■毎日新聞(7月28日)、朝日新聞(7月29日)などで、検定申請された、
産経新聞社・発行、扶桑社・発売の中学校社会科教科書を取り上げたのに対し、
「新しい歴史教科書をつくる会」では会長名で2社に「文部省検定中の教科書内
容の報道に関する公開質問」を8月1日に提出。
また、秋田県では、「つくる会」秋田県支部長が「つくる会」事務局長との連
名で、共同通信社が配信した「異色の教科書」記事に対し、「文部省検定中特定
教科書への採択妨害に関する公開質問」を8月24日、秋田魁新報社に提出。加
えて同社では、8月18日、戦争体験を風化させてはならないとする趣旨のコラ
ムの中で「語り部が少なくなった透き間を狙うかのように、『戦争に善悪はつけ
がたい』などとの歴史教科書申請本が文部省の検定を受けている。よもや採択に
はなるまいが、戦争体験を確実に受け継ぐ子どもたちの目になら、間違いなくい
ぶかしく映るだろう」とした件にも言及。
文部省検定中の教科書内容の報道に関する公開質問
http://homepage1.nifty.com/kyokasyo/news.htm
(7月29日付、朝日新聞記事の抜粋なども記載)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
文部省検定中特定教科書への採択妨害に関する公開質問
平成十四年から使用される教科書の検定作業が、この四月から文部省において
行われている。教科書の検定は当然ながら外部からの不当な干渉を排し、厳正・
公平に行われなければならない。
かつ明年四月以降開始される全国の各採択地区における教科書の採択作業につ
いても、法令に定められた各教育委員会の義務権限に基づき、適切公正になされ
ねばならないことは言うまでもない。
ところが貴社は、八月十五日付朝刊において、共同通信社配信の「検定中の中
学歴史教科書に『戦争に善悪つけがたい』との記載がある」旨の記事を無批判に
掲載しただけでなく、八月十八日付朝刊の「北斗星」欄では、同教科書について
「よもや採択にはなるまい」と、あろうことか明年の採択結果について、読者に
対し強烈に一定方向の予断を与える記述を敢えてしている。かかる行為は、現在
慎重に作業がすすめられている検定に対し、外部から影響を与え、その公正を損
なうおそれのあるものであるばかりか、更に、特定教科書を標的として採択妨害
を企てるものであって、到底看過しがたい。
よってここに、このたびの二度にわたる貴社の記事掲載に対し、厳重に抗議す
るとともに、以下の諸点について、貴社の誠意ある見解を九月一日までにお示し
いただきたく、ご質問申し上げる。
一、貴社は現行の文部省検定制度および法令に定められた各教育委員会採択権限
に対し、これを尊重すべきものと考えておられるのか、それとも尊重するに足ら
ぬものと考えておられるのか、あるいはまた別の考えをお持ちなのか、うかがい
たい。
二、先頃「毎日新聞」「朝日新聞」が当会の名前をあげつつ、検定中の特定教科
書の内容を批判的に報道したが、これが国会で取り上げられ、大島文部大臣は
「あってはならないこと」「(検定結果を)決定した後に公開し、開かれていく
わけで経過の中ではあってはならないこと」と明確に答弁された(八月八日参議
院予算委員会)。
これは検定当事者が自ら、検定中の特定教科書の内容を報道することが、検定作
業中の公正を保つ上で障害となるとの認識を示したものに他ならない。貴社の今
回の記事は、まさに大島文相が「あってはならないこと」とされたものに該当す
る。貴社は文部大臣の答弁をいかに受けとめておられるのか、うかがいたい。
三、今後、他の検定中教科書も巻き込んで、マスコミ各社が競って今回の貴社と
同様の報道を行う事態になった場合、果たして検定の厳正中立が保証されるであ
ろうか。貴社の認識をうかがいたい。
四、今回のように、検定中でいまだ内容が確定しておらず、原則として批判され
