仲田です。
森総理大臣が6月27日に楚辺通信所及び牧港補給基地の強制使用を認定しました。
9月25日、その取消を求めて提訴した訴状です。
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訴 状
原 告 (省略)
原 告 (省略)
右原告ら訴訟代理人 (省略)
〒一〇〇−〇〇一四 東京都千代田区永田町一丁目六番一号
被 告 内閣総理大臣 森 喜
朗
行政処分取消請求事件
訴訟物の価格 金 円
手数料額 金 円
請 求 の 趣 旨
一 被告が二〇〇〇年六月二七日別紙物件目録記載の各土地についてなした使用
の認定はこれを取り消す。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。
請 求 の 原 因
第一 土地の所有権関係
原告□□□□一は別紙物件目録一記載の土地(以下、本件第一土地という)を、
原告◎◎◎◎は同目録二記載の土地(以下、本件第二土地という)を所有してい
る(以下、右二筆の土地を合わせて本件各土地という)。
第二 本件各土地についての使用認定
被告は、二〇〇〇年六月二七日、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力
及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊
地位に関する協定の実施に伴う土地等の使用等に関する特別措置法」(一九五二
年法律第一四〇号。以下、単に「米軍用地収用特措法」という)第五条の規定に
基づくとして、本件各土地につき使用の認定をし、同法第七条一項の規定による
ものとして、
本件第一土地につき、総理府告示第三五号
本件第二土地につき、総理府告示第三六号
をもって各々告示した。
第三 使用認定の違憲性(取消理由その一)
本件土地に対する被告内閣総理大臣による使用認定は、憲法に違反する無効な
ものであり、少なくともその取消を免れない。
一 恒久平和主義に対する違反
憲法前文は、「日本国民は恒久の平和を祈願し、人間相互の関係を支配する崇
高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼し
て、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と宣言し、憲法の基本原則と
しての恒久平和主義を高く掲げ、その目的を達するために、第九条においてあら
ゆる形態の戦力の不保持と交戦権の否認を明らかにし、戦争の放棄を定めた。こ
の規定の意味するところは、自衛隊のごとく自らが戦力を保持することはもとよ
り、米軍のごとき外国軍隊を日本国内に駐留させることをも厳禁するものである。
沖縄を含むわが国内への米軍の駐留は、わが国政府の要請と政府の手による基
地の提供、費用の負担等の協力のもとでなされているのであり、米軍の駐留は、
憲法第九条の厳禁する陸海空軍その他の戦力の保持に当たるものといわなければ
ならない。したがって、米軍の駐留を許した日米安保条約及び地位協定は、その
意味において憲法違反であり、その実施を目的とする米軍用地収用特措法も憲法
に違反するものである。よって、米軍に供するための本件各土地の使用認定(強
制使用)は憲法の前文及び第九条に違反し許されないものである。
二 憲法第二九条に対する違反
憲法第二九条は、土地所有権等の財産権の不可侵性を保障し(一項)、唯、正
当な補償のもとに、公共のために用いる場合にのみ、その権利の制限を許してい
る(三項)。
米軍や自衛隊のために土地等の財産を強制使用することは、憲法が財産権の制
限を許している「公共のために用いる」場合に当てはまらない。けだし、ここで
公共のために用いるとは、社会全般の福祉の擁護と増進のために、土地等の財産
を供する場合をいうのであり、社会全般の福祉とはおよそ無縁な、否むしろそれ
と対立し、後記のとおり国民生活にもろもろの被害をもたらし、国民全般の福祉
