）。
米海軍は昨日（10/13）、７名の死亡者のほか、10人の行方不明者の生存が絶望的
であることを明らかにし、計17人の氏名を公表しました。
これまでに確認された遺体は、ドイツのラムスタイン空軍基地を経由して、アメリ
カ本国に移送されました。この様子は、アメリカでは各テレビ局のニュース番組で放
送されました。
また、今日（10/14）のワシントン・ポストでは、一面を含めた計３面を使って、
事件の状況や「テロリスト」の推定を解説するとともに、17人の写真とプロフィール
を紹介し、その家族の様子を載せています。
僕はこの17人の写真を見て、彼らのあまりの若さに衝撃を受けました。年齢は19歳
から35歳で、19歳の兵士が４人（白人男性２人と黒人の男女）もいます。彼らの写真
にはまだあどけなさが残り、まるで学校の卒業写真のようです。
沖縄では米兵の「若さ」を日常的に目の当たりにしているのだとは思いますが、僕
にはやはり顔の見えない「米兵一般」でしかなかったように思います。アレン・ネル
ソンさんが沖縄で基地内の米兵に向かって「あなた達に人殺しをしてほしくないし、
あなた達にも死んでほしくない」と呼びかけたその言葉の意味を、やはり僕は単なる
言葉でしか理解していなかったと、亡くなった若い米兵たちの写真を見ながら気付か
されました。
「コール」搭乗員の彼/彼女らは、国連経済制裁の遂行の監視のために、ペルシャ
湾に向かうところでした。この10年間の経済制裁により亡くなったイラクの人は100
万人を数え、今も７分に１人の割合で子どもが死んでいます。彼らの行為が、具体的
に日々イラクの人々を苦しめ、子どもたちを殺しているのは事実です。そして米軍基
地のある場所で、基地被害を引き起こし住民を恐怖に陥れているのも事実です。
ただ僕は、「彼ら兵士一人一人もまた、アメリカという国家に殺されたのだ」と、
今回の「事件」で感じざるを得ませんでした。
『けーし風』第26号に掲載されている、安倍陽子さんの「志願兵不足に悩むアメリ
カの軍隊」を読んでいただければ分かると思いますが、アメリカは好景気状況が続い
て失業率も低く、軍隊への志願兵が不足して、テレビで派手な宣伝をしたり、様々な
特典を列記したパンフレットをばらまいたり、少年マリンなるものを使って各地のイ
ベントでのPR活動に躍起になっています。
逆に言えば、この時期に志願して軍に入る若者の多くは、何らかの経済的・社会的
バックグラウンドを理由にしている可能性が高いということです。このようにして結
果的にかり出された、アメリカ社会の中のある層の人たちが、殺人を行い、そして殺
されるということです。
そしてまた、退役軍人の三分の一がホームレスになっています。
アメリカ海軍は、「テロリストによる自爆テロだ」とこの事件を使って一層「敵」
への憎悪をかき立てる発表を繰り返し、メディアもそれに乗っています。星条旗にく
るまれた棺を多くの制服兵士により移送させる「儀式」によって、アメリカ国家は自
国の使い捨て・殺人システムを隠蔽し、さらにそれを自らの目的のための世論操作に
すら使っています。
しかし少なくとも僕は、この操作に乗るのでもなく、逆に顔の見えない「敵」とし
てしまうのでもなく、怒るべき対象を見失わないようにしたいと思います。
不愉快に感じる方もおられるかもしれませんが、今回の「事件」で亡くなった米兵
の名前を掲載します。（名前、年齢、出身地・州、死亡確認状況の順）
* Kenneth E. Clodfelter, 21, Mechanicsville, Va., presumed dead.
* Richard Costelow, 35, Morrisville, Pa., confirmed dead.
* Lakeina M. Francis, 19, Woodleaf, N.C., presumed dead.
* Timothy L. Gauna, 21, Rice, Tex., presumed dead.
* Cherone Louis Gunn, 22, Rex, Ga., confirmed dead.
* James Rodrick McDaniels, 19, Norfolk, confirmed dead.
* Marc Ian Nieto, 24, Fond du Lac, Wis., presumed dead.
* Ronald S. Owens, 24, Vero Beach, Fla., presumed dead.
* Lakiba Nicole Palmer, 22, San Diego, confirmed dead.
* Joshua Parlett, 19, Level, Md., presumed dead.
* Patrick Roy, 19, Keedysville, Md., presumed dead.
* Kevin Shawn Rux, 30, Portland, N.D., presumed dead.
* Ronchester Santiago, 22, Kingsville, Tex., presumed dead.
* Timothy L. Saunders, 32, Ringgold, Va., confirmed dead.
* Gary Swenchonis Jr., 26, Rockport, Tex., presumed dead.
* Andrew Triplett, 31, Macon, Miss., confirmed dead.
* Craig Wibberley, 19, Williamsport, Md., confirmed dead.
＜参考＞
【毎日新聞】2000年10月13日（金） 0時5分
米駆逐艦にボート突っ込み爆発 乗組員４人死亡
イエメンのアデン港で米駆逐艦コール（約３００人乗り組み）にゴムボートが突っ
込み爆発、米国人乗組員４人が死亡、１人が行方不明になり、３１人が負傷した。駆
逐艦は左舷に長さ１２メートル、高さ６メートルの亀裂ができ、大破した。米国防総
省当局者は自爆テロと断定した。
【ロイター】
2000年10月13日（金） 7時30分
イエメンで発生した米海軍駆逐艦爆破事件は「自爆テロ」＝国防総省筋
米国防総省筋は、イエメンのアデン港で発生した駆逐艦「コール」の爆発事件につ
いて、ボートに乗っていた「テロリスト」による自爆によるものだと述べた。同筋は
匿名を条件にロイター通信に対し、現場からの報告によると、「コール」の停泊を手
伝っていた１隻のゴムボートに２人が乗り込んでいたが、彼らが直立不動の姿勢をと
った直後に爆発が起こり船腹に大きな穴があいた模様だ、と述べた。そのうえで、「
テロリストによる自爆だと推測するだけの材料がそろっている。そうではないと推測
する材料は見当たらない」と述べた。
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