た側の当事者が反論も補足説明もしにくい状態にある教科書の記述につき、特定
教科書を標的に予断を与える報道をなすことは、著しく公正を欠く行為と考えら
れるが、もしそうでないと主張できる根拠があればうかがいたい。
五、私どもは検定終了後、文部省検定の具体的論点をめぐる当否、教科書記述の
内容について、国民に開かれた議論が大いにまきおこることを歓迎する。しかし
そのことと、検定期間中に内容の未確定な教科書につき、一方的な報道を行って
「論議」誘発しようと企むこととは、全く別のことがらである。前者は教科書内
容や検定制度の改善に資するものだが、後者は検定が適切構成(公正?)になさ
れる上で障害となるからだ。それとも貴社は検定が適切になされることについ
て、一切配慮する必要がないとお考えなのか、うかがいたい。
六、教科書の採択は改めて述べるまでもなく、県教育委員会の指導・助言・援助
の下、市町村教育委員会が採択地区協議会を結成し、諮問機関からの報告も参考
として、公正慎重になされるもので、作業は検定結果が出た後に開始される。し
かるに、いまだ検定中に特定教科書の採択結果を予想して否定的な言及をなすこ
とは、教育委員会による採択作業への不当かつ不公正な干渉に他ならず、純然た
る採択妨害に当たると考えられるが、もしそうでないと主張できる根拠があれ
ば、うかがいたい。
平成十二年八月二十四日
新しい歴史教科書をつくる会
事務局長 高森明勅
秋田県支部長 藤原信悦
秋田魁新報社
編集局長 ****殿
-----------------------------------------
議事録(149回-参-予算委員会-02号 2000/08/08)
○小山孝雄君
(森総理の所信表明の)最後のところで、「教育委員会のあり方なども重要課題で
あると考えております。」と、このように述べられました。
それ以前のことは大体想像がつくのでございますが、この「教育委員会のあり
方なども重要課題である」と述べられた背景、総理がおられませんので官房長官
にお答えを願いますが、この中には、地方教育行政の組織及び運営に関する法律
等で非常に大事な教育委員会の任務と定められている教科書採択の問題も当然私
は含まれるだろうと理解をするわけですが、いかがでございましょうか。
○国務大臣(中川秀直君)
今、御指摘の法律の二十三条六項に示されております教科書の採択でございま
すが、これも各学校を設置する教育委員会が行うこととなっておりますので、そ
れぞれの教育委員会が責任を持って適切に採択を行うことが必要である、このよ
うに考えていると思います。そういう意味での重要課題と、こう認識をしておら
れると思います。
○小山孝雄君 教育委員会の機能について、本当にそのように願うわけでござい
ます。
文部大臣にお尋ねいたしますが、教科書採択に関しましては平成二年の文部省
通知が出されておりまして、これは教育委員会の専権事項であると、こういうふ
うにしているわけでございますが、実際は学校票であるとか、あるいは単なる諮
問機関にすぎない選定委員会による絞り込み等、教育委員会の権限を空洞化させ
る慣行がまかり通っているというのが現状だと私は非常に憂えているものでござ
いますが、ぜひ教育委員会の権限において、責任において作業が進められるよう
願うものですが、今後の御指導について見解を伺います。
○国務大臣(大島理森君) 昨日も保坂委員から国立の問題についていろいろお
話がございました。
教科書選定については、毅然としてやはり教育委員会の判断で行うことが当然
であろうと思いますし、間違っても組合の意見によってとか、そういうことが
あってはならぬことだと思っております。今、委員から御指摘いただきましたよ
うに、平成二年の初中局長のいわば通知がございます。この基本は一切変わって
おりません。改めて各教育委員会等に対しては、そういう先生方の熱心な御議論
があったことを踏まえながら適切にしっかりとした指導をしてまいりたい、この