を破壊している米軍に土地を提供することが、憲法の定める公共のために用いる
ことに当てはまらないことは明らかだからである。
憲法のいう「公共の」意味内容は、憲法自らの基本原則である人権の尊重、恒
久平和主義などの理念を踏まえて解すべきものであり、時の為政者の恣意的な解
釈によって決められるべきものではなく、人権を侵し、平和を乱す事態が「公共」
性の名のもとに許されてはならないことは当然である。したがって、米軍の用に土
地を供することを目的とする米軍用地収用特措法は、憲法第二九条一項、三項にも
違反した無効なものであり、同法を適用してなした本件各土地の使用認定はその取
消を免れえないものである。
三 憲法第三一条に対する違反
米軍用地特措法においては、以下に指摘するように、使用・収用の認定にいた
る事前手続における権利保護の手続が、土地収用法に比較して、形式化・形骸化さ
れており、適正手続を保障した憲法第三一条に違反するものである。
1 土地収用法においては、起業者が建設大臣または都道府県知事に事業認定
申請書を提出する際の添付書類として事業計画書の添付を義務づけている(土地収
用法第一八条)。この事業計画書には、事業計画の概要、事業の開始及び完成の時
期、事業に要する経費及びその財源、事業の施行を必要とする公益上の理由、収用
または使用の別を明らかにした事業に必要な土地等の面積、数量などの概要並びに
これらを必要とする理由、起業地等を当該事業に用いることが相当であり、かつ土
地等の適正かつ合理的な利用に寄与することになる理由が記載されるようになって
いる(規則三条一項)。
「事業計画書」は申請に係る事業の内容を具体的に説明するものであり、事業の
認定機関は、この「事業計画書」に記載された事項をもとにして、収用の可否を判
断するのであるが、米軍用地特措法は、使用または収用の認定の申請に、このよう
な「事業計画書」もしくはそれに相当する使用・収益の内容を具体的に説明した書
類の添付は要求されていない。
2 土地収用法においては、建設大臣または都道府県知事は、事業の認定を行
おうとするとき、起業地が所在する市町村の長に対して、事業認定申請書及びその
添付書類のうち、当該市町村に関係のある部分の写しを送付しなければならず(二
四条一項)、右書類を受け取った市町村長は公告の日から二週間右書類を公衆の縦
覧に供しなければならず(同条二項)、また、事業の認定に利害関係を有する者は、
右二週間の縦覧期間内に、都道府県知事に意見書を提出することができる(二五条
一項)と規定されている。
ところが、米軍用地特措法では、この事業認定申請書、添付書類の送付及び縦覧
の手続は無く、利害関係人の意見書の提出についての定めもない。国民の権利保護
手続として不十分である。
3 土地収用法は、事業の認定を行おうとする場合において、必要があるとき
は、公聴会を開いて一般の意見を求めなければならない(二三条)と規定している。
憲法第三一条の適正手続の保障の一環として、事業認定の公正・妥当さを保障する
ために認められた極めて重要な制度である。
ところが、米軍用地特措法は、土地収用法第二三条の適用を除外し、公聴会の制
度を廃止している。
4 米軍用地特措法は、一九九七年四月二三日に改正され、その後、地方分権
推進法をもって改正された(以下、これを「改正」特措法という)。
憲法第三一条が、行政手続においても適用されることは確定した判例である(最
高裁一九九二年七月一日判決)。具体的には、不利益を受ける者に告知と聴聞の機
会を与えられる権利、事後の不服申立手続の存在、中立機関による事前の裁定、手
続継続による期待権がそれぞれ保障されることになる。しかし、「改正」特措法は、
右憲法第三一条に真っ向から反するものである。
「改正」特措法においては、収用委員会の裁決を経ることなく、内閣総理大臣の
使用認定、防衛施設局長の裁決申請、担保提供等の一方的行為がなされれば、それ
