Date: Sun,  8 Oct 2000 21:57:16 +0900
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Subject: [keystone 3144] 「ビッグレスキュー」反対運動の報告<4>終
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「ビッグレスキュー」反対運動の報告・第4回(最終回)
 
 発信者=井上澄夫
       (「やめて!東京都による〈防災〉に名を借りた自衛隊演習」
          実行委員会)
 発信時=2000年10月8日
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  鳥取県西部地震による被災者の皆様に、心からお見舞い申し上げます。
 
 本報告は、第3回まで進んだところで、ストップしました。三宅島の深刻な事
態への対応を含め、実に多事多端な日々がつづいたからです。しかし本シリーズ
は、とりあえず完結させるべきと思い、ワープロに向かいます。
 
本文、ここから

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9月2日、都庁にデモ

  この日、東京都内は、本年最高の猛暑に見舞われました。デモの参加者ではあ
りませんが、ある高齢者の私の友人は、JRの新宿駅で倒れ、救急車で病院に運
ばれました。
  しかし、それほどの猛暑をものともせず、午後2時、新宿公園に200名の仲
間が集ったのです。参加者の中には、遠隔の地の友人たちも混じっていました。
そこで彼女ら・彼らに、まず発言してもらいました。
  名古屋からは「住民にとっての防災を考える・石原発言を許さない9・2シン
ポジウム」実行委員会の代表、6名が駆けつけた大阪からは、石原都知事に
「ビッグレスキュー」の中止を求める42もの団体の署名を携えて、徐翠珍さ
ん、また浜松の「NO!AWACSの会」の仲間が、それぞれ発言しました。そ
して、主催者の実行委員会が、翌日午前中の「ビッグレスキュー」各訓練会場で
のウォッチング、抗議行動、午後の銀座デモの呼びかけを行ないました。30分
の短い集会でしたが、都庁に向けたデモの前ですから、なごやかで意気上がるも
のでした。

  デモは、新宿御苑に近い公園から、にぎやかな新宿通りに出て、JR・新宿駅
そばを通過し、南新宿に出ました。そこから都庁は、まもなくです。先頭の宣伝
カーの訴えは、「三宅島の人たちが苦しんでいるときに、それとまったく関係な
く、石原都知事は3億円もの予算を使って、自衛隊中心の〈防災〉訓練をやろう
としています。それは実におかしなことではないでしょうか。東京都が今なすべ
きことは、避難を始めた三宅島の人びとの安全を守り、生活を支援することでは
ないでしょうか。自衛隊中心の軍事演習に反対しましょう」というもので、沿道
の市民の深い共感を得ました。仲間たちの撒くチラシは、どんどんなくなり、デ
モに反感を示す人は、一人もいませんでした。多くのデモ参加者が、「こんなこ
とは珍しいね」と語り合ったほどです。

  都庁が近づくと、やはり気分が高揚します。宣伝カーからの訴え、シュプレヒ
コールにつづいて、「石原・辞めろ! 演習・反対!」のコールが、おもちゃの
鳴り物の音(ね)とともに繰り返されます。都庁第一庁舎の前では、デモの参加
者全員がしばし立ち止まり、大きな声を張り上げて、シュプレヒコールをつづけ
ました。そして解散集会が、新宿中央公園の一角で開かれ、防衛庁に向かう浜松
の代表を激励して送り出したあと、参加した水道労組などの労働組合や、学生グ
ループの代表から挨拶を受けて、最後に翌日の健闘を誓い合い、シュプレヒコー
ルで終わりました。
  この都庁デモの特徴は、参加者の7割くらいが、学生など若い人であったこと
です。これは本当にうれしいことでした。デモがデモ本来の効果を発揮し、しか
も若者たちが圧倒的に多いデモでしたから、参加者が勇気を得たデモであったと
思います。