ように思っております。
○小山孝雄君 教科書の問題についてもう一点、文部大臣、お願いいたします。
先般、一部の新聞が、今現在検定が進行している、申請中の教科書についてこ
のような内容があるということを報道いたしました。これは非難めいた内容も含
まれておったように思うわけでございますが、制度として、これは教科書検定制
度の趣旨を損ねるものだ、このように考えますが、いかがでございますか。
○国務大臣(大島理森君) あってはならないことだと、このように思っており
ます。
教科書選定に関しては、それを決定した後に公表し開かれていくわけでござい
まして、経過の中ではあってはならぬ、このように思っております。
-------------------------------------------------------
▼「新しい歴史教科書をつくる会」では、会報「史」2000年5月増刊号
(「これが『新しい教科書』だ!待望の歴史・公民教科書の内容を大胆公開」)
でその内容を紹介。
(執筆者は、伊藤隆・小林よしのり・坂本多加雄・高森明勅・田中英道・谷原茂
生・西尾幹二・広田好信・藤岡信勝・八木哲、監修者は、大石慎三郎・高橋史
朗・芳賀徹)
▼扶桑社は、宣伝用パンフレット「歴史への招待」を作成して学校現場に配布。
▼著者・西尾幹二「つくる会」会長が、4月15日放映のテレビ東京(東京12チャ
ン
ネル)系番組「加藤寛のカンカンガクガク」に出演し、申請本(白表紙本)を紹
介(加藤寛氏は「教科書改善連絡協議会」の代表委員)
▼扶桑社の社員が学校現場に同社発売の白表紙本を持ち歩いて教師に見せて宣
伝。
▼「つくる会」は総額1000万円以上の費用をかけて、『国民の油断』(西尾幹
二・藤岡信勝著、PHP文庫、2000.5.15刊、本体価格590円)を15000部買い取り、
5
月下旬に都道府県と市町村の教育委員会に、西尾・藤岡連名の手紙二通を添え
て、5〜6冊づつまとめて送付。教育長宛「教育委員に配布してほしい」。教育委
員宛「あなた様は教科書採択の権限をお持ちになり、その実務にたずさわってお
られます」(受け取りを拒否した教育委員会に対しては、「つくる会」支部や会
員
が抗議行動)
なお、96年10月PHP研究所から発刊された『国民の油断』の文庫化にあた
り、「第八章・採択制度を変えれば教科書は変わる−教科書を良くするもしない
かも教育委員会の立ち直りいかん」を追加。
と「つくる会」では、独占禁止法に基づく公正取引委員会告示「教科書業におけ
る特定の不公正な取引方法」などに違反し、「採択関係者に影響力を有する」関
係者等に「他の者の発行する教科書の使用または選択を妨害」する「不当な干
渉」をするなど、まさに「あってはならないこと」をやっているわけですが、
「つくる会」では、発行者ではないから適用にならないし、直接の宣伝主体では
ないと居直っているようです。
違法性については以下を参照ください。
7.教科書採択の公正確保 (文部省)
http://www.monbu.go.jp/special/kentei/gaiyou/07.htm
また、藤岡信勝さんは、教育委員に対して、「教科書採択の権限をお持ちにな
り・・・」としています。確かに文部省が毎年出している「教科書制度の概要」
には、権限を明記しています。しかし、教科書採択の方法については、「都道府
県教育委員会は専門的知識を有する学校の校長及び教員、教育委員会関係者、学
識経験者から構成される教科用図書選定審議会を設置」し諮問することを定めて
おり、教育委員会の採択権限はあくまでも事務に関わる域を出ず、現場教師など
の採択権限を否定するものでなく、むしろ教師の教育権を侵し、教育基本法10
条にも反する発言です。
教科書制度の概要(平成12年3月)(抄)
http://www.monbu.go.jp/special/kentei/gaiyou/00.htm