だけで地主に対する事前の告知・聴聞の機会を与えることなく強制使用が可能とな
る。権利主張の機会が全く与えられないまま、内閣総理大臣及び防衛施設局長の意
思のみで、自己所有の土地を自己が使用できないだけでなく、自己の望まない方法
で使用されてしまうのである。
また、内閣総理大臣の使用認定、防衛施設局長の裁決申請、担保提供等がなされ
れば一方的に暫定使用権原が発生し、その適法性を争う手段が全く存在していない
ばかりか、中立機関による事前の裁定も存在しない。起業者から独立した第三者機
関である収用委員会が、国民の権利主張を聞いた上で、公正・中立な立場で審理・
裁決をしてこそ中立機関による事前の裁定がなされたと言えるのであり、それが土
地収用法制の基本的体系である。しかるに「改正」特措法は、収用委員会の審査を
全く経ることなしに防衛施設局長の裁決申請と、その後の担保提供という一方当事
者の手続のみで強制使用を可能としており、土地収用法制を根本から破壊するもの
である。
以上により、米軍用地収用特措法は、憲法第三一条が保障する各種原則に、二
重三重に違反するものであり、同法に基づく本件使用認定はその取消を免れえない。
第四 「適正且つ合理的」要件の不存在(取消理由その二)
一 「適正且つ合理的」要件の厳正な認定義務
米軍用地収用特措法は、土地収用法の定める土地強制使用のための要件を大幅
に緩和し、且つ権利者保護の手続きを大幅に切り捨てて米軍用地の強制使用をはか
ろうとするものであるが、全く無制約な土地収用を許すものではない。米軍用地収
用特措法は前述のとおり違憲無効なものであるが、その点を置くとしても、この法
律の適用自体が厳正なものでなければならず、この法律の定める要件が厳格に適用されなければならないことは
当然である。
米軍用地収用特措法第三条は、「駐留軍の用に供するため土地等を必要とする場
合において、その土地等を駐留軍の用に供することが、適正且つ合理的であるとき
は、この法律の定めるところにより、これを使用し、又は収用することができる」
と定め、米軍用地収用特措法による収用のためには「駐留軍の用に供するための土
地等を必要とする場合」のほかに「当該土地を米軍用地として供することが適正且
つ合理的」な場合でなければならないと明記している。すなわち、米軍用地収用特
措法による土地の使用認定(強制使用)は、第一に「駐留軍の用に供するため土地
等を必要とする」との要件と、第二に、「土地等を駐留軍の用に供することが、適
正且つ合理的であるとき」との要件が必要とされている。
したがって、ここでいう「適正且つ合理的」という要件が、単なる「基地の必要
性」「安保条約に基づく基地提供義務」と同義語でないことは明らかである。
被告は、日米安保条約上「基地の必要性」があり、「基地提供義務」があるから、
即「適正且つ合理的」の要件が備わっているとの立場で米軍用地収用特措法による
土地の使用認定をなしたのであるが、これは前述のとおり憲法第二九条及び第三一
条に違反するだけにとどまらず、米軍用地収用特措法が定める「適正且つ合理的」
の要件を欠く違法なものである。
二 米軍による土地の長期使用の歴史的経過
1 本件土地についての強制使用を、さらに継続するための使用認定が「適正
且つ合理的」であるかどうかを正確に判断するためには、本件土地がどのようにし
て米軍の使用に帰したのか、米軍の使用にはどのような法的根拠があったのか、そ
の歴史的な経過を踏まえなければならない。
2 米軍は沖縄占領と同時に、沖縄本島在住の住民を島内十数か所の捕虜収容
所に抑留し、その間土地所有権等権利の行使を停止し、軍事上必要とされる地域を
すべて囲い込んで軍用地にした。これは、土地所有者の意思を全く顧みない問答無
用の略奪であった。本件土地もこのようにして地主の意思とは無関係に米軍基地に
されたものである。
米軍は、いったん住民に返された土地についても、必要とあらば「銃剣とブルド