 
9月2日、夜の全国交流会

 2日の夜、午後6時半から早稲田奉仕園(新宿区西新宿)で、全国交流会が開
かれました。そこでなされた討論のテーマは、主として二つ。「防災」を民衆の
立場からどうとらえるかということと、自衛隊の災害派遣にどのような根拠で反
対するかということでした。 大阪、名古屋、浜松の仲間に、広島県呉市から駆
けつけた湯浅一郎さん(「ピースリンク広島・呉・岩国」)が加わった40人の
参加者は、次々に発言し、「防災」それ自体は大切なことだが、自治体が主催す
る訓練が、本当に「防災訓練」の名に値するものであるかどうかは、きちんと検
証されるべきであること、行政のパフォーマンスに終わる訓練は無意味であるこ
と、「ビッグレスキュー」は、自衛隊の出動訓練を目的とする軍事演習であるこ
と、しかもそこに治安訓練が含まれている可能性があること、石原都知事が「国
民」という言葉を使用するとき、そこに誰が含まれ、誰が排除されるのか、「国
民」という概念それ自体を問題にすべきことなど、多様な観点から問題が次々に
提起されました。結論を出すのではなく、意見交換による交流を目的とした討論
でしたが、それにもかかわらず、いくつか重要な部分で認識が共有されたと思い
ます。

 ここでその詳細を報告することはできませんが、討論の内容はすべて、今後発
行する資料集に収録する予定です。
  討論は8時半までつづき、その後の交流会でも、議論がつづきました。この全
国交流会は、参加者それぞれに、今後の反戦の活動に向けて、なにか大切なヒン
トを与えたのではないかと思います。

 
9月3日、午前の行動と午後の銀座デモ

  午前の行動

  「ビッグレスキュー」は、都内10カ所の訓練会場で、実施されました。その
うち本実行委員会がウォッチングを行なったのは、立川・練馬・木場・晴海・駒
沢公園・羽田・白鬚西です。そこで目撃された事実や諸抗議行動の報告を、ここ
で網羅することはできません。これも、後日発行予定の資料集に写真入りで報告
することにします。
 本実行委員会のメンバーである中村利也さんが、実行委のニュースに書いた簡
潔な報告を引用します。
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 防災訓練本番の9月3日は、早朝からの行動になった。午前7時、「ストッ
プ!海外派兵・大田共同行動」の20数名の仲間は、羽田空港内外の3カ所に監
視ポイントを置いた。空港ターミナル屋上には、「自衛隊機の羽田空港離発着反
対!」の横断幕を掲げ、福岡県芦屋基地、愛知県小牧基地から160名の自衛隊
員を乗せて飛来した、航空自衛隊の輸送機C130に抗議の声を上げた。
 駒沢公園・三宿(みしゅく)駐屯地・用賀(ようが)駐屯地では、午前7時半
から、「自衛隊の防災・治安訓練を止めろ!南西部実行委員会」の仲間が監視行
動を続け、午前10時からは駒沢会場近くで抗議行動を展開した。会場の駒沢公
園では、休日を楽しむ多くの市民の目の前に、立川基地からCH42大型輸送ヘ
リが飛来。同じ公園内では、世田谷区独自の防災訓練が行なわれており、自衛隊
と事実上一体化した訓練になっていた。

 午前8時過ぎに、「戦争に協力しない!させない!練馬アクション」の呼びか
けに応えた100名を超える労働者や市民が、練馬区光が丘の地下鉄大江戸線・
高松車庫前に集合、朝霞駐屯地から出動し、木場公園までの進出訓練に向かおう
とする迷彩服姿の170名の自衛隊員の間近で、抗議のシュプレヒコールを上げ
た。その後、光が丘駅ホームに移動、何事が起こったのかと驚く一般乗客が見守
るなか、地下鉄車両で木場車庫に移動する自衛隊員に再度の抗議行動を展開し
た。