6.教科書採択の方法
http://www.monbu.go.jp/special/kentei/gaiyou/06.htm
産経新聞社が、検定教科書の申請をすること自体、ダム工事の入札に食料品会
社が加わるようなもので、異例ではありますが、検定中の教科書がこれほど話題
になったことも異例です。これは「異色の教科書」のせいばかりではなく、他の
歴史教科書から「侵略」の事実が削除されたことを危惧する声が関係者・市民か
ら出されていたことからもきています。
マスコミは、これらの市民の知る権利に対して情報を提供することこそ責務で
あって、「自粛」する何ら理由はありません。特に産経新聞社発行の検定申請本
は四囲に出回っていて、すでに近隣諸国では、詳細を「批判的」に報道していま
す。過去に「しらしむべからず」して「公正」が保たれた例はありません。
また、「つくる会」の目的は産経新聞社発行の教科書が検定本として各地で採
択されることですが、質問状の中にもあるように検定申請によって「教科書記述
の内容について、(特定の)国民に開かれた議論が大いにまきおこること」もね
らっており、マスコミへの牽制は、「無関心層」をつくることで、政府に「世
論」という拠り所を与えるよりよい効果を期待したものにすぎません。
政府の政治方針に物心ともに『栄養補給』している統合右翼団体「日本会議」
の実働部隊として、多額の資金(99年度決算報告の収入は、一般会計14080万
円、特別会計28169万円)と「愛国者」なる人員をあてがわれ、その傘のもとで
無頼の徒のごときに振る舞う「つくる会」を野放しにしておくことは、「歴史改
ざん」に基づく国定教科書化、教育への政治介入に大きく道を開くことにつな
がっていくことにもなります。
教育委員会への執拗な干渉は、「地方分権推進計画」(98年5月29日閣議決定)
に基づく、「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」(99
年7月8日第145回国会で成立、7月16日公布、2000年4月1日施行、関係する法律
475本を「改正」、俗称:地方分権一括法)に実効性をもたせようとするもので
す。
文部省関係法律は中央教育審議会の答申をそのまま受け容れたといえますが、
その中で特に注目されるのは、学校教育法上各種の基準設定等の主体を「監督
庁」から「文部大臣」、「都道府県の教育委員会」などと明確に規定し、都道府
県又は市町村に対し、指導等は文部大臣の義務付けを廃止し、「必要に応じて」
行うことができるようになること、市町村等に対する国の補助金等の見直し(真
に必要なものだけ総合的かつ効率的に実施)、校長・教頭資格の規制緩和(教諭
の免許状を所有しなくても任用できる)、校長の管理権限の強化(主任の責任体
制の明確化、「設置者の定めるところにより」職員会議を置き、校長が主宰する
など)、教育長の任命承認制度を廃止し、地方公共団体自らの責任で適任者を選
ぶことができるようになり、議会による同意を必要となること、地方分権の推進
の観点からの見直し(地域住民の教育行政への参画の促進)と称しての学校評議
員の設置などです。
これらにより、地域の「政治勢力」によって教育が大きく左右されることにな
り、実質的に「教育基本法」を形がい化させる可能性があるものです。
これから、地方分権一括法で、各自治体で条例の「改正」作業がなされるわけ
ですが、私たちは「歴史改ざん勢力」の派手な動きばかりではなく、条例につい
ても監視の目を向けてゆく必要があります。
■近隣諸国から批判
韓国「ハンギョレ新聞」
8月9日 日本の右翼が歴史教科書をつくり、歴史を改ざんしようとしていると
詳報。
「大東亜戦争」の語を見出しに揚げ、日本の引き起こした戦争がアジアの欧米植
民地を解放に導いたと正当化している。
8月19日 古代史について「中国の古代文明を取り上げながら、韓半島の歴史
的役割を軽視している」と批判