ーザー」という言葉で呼び慣らされているやり方で、一方的に土地を取り上げた。
米軍による土地の強制使用は、ヘーグ陸戦法規によるものといわれながら、しか
し同法規の定める、「私有財産尊重」「没収、掠奪の禁止」の原則に違反するもの
であっただけではなく、土地の強制使用による基地の形成は、日本の民主化と平和
の確立という駐留の目的を定めたポツダム宣言に明白に違反するものであった。
3 わが政府は、沖縄において米軍が国際法に違反して、広大な土地を強制的
に地主から取り上げ、そのために、沖縄県民の生活が破壊されていることを知りな
がら、米軍による沖縄の軍事的支配を終わらせ、県民の生活の再建と権利回復の道
を講ずるのではなく、むしろ逆に、講和条約を結んで、沖縄の施政権を米国に委ね、
米軍による沖縄の軍事的専制支配に「法的根拠」を与えた。
講和条約の発効によって、沖縄における土地の強制取り上げの法的根拠を、ヘー
グ陸戦法規に求めることができなくなった米軍は、矢継ぎ早に布令、布告を乱発し
て、土地取り上げの法的な装いをこらしたものの、それとて、結局は、土地所有者
の意思を無視して土地を強制使用するという一方的、恣意的なものであることに何
の変わりもなかった。
復帰前の沖縄に新憲法の適用があったかどうかの論議はさておくとしても、少な
くとも米軍による沖縄の軍事的支配及びそのもとでの土地の強制使用が新憲法の理
念に反する、不法不当なものであった歴史的事実は、何人も消し去ることはできな
い。
4 わが政府は、沖縄の復帰にあたって、国際法に違反する違法不当な方法で
土地取り上げを繰り返し、土地の不法占拠を続けてきた米軍から、土地を取り戻し
て県民に返還するのではなく、むしろ逆に「沖縄における公用地等の暫定使用に関
する法律」(一九七一年一二月三一日法律第一三二号)いわゆる「公用地法」を強
行制定し、あろうことか米軍の不法不当な土地取り上げを追認し、自らの手で本件
土地を含む県民の広大な土地を強制使用し、米軍及び自衛隊に使用を許した。
しかし、復帰前の米軍による土地接収・使用は、全く権原を欠く違法なものであ
り、「公用地法」の制定によってこの違法状態は何ら治癒されていない。しかも
「公用地法」自体が合理的な理由もなく、県民を不当に差別し財産権を侵害するも
のであり、財産権の尊重を掲げる憲法第二九条、法の下の平等を定める第一四条、
適正手続きを定める第三一条に違反するものであることはもとより、憲法の前文及
び第九条の恒久平和主義にも違反する、二重三重に憲法違反の無効なものである。
三 米軍基地の果たした役割
右のようにして形成された米軍基地がどのような役割を果たしたかも、同時に
考慮されなければならない。
一九四九年の中国革命政権が樹立、それに続く朝鮮戦争の勃発という極東情勢の
変化の中で、沖縄の米軍基地は一層拡大強化され、対共産圏封じ込め戦略の拠点と
された。朝鮮戦争の際、沖縄の米軍基地が最大限に使用されたことは言うまでもな
い。
米軍の発表によれば、極東空軍が朝鮮に出動した回数は七二万余回、海兵隊所属
戦闘機一〇万余回、ナパーム弾・ロケット弾等の投下は空軍・海軍・海兵隊合わせ
て約七〇万トンという。沖縄基地を足場にして、無数の朝鮮人民を殺戮したわけである。
ベトナム戦争において、沖縄の米軍基地が最大の戦略拠点として、訓練、中継、
補給基地としてはもとより、直接発信基地として利用され、あらゆる兵器を使って
いかに多くのベトナム人民を殺戮したかは、いまだ県民の記憶に新しいところであ
る。
そして今なお、沖縄の米軍基地は、安保条約にいう「極東」の範囲を越えて、米
軍の中東、世界戦略の拠点として益々その機能強化がはかられている。核兵器や化
学兵器の存在も疑念がもたれている。
四 県土利用の障害たる米軍基地
わが沖縄は、全国との比較で人口一%弱、県土面積にいたっては〇・六%弱であ
る。この沖縄に全国の二九・五%の米軍基地が置かれている。専用施設でいえば実
に七四・八%の基地が沖縄にある。
