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自衛官OB「隊友会」の犯罪的な動きについて
発信者=井上澄夫(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)
発信時=2000年10月1日
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全国のみなさん!
東京都練馬区の区議会に、自衛官のOBで構成する「隊友会」が、去る9月
12日、とんでもない請願書を提出しました。まずその全文を掲載します。
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請願書
自衛官募集広報記事掲載について
請願代表者 練馬区北町2丁目30番2号 社団法人 隊友会
東京都隊友会副会長 鈴木恒雄外自衛隊協力団体5名
練馬区防衛協会副会長 飯田博三郎
隊友会練馬支部長 十河洋一郎
防衛を考える会練馬支部長
開尾 ○(印鑑捺印のため判読不可、勝か)
父兄会練馬支部長
鈴木恒夫
募集相談員練馬支部長 高橋直芳
紹介議員 本橋まさとし(自民党)
水埜圭子 (公明党)
中山まさみ (民主党)
要旨 1 自衛官募集広報を区報に掲載されたい
2 庁舎アトリューム等にポスターを掲示されたい
理由
現在自衛官募集のための手段の一つとして自衛官募集ポスターを貼付し、募集
希望者を幅広く募っているところでありますが、貼付場所枚数等にも制限もあ
り、応募適齢者等に行き届かないところも多々あり募集広報に苦慮している状
況であります。
その状況をつぶさに見たり聞いたりしておりますが、私共協力団体(者)で協
議した結果、区報への募集記事の掲載及び庁舎アトリューム等へ募集ポスター
を貼付されますよう請願する次第です。
練馬区には、一都六県を統括する第一師団司令部が所在し、三宅島災害派遣
をはじめ数多くの災害派遣等で民政安定に尽力いたしております。重ねて募集
記事の区報への掲載及び庁舎アトリューム等への貼付に付いて格別のご配慮を
賜りたく宜しくお願い申し上げます。
参考 東京都の広報誌には自衛官募集広報記事は掲載されている
(資料・請願書はここまで)
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問題の背景(1) 練馬区議会の内情(敬称略)
2000年第2定例区議会の議会人事で、第3会派(第1=自民、第2=公
明)の「民主・無所属」の土屋新一が、議長に選出されました。現在、区長は
岩波三郎ですが、区長寄りの会派は、自民と公明で、計24議員を抱えていま
す。これに対し、反区長派として、民主・無所属、共産、生活者ネット、社
民、緑と自治、オンブズマン練馬の6会派が、計26議席を占めています。し
たがって、24対26の関係は常に緊張していて、対立が続いています。
それを鮮明に象徴するのが、「君が代斉唱」問題です。自民党は昨年、賀詞
交換会での「君が代斉唱」を提案しましたが、それは24対26の対立構造に
よって実現しませんでした。しかし来年に向けて、自民・公明は「君が代斉
唱」の実施を主張し続けていて、それは実にしつこい攻勢ですから、前途は予
断を許しません。
24対26の対立構造において、26議席を占める多数派の弱い部分は、
「民主・無所属」です。ですから自民・公明は、なにかと「民主・無所属」を
切り崩そうとしています。
今回の隊友会の請願は一面で、自民・公明による「民主・無所属」切り崩し
の策動の側面をもっています。なぜなら、「民主・無所属」に属する10議員
のうち、実に7議員が「自衛隊友の会」に入っているからです。資料として上
に掲載した請願書にあるように、自民・公明各1名の議員のほか、民主党の中
山まさみが紹介議員になっているので、このまま「民主・無所属」が切り崩さ
れれば、隊友会の請願書が採択されるといった、とんでもない事態もありうる
わけです。
問題の背景(2) 防衛庁・自衛隊・隊友会の「弾よけ」確保の大攻勢
しかし上の(1)で説明したことは、練馬区議会内の個別的な事情に過ぎ
ず、隊友会の動きは、この国の未来に暗い影を落とす、防衛庁の危険な策謀か
ら生まれているのです。
『平成12年版・防衛白書』の210頁にこうあります。注意深く読んで下
さい。
「災害派遣や国際平和協力業務などを通じて自衛隊に対する国民の理解と認
識が深まったこと、隊員に対する処遇改善が進められていること、さらに、こ
こ数年の厳しい雇用情勢の影響などにより、自衛官などの採用試験の応募の倍
率は高く、質の高い隊員を確保している。しかしながら、2士男子の募集対象