中国・南京「揚子晩報」
8月11日 「日本で南京大虐殺の事実を否定している教科書を検討中」
その他、韓国「東亜日報」(10日)、「中央日報」(14日)、「聯合週報」
(17日)、「中央導報」(24日)なども大きく報道。
(週刊金曜日NO329)
■教科書検定申請本
▽核抑止論肯定教科書
文部省で検定中の中学校の公民の教科書の一部に「核抑止論を肯定する記述があ
る」として、広島、長崎両市の被爆者団体など十六団体は連名で十日、東京都な
どにある出版社八社と、文部省に「正しい教科書記述を求める要請書」を郵送し
た。
この日、広島市役所で記者会見した広島県原爆被爆教職員の会の石田明会長は
「報道によると、新しい歴史教科書をつくる会(西尾幹二会長)が編集した公民
の教科書には『核抑止論』を肯定し、『核武装』を正当化するかのような記述が
なされている」と指摘。「核兵器には戦争抑止力がある」「核兵器廃絶が表面的
に合意されたら、世界秩序にとって、もっとも危険な瞬間」などと記述。「事実
とすれば、ヒロシマ・ナガサキに無知であり、真実を曲げる非教育的かつ被爆国
日本の責務に背反する重大な過ち」として関係の出版社に撤回を要求。他の出版
社にも「原爆記述に真実を記述する」よう求めている。
文部省に対しても、被爆国にふさわしい、憲法、教育基本法に忠実な教科書検
定を要請した。
二〇〇二年度から使われる教科書は現在、文部省で検定中。調査官の検定を経
て、本年度末までに教科用図書検定調査審議会で合否が決まる。文部省は「検定
中の教科書については、コメントできない」としている。
(時事通信・中国新聞'00/8/11)
▽異色の教科書
先の戦争を「大東亜戦争」と記述。「太平洋戦争」は「戦後アメリカがよばせ
た」と指摘。
戦局の記述の中に、神風特攻隊員の家族に宛てた手紙を引用。「日本のために犠
牲になることをいとわなかった」多くの若者がいた。
「戦争は悲劇である。しかし、戦争に善悪はつけがたい。どちらかが正義でどち
らかが不正義という話ではない。国と国とが国益のぶつかり合いの果てに、政治
では決着がつかず、最終手段として行うのが戦争である。アメリカ軍と戦わずし
て敗北することを、当時の日本人は選ばなかったのである」
「日本の緒戦の勝利は・・・・独立への夢と勇気を育んだ」
朝鮮などでの日本語の強制、皇民化教育などの植民地支配の実態にはほとんどふ
れず、中国人や朝鮮人の強制連行の記述なし。
「侵略戦争」についてコラム欄を設け「定義もされずに、感情的に使われてき
た」
教育勅語を用語注釈付きで全文掲載。戦後執行決議されたことは触れず「近代日
本人の人格の背骨をなすものとなった」(森首相「時代を超えた価値がある」)
(秋田魁・河北新報00/08/15)
▽慰安婦記述の「自主的」削除
教科書出版会社8社が今年4月に文部省に申請した中学校歴史教科書(200
2年使用開始)のうち、5社の申請本から「従軍慰安婦」という記述がなくなっ
ていることが9日、分かった。記述していない5社(うち1社は初申請)のシェ
アは約8割。慰安婦の記述は97年度からの現行7社の教科書に初めて登場した
が、わずか5年で、教科書会社の「自主的」判断で多くの中学校で使用される歴
史教科書から消える。
第2次世界大戦前から当時の政府・軍が関与して強制的に連行したことを19
93年に政府が認めたことを受けて、従軍慰安婦問題は、97年度の中学校教科
書に初めて記述された経緯がある。
今回検定を申請したのは現行の教科書を発行している東京書籍、教育出版、大
阪書籍、日本書籍、日本文教出版、清水書院、帝国書院の7社と、初めて申請し
た扶桑社。
4社は検定に提出する申請本の段階で“自主的”に「慰安婦」という表現をな
くしている。扶桑社の申請した教科書でも記述していない。現行7社の全国47
8地区の占有率は、東京書籍39・3%、教育出版21・3%、大阪書籍15・