 午前9時からは、「『防災訓練』に名を借りた9・3白鬚西自衛隊演習に反対
する実行委員会」の仲間が、山谷・玉姫公園に集合。新宿や渋谷の野宿労働者も
参加して、白鬚橋を通り、白鬚西(汐入)会場近くまでデモを貫徹した。その
後、会場全体が見渡せる対岸の公園に移動、ヘリコプターで到着した石原都知事
にシュプレヒコールをぶつけるなど、昼過ぎまで抗議行動を続けた。
 江東区の木場公園会場では、私たち「やめて!東京都による〈防災〉に名を借
りた自衛隊演習」実行委員会のメンバーや、地域の労働者、市民20数名が、
「自衛隊の治安出動訓練反対!市民監視行動」の横断幕を掲げて、会場内で堂々
と監視行動を展開した。練馬から地下鉄を使って移動してきた部隊に対しては、
地上に通じる非常口の前で出迎え、軍艦マーチとともに登場した石原都知事に、
目の前で横断幕を掲げて抗議の意思表示を行なった。

 メーン会場となった晴海会場には、9月1日に平塚を会場とした「七都県市合
同防災訓練」の監視行動を行なった横浜の仲間や、呉の仲間が駆けつけた。埠頭
には、強襲揚陸艦「おおすみ」や特務艇「はしだて」などが横づけされ、陸上自
衛隊第33連隊の車両が上陸、地上には、航空自衛隊の移動式管制塔が設置され
た。仲間たちは、陸・海・空自衛隊の総勢2000名が参加した演習を監視し続
けた。
 立川会場では、「立川自衛隊監視テント村」の仲間など70名が監視行動に参
加。「救援物資輸送」と称して、対戦車ヘリコプターが舞うという、防災とは縁
もゆかりもない訓練を精力的に監視した。

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午後の銀座デモ

  水谷橋公園を出発点として行なわれた銀座デモは、非常に緊張に包まれたもの
でした。この日の午前中、すぐ近くの中央通りで、装甲車や対戦車ヘリまで動員
した自衛隊の軍事パフォーマンスが強行されたのですが、公園の周辺には、その
名残が色濃く漂っていたばかりか、「防災」訓練のメーン会場である晴海に離発
着するヘリコプターが、すさまじい爆音を振りまきながら、たびたび頭上を通過
したからです。
  そういう緊張の中で、250人の参加者が水谷橋公園を埋め尽くしました。午
後2時に始まった集会では、主として、午前中のウォッチング活動の報告が、い
くつか手短になされ、関西からこの日駆けつけた中北龍太郎さんなどの連帯の挨
拶を受け、2時半、デモに出発しました。

 先頭の宣伝カーの訴えは、基本的に前日の都庁デモのときと同じでしたが、ヘ
リコプターの爆音が、そこここに鳴り響くという異様な雰囲気の下でなされたた
めか、沿道の人びとの反応は、前日につづいて非常に良く、仲間たちが撒くチラ
シは、まるで吸い込まれていくようでした。
  私たちが、あえて銀座でデモをしたのは、銀座を自衛隊が制圧することへの抗
議でしたが、銀座での自衛隊の訓練を見に来た人びとや、晴海会場に「ボラン
ティア」として動員された人びとに、「ビッグレスキュー」の危険さを訴えるた
めでもありました。その意味で、数寄屋橋交差点を通過し、日比谷公園に向かう
デモは、実に効果的であったと思います。

  日比谷公園の野外音楽堂裏で、解散集会が行なわれました。そこではまず、水
谷橋公園で、時間が足りなかったためできなかったウォッチングの報告を受けま
した。さらに三宅島の噴火活動がいかに危険な状態になっているかという情報を
交えつつ、石原都知事が「ビッグレスキュー」を強行したことに対する参加者一
同の抗議の思いを、互いに確認しました。この解散集会の基調は、石原都知事に
辞任を求めるたたかいは、この日、改めて始まったということでした。デモ参加
者は、最後に元気にシュプレヒコールをあげて解散しました。
  前日より、いくらか暑さが和らいでいたとはいえ、みな汗みずくになって、最
後までがんばったわけです。「やり抜いた」という気持ちで解散できたのは、実
にうれしいことでした。
 
  9月1日から3日までの連続行動(集会とデモ)に参加した人は、監視行動を
除いて、560名でした。さまざまな市民グループが力を合わせて、連続行動を
成功させたことは、それぞれの今後の活動にとって、大事な遺産になることで
しょう。
 