この米軍基地は、沖縄全県の一〇・七%を占め、沖縄本島での比率は一九・三%
であり、とりわけ中部地域にあっては、実に二五・八%の面積が基地になっている。
基地は、ただあるというに止まらない。基地あるが故に、県民全体の福祉増進につ
ながる健全な地域開発と産業の発展が大きく阻害されている。せめて基地の提供に
反対している原告ら地主の本件各土地だけでも返還して、地主らの健全な利用に委
ねることこそが、土地利用上適正且つ合理的というべきである。
五 県民の生活と人権を破壊する米軍基地
基地あるが故に健全な地域開発が歪められているだけではない。広大な米軍基地
がある故に沖縄県民は、日常生活の上で、言い知れぬ多大の被害を蒙っている。
嘉手納飛行場、普天間飛行場、伊江島射爆場は住宅地域や小・中・高校などの教
育施設に接近しており、そのため地域住民や児童・生徒は、常時、九〇ホン、一〇
〇ホンを超える騒音に悩まされている。地域環境は破壊され、地域住民の健康はも
とより、成長途上の子供たちの精神的・肉体的な発育、向上は、著しく阻害されて
いる。
銃弾乱射事件、森林の火災事件など、住民の反対を押し切って、毎日のように繰
り返される演習による被害は、枚挙にいとまがない、そればかりではない。基地か
らの廃油廃液、パイプラインによる漏油事件、米軍機墜落事故等による住民の日常
的な不安は、もはや度し難い状況にある。米軍人・軍属による県民への犯罪の多発、
近年とみに激増している麻薬犯罪は、県民の生命、健康に対する直接的な脅威とさ
えなっている。
わが沖縄は、去る大戦において、本土防衛の名の下に、子供・婦人などの非戦闘
員を含む約一八万人の県民の尊い命を失った。当時の沖縄県の人口の三分の一を超
える同胞を失い、荒廃と混乱と失意の中にあった沖縄県民を待ち受けていたものは、
米軍による軍事優先と植民地的専制支配であった。それは日本政府自らの沖縄政策
によるものであった。そして今なお、この沖縄に広大な軍事基地(米軍・自衛隊基
地)が大きくのしかかっている。もとより政府の方針に基づいてである。この軍事
基地こそは、沖縄県民にとって諸悪の根源というべきものである。土地を強制使用
し、基地を保持し続けることは、憲法の理念に反するものである。
第五 本件各土地についての「必要性」、「適正且つ合理的」要件の不存在につい
ての具体的主張(取消理由その三)
右については、準備書面でもって追って主張するが、ここではその骨子だけを述
べる。
一 本件第一土地について
1 同土地は、原告□□□□の父◇◇◇◇の所有であったが一九九四年六月一日、
原告知花昌一が贈与を受け、その所有権を取得したものである。
2同土地は、米海軍安全保障グループ(NSGA)の管理する「楚辺通信所」の
施設用地の一部として、航空機、船舶及びその他の軍事通信の傍受施設として使用
され、通信の傍受、コンピューター分析を任務としていたが、日米特別行動委員会
(SACO)で、二〇〇〇年を目処に返還する合意がなされた。これに伴い、一九
九七年四月二三日付の米国海軍省、海軍作戦本部長名で、同施設における通信保全
郡活動を廃止する旨の決定がなされ、同年九月一〇日、同施設において右安全保障
グループの解任式が行われている。
右解任式以降は、同施設は米民間会社に運営が委託され、施設本来の任務は殆ど
果たしていない。
3 同土地については、一九九六年三月二九日付で那覇防衛施設局長から権利取
得裁決申請及び明渡裁決の申立てがなされ、一九九八年一〇月一九日、沖縄県収用
委員会はこれを認める裁決をなしている。
右裁決によると、権利取得の時期は一九九八年九月三日とされ、土地の使用期間
は二〇〇一年三月三一日までとなっている。
右裁決において、使用の期間が二〇〇一年三月三一日までとされたのは、起業者
自身が、使用の期間を権利取得の日から一〇年間とした当初の裁決申請を、日米特
別行動委員会(SACO)の二〇〇〇年返還の合意を受けて、わざわざ二〇〇一年
三月三一日までと変更したのであった。