9%、日本書籍15・5%、日本文教出版3・6%、清水書院2・9%、帝国書
院1・5%。
執筆関係者「教科書会社が『政府関係者から記述を削除して欲しい』といわれ
たので了解して欲しいといわれた」
表現を削除した別の教科書会社幹部「政府からの要請があったとは聞いていな
い」「詳しくは申請中なのでコメントできない」
「従軍慰安婦」などの記述を巡っては、96年の文部省の検定結果に対して、
自民党を中心とした国会議員や一部の学者らが強く反発して削除などを求める民
間や地方議会などがキャンペーンを展開。
98年6月8日の参議院行財政・税制特別委員会で、当時の町村孝信文相が永野
茂門委員の歴史教科書問題に対する質問に、「明治以降(の記述)は否定的な要
素を余りにも書き連ねている印象を与えている歴史教科書が多い」と述べ、「検
定、あるいはその前の執筆の段階から各編集者にもう少しいいバランス、採択の
段階で改善の余地はないか、検定に関する審議会で検討してもらっている」と答
弁。
教育出版と東京書籍は昨年9月から10月にかけ、文部省に対し「従軍慰安
婦」から「従軍」の文言を削除する訂正を行っている。扶桑社の申請本のたたき
台を作った「新しい歴史教科書をつくる会」(会長、西尾幹二・電気通信大教
授)などは現行の教科書を偏向している、と批判的な活動をしてきた。また地方
議会も教科書の是正・削除を求める意見書が茨城や宮城などで採択されている。
【教科書制度】
検定のスケジュールは、秋には文部省から検定に関する意見が教科書会社に通
知、修正を経て来年春に合格などの結果が決まる。その後来年8月までに全国各
地区で採択。そして02年度度から授業で使われる。新学習指導要領では「内容
の厳選」とともに週5日制の実施で、教える内容が平均3割削減される。教科書
の内容も削減されるわけだが、教科書会社や文部省の「歴史観」が問われるとこ
ろだ。
(毎日2000年08月09日)
▽教科書出版会社の業界団体「教科書協会」(会長、丁子惇・東京書籍社長、会
員53社)が、教科書の奥付けに自社のホームページ・アドレスを掲載しようと
したところ、文部省が「アドレスの掲載は特定企業の宣伝に当たる」などとして
不許可にしていたことが30日、分かった。同省はインターネットを利用した情
報教育を推進する立場にあるだけに、各社は「時代に逆行した考え」と落胆。
奥付けに掲載する事項は検定の対象外。同協会は昨年5月、同省に文書でアド
レス掲載の許可を求めた。
文部省は「教科用図書検定基準」(文部省告示)にある「特定の営利企業、商
品などの宣伝や非難になるおそれのあるところはないこと」との趣旨や、ホーム
ページには参考書や副教材などの紹介が多く、学習の手助けにはならないなどの
理由で、今年7月10日になって協会に「掲載は差し控えてほしい」と文書で伝
えたという。
会員会社のある幹部「文部省は情報教育の重要性を訴えているが、本気で取り組
む考えがあるのか疑問。文部省の政策は余りにちぐはぐだ」
教科書は執筆から使用開始までに3年ほどかかるため、授業では古いデータを
使わざるを得ないのが実状。このため、教科書会社はホームページで最新の統計
データを提供したり、教師や生徒からの質問を受け付ける窓口を設けるなどの工
夫をしているという。
(毎日8月31日 )
▽札幌市の市民団体「札幌郷土を掘る会」(石田国夫代表)は三十日、東京など
に本社のある教科書会社七社に、中学校で使われる歴史教科書から「従軍慰安
婦」の言葉を削除しないよう求める要請書を送った。
要請書では、二○○二年度から中学で使われる歴史教科書として文部省に検定
を求めている七社の申請本のうち、四社の本から「従軍慰安婦」の言葉が削除さ
れていることを指摘。「これらが検定に合格すれば、子供たちは従軍慰安婦を教
科書で学ぶことができない。教科書会社は被害者の痛みを共有し、学問の成果と
真実に謙虚であることを希望する」と訴えている。
(北海道新聞00/08/31)