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  私たちのシュプレヒコール(9・2都庁デモ、9・3銀座デモ)
 
  ◎「防災」に名を借りた自衛隊演習を許さないぞ!
  ◎自衛隊による「防災」演習反対!
  ◎石原は「ビッグレスキュー」をやめろ!
  ◎自衛隊は治安出動訓練をやめろ!
 ◎東京を舞台にした軍事演習をやめろ!
  ◎自衛隊に東京の空を支配させないぞ!
  ◎自衛隊の銀座制圧反対!
  ◎銀座に装甲車はいらない!
  ◎羽田空港の軍事利用をやめろ!
  ◎自衛隊は部隊進出訓練をやめろ!
  ◎軍事演習に自治体を利用するな!
  ◎軍事活動に自治体労働者を巻き込むな!
  ◎軍隊で防災はできないぞ!
  ◎軍隊は民衆を守らない(ぞ)!
  ◎石原の「三国人」発言糾弾!
  ◎石原の排外主義を許さないぞ!
  ◎外国人労働者への差別発言糾弾!
  ◎在日韓国・朝鮮人への差別・排外主義を許さないぞ!
  ◎三宅島住民を無視した軍事演習をやめろ!
  ◎軍事演習をやめて、三宅島の人びとを救援しろ!
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最後に私見を少し

  「防災訓練」に反対することは、本来なかなかむずかしいことです。自然災害
に備えること、いざというときの対応を訓練することは、誰にとっても大事なこ
とだからです。しかし今回の「ビッグレスキュー」は、自衛隊の軍事的パフォー
マンスが前面に出る、典型的な軍事演習でしたから、その意味では、批判しやす
かったと言えるでしょう。
  石原都知事は、「訓練」の成果を誇りましたが、都民の多くは、あれで「防災
訓練」と言えるのか、ああいうことで自分は助かるのかと思ったように思いま
す。それは新聞などマスメディアの報道によっても、推定できることです。
 
  しかし私たちは、まだ「防災」というものについて、十分よく考えていないの
ではないでしょうか。私たちの実行委員会は、東海村のJCOの事故から学ぶ原
子力防災の問題提起、阪神淡路大震災の被災者の証言などによって、かなり突っ
込んだ勉強をしました。しかし9月2日の全国交流会で、「立川自衛隊監視テン
ト村」の加藤克子さんが提起した、〈国にとっての「防災」と民衆にとっての
「防災」の違い〉を突き詰める問題については、議論が始まったばかりです。長
くこの問題に取り組んできた加藤さんたちや、7都県市合同防災訓練に反対して
きた諸運動の経験から学びながら、これから大いに討論していくべきでしょう。
「ビッグレスキュー」反対行動は、とても良い一歩でしたが、問題はむしろこれ
からだと、改めてしみじみ思っています。石原都知事が「ビッグレスキュー」の
ような「訓練」を全国で実施することを呼びかけ、それを森首相が支持するとい
う状況が眼前にあるだけに、私たちは反撃の論理を、早急に磨く必要に迫られて
います。
  三宅島では、火山性ガスを大量に排出する噴火がつづいています。また本稿を
完成する直前に、鳥取県西部地震が起き、余震はなおつづいています。さまざま
なメーリング・リストやホームページで、生産的な議論がつづけられることを、
心から期待します。

 
資料集刊行のお知らせ

  私たちの実行委員会は、9月29日に、中野区環境リサイクルプラザ・消費者
センターで開かれた「東京都・自衛隊〈防災訓練〉の真の狙いをさぐる9・29
集会―監視行動から見えてきたものは何か―」(50名参加)をもって、解散し
ました。しかし9・29集会での貴重な証言を含めて、「ビッグレスキュー」に
ついての資料集を作ります。それは、少し時間を要する作業ですが、刊行した
ら、みなさんにお知らせする予定です。



 
  • 1998年     3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 1999年     1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
  • 2000年     1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月

  • キーストーンメーリングリスト 目次