となる18歳以上27歳未満の人口cF、1994(平成6)年の約900万人
をピークに、2013(同25)年ごろには約570万人にまで減少すること
が見込まれている。また、高校卒業者の進学率の向上も見込まれるため、防衛
庁では、中長期的な募集環境が厳しいものになると予想している。
このような状況の中で、全国50か所の自衛隊地方連絡部は、都道府県、市
町村、教育委員会、学校、隊友会、全国自衛隊父兄会、募集相談員などの協力
を得ながら募集業務を行っている。自衛官募集については、自衛隊法第97条
の規定に基づき、地方公共団体が募集業務の一部(後註参照)を行うこととさ
れ、防衛庁は、そのための委託費を地方に配分している。自衛隊が、今後も優
れた人材を確保し、精強性を維持していくためには、地方公共団体及び関係機
関などの協力が不可欠である。」(第5章第1節4の「募集業務に対する協
力」の項)
◎註=募集機関の告示、応募資格の調査及び受験票の交付、試験日・場所の告
示、広報宣伝など
こういう文面を文字通り受け取ることはできません。自衛隊が隊員の確保に
難渋している事情は、以前から広く知られています。冷戦構造が崩壊したあ
と、陸上自衛隊は、定員数を18万人から16万人へと確保可能な線に押し下
げたのですが、そういうやり方でやっと「隊員を確保している」のが現状で
す。専門家筋が「質は別として数だけは」とのべていることも、留意すべきで
しょう。
上の記述にあるように、景気の落ち込みを反映して応募者が増えたことは事
実のようですが、それも主として、幹部になれる防衛大学校を受験する若者が
増えたということであり、いざ戦争となれば、戦場の前線に送られ、肉弾、弾
よけとされる兵卒になりたがる若者は、依然として少ないのです。上の記述に
ある「2士」とは、昔の二等兵のことで、中学卒業の少年工科学校の生徒が
「3士」であることを除けば、最下級の兵ですから、当然のことでしょう。
防衛庁が、2002年度から現行の予備自衛官制度を見直して、定員の一部
を学生や社会人から採用する公募制を導入する方針を固めたことなども、日本
の戦争国家化に伴い、いざというときの定員を確保する動きであると言えま
す。これはあまり知られていないことですが、明石康・前国連事務次長は、8
月23日、国連軍縮秋田会議に関連して開かれたシンポジウムで、秋田市内の
中学生から寄せられた「平和維持活動」の内容を問う質問に対し、「世界中で
衝突があるが、日本人はかわいそうな人たちを救済するために汗を流し、時に
は、血を流して平和のために貢献してもいい」と答えました(2000・8・
24付『朝日』秋田県版)。
こういう流れの中で勢いづいているのが、自衛官OBの組織である隊友会で
す。最近の『正論』(11月号)に「自衛隊OBよ、平成の風となれ」という
文章が掲載されました。元1等海佐・新井三男が書いたものですが、その要点
は二つです。
一つは「反自衛隊勢力」への脅迫です。
〈当時は戦後はすでに終わったともいわれ、神武景気とか呼ばれて、若者の
職場はいくらでもあった。特に優秀な隊員に限って、民間企業等からの誘いが
多く、われわれは彼らを自衛隊に引き留めておくことに、大変な苦労をしてい
た。そして更にこれに追い打ちをかけるように反自衛隊勢力による、若年隊員
に対する、嫌がらせともいえる、反戦平和思想の宣伝があり、今日思い出した
だけでも誠に腹立たしい苦労の多い自衛隊勤務であった。
在職中に人事面などで不満を持ちながら退職した者といえども、こと反自衛
隊勢力との対決という一点に関しては、全員一丸となって結束することを、反
自衛隊勢力に荷担した者は肝に銘じておくべきであろう。〉
もう一つは、自衛官OBへの扇動です。
〈従来から「数は力なり」といわれているが、自衛隊OB団体と民間の友好
団体とが、強力に連携し、(反国家的、反自衛隊的な言動をもてあそぶマスコ
ミや不条理で無恥な政治家に)正面から立ち向かって行けば、かなりの成果が
あがることは、先の衆院選挙において、神奈川県下で対立候補と接戦の上、圧
勝したA議員や、昨年行われた地方選挙において、断トツで圧勝した、某市に
おけるF市会議員の事例等があり、結束し一丸となって臨めば大きな成果を得
られることが実証されている。/自衛隊OB団体は、民間の友好団体と連絡を
密にし、彼らの運動に協力して、平成維新の断行を推進するため、世直しの風
を起こすべきである。〉
問題の背景については、今後さらに調査・分析を続けますが、ここでは、も
う一つ、重要な動きに触れます。いわゆる地方分権一括法(475本の法「改
正」です)は、本年4月1日に施行されました。その中に、あまり注目されて
いませんが、自衛隊法の改悪が含まれています。政府はどさくさまぎれに、同