4 以上の経緯からみても、同土地に対する本件使用の認定は、米国基地として
使用する必要性も、適正且つ合理性もないものであり、米軍用地収用特措法第三条
の要件を欠く違法な処分であることは明らかである。
二 本件第二土地について
1 同土地は、○○○の所有であったところ、一九八八年二月八日、原告◎◎◎
◎が売買によりこれを取得した土地である。
2 同土地の存する牧港補給地区は、キャンプ・キンザーとも呼ばれ、浦添市の
西部、国道五八号線と東シナ海に挟まれた細長い平地で、施設の面積は約二七五万
平方メートルと言われている。
3 同施設には、第三海兵遠征軍の三本柱の一つ、第三軍役務支援軍の殆どの部
隊、約二〇〇〇人が駐留し、海兵隊の補給整備、医療などの任務を果たしている。
4 第三軍役務支援軍は、海兵隊の戦闘員に分類されており、前線における戦闘
支援を本来の任務としている。
安保条約第六条は、「・・・アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本
国において施設及び区域を使用することが許される」と想定しており、土地等を使
用する主体は、あくまでも「陸軍」、「空軍」、「海軍」の三軍に限定されている
のであるから、右「三軍」に該当しない「海兵隊」の使用のための強制使用は、
「必要性」の要件を充足しない。
5 米軍用地収用特措法の目的は、その第一条において「日本国とアメリカ合衆
国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国に
おける合衆国軍隊の地位に関する協定を実施するため、日本国に駐留するアメリカ
合衆国の軍隊(以下、「駐留軍」という)の用に供する土地等の使用又は収用に関
し」と定められており、同条に掲げられている地位協定は、その二条において「合
衆国は相互協力及び安全保障条約第六条の規定に基づき、日本国内の施設及び区域
の使用を許される」と定めている。そして、安保条約第六条は、駐留軍の駐留目的
が「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与
する」ことにあることを明らかにしている。
このように、駐留目的が「日本国の安全に寄与し」、「極東における国際の平和
及び安全に寄与する」ものと限定されていることから、日本国及び極東以外の国際
の平和及び安全に寄与するために使用される施設は、右駐留目的を逸脱するもので
ある。
ところが、牧港補給地区の施設区域を含め在沖米軍基地は、太平洋、インド洋は
無論のこと、中東に関する戦時の拠点ともなっており、もはや安保条約第六条の極
東条項を超えて使用されていることは明らかであり、従ってかかる目的のために同
土地を強制使用することは、必要性、適正且つ合理的要件を欠き、許されない。
第六 結論
以上述べてきたように、本件各土地について、米軍用地収用特措法を適用して強
制使用することは違法であるだけでなく、強制的に軍事基地に供することは、土地
強制使用の要件として、米軍用地収用特措法が定める「必要性」及び「適正且つ合
理的」の要件を欠くものであるとともに、平和主義を定めた憲法前文、第九条、私
有財産権の尊重を定めた憲法第二九条、権利制限の適正手続を定めた憲法第三一条
に各違反することは明らかであり、その取消を免れ得ない。
添 付 書 類
一 土地登記簿謄本 二通
二 土地評価証明書 二通
三 訴訟委任状 二通
二〇〇〇年九月二五日
原告ら訴訟代理人
弁 護 士 (以下省略)
物 件 目 録
一 所 在 (省略)
地 番 (省略)
地 目 宅地(現況・軍用地)
地 積 二三六・三七平方メートル
二 所 在 (省略)
地 番 (省略)
地 目 墓地(現況・軍用地)
地 積 一四八平方メートル
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仲田博康
nakada_h@jca.apc.org