法第97条を奇妙なやり方で変えました。「改正」前の第97条は、こうでし
た。
(募集事務の一部委任)
第97条 都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛
官の募集に関する事務の一部を行う。
2 (防衛庁)長官は、警察庁及び都道府県警に対し、自衛官の募集に関
する事務の一部について協力を求めることができる。
3 第1項の規定により都道府県知事及び市町村長の行う事務並びに前項
の規定により都道府県警の行う協力に要する経費は、国庫の負担とする。
政府は「改正」によって、上の文言のうち、第97条のタイトルの「募集事
務の一部委任」を「都道府県等が処理する事務」に変えたのです。その意味す
るところは、行き詰まっている自衛官募集を、地方自治体に全面的に押しつけ
ることです。実際、「改正」前、地方分権推進委員会の第49回審議におい
て、防衛庁は「自衛官募集については、自治体が処理するのが望ましい」と主
張しました。
今回の「改正」は、自治体側の反発を考慮して、第97条本文の文言こそ変
えませんでしたが、タイトルの変更(改悪)という姑息な手法で、自衛官募集
を自治体に負担させる〈方向〉を明示したのです。
しかもその悪影響は、すでに出始めています。99年8月4日付『沖縄タイ
ムス』によれば、「改正」法成立直後の99年8月3日、沖縄県は「来年4月
から法律や政令が変わる」からとして、市町村募集事務担当者等連絡会議を開
きました。そこには、それまで自衛官募集事務を行なっていなかった14市町
村のうち6市町村が参加し、自衛隊沖縄地方連絡部が募集実績などを報告した
のです。
第97条第1項には「政令で定めるところにより」とあります。政令を変え
て、自衛官募集を自治体に負担させる動きが強化されることは必至でしょう。
練馬区議会で起きていることは、このような流れの中から浮上したことなの
です。
すかさず始まった反撃
「練馬アクション」は、すでに隊友会の動きに対抗する動きを始めていま
す。まず対抗的な陳情を出すことにしました。(ちなみに練馬区議会では、請
願も陳情も同等に扱われます。請願・陳情の提出期限は、今会期については、
10月5日です。)
すでに説明したように、これは練馬区や練馬区議会に限られる、一地域の問
題ではありません。日本の戦争国家化がもたらす問題系の一環であり、明らか
に他の地域での同様の動きと連動しているはずです。一昨年のことですが、目
黒区では、区役所に制服の自衛官を常駐させて募集業務をさせようとする動き
に、区内外の市民が激しく抗議し、その計画を阻止したことがありました。都
道府県や市町村の広報紙が自衛官募集記事を掲載している実例がどれほどある
か、現段階では、私たちにわかりませんが、おそらくすでに相当の数にのぼる
と思います。(愛媛県松山市の実例を、末尾に紹介しておきます。)
練馬区で起きている問題の本質は、《若者たちを戦場に駆り出す仕事に、自
治体の広報紙を使わせることによって、私たちが協力していいのかどうか》と
いうことであり、それは、私たちの反戦市民運動の根本を鋭く問うています。
「殺すな! 殺されるな! 殺させるな!」が反戦の営みの原理であるからで
す。
これから練馬区内でさまざまな反撃が開始されるでしょう。それらを今後、
区外のみなさんにも報告し、呼びかけを発する予定です。
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〔資料〕自治体の広報紙が、自衛官募集業務に協力している例
愛媛県松山市の『広報まつやま』2000年7月1日号の記事から
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自衛官募集 試験日の日程などは次のとおりです。
▼2等陸・海・空士=9月17日(日)
【資格】18歳以上27歳未満
▼婦人自衛官=25日(月)・26日(火)
【資格】18歳以上27歳未満
▼曹候補士=16日(土)
【資格】18歳以上27歳未満
▼一般曹候補学生=16日(土)
【資格】18歳以上24歳未満
▼航空学生(パイロット)23日(土)
【資格】高卒(見込)〜21歳未満
▼看護学生=10月26日(木)
【資格】高卒(見込)〜22歳未満の女性
▼防衛医科大学校=11月4日(土)・5日(日)
【資格】高卒(見込)〜21歳未満
▼防衛大学校=11月11日(土)・12日(日)
【資格】高卒(見込)〜21歳未満
問 自衛隊松山募集案内所 電話(略) ※複数受験可能
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